【犯罪被害の金銭賠償獲得事例】16倍超の増額事例 自身の不貞行為を秘密にする代わりに性行為を強要された犯罪被害者の賠償請求はなぜ成功したか,弁護士が解説

このページでは,実際に犯罪被害者が加害者からの金銭賠償獲得に成功した解決事例を紹介します。
(プライバシー保護のため,結論に影響しない範囲で一部実際の内容と異なる場合があります)

【このページで分かること】
・実際に犯罪被害者が加害者から賠償を受領した事件の内容
・犯罪被害者への金銭賠償に至るための問題点と対応
・弁護士による金銭賠償獲得のポイント

今回は,結婚相談所の紹介で知り合った加害者との間で,第三者との不貞行為を秘密にする代わりに性行為を強要された事件を紹介します。

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事案の概要

被害者は成人女性,加害者は成人男性。
被害者は,結婚相談所で加害者と知り合った。もっとも,被害者には,当時交際中の男性のほか,勤務先の既婚男性との間に不貞関係があった。

加害者は,知り合った当初から被害者に交際相手や不貞相手がいることを知っており(知った経緯は不明),会うなり被害者の不貞行為を秘密にする対価として自分と性行為をするよう求めてきた。被害者が了承しないでいると,不貞関係を被害者の家族や不貞相手の配偶者に伝えるなどと脅迫してきた。
被害者は,渋々加害者の要求に応じることとし,両者の肉体関係は1か月程度に渡った。

その後,被害者は加害者との関係に耐えられなくなり,本件を警察に相談した。警察は,両当事者から事情を聞くなどした結果,加害者の身柄拘束をせずいわゆる在宅捜査を行う方針とした。

警察への相談後,被害者には加害者代理人弁護士を名乗る男性から連絡があった。弁護士からは,示談をしたいとの話であった。
具体的には,同弁護士から,加害者が被害者に30万円を支払うという内容の提案がなされた。また,加害者は翌週に警察での取り調べを控えており,取調べに応じる負担を避けたいため,翌週までに示談を成立させたいとの話があった。

弁護士からの提示を受けた後,被害者が法律相談の上,当職に金銭請求を依頼した。

問題点

①成立する犯罪

加害者は,被害者に対して,脅迫を用いて性行為を強要しているので,本稿執筆時の法律では不同意性交等罪に該当することが見込まれます(なお,当時は刑法改正前のため不同意性交等罪はありませんでした)。

②金銭賠償を獲得する際の問題点

【脅迫行為の客観的証拠に乏しいこと】

本件は,客観的に明らかな出来事だけを並べると,結婚相談所で知り合った男女が継続的に性行為をした,というのみと評価される可能性もありました。つまり,被害者が犯罪被害を受けたと言えるのは,加害者から被害者に対して脅しというべき言動があったからにほかなりませんが,肝心の脅迫行為については客観的な証拠がない状況でした。

しかも,脅迫行為は被害者の弱みを握って行うという悪質なものであり,悪質な脅しによる性行為の継続的な強要であれば,被害者の損害は非常に大きいと考えられます。一方,脅しがなければ単なる男女間の性行為になりかねないため,脅迫行為の存在を前提とできるかどうかは,金銭賠償を獲得するための非常に大きな問題点でした。

【既に在宅捜査が進んでいること】

本件では,既に被害者が警察に事件を相談し,加害者に対する取調べが実施されているという点に特徴がありました。加えて,警察は身柄拘束をしないで在宅捜査で進める方針を表明しており,簡単に言えば警察のやる気があまり感じられない状況でもありました。

このような状況では,加害者が逮捕や刑罰のリスクを低く見積もってしまい,積極的に示談金を支払うモチベーションが低下してしまう可能性が懸念されました。

【非常に低額の金額提示がされていること】

本件においては,被害者が当職に依頼をする前に,加害者の代理人弁護士から30万円の示談金が提示されていましたが,被害者の言い分を前提にするとあまりに低額な金額提示と言わざるを得ないものでした。被害者の弱みを握り,断れない状況に追い込んで何度も性行為を強要した事件であれば,30万円で示談ができると考えることは通常ないと言ってよいでしょう。

また,加害者代理人弁護士は,早期に示談を成立させたいとかなり強気の姿勢を示しています。取調べの負担を免れるために早く示談をしたい,というのは加害者側の都合でしかなく,これを被害者に伝えれば被害者側の感情面には悪影響しかないことが明らかです。加害者代理人がなぜ強気の金額提示や示談を催促する発言をしているのか,図りかねる状況でした。

問題点の解決方法

①【脅迫行為の客観的証拠に乏しいこと】

本件の最大の懸念点は,脅迫行為の有無が争点になった場合に立証が困難である,ということでした。加害者による脅迫行為は口頭でのみ行われており,裏付けになるものがなかったためです。
そのため,加害者が被害者の不貞関係を脅迫の材料にして性行為を求めた,という点は,当事者間で争いのない事実とすることが重要な状況でした。

そこで,こちらが受任した後,加害者代理人弁護士に対して,最初に事実関係の確認を行うことを求めました。具体的には,「被害者の話や客観的証拠からこちらが確認している事実と,加害者の述べる内容が一致すれば,示談を検討する余地がある。一致しないのであれば,被害者は加害者を許すことができないので,刑罰を希望する」という旨の回答を行うことにしました。
加害者側が示談を希望していることは明らかであったため,示談の前提として被害者と言い分が一致する必要があると分かれば,脅迫行為を認める可能性が高いと想定しての動きでした。

その結果,加害者から,代理人弁護士を通じて「被害者の不貞行為を周囲に知らせないことの対価として性行為を求めた」という事実が表明され,その内容を加害者代理人名義の書面に残すことができました。加害者自身が脅迫行為を認めている証拠がある,という点は極めて重要であり,強気な金銭請求が可能な状態を作り出すことに成功したと言えるでしょう。

ポイント
脅迫行為の有無が争点になることを避けるのが適切なケースであった
加害者が脅迫行為を自認するよう促す交渉により,加害者が認めたという証拠を確保した

②【既に在宅捜査が進んでいること】

犯罪被害の示談交渉では,示談すれば捜査を受けなくて済む,という点を加害者の重要なメリットとすることが一般的です。加害者としては,捜査の対象となれば逮捕されるかもしれない,起訴されて刑罰を受けるかもしれない,刑務所に入るかもしれないと考えるからこそ,示談金を積極的に支払って示談で終わらせたいと考えるわけです。

もっとも,本件では警察の消極的な態度が感じられる状況であり,警察は逮捕予定がないことを隠そうともしない対応でした。恐らく,金額交渉の材料として巻き込まれている,と感じていたのだろうと思われます。
そうすると,加害者に高をくくられてしまい,金銭請求の重要な交渉材料が失われる可能性が懸念されました。

ただ,それでも加害者が代理人を通じて示談を申し入れた,という点は注目すべきところでした。つまり,加害者は示談を目指す積極的な必要を感じているということであり,そこには逮捕の可能性を避ける必要も含まれていることが想像されます。

そこで,警察の対応に不満を抱いていた被害者の心情も踏まえ,こちらから警察へ告訴を行うとともに,被害者は加害者の逮捕を希望していることを明確に表明する手段を取ることにしました。
実際に逮捕されるかどうかは警察の判断次第ですが,「被害者は告訴した上で加害者の逮捕まで希望している」と加害者に伝わる形を取ることによって,加害者に高をくくられず,逆に危機感をもって示談交渉に臨ませることを目指しました

ポイント
被害者が本気で加害者の逮捕や刑事処罰を求めているのであれば,それを行動に移すことも有力

③【非常に低額の金額提示がされていること】

本件で加害者の代理人弁護士が被害者に提示した示談金額30万円は,被害者の弱みを握って何度も性行為を求めた事件の示談金としてはあまりに低額でしたが,その理由は大きく分けて以下の3つの可能性が考えられました。

低額な金額提示の理由として考えられるもの

1.事実関係の認識が食い違っており,争いがある
→加害者の主張する事実関係を踏まえれば,30万円という金額も合理的であるという場合

2.示談不成立でも構わないと考えている
→30万円が不合理な金額であることは承知の上だが,その金額で示談できないならば無理に示談は望まない,という場合

3.本件の適正な賠償額だと考えている
→言い分が食い違ってもおらず,示談を希望する意思はあるが,本件の適正な賠償金額が30万円であると考えている(=適正な賠償額が分かっていない)場合

