痴漢で勾留される?要件・期間・回避の判断基準

痴漢の疑いで逮捕された場合、勾留されるのか、どれくらいの期間身柄を拘束されるのかは、多くの方が強い不安を感じる点です。
痴漢事件では、逮捕されたからといって必ず勾留されるわけではなく、勾留が認められるかどうかは、法律上の要件や具体的な状況をもとに裁判官が判断します。
本記事では、痴漢事件における勾留とは何か、勾留が認められる判断基準、原則の勾留期間や延長の可能性を整理したうえで、勾留を回避・短縮するために重要となる考え方について、弁護士の視点から解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

目次

痴漢事件で「勾留」とは何か

痴漢事件で問題となる「勾留」とは、単に長期間拘束されることを意味するものではありません。
勾留は、逮捕後の刑事手続の中で、裁判官が必要性を判断した場合にのみ認められる身柄拘束であり、その位置づけや意味を正しく理解することが重要です。

痴漢事件における勾留の位置づけ

勾留とは、痴漢事件で逮捕された後、裁判官の判断により引き続き身体を拘束する刑事手続を指します。

警察による捜査が進められた後、検察官が勾留の必要があると判断した場合、裁判官に対して勾留を請求します。
この請求が認められると、被疑者は留置場などで一定期間、身柄を拘束されることになります。
勾留は、有罪・無罪を決めるための処分ではなく、あくまで捜査や手続を進めるために必要かどうかという観点から判断される点が特徴です。

逮捕と勾留の違い

逮捕は警察段階での一時的な拘束であるのに対し、勾留は裁判官が認めた場合にのみ続く身柄拘束です。

痴漢事件では、現行犯などで警察により逮捕されるケースがありますが、逮捕されたからといって、その後必ず勾留されるわけではありません。
逮捕は警察が行う初期段階の手続であり、比較的短期間の拘束にとどまります。
これに対して勾留は、検察官の請求を受けて裁判官が判断する手続であり、要件を満たさなければ認められない点に大きな違いがあります。

痴漢で勾留されるかどうかは何で決まるのか

痴漢事件で勾留されるかどうかは、検察官の請求を受けて裁判官が判断します。判断の軸は、刑事事件に共通する法律上の要件で、ポイントは次の3つです。
「住居不定」「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」があると評価される場合、勾留が認められる可能性があります。

痴漢事件では、3要件のうち特に証拠隠滅のおそれが重視されやすい傾向があります。被害者が一般人で、事件直後から供述を中心に捜査が進むことが多く、被害者への接触や供述への影響が懸念されると、勾留が必要と判断される場合があるためです。

勾留されやすい場面としては、たとえば、否認していて供述が対立しているケース、被害者と接触できる状況が残っているケースなどが挙げられます。逆に、住所・勤務先が明確で生活基盤が安定している、身元引受人がいる、被害者との接触可能性が低いといった事情が示せる場合には、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと評価され、勾留が認められないこともあります。

この段階で重要なのは、「勾留の要件に関係する事情」を具体的に示すことです。たとえば、連絡先や勤務状況、家族の協力、被害者との動線が重ならない事情など、判断に直結する情報がそろっているほど、勾留の必要性は相対的に低く評価されやすくなります。

要件判断のポイント(痴漢事件)
住居不定住所・生活拠点が明確か
逃亡のおそれ仕事・家族・社会的基盤の有無
証拠隠滅のおそれ被害者への接触可能性、供述への影響

痴漢事件の勾留期間はどれくらい続くのか

痴漢事件で勾留が認められた場合、身柄が拘束される期間には法律上の上限があります。
勾留は無期限に続くものではなく、一定の期間ごとに裁判官の判断を経て継続の可否が決められます。そのため、勾留が続く日数は事件ごとに異なります。

原則の勾留期間(10日間)

痴漢事件で勾留が認められた場合、勾留期間は原則として10日間です。

この期間は、検察官が捜査を行い、起訴するかどうかを判断するために設けられています。
勾留が開始された時点で、直ちに長期間の拘束が確定するわけではなく、まずはこの原則期間の範囲内で手続が進みます。
勾留期間中であっても、勾留の必要性が失われたと判断されれば、途中で釈放されることもあります。

