傷害罪は、初犯であっても、事案の内容や経緯によっては罰金刑が科され、結果として前科が残る可能性がある犯罪です。「初犯であれば処分は軽い」と考えられることもありますが、被害の程度や行為態様、被害者との関係などを踏まえ、処分の重さは個別に判断されます。また、状況によっては逮捕や起訴に至るケースもあり、必ずしも軽微な事件として扱われるとは限りません。傷害罪の処分を検討するうえでは、刑法上の構成要件や法定刑だけでなく、捜査段階での対応や示談の成否が、その後の処分に影響することもあります。本記事では、傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向、前科がつくかどうか、刑事手続の流れや示談の影響について、弁護士の立場から整理して解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害罪とは|初犯でも処分の対象となる犯罪の内容

傷害罪とは、人の身体に傷害を負わせた場合に成立する犯罪で、刑法204条に規定されています。ここでいう傷害には、骨折や出血といった明らかな外傷だけでなく、打撲や捻挫など、治療を要する身体的障害も含まれます。外見上は軽いケガに見える場合でも、医師の診断により一定期間の治療や通院が必要と判断されれば、傷害に該当する可能性があります。

傷害罪は、日常的なトラブルや口論の延長で問題となることも少なくありません。「強く殴ったつもりはなかった」「軽く押しただけだった」という認識であっても、結果として相手に傷害が生じていれば、刑事責任を問われる可能性があります。そのため、当事者の感覚と刑法上の評価が一致しないケースも多く見られます。

傷害罪と混同されやすい犯罪として暴行罪があります。暴行罪は、殴る、蹴る、突き飛ばすなどの有形力を行使したものの、結果として相手に傷害が生じなかった場合に成立する犯罪です。一方で、同じ行為であっても、治療を要するケガが生じた場合には、暴行罪ではなく傷害罪として扱われます。この「結果の有無」が、両者を分ける重要な判断基準となります。

傷害罪の法定刑は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされています(刑法204条)。このように、法律上は比較的重い刑罰が予定されている犯罪であるため、初犯であっても、事案の内容次第では罰金刑にとどまらない処分が検討されることもあります。

このように、傷害罪は「初犯だから軽い処分で済む」と一概に言える犯罪ではありません。処分の内容は、傷害の程度や発生状況、被害者との関係、事件後の対応などを踏まえて個別に判断されます。初犯の場合の処分を正しく理解するためには、まず傷害罪の基本的な性質を押さえておくことが重要です。

傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向

傷害罪が初犯であった場合の処分は、事件の内容や経緯を踏まえて個別に判断されます。一般論としては、初犯であることは処分を検討するうえで考慮される事情の一つとされることが多いものの、それだけで必ず軽い結果になるとは限りません。

初犯の場合に多い処分のパターン

初犯の傷害事件では、被害の程度が比較的軽く、事件後の対応に問題がない場合には、不起訴処分略式手続による罰金刑にとどまるケースが見られます。とくに、被害者との示談が成立している場合には、検察官が起訴を見送り、不起訴とする判断がなされることがあります。

また、不起訴とならず起訴された場合であっても、初犯であれば、略式命令による罰金刑が選択されることは少なくありません。この場合、公開の裁判は行われず、書面審理のみで処分が決まります。ただし、罰金刑であっても刑罰である以上、前科が付く可能性がある点には注意が必要です。

初犯でも軽い処分にとどまらないケース

一方で、傷害罪は法律上、比較的重い刑罰が予定されている犯罪であるため、初犯であっても、事案の内容によっては軽い処分にとどまらないことがあります。たとえば、被害者が長期間の治療を要する重傷を負った場合や、凶器を用いた行為により傷害を負わせた場合には、不起訴や略式手続にとどまらず、より重い処分が検討される可能性があります

また、行為態様が悪質と評価される場合や、事件の経緯から再犯のおそれが否定できないと判断される場合には、初犯であることのみを理由に、処分を大きく軽減することが難しくなることもあります。

初犯であることが考慮される場面

初犯であることは、量刑判断の段階で考慮される事情の一つです。前科がないことや、反省の態度が見られること、再犯のおそれが低いと判断されることなどは、処分を検討するうえで有利に働く場合があります。ただし、これらの事情は、被害の程度や示談の有無などとあわせて、総合的に評価されます。このように、傷害罪が初犯だった場合には一定の傾向はあるものの、「初犯だから必ず罰金で済む」「必ず不起訴になる」といった一律の基準は存在しません。処分の見通しを判断するためには、事件の具体的な内容を踏まえて検討することが重要です。