この点,上記の通り,事実関係の認識に相違がないことは早期に確認できたため,「1.事実関係の認識が食い違っており,争いがある」場合でないことが分かりました。また,被害者に代理人弁護士が入って30万円での合意の可能性がないと告げられた後にも,示談交渉を継続する姿勢が見られたため,「2.示談不成立でも構わないと考えている」場合でもないことが分かりました。
そのため,加害者の代理人弁護士は,30万円を「3.本件の適正な賠償額だと考えている」ということになります。これは,3つの可能性の中でも被害者にとって最も有益なケースと言ってよいものでした。なぜなら,加害者が希望する示談を成立させるためには,30万円が適正な賠償額であるという理解を改める以外に方法がないからです。

以上を踏まえ,こちらからは適正額に関する複数の根拠を示し,当方の理解する適正額からは一切譲歩する意思がないことを明確にして,加害者側の再考を促しました。加害者代理人弁護士の理解度が低いことを踏まえ,より強気の姿勢を示すことで,有利な条件を引き出そうとしたのが奏功したと考えられます。

なお,今回の加害者代理人弁護士は,本件のような事件に対する経験値に乏しい弁護士であったようでした。弁護士にも専門分野があるため,弁護士であるからといって,全ての法的問題について適正な判断ができるわけではない,ということには注意が必要です。本件はそのいい例であったかもしれません。

ポイント 低い金額提示の理由
1.事実関係に争いがある(相手の言い分に従えば適正額)
2.示談成立を強く希望していない(高額になるくらいなら不成立でよいと考えている)
3.本心で適正額だと考えている(適正額の判断を誤っている)

結果

加害者代理人弁護士との間で,加害者から被害者へ500万円の金銭賠償を支払う内容にて示談が成立し,無事同額を受領しました。
最初の提示が30万円であったため,比較すると16倍を超える増額となりました。

弁護士によるコメント

本件は,被害者自身の不貞行為がきっかけであったため,被害者から周囲に相談しづらく,継続的な性行為がなされていました。その後,必死の思いで警察に相談したとのことでしたが,そのおかげで示談交渉が開始することになったのは,被害者にとって幸運だったかもしれません。

示談交渉としては,事実関係に争いがないことを早期にはっきりさせられた点が非常に有益であったと考えられます。事実関係に争いがなければ,加害者が金銭を支払うことは明らかであり,後は金額の話のみになるため,優位な金額交渉が約束される状況になります。
事実関係に争いが生じると立証が難しい,というウィークポイントを相手が知らないうちに,交渉によってそのウィークポイントを消すことができた時点で,増額示談はほぼ見通せる事件になっていたと言えるでしょう。

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【犯罪被害の金銭賠償獲得事例】10日以内に300万円の賠償獲得 多量の飲酒をさせられ,ホテルに同行後性交に至った被害者未成年の事件

このページでは,実際に犯罪被害者が加害者からの金銭賠償獲得に成功した解決事例を紹介します。
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【このページで分かること】
・実際に犯罪被害者が加害者から賠償を受領した事件の内容
・犯罪被害者への金銭賠償に至るための問題点と対応
・弁護士による金銭賠償獲得のポイント

今回は,クラブで大量の飲酒を求められ,その後に性行為を強要された未成年女性の事件を紹介します。

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事案の概要

被害者は当時未成年の女性。加害者は芸能活動を行っている成人男性。
被害者は,芸能人である加害者のことを知っていたが,友人から加害者が近所のクラブでイベントを予定していることを知らされ,友人に誘われてイベントに参加しに行った。

現地のクラブでは,加害者らのトークイベント等が行われ,被害者はイベントを見た後,同クラブ内で飲食を楽しんでいた。
その後,友人の一人がクラブ関係者と知り合いであったこともあり,加害者らが飲食をしているVIP席で同席できるとの話を持ち掛けられ,友人とともにVIP席へ向かうことにした。

VIP席では,加害者や芸能関係者と同席の上,飲食や会話をしていたが,加害者は,酒に弱いと口実をつけて,自身が注文した酒を未成年者である被害者に飲ませた。被害者は,加害者の求めに応じてシャンパンなどを飲み,卓全体でボトル2~3本ほどを消費した。
また,被害者は,加害者の翌朝の予定が早いため,起こして欲しいと加害者から依頼されたため,やむを得ず連絡先を交換するとともに,加害者のために目覚まし時計のアラームをセットすることにした。

その後,加害者は被害者に介抱を依頼するため宿泊先への同行を求めてきた。被害者はこれに応じて,ホテルの客室まで加害者を介抱しながら同行し,約束通り目覚まし時計のアラームを設定した後,部屋を去ろうとした。しかしながら,加害者は被害者の退室を阻止した上で,性行為に及んだ。
被害者は,泥酔に近い状態であったため,行為の詳細は記憶できなかったが,避妊具を使用していなかったことと,膣内射精を提案されたことは断片的に記憶していた。結果的に膣内射精はしていないようであった。

事件から約1年間,被害者は家族や交際相手に打ち明けられずにいた。弁護士への依頼直前に,加害者から再度一緒に飲みたいという趣旨の連絡があった。

問題点

①成立する犯罪

被害者を泥酔状態にさせた上で,被害者が拒絶できない状態を利用して性行為に及んだことが見込まれるため,当時の強姦罪または準強姦罪(現在の不同意性交等罪)に該当することが考えられます。

②金銭賠償を獲得する際の問題点

【加害者は合意の上での性交だと考えている可能性】

加害者は,イベント地のクラブで意気投合した女性と合意の上で性行為に至った,と考えている可能性が高い状況でした。
被害者が弁護士への問い合わせをしてから依頼をするまでの間に,たまたま加害者から被害者に連絡がありましたが,その内容は再度一緒に飲みたいと飲食に誘うものでした。加害者の連絡は,いわゆるセックスフレンドに会おうとしているように思われる内容でしたが,友好な関係を保っていると確信していなければ送るはずのないものでしょう。
良好な間柄であるはずの相手から,代理人弁護士を通じて金銭賠償を請求された場合,加害者からの反発,反論は容易に想像されるため,あらかじめ想定する必要がありました。

【事件から1年以上が経過している点】

被害者が弁護士に相談をした段階で,すでに事件から1年以上が経過していたため,事件の内容を裏付ける客観的な証拠を獲得する手段は全くない状態でした。幸い,イベントが行われた事実や,被害者と加害者が一緒に飲食していた事実は,当時の撮影画像から分かるという程度でした。

そのため,そもそもホテルへ同行した事実があるか,ホテルの客室内で性行為がなされた事実はあるか,という点が問題になると,立証に窮することが想像されました。

【被害者が未成年である点】

被害者は未成年でしたが,被害者が法律行為をするためには原則として親権者の同意が必要となります。そのため,本来的には親権者の方に事情を打ち明け,加害者への金銭請求をご了承いただくことが適切です。
しかしながら,被害者は本件が周囲の人に発覚するのを希望していませんでした。事件当時から交際を継続している異性もおり,その存在は親権者も把握しているため,本件の内容が伝わることで関係に亀裂が生じることを懸念していました。

問題点の解決方法

①【加害者は合意の上での性交だと考えている可能性】

被害者は,自分の意思で加害者と性交をした事実は決してないと断言しており,その意思を尊重した方針を取ることが適切と判断しました。具体的には,加害者がどんな反論をしようと,こちらは被害者であるというスタンスを改める意思が全くないと一貫して述べ続けることにしました。

合意があったかなかったかという点は,当事者間で言い分の異なる争点ですが,被害者が加害者に金銭請求する際,争点について加害者と意見を交わす必要はありません。相手を説き伏せることも,相手の言い分が適切か判断することも,金銭請求や金額交渉には必要のないことです。
「言い分が違っても構わない。言い分を理由に応じないのであればこちらは公の場で争うのみである」という態度を明確にすることで,加害者に争うリスクを理解させる方針を選択しました。

もちろん,争点について譲歩する姿勢を見せない方針は,相手が納得しない場合に示談不成立となるリスクを背負うものではあります。しかしながら,本件では,相手が芸能活動を行う人物であることを踏まえ,争うリスクは相手の方が高い状況であると理解し,上記の方針としました。

ポイント
加害者は合意があったと考えている場合,金銭請求に応じてこないことはあり得る
合意の有無が争点化するリスクを加害者に理解させることで,争点化を防ぐ方針を取った
加害者が芸能活動をしている点は,争うリスクを感じやすい要素であった