勾留延長がされるケース

捜査を継続する必要があると判断された場合、痴漢事件でも勾留期間が延長されることがあります。

勾留の延長は、検察官の請求を受けて、裁判官が改めて判断します。
延長が認められた場合、勾留期間はさらに最大10日間となります。
延長が認められるかどうかは、証拠の収集状況や事件内容、被疑者の状況などを踏まえて判断され、すべての事件で一律に行われるものではありません。

痴漢事件で実際に多い勾留日数の目安

実務上、痴漢事件における勾留日数は、勾留されないケースから20日前後に及ぶケースまで幅があります。

早期に釈放される場合もあれば、原則期間を経て延長が認められる場合もあります。
どの程度の期間になるかは、事件の態様、証拠の内容、被害者との関係、勾留の要件に関わる事情がどのように評価されるかによって左右されます。
そのため、勾留期間はあらかじめ固定的に決まるものではなく、個別事情の影響を強く受けます。

勾留中、被疑者はどのような状態に置かれるのか

痴漢事件で勾留が認められると、被疑者は留置場で生活することになります。
この段階では、行動の自由が制限され、外部との連絡や日常生活は管理下に置かれます。勾留は刑事手続の一環ですが、生活面や社会生活への影響は避けられません。

勾留中の生活と外部との接触

勾留中は留置場での生活となり、外部との連絡には一定の制限が伴います。

起床や就寝、食事、入浴などは決められた時間割に従って行われ、私的な行動の自由はありません。
弁護人との接見は、原則として回数や時間、立会いの制限なく認められますが、家族や知人との面会については、面会が認められる場合であっても、回数や時間、立会いの有無について一定の制約が設けられます。
事件内容や捜査状況によっては、家族・知人との面会自体が認められない場合もあります。

仕事・学校・家族への影響

痴漢事件で勾留されると、仕事や学校を離れた状態が続くことになります。

勾留中は出勤や登校ができないため、欠勤や欠席が長期化することがあります。本人が直接連絡できない場合には、家族や弁護人を通じた対応が必要になる場面も生じます。
また、勾留期間が長くなるほど、雇用関係や学業への影響が現実的な問題となり、家族にとっても生活面や精神面での負担が大きくなります。

勾留は捜査手続上の措置にすぎませんが、日常生活や社会的立場に直接影響する状態が続くことは避けられません。そのため、勾留が認められるかどうか、あるいは途中で身柄解放が可能かどうかは、生活全体に関わる重要な問題となります。

痴漢事件で勾留を回避・短縮するためにできること

痴漢事件における勾留の判断は、事件の類型だけで一律に決まるものではありません。
裁判官は、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかを、具体的事情に基づいて評価します。そのため、勾留の要件に関係する事情がどの程度具体的に示されているかによって、勾留が回避されるか、あるいは勾留期間が短くなるかが左右されます。

勾留前に弁護人が果たす役割

勾留が決まる前の段階では、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いことを具体的事情として示せるかどうかが重要になります。

たとえば、住所や勤務先が明確であること、家族などの身元引受人がいること、被害者と接触する現実的な可能性がないことなどは、勾留の要件を否定する方向に評価されやすい事情です。
これらの事情が、単なる主張ではなく、客観的資料や事実関係として示されている場合、勾留の必要性が否定される判断につながることがあります。

勾留請求が行われる前後の段階で、こうした事情を裁判官に示せるかどうかは、結果に影響しやすい要素です。

痴漢事件の場合、勾留の必要性がないと判断されるケースは決して少なくありません。必要性の有無は法的な整理と主張が必要になるため、個別の事情を弁護士に把握してもらった上で、弁護士から適切な主張を尽くしてもらうことが有益です。

勾留後でも釈放される可能性はあるか

勾留が決定された後であっても、その判断が固定されるわけではありません。

勾留に対しては、裁判官の判断を争う手続として、準抗告勾留取消請求が認められています。
これらの手続では、勾留の要件が本当に満たされているのか、あるいは勾留を継続する必要があるのかが、改めて検討されることになります。

また、勾留理由開示請求によって、裁判官がどのような理由で勾留を認めたのかが明らかになることもあります。
これにより、勾留判断の前提となっている事情が把握され、その後の対応や主張の方向性が定まる場合もあります。