傷害罪の初犯で前科はつくのか

傷害罪が初犯だった場合でも、処分の内容によっては前科が付く可能性があります。前科が付くかどうかは、「初犯かどうか」ではなく、どのような刑事処分が下されたかによって決まります。

不起訴処分の場合

傷害事件について不起訴処分となった場合には、刑罰は科されないため、前科は付きません。不起訴には、証拠が不十分な場合のほか、被害者との示談が成立していることや、犯行の態様が比較的軽微であることなどを理由とするものも含まれます。

もっとも、不起訴となった場合でも、捜査を受けた事実そのものが完全に消えるわけではなく、いわゆる前歴として記録が残ることがあります。ただし、前歴は前科とは異なり、刑罰を受けた履歴ではありません。

罰金刑となった場合

傷害罪について罰金刑が科された場合には、初犯であっても前科が付くことになります。略式手続による罰金刑であっても、刑罰である以上、前科として扱われる点に違いはありません。

そのため、「裁判にならず罰金で済んだ」という場合であっても、法律上は有罪判決を受けたことになり、前科が付くことになります。この点は、一般的なイメージと異なることが多く、注意が必要です。

執行猶予付き判決の場合

傷害罪で執行猶予付きの判決が言い渡された場合にも、刑罰自体は言い渡されているため、前科は付きます。執行猶予は、一定期間、刑の執行を猶予する制度であり、無罪や処罰なしを意味するものではありません。

初犯であることと前科の関係

このように、前科が付くかどうかは、初犯か再犯かという点ではなく、最終的な処分の内容によって決まります。初犯であることは、不起訴や比較的軽い処分を検討する際に考慮される事情の一つではありますが、前科が付くかどうかを直接左右するものではありません。

前科の有無は、その後の生活や社会的評価に影響を及ぼす可能性があるため、処分の見通しを考えるうえで重要な要素です。傷害罪が初犯であっても、どのような処分が想定されるのかを正確に理解しておくことが大切です。

傷害罪で逮捕されるケースと刑事手続の流れ

傷害罪は、初犯であっても逮捕される可能性がある犯罪です。ただし、すべての傷害事件で直ちに逮捕されるわけではなく、逮捕の要否は事件の内容や状況に応じて判断されます。

初犯でも逮捕される主なケース

傷害罪で逮捕が検討されるのは、主に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断される場合です。たとえば、加害者の身元が不明確で連絡が取れない場合や、被害者や関係者への働きかけによって証拠が失われるおそれがある場合には、初犯であっても逮捕されることがあります。

また、被害の程度が重い場合や、凶器を用いた行為が認められる場合などでは、事件の重大性を理由として、逮捕が選択される可能性が高まります。もっとも、これらの事情があるからといって、必ず逮捕されるわけではなく、在宅のまま捜査が進められるケースも少なくありません。

逮捕されない「在宅事件」となる場合

傷害事件では、在宅事件として扱われることも多く見られます。在宅事件とは、身柄を拘束されることなく、呼び出しに応じて取調べを受けながら捜査が進められる形態です。被疑者が定職に就いている場合や、住所が定まっており逃亡のおそれが低いと判断される場合などには、初犯であることも考慮され、在宅事件とされることがあります。

逮捕後の刑事手続の流れ

逮捕された場合、まず警察で取調べが行われ、その後、検察官に送致されます。検察官は、勾留が必要かどうかを判断し、必要があると判断した場合には、裁判所に勾留請求を行います。裁判所が勾留を認めると、最大で20日間、身柄が拘束される可能性があります。

勾留期間中、検察官は、起訴するか不起訴とするかを判断します。不起訴となれば釈放され、刑事手続は終了します。一方、起訴された場合には、略式手続による罰金刑となるか、正式な裁判(公判)で審理されるかが検討されます。

初犯の場合に意識すべき点

このように、傷害罪の刑事手続は、逮捕されるかどうか、勾留されるかどうか、起訴されるかどうかといった複数の段階を経て進みます。初犯であることは、これらの判断において考慮される事情の一つではありますが、それだけで身柄拘束や起訴が回避されるとは限りません。