②【事件から1年以上が経過している点】

合意の有無よりも,争点化した場合により問題が大きくなるのは,そもそも性行為があったのか,という点でした。事件から1年以上が経過している状況では,性行為があったことを裏付ける客観的な証拠を提示することは不可能と言わざるを得ません。そのため,性行為があったかどうかを争点とすることは防ぐ必要がありました

そこで,弁護士の方では,加害者から被害者への連絡に乗じる形で迅速に加害者へ連絡を取り,その言質を得る方針を取ることにしました。加害者からの連絡に弁護士を名乗って返答し,速やかな電話連絡の機会を求めました。そして,電話連絡の際には,あえて合意の有無が唯一の争点であることを前提にすることで,性行為があったかどうかを争点とする余地を与えないやり取りを目指しました。

その結果,加害者は,合意があったと主張する目的で,性行為の存在を前提とした発言を繰り返したため,通話内容を録音することで,性行為の事実を争わない加害者の発言を記録化することに成功しました。

ポイント
性行為の有無自体が争点になると立証に窮する
加害者の言質を取ることが有効な解決策
合意の有無だけを争点とすることで,性行為の有無を争わない発言を引き出した

③【被害者が未成年である点】

被害者が未成年であることは,弁護士にとっては依頼者が未成年者であることを意味します。未成年者との契約は,後から反故にされてしまうリスクがあるため,弁護士目線では慎重な判断を要する問題です。

この点,弁護士の方では,まず徹底した聴き取りや打ち合わせを通じて依頼者との間で互いに信頼できる関係の構築を目指しました。弁護士側はもちろん,依頼者側も弁護士を信頼できると考えることによって,契約リスクは最小限にとどまると判断しました。
また,弁護士の採用する方針をできる限り詳細に説明することで,被害者が希望する結果を獲得するためには弁護士の助力が不可欠であると考えてもらうことを目指しました。

ポイント
弁護士と被害者の契約は,相互の十分な信頼関係の上で取り交わす

結果

加害者との間で,加害者から被害者へ300万円の金銭賠償を支払う内容にて示談が成立。無事同額を受領するに至りました。
活動開始から金銭の受領まで数日というスピード解決でした。

弁護士によるコメント

本件は,加害者の立場が芸能活動を行っているという点で特徴的であり,一方で事件発生から長期間が経過しているという難点もありました。また,依頼者が未成年者であったため,その点への法的な配慮も必要になり得るケースでした。

加害者が芸能活動をしている事実は,多くの場合,事件が公になるデメリットの大きさを推測させます。本件のような立場の加害者は,示談成立の意欲を強く持つケースが多いでしょう。それだけに,被害者代理人としては強気な金銭請求を検討したいところです。

一方,本件の場合,加害者は明らかに被害者側も同意していたものと誤解している状況でした。合意していない可能性があれば,1年越しに被害者を飲みに誘うことは考えにくいためです。また,飲みに誘っていることを踏まえると,被害者が未成年者であることも把握していないことが容易に想像されました(被害者は,未成年者であることを隠してクラブに入店しているようでした)。

以上を踏まえると,被害者の立場として強気の金銭請求が有力であるのと同時に,加害者にも争う要素があり得るため,バランスを保ちながらの交渉が重要な事件でした。また,スピーディーな進行により加害者側に熟慮の機会を与えず,合理的な水準での示談を実現することによって,被害者には早期に十分な賠償がなされるに至りました。

ポイント
加害者の芸能活動は強気に金銭請求をしたい要素
事件発生から期間が経過しているため,証拠に乏しい点は不利な要素
加害者は被害者の同意があったものと明らかに誤解していた
素早く合理的な金額水準で合意することにより,双方のバランスを保った解決に至った

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【告訴受理解決事例】SNSで知り合った後,ラブホテルへ同行させられた事件の場合 事件の特徴を踏まえた対応方法を解説

このページでは,実際に告訴の受理に至った解決事例を紹介します。
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【このページで分かること】
・実際に告訴受理がなされた事件の内容
・告訴受理に至るための問題点と弁護士の対応
・弁護士による告訴受理のポイント

今回紹介するのは,SNSで知り合い,実際に会うことになった異性から強引に性的関係を求められた事件です。

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事案の概要

SNS上のいわゆるマッチングアプリで知り合った男女の間での事件。被害者は成人女性,加害者は成人男性。

SNSでチャットによるやり取りをした後,一度実際に会うこととなった。被害者の自宅近所に加害者が車で訪れ,近所の飲食店で食事をする予定であった。
当日,予定通りに食事をしたところ,加害者から引き続き一緒にいることを提案され,被害者は了承した。加害者の提案で,加害者の車に同乗し,運転されるがままに移動した。その後,飲食店及び被害者方から相当程度距離のあるラブホテルに駐車され,加害者からラブホテルへの同行を促された。被害者は,自力で帰宅する手段もなく,断ることで加害者に激高されることを防ぐため,応じることにした。

ホテルの客室内では,加害者からキスを迫られたり,乳房を揉まれたりした。被害者は,「まだ早い」「今日はちょっと」などと言ってその場を穏やかにやり過ごそうとしたが,加害者が性的行為をやめることはしなかった。
被害者が加害者から受けた主な行為は,キスされる,乳房を手で触られる,加害者の性器を手で触らされる,といったものであった。被害者は,加害者が性交(性器の挿入行為)を要求するつもりであると理解したため,「(挿入行為は)今回はやめよう」と伝え,挿入に至ることは防いだ

その後,当事者間で若干の会話などをした上で,加害者の車でホテルを出発。被害者方の近所まで移動し,被害者が下車して解散した。

法的問題点

①成立する犯罪

加害者は,被害者の同意なくキスをする,乳房を触る,自分の性器を触らせるといったわいせつ行為に及んでおり,不同意わいせつ罪が成立すると考えられます。

②犯罪の成否に関する問題点

【意思表明が困難な状態にさせられていたか】

不同意わいせつ罪の成立には,一定の事由によって,被害者が「同意しない意思を形成し,表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあること」が必要とされています。このような状態に乗じてわいせつな行為をした場合に,不同意わいせつ罪が成立します。
本件では,食事の後に両者が合意の上で車での移動をしているため,意思表明が困難な状態にさせていたと言えるのか,問題となり得ます。

【同意の有無】

被害者が加害者と一緒にラブホテルへ入り,客室内では加害者の性的な行為に明確な拒絶を見せなかったため,被害者が加害者との性的行為に同意していたのではないか,との問題が生じる可能性はあります。特に,ラブホテルが性的行為を行うために入る施設である点は,両者合意の上での性的行為であったことの根拠になる,との見解も考えられます。

【加害者の故意の有無】

加害者に不同意わいせつ罪が成立するためには,加害者の故意が必要ですが,その内容は「被害者が同意をしていないと認識しているか,同意していなくても構わないと考えていた場合」と整理することができます。そのため加害者目線では,被害者が同意をしているはずだと認識していた場合,犯罪の故意がないとの判断になる可能性が考えられます。

問題点の解決方法

①【意思表明が困難な状態にさせられていたか】

この問題点については,大きく2つのステップに関する検討を要します。具体的には以下の通りです。

意思表明が困難な状態にさせられていたかを検討するステップ
1.意思表明を困難にする事由があるか
2.意思表明が困難な状態になっていたか

まず,意思表明を困難にする事由は,不同意わいせつ罪を定める刑法に列挙されており,そのいずれかに該当する必要があります。具体的な内容は以下の通りです。

意思表明を困難にする事由
①暴行・脅迫
②心身の障害
③アルコール・薬物の摂取
④睡眠その他意識不明瞭
⑤同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがない
⑥予想と異なる事態に直面した恐怖・驚愕
⑦虐待に起因する心理的反応
⑧経済的・社会的影響力による不利益の憂慮

本件では,食事の後,行先も知らないまま加害者の運転する車に同乗し,予期しないままラブホテルに到着した,という経緯があるため,「⑥予想と異なる事態に直面した恐怖・驚愕」に該当することが見込まれます。この要件の具体的内容は,以下のように説明されます。

「⑥予想と異なる事態に直面した恐怖・驚愕」とは
いわゆるフリーズの状態、つまり、予想外の又は予想を超える事態に直面したことから、自分の身に危害が加わると考え、極度に不安になったり、強く動揺して平静を失った状態をいいます。