これらの手続はいずれも、自動的に釈放をもたらすものではありませんが、
勾留の前提となっていた事情が十分でない場合や、その後の状況変化が示された場合には、身柄拘束の必要性が再検討され、釈放に至るケースもあります。

痴漢事件で勾留されないことを目指す場合は、万一勾留決定されたときの準抗告をセットで行うことが有力です。弁護士に依頼する場合は、準抗告もセットで行ってくれる弁護士を選ぶようにしたいところです。

示談は勾留判断にどう影響するか

示談が成立した場合、勾留回避や早期釈放につながる可能性は高まります。

示談によって、被害者との間で解決が図られ、接触の必要性がなくなった事情は、証拠隠滅のおそれが低下した事情として評価されやすくなります。
特に、被害者の供述が重要な位置を占める痴漢事件では、示談の成立が勾留判断に与える影響は小さくありません。

もっとも、示談が成立したからといって、必ず勾留が回避されるわけではありません。
ただし、示談が早期に成立していること、被害者との接触可能性が具体的に排除されていることなどが重なることで、勾留を継続する必要性が否定される方向に評価される余地は広がります。

現実的には、勾留が決まるまでの間に示談が成立しているケースはごく少数です。それだけに、早期に示談が成立していれば、勾留しないとの判断に至りやすくなるでしょう。

痴漢事件の勾留に関するよくある質問

痴漢で逮捕されたら必ず勾留されますか

痴漢で逮捕されたからといって、必ず勾留されるわけではありません。

勾留が認められるかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかといった事情をもとに、裁判官が判断します。身元が明確で、生活基盤が安定している場合などには、勾留が認められないこともあります。


痴漢事件の勾留期間は最長で何日ですか

痴漢事件の勾留期間は、原則10日間で、延長が認められた場合はさらに最大10日間となります。

そのため、勾留が続く場合でも、法律上は一定の上限が設けられています。ただし、途中で釈放されるケースもあり、実際の拘束日数は事件ごとに異なります。


否認すると勾留されやすくなりますか

否認していることだけを理由に、必ず勾留されるわけではありません。

もっとも、供述が対立している場合や、被害者への接触が懸念される場合には、証拠隠滅のおそれがあると評価され、勾留が認められやすくなることがあります。


示談が成立すれば勾留は回避できますか

示談が成立しても、必ず勾留が回避されるとは限りません。

ただし、示談によって被害者との接触の必要性がなくなり、証拠隠滅のおそれが低下した事情は、勾留判断において考慮されやすくなります。早期に示談が成立している場合、勾留回避や早期釈放につながる可能性は高まります。


勾留中に家族と面会できますか

家族との面会が認められる場合もありますが、回数や時間、立会いの有無について一定の制約が設けられます。

事件内容や捜査状況によっては、家族との面会自体が認められないこともあります。一方で、弁護人との接見は原則として制限されません。


勾留されると会社や学校に連絡はいきますか

勾留されたことが自動的に会社や学校へ通知されることはありません。

ただし、長期間出勤や登校ができない状況が続くため、結果として家族や弁護人を通じて連絡や対応が必要になるケースがあります。


勾留後に釈放されることはありますか

勾留が決定された後であっても、釈放に至るケースはあります。

勾留の要件が十分でない場合や、その後の状況変化が示された場合には、準抗告や勾留取消請求といった手続を通じて、身柄拘束の必要性が再検討されることがあります。

まとめ|痴漢事件の勾留判断で重要となる視点

痴漢事件における勾留は、逮捕されたからといって当然に認められるものではありません。
裁判官は、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかを、事件内容だけでなく、身元や生活状況、被害者との関係といった具体的事情を踏まえて判断します。

また、勾留が決定された後であっても、その判断が固定されるわけではなく、準抗告や勾留取消請求などを通じて、身柄拘束の必要性が改めて検討される場面があります。
示談の成立や状況の変化が、勾留判断に影響することも少なくありません。

勾留が認められるか、どの程度の期間続くかは、どのような事情が、どの段階で示されるかによって左右されます。
そのため、痴漢事件では、勾留判断の仕組みを正しく理解したうえで、個別事情に即した対応が重要になります。

勾留は逮捕後の一段階にすぎません。痴漢で逮捕された後にどのような分岐があるのか、全体像を押さえておくことが重要です。

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