傷害罪が初犯であっても、事件の内容次第では、早い段階から慎重な対応が求められることになります。刑事手続の流れを把握しておくことは、今後の見通しを考えるうえで重要です。

傷害罪では、初犯であることと逮捕勾留の有無に直接の関係がないケースも多いです。初犯であっても身柄拘束の回避を目指す実益は非常に大きいと言えます。

示談が初犯の処分に与える影響

傷害罪が初犯だった場合、示談が成立しているかどうかは、その後の処分に大きく影響する事情の一つです。示談は、それ自体で刑罰が決まるものではありませんが、捜査や処分の判断において、重要な考慮要素として扱われます。

示談とは何か

示談とは、加害者と被害者の間で、損害賠償や謝罪などについて合意し、紛争を解決することをいいます。傷害事件における示談では、治療費や休業損害、慰謝料の支払いなどが合意内容となることが一般的です。示談が成立すると、被害者が処罰を求めない意思を示す、いわゆる宥恕の意思が確認される場合もあります。

示談が成立した場合の影響

示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性が高まる傾向があります。とくに、被害の程度が比較的軽く、初犯である場合には、示談の成立が判断の重要な要素となり、不起訴とされることも少なくありません。

また、起訴された場合であっても、示談が成立していれば、処分の内容を検討する際に有利な事情として考慮されます。たとえば、略式手続による罰金刑にとどまるかどうか、あるいは量刑を判断する場面で酌量される方向に働く可能性があります。

示談が成立しない場合の影響

一方で、示談が成立していない場合には、不起訴とする判断が難しくなることがあります。被害者の処罰感情が強い場合や、損害賠償が行われていない場合には、起訴される可能性が相対的に高まります。

もっとも、示談が成立していないからといって、必ず起訴されるわけではありません。事件の内容や被害の程度、そのほかの事情を踏まえて、検察官が総合的に判断することになります。

初犯と示談の関係

初犯であることは、示談が成立している場合に、その効果をより評価する方向に働くことがあります。反省の態度が示されていることや、再犯のおそれが低いと判断されることとあわせて、示談の成立が処分の見通しに影響を与えることになります。ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になる、あるいは前科が付かないといった保証があるわけではありません。示談の意義と限界を正しく理解しておくことが重要です。

初犯でも処分が重くなりやすいポイント

傷害罪が初犯であっても、事件の内容によっては、比較的重い処分が検討されることがあります。初犯であることは有利な事情の一つではありますが、それだけで処分が大きく軽減されるとは限りません。ここでは、実務上、処分が重くなりやすいとされる代表的なポイントを整理します。

被害の程度が重い場合

処分の重さを左右する最も重要な要素の一つが、被害の程度です。被害者が長期間の治療を要する重傷を負った場合や、後遺障害が残る可能性がある場合には、初犯であっても、軽い処分にとどまらない可能性があります。被害結果が重大であるほど、処分を慎重に検討すべき事案として扱われる傾向があります。

行為態様が悪質と評価される場合

行為の内容や方法が悪質と評価される場合にも、処分が重くなる可能性があります。たとえば、複数回にわたって暴行を加えた場合や、相手が抵抗できない状況を利用して傷害を負わせた場合などでは、初犯であっても厳しい評価がなされることがあります。

凶器を用いた場合

凶器を用いて相手に傷害を負わせた場合には、行為の危険性が高いと評価されやすく、処分内容の判断が厳しくなる傾向があります。凶器の種類や使用状況によって評価は異なりますが、偶発的なトラブルとして処理されにくくなる点には注意が必要です。

被害者との関係性や事件の経緯

被害者との関係性や、事件に至る経緯も重要な判断要素です。たとえば、日常的なトラブルがエスカレートした場合や、計画性が疑われる事情がある場合などには、処分が重くなる可能性があります。また、被害者との関係が近しい場合であっても、そのこと自体が処分を軽くするとは限りません。

事件後の対応に問題がある場合

事件後の対応も、処分に影響を与える要素の一つです。被害者への謝罪や損害賠償が行われていない場合や、反省の態度が十分に示されていないと判断される場合には、初犯であっても有利な事情として評価されにくくなります。このように、初犯であることだけでは処分の軽重は決まりません。被害の内容や行為態様、事件後の対応など、複数の事情が総合的に考慮されて処分が判断されます。初犯であっても、どのような点が問題視されやすいのかを理解しておくことが重要です。