次に,意思表明が困難な状態になっていたか,という点については,少なくとも告訴受理の段階では,意思表明困難という被害者の供述に一定の合理性があれば足りるでしょう。明らかに犯罪が成立しない場合でない限り,告訴の受理を拒むのは法的に問題があるため,被害者の言い分が明らかにおかしい内容でなければ差し支えないと言えます。

ポイント
予想外の事態で意思表明が困難な状況にあった
実際に意思表明が困難であった,との主張は一定の合理性があれば足りる

②【同意の有無】

同意の有無との関係では,同意があった可能性をうかがわせる事情について,その合理的な理由を一つ一つ指摘していくことが肝要です。

本件では,被害者が自らの意思で加害者の車に乗り,一緒にラブホテルへ向かったという点が,被害者の同意の存在を推測させる事情になる可能性が考えられます。一緒にラブホテルへ行くということは,性行為をするつもりであったのではないか,ということです。
もっとも,被害者は行き先を把握しないまま加害者の車に同乗しただけであって,ラブホテルへの同行に同意したというわけではありませんでした。そのため,一緒にラブホテルへ行ったというのは,被害者の意思でそうなったわけではなく,行先がラブホテルであることを加害者から隠されていたからということになります。この場合,結果的に被害者が加害者とともにラブホテルへ移動したとしても,それによって同意があると断じるわけにはいかないでしょう。

また,両者が実際に会うまでのSNS上でのやり取りに,会った際に性行為をする気持ちがあることが見受けられる事情が全くありませんでした。事前に性行為を予定して会う場合には,SNS上で性行為に関するやり取りをしていることがほとんどですが,それが見られなかったという点は被害者に同意がなかったことの根拠になり得る事情と言えます。

以上を踏まえ,被害者が同意をしていなかった可能性が十分あると理解されたことにより,告訴受理が実現したと考えられます。

ポイント
一緒にラブホテルへ行ったことは,同意があったことの根拠になる場合もある
本件の被害者はラブホテルへ行くとは思っていなかった可能性があるため,同意があったとは判断できない

③【加害者の故意の有無】

加害者の目線では,ラブホテルに行こうと思って車に乗ることを提案したところ被害者が応じ,ラブホテルに到着した後も被害者がその場を去るなどしなかったことから,被害者が同意しているものと誤解した可能性があるか,問題になり得るところです。

この点,以下のような事情が見受けられます。

・移動前
加害者は事前にラブホテルへ行くつもりであることを告げていないため,被害者がラブホテルへの同行を承諾していない可能性は十分に把握できたはずです。

・到着後
被害者方から距離のあるラブホテルへ連れて行ったのは,被害者に断りづらい状況を作る意味があった可能性があり,被害者が断れなかったからといって加害者が誤解するとは限りません。

・客室内
被害者はキスされたり乳房を触られたりすることを嫌がっており,少なくともその時点で被害者に同意がないと分かった可能性があるはずです。

以上を踏まえると,加害者に故意があった可能性も十分にあり得る内容と考えるべきであって,加害者の故意が認めづらいことを理由に告訴受理を拒むことは不合理と言えます。

結果

警察に告訴が受理された結果,加害者に対する捜査が実施されるに至りました。

弁護士によるコメント

マッチングアプリで知り合った男女の場合,性行為を前提に会うケースも少なくないため,被害者の希望する告訴が適切な告訴なのか,犯罪の問題でなく当事者間の感情的なトラブルに過ぎないのか,という点は慎重な判断になりやすいところです。
特に本件では,ラブホテルに同行しているという事情があり,ホテル内でケンカをしただけである場合との区別も必要だったと思われます。

この点,事前に性行為を想定したやり取りがなかったこと,当日も被害者がラブホテルに移動するとは思っていなかった可能性があること,客室内でも嫌がる動きを見せ,結局性交(=性器の挿入行為)に至らなかったことなど,犯罪である可能性を示す根拠を積み上げることによって,告訴の受理に至ったと考えられます。

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【告訴受理解決事例】職場の飲み会後,車内で性的被害に遭った事件の場合 法的問題点や解決方法を弁護士が解説

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【このページで分かること】
・実際に告訴受理がなされた事件の内容
・告訴受理に至るための問題点と対応
・弁護士による告訴受理のポイント

今回ご紹介するのは,車内で勤務先の異性からわいせつ被害に遭った事件です。

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事案の概要

職場の関係者で行われた飲み会の後,会社の先輩に当たる加害者から性的行為の被害を受けた事件。被害者は成人女性,加害者は成人男性。

被害者及び加害者を含む多数人での飲食後,少人数での二次会に移るなどしながら,被害者と加害者両名が同席しての飲食を継続していた。
最後の飲食の後,被害者と加害者は業務用ワゴン車内で休憩することにし,被害者が後部座席,加害者が前部座席でそれぞれ仮眠を取った。

仮眠中,前部座席にいた加害者が後部座席に移り,被害者にキスを迫る,身体を触るなどの行為をし始めた。被害者は,突然のことに抵抗できず,加害者のなすがままにされていた。
その後,加害者の行為がエスカレートし,抵抗しない被害者の女性器に手指を挿入してきた。被害者は,被害の拡大を避けるため,やむを得ず拒絶しなかった。

法的問題点

①成立する犯罪

被害者の同意なく性的な行為をすることは,不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪の対象となる可能性が考えられます。一般的に,不同意わいせつ罪よりも不同意性交等罪の方が重大事件であり,重い刑罰の対象になることが見込まれます。

この点,女性器に手指を挿入する行為は,不同意性交等罪が成立要件である「性交等」に該当するため,本件は不同意性交等罪に該当することが考えられます。

②犯罪の成否に関する問題点

【「性交等」の有無】

加害者が被害者に行ったとされる各行為については,客観的な証拠がなく,被害者の供述のみがほぼ唯一の証拠となることが見込まれる状況であったため,被害者の主張する「性交等」が本当に存在したのか,問題となる可能性が考えられます。

【同意の有無】

被害者が加害者の行為に対して抵抗しなかったため,被害者が性交等について同意していたのではないか,という問題意識が出てくる可能性が考えられます。女性器への手指の挿入にも抵抗することなく応じている点は,被害者が同意していないと起きない出来事ではないか,との見解が生じ得ると考えられます。

【加害者の故意の有無】

加害者に不同意性交罪が成立するためには,加害者の故意が必要ですが,その内容は「被害者が同意をしていないと認識しているか,同意していなくても構わないと考えていた場合」と整理することができます。そのため加害者目線では,被害者が同意をしているはずだと認識していた場合,犯罪の故意がないとの判断になる可能性が考えられます。

特に,加害者に故意があったかどうかは被害者の供述だけでは分からないことも多く,被害者の言い分を根拠に犯罪の成立を認められるかどうかは非常に難しい問題になり得ます。

問題点の解決方法

①【「性交等」の有無】

「性交等」の有無は,どうしても被害者の供述を根拠とせざるを得ません。もっとも,告訴受理のためには,被害者の供述内容が存在したと立証することは必要なく,その存在が疑われる状況にあれば十分と言えます。なぜなら,実際に立証できるかどうかは,まさに告訴を受理した後捜査すべき事柄であるためです。
そのため,被害者側としては,明らかに犯罪事実(=性交等)がないという判断は不適切である,ということができれば足り,そのために対応を尽くすべきということになります。

この点の解決は,事件の内容に関する被害者の供述を,できる限り具体的に,かつ詳細にするのが非常に有効です。その結果,被害者の供述内容が真実であっても全く違和感はないと捜査機関に納得してもらえれば,告訴の受理ができないという判断にはなりづらいでしょう。

本件では,前部座席にいた加害者が後部座席に移動してきてから,一方的にキスを迫り始め,やがて行為がエスカレートし,最終的には手指の挿入まで至った,という一連の経緯について,具体的かつ詳細に説明をすることで,捜査機関の理解を得ることができました。そのような臨場感あふれる供述は,体験をした人物でなければできない可能性が十分にある,と評価された結果であると考えられます。

ポイント
性交等の根拠は被害者の供述のみにならざるを得ない
被害者の供述が真実である可能性が一定程度あれば足りる
詳細かつ具体的で,体験しなければ供述できない内容であることにより解決

②【同意の有無】

同意の有無との関係では,同意があった可能性をうかがわせる事情について,その合理的な理由を一つ一つ指摘していくことが肝要です。

本件では,被害者が特に抵抗する様子を見せなかった,という点が,被害者の同意の有無について疑問の生じ得る要素になり得ます。同意をする意思がないのであれば,最初から抵抗しているはずではないか,ということですね。
もっとも,抵抗をしなかった理由は,必ずしも同意していたからというのみではありません。実際,本件の被害者としては,男女の力の差を踏まえると,逃げ場のない車内で無闇に抵抗する方がより大きな被害を受ける可能性があると考えてのことでした。
告訴の受理に際しては,同意していなかったという被害者の主張が明らかに不合理でなければ足りるところです。事件当時の流れや被害者の挙動を踏まえて,確かに大きな被害を避ける目的でやむを得ず抵抗しなかった可能性もある,という理解をしてもらえた点が,告訴の受理につながったと考えられます。

また,密室内での行為については,自らの意思で密室まで同行したという事実が,被害者の同意を裏付ける事情と評価される可能性がありますが,本件では現場となった車内に被害者と加害者以外の人物もおり,決して二人きりの密室に同行したわけではない,という点も評価の対象になったことが考えられます。

ポイント
同意があった可能性をうかがわせる事情について,実際の理由を理解してもらえるかが問題
抵抗をしなかったのは同意していたからではない,と十分に説明することが肝要
密室での行為の場合,密室内に他の人物もいた点は評価の対象になる

③【加害者の故意の有無】

加害者に故意があったかなかったかは,被害者には確実な主張立証が困難なところです。
もっとも,そもそも加害者の故意を被害者が立証する必要はなく,立証できるかどうかは捜査の結果判断されるべき事柄です。最終的に故意が立証できることすらも必要ありません。
告訴は,犯罪の立証を捜査機関に求める手続であるため,犯罪の合理的な疑いが存在すれば足りるでしょう。

本件では,確かに加害者に故意がない(=被害者が同意していると誤解していた)可能性はありますが,故意がある(=被害者が同意していないこと,又はその可能性を認識していた)可能性も十分にあり得ます。犯罪の疑いとしては,その可能性が合理的に認められれば十分です。
したがって,加害者に故意があったかどうかという点は,本来,告訴の受理に影響を及ぼすべきでないと考えるのが適切でしょう。

ただし,被害者が積極的に加害者を誤解させる行動を取った場合など,明らかに加害者が誤解しているであろう場合には,告訴の受理に問題の生じることが考えられます。本件ではそのような事情のないことを確認の上,告訴の受理に至ったものと考えられます。

ポイント
故意があったことが立証できる必要はない
故意があった可能性があれば足りる
被害者が積極的に加害者を誤解させた事実がない,という点は必要

結果

警察に告訴が受理された結果,加害者に対する捜査が実施されるに至りました。

弁護士によるコメント

本件では,職場の関係者という交友関係を持つ間柄での事件であったため,単なる交際関係のトラブルなのか,犯罪に当たる事件なのか,という点は問題になり得るところでした。
この点,被害者と加害者の間には職場の先輩後輩という以上の深い関係はなく,男女関係のもつれに警察を巻き込もうとした事件ではないと理解してもらうに至ったことが,円滑な告訴の受理につながりました。

また,従前から加害者が被害者に一方的な好意を寄せていた可能性をうかがわせる事情も多数あり,その事情を具体的に積み上げることで,加害者が自身の性的欲求を被害者にぶつけた事件であるという全体像を明確にできた点も,非常に有益なポイントであったと言えるでしょう。

密室内での性犯罪は,客観的な証拠に乏しい場合が非常に多いため,告訴受理の上で捜査に踏み切ってもらうことに一定のハードルが生じやすい傾向にありますが,弁護士とともに適切な対応を尽くすことで,被害者の方の負担をできるだけ軽減しながら告訴受理を実現することが容易になるでしょう。

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検察審査会とは何をするところ?誰が審査しているの?審査の方法や結果はどうなる?弁護士が全て網羅

●加害者が不起訴処分になったことが納得できない

●検察審査会とは何か?

●検察審査会に動いてもらうにはどうすればいいか?

●検察審査会は何をするのか?


というお悩みはありませんか?

このページでは,不起訴処分に関する検察審査会への申立てについて知りたい方に向けて、検察審査会の制度内容や利用方法などを解説します。

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検察審査会とは

①制度概要

検察審査会制度は,日本の司法制度の一環であり,市民が検察官の不起訴処分(起訴しない判断)を審査する仕組みです。この制度は、検察の判断が適正かどうかを市民の視点から確認し,検察の公正性と透明性を確保するために設けられています。

検察審査会は,選挙権を有する国民から選ばれた11人の検察審査員と補充員で構成されます。審査員は無作為に選ばれており,一定期間ごとに交替します。

②制度趣旨

刑事事件で起訴をするかどうか判断するのは,検察官の専権というのが法律のルールです。
そのため,検察官の判断で不起訴処分とされる事件は多数見られますが,その中には国民の素朴な感覚では起訴すべきではないかと感じられる事件も一定数見られるところです。

検察審査会制度は,不起訴処分が国民の視点でも適切であるかを審査・判断することで,検察官の不起訴処分が適正になされているかチェックするべく設けられているものです。

審査を開始する場合

審査の開始は,申立て又は職権で行われます。

【申立て】
被害者や告訴人,告発人などの申し立てを受けて審査を始めることがあります。
申立てに際しては,その内容を記載した書面の提出が必要です。また,書面の提出に際しては,理由を明示するとともに,根拠となる資料の提出を行うことが一般的です。

検察審査会では,それらの申立書面を踏まえ,審査を開始します。

【職権】
検察審査員が新聞記事などを通じて把握した不起訴処分について,適正であるか疑問を持った場合など,検察審査会が自らの判断で審査を開始することがあります。

審査の方法

検察庁から記録を取り寄せた上で,その内容を吟味し,国民の目線で審査します。
もっとも,法律的な問題点を把握するのは容易でないため,審査補助員となる弁護士の助言を求めながら審査を行うことが可能です。

審査は非公開で行われており,心理的負担なく自由に意見できるための配慮がなされています。

検察審査会の議決 3つの種類

検察審査会が不起訴処分の審査を行った結果,以下の3種類のうちいずれかの議決をします。

①起訴相当
②不起訴不当
③不起訴相当

①起訴相当
起訴すべきである,という結論です。この場合,検察官は事件を再度捜査し,起訴不起訴の判断を改めて行う必要が生じます。

②不起訴不当
現在の証拠関係のみで不起訴と断じるのは不適切であり,さらに詳細な捜査を尽くすべきである,という結論です。この場合にも,検察官は再度事件を捜査した上で,起訴不起訴の判断を改めて行う必要が生じます。

③不起訴相当
不起訴処分が適切である,という結論です。この場合,検察審査会の議決を持って手続が終了します。

検察審査会の二度目の審査(第二段階)

検察審査会が起訴相当の議決をしたにもかかわらず,それでも検察官が不起訴処分とした場合には,検察審査会での二度目の審査が行われます。
二度目の審査で行われる議決は,以下の二種類のいずれかです。

①起訴議決
起訴をすべきである,という結論です。この場合,強制的に事件が起訴されることになります。
この時の起訴は,「指定弁護士」という特定の弁護士が検察官役を務めます

②起訴議決なし
起訴すべきであるとは結論付けない場合です。不起訴処分のまま手続が終了します。

なお,不起訴不当の場合にも,検察官は再度捜査と処分をしますが,不起訴不当の議決に対して再度不起訴にした場合には,二度目の審査は行われず,手続は終了します。

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

刑事事件で起訴するかどうかは、検察官だけに判断権限がある、というのが大原則ですが、検察審査会は検察の判断が不適切な場合に用意された被害者のための制度です。
加害者の不起訴処分に納得ができない場合は、検察審査会への申し立てを検討されるのも一案でしょう。

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被害者参加ができる事件は?被害者参加でできる具体的な内容は?被害者参加すると加害者に遭わなければならない?弁護士が疑問を徹底解決

●被害者参加制度とは何か?

●被害者参加ができる事件は?できる人は?

●被害者参加は何ができるのか?

●被害者参加しても刑罰は変わらないのか?