法律的には、どれだけ大きな被害をもたらし得る行為だったのか、という点が処分の重さに影響しやすい傾向にあります。刑罰は行為責任に見合った重さにすべきである、という考え方からくるものです。

傷害罪の初犯で弁護士ができること

傷害罪については、事件の内容や対応の仕方によって、その後の処分が大きく左右されることがあります。とくに、捜査の初期段階からどのような対応を取るかは、処分の見通しを考えるうえで重要な要素となります。弁護士は、刑事手続の各段階に応じて、法的観点から適切な対応を行うことができます

捜査段階での対応

捜査が始まった段階では、取調べへの対応や供述内容が、その後の処分に影響を与えることがあります。弁護士は、事実関係を整理したうえで、どのような点に注意して対応すべきかを助言し、不利益な供述を避けるためのサポートを行います。また、逮捕や勾留が問題となる場面では、身柄拘束の必要性が低いことを主張し、在宅事件としての取扱いや早期の身柄解放を目指す活動を行うこともあります。

示談交渉への関与

傷害事件においては、被害者との示談が処分に影響を与える重要な要素となることがあります。弁護士が関与することで、法的に適切な内容での示談交渉が進められ、感情的な対立を避けながら話し合いを行うことが可能になります。示談の進め方や条件についても、処分への影響を踏まえた検討が行われます。

起訴・裁判段階での弁護活動

起訴された場合には、略式手続が相当かどうか、あるいは正式な裁判でどのような主張を行うべきかが検討されます。弁護士は、事件の内容や反省の状況などを踏まえ、処分が過度に重くならないようにするための弁護活動を行います。裁判においては、量刑を判断するための事情を整理し、適切に主張する役割を担います。

弁護士が関与する意義

このように、傷害罪については、弁護士が関与することで、刑事手続全体を見据えた対応が可能になります。捜査・示談・起訴・裁判といった各段階を個別に捉えるのではなく、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

手続の段階や事件の内容によって、弁護士にできることは変わってきます。臨機応変に、最良の結果を目指す動きを選択、実行できることが、専門性ある弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ|傷害罪が初犯でも押さえておくべきポイント

傷害罪は、初犯であっても、事件の内容や対応次第で処分の見通しが大きく変わる可能性がある犯罪です。初犯であることは有利に考慮され得る事情の一つではありますが、それだけで軽い処分にとどまると一概に言えるものではありません。

処分の判断においては、被害の程度や行為態様、事件後の対応、被害者との示談の有無など、複数の事情が総合的に考慮されます。不起訴や罰金刑にとどまるケースがある一方で、事案によっては軽い処分にとどまらないこともあります。また、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付く点にも注意が必要です。

刑事手続の進行においては、逮捕や勾留の有無、起訴の判断、裁判手続の選択など、複数の段階があります。これらは個別に判断されるものではありますが、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

このように、傷害罪については、初犯かどうかだけに目を向けるのではなく、事件の内容やその後の対応を含めて全体像を把握することが大切です。状況を正確に整理し、どのような点が判断材料となるのかを理解したうえで、冷静に対応を検討することが求められます。

傷害罪の初犯に関するよくある質問

Q1. 傷害罪が初犯であれば、必ず罰金で済みますか?

いいえ、必ず罰金で済むとは限りません。
初犯であることは処分を判断する際に考慮される事情の一つですが、被害の程度や行為態様、事件後の対応などによっては、罰金刑にとどまらない処分が検討されることもあります。処分の内容は、個別の事情を踏まえて判断されます。

Q2. 傷害罪が初犯でも前科が付くことはありますか?

はい、処分の内容によっては前科が付くことがあります。
不起訴処分となった場合には前科は付きませんが、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付きます。前科が付くかどうかは、初犯か再犯かではなく、最終的な処分の内容によって決まります。

Q3. 示談が成立すれば、傷害罪は不起訴になりますか?

示談が成立すれば不起訴となる可能性は高まりますが、必ず不起訴になるわけではありません。
示談は処分を判断する際の重要な考慮要素の一つですが、それだけで結果が決まるものではなく、被害の程度や事件の経緯などを踏まえて総合的に判断されます。

Q4. 傷害罪が初犯の場合、逮捕されないこともありますか?

はい、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むこともあります。
逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断される場合などには、初犯であることも考慮され、逮捕されないことがあります。ただし、被害の程度や事件の状況によっては、初犯であっても逮捕が検討されることがあります。

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