●被害者参加者の負担を軽減する制度はあるか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,犯罪被害の被害者参加制度を知りたい方に向けて,被害者参加制度の内容や特徴刑罰の影響などについて解説します。

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被害者参加制度とは

被害者参加制度とは,犯罪の被害者やその遺族が刑事裁判に参加し,自らの意見を表明し,裁判の過程に関与することができる制度です。これは,被害者の権利や感情を尊重し,司法制度における被害者の位置づけを強化するための措置として設けられているものです。

被害者は,通常の刑事訴訟においては,その進行を傍聴席で見守るほかなく,被害者側が意見を述べたり裁判手続に関与したりする余地はありませんでした。その結果,刑事訴訟の判決に被害者側の心情が十分に反映されない場合があるとの懸念が指摘されていました。
そのような問題意識から,2008年に新しく開始された被害者配慮のための制度が,この被害者参加制度です。

被害者参加制度の内容 ①対象事件

被害者参加制度の対象となる事件は,被害者に相当な損害が発生している一定の重大事件に限定されています。具体的には以下の通りです。

被害者参加制度の対象事件

①故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
(例)殺人罪,傷害罪,傷害致死罪,強盗致死傷罪,不同意性交等致死傷罪など

②一定の重大な性犯罪
=不同意わいせつ罪,不同意性交罪,監護者わいせつ罪,監護者性交等罪

③業務上過失致死傷罪

④逮捕罪・監禁罪

⑤略取・誘拐・人身売買の罪
=未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐,身の代金目的略取等,所在国外移送目的略取及び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送,被略取者引渡し等の罪

⑥犯罪行為に②~⑤の犯罪行為を含む罪
(例)強盗不同意性交等罪など

⑦上記①~⑥の未遂罪(未遂罪の処罰規定があるもののみ)

⑧自動車事故に関する罪(※)
=過失運転致傷罪,過失運転致死罪,過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(これらを無免許運転で行った場合を含む)

※危険運転致死傷は,危険運転が故意の犯罪行為であるため,①により被害者参加制度の対象となる

被害者参加制度の内容 ②参加できる人

被害者参加ができる人は,被害者やその遺族と,依頼を受けた弁護士といった範囲に限定されます。具体的な内容は以下の通りです。

被害者参加ができる人(被害者参加人)

①被害者
②(被害者死亡又は心身に重大な故障がある場合)配偶者,直系親族,兄弟姉妹
③被害者の法定代理人(親権者・成年後見人等)
④上記①~③の人から委託を受けた弁護士

被害者参加制度の内容 ③参加する方法

被害者参加制度を利用を希望する場合,被害者参加人は検察官を通じてその意思を表明することになります。具体的な流れは以下の通りです。

参加申出 検察官に対して被害者参加をしたい旨申し出る
裁判所への通知 検察官が裁判所に申出のあった事実を通知する
被告人側の意見 裁判所が被告人及び弁護人の意見を確認する
裁判所の決定 被害者参加を認めるかどうか裁判所が決定する

現実的には,検察官から被害者側に必要な説明がなされ,検察の方から意向を確認される場合が大多数でしょう。被害者側が自分たちから積極的に参加の意思を表明しなければ機会を逃す,ということは考えにくいところです。

裁判所の判断基準
・犯罪の性質
・被告人との関係
・その他の事情
→上記を考慮して相当と認めるときは,参加を認める

もっとも,対象事件の被害者参加人に当たる人物であれば,通常は参加が認められます。

被害者参加制度の内容 ④参加時にできること

被害者参加人が刑事訴訟の際にできることは,以下の通りです。

被害者参加のときにできること
裁判に出席する(刑事訴訟法316条の34)
検察官の権限の行使に関して意見を述べる(刑事訴訟法316条の35)
証人尋問を行う(刑事訴訟法316条の36)
被告人質問を行う(刑事訴訟法316条の37)
事実又は法律の適用について意見を陳述する(刑事訴訟法316条の38)

①裁判に出席する

傍聴席でなく,法廷の中に入り,裁判に出席することができます。
検察官の隣や後ろに席を設け,着席する方法を取るのが通常です。

②検察官の権限の行使に関して意見を述べる

検察官による証拠の提出や,裁判の結果に対する意見(論告・求刑)に関して,意見を述べることが可能です。

③証人尋問を行う

証人尋問の際,一定の条件の上で,自ら尋問を行うことが可能です。
具体的な条件は以下の通りです。

証人尋問の条件
1.情状に関する事項であること(情状証人のみ)
2.裁判所が許可すること

証人尋問を希望する場合は,検察官の尋問後,尋問事項を明らかにして検察官に申出を行います。
この申出は,検察官が裁判所に通知し,裁判所の判断を仰ぎます。

④被告人質問を行う

被告人質問の際,一定の条件の上で,自ら被告人に質問することが可能です。
具体的な条件は以下の通りです。

被告人質問の条件
1.被害者参加人が最後に意見を述べるために必要であること
2.裁判所が許可すること
なお,証人尋問と異なり,尋問事項は情状に関する事項に制限されません

被告人質問を希望する場合は,あらかじめ,質問事項を明らかにして検察官に申出を行わなければなりません。証人尋問と異なり,検察官の尋問後に申し出ることはできません。
申出があった場合,検察官が裁判所に通知し,裁判所の判断を仰ぎます。

⑤事実又は法律の適用について意見を陳述する

検察官や弁護人は,証拠の取調べが終了した後,事実や法律の適用について意見を述べます。検察官の意見は論告,弁護人の意見を弁論と呼びます。
被害者参加人も,裁判所の許可を得て,事実や法律の適用について意見を述べることが可能です

被害者参加人の意見は,意見の要旨を明らかにして検察官に申し出ます。申出があった場合,検察官が裁判所に通知し,裁判所の判断を仰ぎます。

被害者参加をする意味はあるのか

被害者参加を行ったとしても,参加した事実や内容が判決に反映されなければ,あまり実益がないようにも思われます。

この点,実際に被害者参加がなされ,意見陳述等を行った事件の判決では,その量刑判断に関する理由として被害者参加の内容が具体的に指摘される傾向にあります。

例えば,被害者遺族が辛い心情を述べたことや,強い処罰感情を有していることを指摘した上で,被告人の量刑を軽くすべきでない方向で斟酌している例は多数見られるところです。

加害者に対する十分な刑事処罰を求める場合は,被害者参加制度の活用は非常に有力な手段であると言えるでしょう。

参加する被害者への配慮

被害者参加を希望する被害者にとって,その心理的負担は重大な場合が少なくありません。そのため,被害者参加人を保護する目的で以下のような配慮の制度が設けられています。

①法廷における配慮

付添人制度】
被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがある場合,不安や緊張を緩和するのに適当な人物を被害者参加人に付き添わせることが可能です。

【遮蔽措置
1.被害者参加人の心理的圧迫を防ぐ必要がある場合,被害者参加人と被告人との間についたてを設け,遮蔽する措置をとることが可能です。
2.被害者参加人の心身の状態や名誉に対する影響等を考慮すべき場合には,被害者参加人と傍聴人の間についたてを設け,遮蔽する措置を取る事が可能です。

【代理人弁護士】
被害者参加人は弁護士を代理人とすることが可能です。代理人となった弁護士は,被害者参加人の代わりに裁判に参加するため,心理的負担を受ける必要がなくなります。

②その他の配慮

【被害者支援員】
検察庁には,犯罪被害者の支援に携わる被害者支援員が配置されており,被害者側の負担を軽減させるための配慮がなされています。

【被害者ホットライン】
被害者による検察庁への問い合わせを容易にするため,被害者専用の問い合わせ方法として被害者ホットラインが設置されています。

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

被害者参加制度は,刑事裁判に被害者側の気持ちを反映させることのできる特徴的な制度であり,被害者が受けたダメージへの配慮から生まれた被害者の権利とも言えるものです。
加害者への刑罰の決定に関与したい,という場合には,被害者参加制度の利用を積極的に検討することが有力でしょう。
また,弁護士を通じて行うことも可能です。弁護士に依頼することで負担を軽減しながら被害者参加する手段もご検討をお勧めします。

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損害賠償命令制度は犯罪被害を受けたときに有用か?どうすれば利用できるのか?被害者の負担は大きいのか?刑事弁護士による解説

●損害賠償命令制度について知りたい

●自分は損害賠償命令制度を利用できるのか?

●損害賠償命令制度と通常の民事訴訟の違いは?

●損害賠償命令制度に従って支払った加害者は刑が軽くなるのか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,犯罪被害の損害賠償命令制度についてお困りの方に向けて,損害賠償命令制度の内容や特徴損害賠償が支払われた場合の刑罰への影響などを解説します。

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損害賠償命令制度とは

損害賠償命令制度とは,刑事手続において,被害者が加害者に対して損害賠償を求めるための制度です。この制度を利用することで,被害者は,民事訴訟を起こさなくても刑事裁判の結果を利用して損害賠償請求を行うことが可能になります
また,損害賠償命令が申し立てられた場合には,刑事事件の判断を行った裁判所によって扱われるため,より迅速な審理が期待できる制度でもあります。

この損害賠償命令制度は,犯罪被害者が金銭賠償を請求する際の大きな負担に配慮する目的で,2007年に新設されました。
日本の制度上,民事裁判と刑事裁判は別々に行われる必要があり,犯罪被害者は,刑事裁判とは別に民事裁判を自ら提起するのでなければ,金銭賠償を求めることができないのが原則です。また,民事訴訟では,金銭を請求する被害者の方が,加害者の責任を立証しなければならい立場にあるため,訴訟の内容に関する被害者の負担も大きなものです。

このような取り扱いでは,被害者の救済が困難となり,泣き寝入りを強いられる被害者が増えてしまうことを踏まえ,被害者による損害賠償請求を容易にするための手段として損害賠償命令制度が設けられました。

制度が利用できるケースには限りがありますが,制度を利用すれば,比較的軽微な負担で,比較的短期間で,被害者の加害者に対する損害賠償請求が可能になります。

ポイント
損害賠償命令制度は,犯罪被害者が刑事裁判の結果を利用して損害賠償請求する制度
軽微な負担で,比較的短期間での金銭請求が可能

損害賠償命令制度の特徴 ①対象事件

損害賠償命令制度の対象となる事件は,被害者に多大な損害が発生する一部の事件に限定されています。具体的な内容は以下の通りです。

損害賠償命令制度の対象事件

①故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪
(例)殺人罪,傷害致死罪,強盗致死罪,不同意性交等致死罪など

②一定の性犯罪
=不同意わいせつ罪,不同意性交罪,監護者わいせつ罪,監護者性交等罪又はその未遂罪

③逮捕罪・監禁罪

④略取・誘拐・人身売買の罪
=未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐,身の代金目的略取等,所在国外移送目的略取及び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送,被略取者引渡し等の罪又はその未遂罪

⑤上記②~④の罪のほか,その犯罪行為に②~④の罪の犯罪行為を含む罪
(例)強盗・不同意性交等罪など

これらの事件は,その被害者に身体的・精神的損害が生じていない可能性が考えにくく,かつその損害から救済する必要性が特に高いことから,損害賠償命令制度の対象とされています。

損害賠償命令制度の特徴 ②申立できる人と申立方法

【申立てができる人】
被害者又はその一般承継人(権利義務を一括承継する人。相続人など)

【申立ての方法】
申立書を提出して行う

申立書の記載事項
①当事者及び法定代理人
②請求の趣旨
③訴因(当該刑事裁判で審判の対象とされた事実)
④その他請求を特定するに足りる事項

要求される記載事項は,一から民事訴訟を行う場合よりも非常に少なくなっています。
特に,刑事裁判の結果を用いることが前提となっているため,対象事件の特定が求められていない点で,被害者の負担が非常に軽くなっています。

逆に,公判を扱う裁判所に予断を持たせないため,記載を求められていない事項を申立書に記載することはできません。

【申立ての時期】
=起訴後から弁論終結までの間

【申立て先】
=事件が係属する地方裁判所

【申立ての費用】
=申立手数料2,000円(一律)

請求金額にかかわらず,手数料が一律で安価になっている点も特徴的な被害者保護の制度です。
一般的な民事訴訟の場合,100万円の請求で1万円,300万円の請求で2万円といった手数料が発生します。

損害賠償命令制度の特徴 ③審理の時期・内容・回数

【審理が行われる時期】
=被告人に対して対象犯罪の有罪判決の言い渡しがあった後直ちに開く

【審理の内容】
①当事者(被害者と被告人とも)を呼び出す
②刑事事件の訴訟記録を取り調べる(必要でないものを除く)
③口頭弁論をしないことが可能
④口頭弁論しない場合には,裁判所が当事者を審尋することができる

【審理期間・回数】
=原則として4回以内の審理期日で審理を終結しなければならない

審理の回数が少なく限られている分,審理の期間も非常に短くなります

損害賠償命令の効果

【審理の結果】
審理を終結した後,「決定」という方法で申立てに対する裁判を行う

【結果に対する不服申立て】
①裁判所が決定書を作成し,当事者に送達する(口頭での告知も可能)
②当事者は,送達又は告知から二週間以内異議申立てができる

【不服申立てがなかった場合】
=適法な異議申立てがなかった場合,損害賠償命令についての裁判は,確定判決と同一の効力を有する
(強制執行も可能となる)

民事裁判に移行する場合

【民事裁判に移行するケース】

①決定に対して異議申立てがなされた場合
②4回以内での審理終結が困難である場合
③申立人(=被害者)が民事訴訟手続で行うことを求めた場合
④相手方(=加害者)が民事訴訟手続で行うことを求め,申立人が同意した場合

【民事裁判に移行した場合の特徴】
=裁判記録が引き継がれる。別途訴訟を提起する必要はない。

損害賠償命令制度に従って支払うと加害者の刑は軽くなるのか

損害賠償命令制度を利用した場合,加害者から被害者に損害賠償の支払いがなされることが見込まれます。
この点,加害者の刑事責任の重さを判断する要素として,被害者への損害賠償を行っているかどうか,というのは非常に重要なポイントとなることが少なくありません。特に,損害に見合った水準の高額な賠償がなされていれば,その事実は加害者の刑事責任を小さくする方向で考慮されることが通常です。
そのため,損害賠償命令制度を利用した場合,その決定に従って金銭を支払った加害者の刑罰は軽くなるのか,という点に疑問が生じます。

この点,実刑となった第一審の後に損害賠償命令制度が利用され,その後に約1000万円の賠償を行った被告人に対して,控訴審で執行猶予付きの判決がなされた事例はあります。これは,第一審の判決後に多額の金銭賠償を行った事実が評価された結果であると言えるでしょう。

一方,他の裁判例では,「自分から支払おうと思えば支払えたのに,それをしないまま判決を受けた」というマイナスの評価を明示したものも見られます。加害者が自分から示談交渉を試みるなど,積極的に賠償を行ったケースとは,明確な区別がなされていると理解してよいでしょう。

ポイント
損害賠償命令を受けて支払いをした場合,刑罰を軽減させる効果が生じることはあり得る
もっとも,自分から進んで賠償をした場合よりは明確に低い評価となる

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

損害賠償命令制度は,一定の重大な被害を受けた被害者への配慮として,国が比較的簡単な金銭請求の方法を用意したものです。利用が可能な場合は,損害賠償命令制度を利用の上,簡便な手続で適切な賠償を獲得することが非常に有力でしょう。
いわゆる被害者参加の制度も含め,加害者の刑事処分に参加する手続については,制度に精通した弁護士へのご相談・ご依頼をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
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犯罪被害者は加害者に訴訟すべき?損害賠償請求をする最善の方法が知りたい方へ,訴訟・調停と示談との比較方法を弁護士が解説

●犯罪被害の加害者に損害賠償請求をしたい

●調停と訴訟ではどちらが適切か?

●調停や訴訟を提起するときの注意点は?

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このページでは,犯罪被害の加害者に対する民事調停や民事訴訟についてお困りの方に向けて,訴訟や調停と交渉との違いメリットデメリットや注意点などを解説します。

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犯罪被害者が損害賠償請求する方法

犯罪被害に遭った際,被害者が加害者から金銭を回収する手段は,①任意に支払ってもらうか,②強制的に回収するかのいずれかになります。
そして,①任意に支払ってもらう方法が示談であり,示談をせず②強制的に回収する場合には,裁判所の手続を利用する必要があります。

具体的な裁判手続としては,「民事訴訟」及び「民事調停」の二つが挙げられます。
訴訟と調停は,いずれも民事事件の解決を目指す裁判上の手続ですが,その内容や手続には大きな差異があり,どちらを選択するかはその差異を踏まえた検討が適切です。

ポイント 損害賠償請求の方法
・任意に支払ってもらう=示談
・強制的に回収する=民事調停・民事訴訟

犯罪被害の場合は調停と訴訟どちらが適切か?

民事調停と民事訴訟の違いとしては,以下のような点が挙げられます。

【解決方法】
調停 当事者間での合意を目指します。合意に至らない場合には不成立となります。
訴訟 裁判官の判決により解決します。判決せずとも合意に至れば,合意も可能です。

【手続の進め方】
調停 調停委員が両者の間に入り,双方の意見を聞きながら合意できる内容を模索します。
訴訟 当事者双方が裁判所に主張と証拠を提出し,法的な判断を求めます。

【期間と費用】
調停 比較的短期間であり,費用も安価であることが多いです。
訴訟 調停よりも手続が長期間に渡り,費用も高くなる傾向があります。

上記のような民事調停と民事訴訟の違いのうち,犯罪被害の場合に考慮すべきなのが【解決方法】に関する特徴です。具体的には,加害者が手続に協力しない場合,どのような結果になるかを考える必要があります。

【加害者が協力しない場合の解決】

調停 調停不成立となり何も解決しないまま手続が終了する
訴訟 被害者の請求内容をそのまま裁判所が認め,被害者の請求通りの金額を支払う義務が加害者に発生する

この解決内容の違いは極めて大きなものです。調停であれば,加害者は手続に協力しなくても被害者への支払をする必要はありませんが,訴訟の場合には手続に応じなければ被害者の言う通りの支払を強制させられることになります。そのため,加害者が応じることが見込まれやすいのは,明らかに訴訟の方であると言えるでしょう。

犯罪被害の場合,加害者の誠実な対応が期待できない場合も珍しくありません。加害者の不誠実な対応を許さないためにも,調停ではなく訴訟を選択する方が適切であると理解するべきでしょう。

ポイント 調停と訴訟
調停は合意を目指す手続であり,加害者が協力しなければ解決せず終了
訴訟は判決をもらう手続であり,加害者が協力しなければ請求通りの判決が得られる
加害者の協力が得られない可能性を踏まえると,通常は調停より訴訟の方が適切

以下では,示談でなく民事訴訟を選択する場合のメリットとデメリットについて解説します。

民事訴訟で請求するメリット ①刑事処分が軽減されない

示談の場合,加害者の立場としては刑事処分を軽減させるために行うこととなります。示談書を捜査機関に提出するなどして,示談をした事実を踏まえた刑事処分を求めるのが一般的です。

しかし,民事訴訟で金銭を請求した場合,訴訟の結果,加害者に支払の義務が生じたとしても,刑事処分を軽減させる効果は基本的にありません。そもそも,民事訴訟の結果が出るのは,刑事処分が決まった後であることが大半であるため,民事訴訟の結果を刑事処分に反映させる余地自体のないことがほとんどでしょう。

加害者に十分な刑事処分を科してもらいつつ,加害者からの金銭賠償を獲得したいという場合には,示談でなく訴訟での金銭請求が有力です。

民事訴訟で請求するメリット ②裁判所の適正な判断を求められる

示談によって決定する賠償金額は,当事者間で合意ができる限りはいくらでも問題ありません。裏を返せば,合意ができない限り,適正な金額であっても支払ってもらうことはできないということになります。
そのため,加害者側が不当に低い金額でなければ合意しないというスタンスだと,その不当に低い金額を超える賠償を示談で獲得することは困難です。

一方,民事訴訟において,相手が不当に低い金額でなければ支払わないと主張した場合,最終的には裁判所が支払うべき金額を決め,加害者に強制します。そのため,相手が不当に低い金額を主張したとしても,その金額を超える適正な賠償を獲得できる,ということになります。

加害者の主張する金額が了承できない場合には,民事訴訟を通じて裁判所の適正な判断を求める手段が有力でしょう。

民事訴訟で請求するデメリット ①空振りに終わる場合がある

民事訴訟は,裁判所が金額を決めて強制力を与えてくれる一方,その強制力を利用するあてとなる財産がなければ,結果的に金銭を回収することができません。訴訟をし,裁判所に請求を認めてもらったとしても,それが空振りに終わる場合がある,ということになります。

示談の場合は,加害者も示談成立のために金銭を用意し,場合によっては家族の力を借りるなどして必死に支払うのが通常です。そうでなければ,加害者の目的である刑罰の軽減が実現できないためです。
一方,民事訴訟の場合,加害者に金銭をかき集めるメリットが乏しく,家族に支払を求めることもできないため,加害者に目ぼしい財産がなければ金銭を受領できずに終わるリスクが生じます。

民事訴訟で請求するデメリット ②金銭以外は請求できない

民事訴訟で請求することができるのは,法的に請求できる権利のあるものだけです。犯罪被害の場合には,法律の根拠は「不法行為に基づく損害賠償請求権」,つまり金銭を請求する権利であるため,民事訴訟で請求できるのは金銭のみとなります。

示談の場合は,当事者間で合意できる限り,どのような請求を行っても問題ありません。犯罪被害に関する示談では,現場になった駅を利用しない,被害者の住所近辺に立ち入らないなど,金銭以外の義務を負わせることも可能です。
一方,民事訴訟で駅の利用禁止や住所近辺の立入禁止を求めたとしても,その請求は裁判所によって退けられるほかありません。法的に請求する権利がない以上,やむを得ない結論ということになります。

民事訴訟の注意点

民事訴訟を行う場合,以下のような点に注意するのが望ましいでしょう。

①加害者の個人情報が必要であること

民事訴訟を行う場合,加害者を特定するための個人情報を把握する必要があります。訴訟の当事者となる加害者が特定できなければ,訴訟自体が行えないためです。
具体的には,氏名と住所の把握が必要になりやすいでしょう。

もっとも,住所に関しては,分からなかったとしても訴訟の提起が可能です。勤務先が分かっていれば,就業場所送達という方法で勤務先を送り先にできますし,所在が何も分からない場合には,公示送達(裁判所の掲示板に掲示してもらう方法)によって送達したと同様の扱いをしてもらえます。
しかし,現実に金銭を回収しようとした場合,加害者の情報が把握できていないと財産に対する強制執行が困難です。引き当てになる財産もその特定の仕方も把握できず,結果的に訴訟が空振りに終わる可能性が高くなります。

②長期間を要しやすいこと

民事訴訟では,概ね1~2か月に1回程度の頻度で期日が行われ,期日のたびに双方の主張が提出されることになりますが,トータルすると年単位に及ぶ手続になることも決して珍しくありません。金銭の請求を試みてから回収できるまでに長期間を要しやすいという点には,十分な注意が必要になるでしょう。

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

犯罪被害を受けたとき,加害者へ金銭賠償を請求する手段として訴訟や調停を行うのが適切かどうかは,非常に難しい問題です。
もっとも,示談をするか訴訟や調停をするかは,示談交渉の局面で検討する必要がある場合も多く,検討する期間にあまり余裕はない可能性もあります。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

特設サイト:藤垣法律事務所

犯罪被害者が加害者から示談を持ちかけられたらどうするのが適切か?交渉ポイントや注意点を弁護士が徹底網羅

加害者から示談を持ちかけられたらどうすればいいか?

●犯罪被害者が示談に応じるメリットとデメリットが知りたい

●示談の内容にはどのようなものがあるか?

●示談書は作成すべきか?

●犯罪被害の示談交渉は弁護士を依頼すべきか?

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加害者からの示談交渉に際して考えるべきこと

①基本的な流れ

犯罪被害を受けた場合,加害者側(通常は代理人弁護士)から,示談の話を持ち掛けられることが考えられます。具体的な流れは,概ね以下の通りです。

示談交渉の流れ
①弁護士が捜査機関に示談の申し入れを行う
②捜査機関から被害者に意思確認の連絡がなされる
③被害者から捜査機関に返答を行う
④(被害者が了承した場合のみ)弁護士と被害者の連絡先交換
⑤弁護士から被害者に直接の連絡を行う

そのため,被害者にとって最初のステップは捜査機関からの連絡となり,それを了承すると次に加害者の代理人弁護士から連絡が来る,という流れになります。

被害者の方にとっても,経験のない出来事で突然の検討が求められるため,その判断は容易ではないでしょう。ここでは,被害者が加害者側から示談を持ち掛けられた際の注意点を解説します。

②(注意点①)刑事処罰がなくなる可能性がある

加害者側からの示談の申し入れは,刑事処分の軽減,具体的には刑罰を受けない結果になることを目的に行われるのが通常です。示談が成立し,被害者側が刑罰を望まないという意思を表明することで,ほとんどの事件は刑事処分が軽減されることになります。また,事件があまりに重大でなければ,刑罰を全く受けない結果になることも全く珍しくありません。

示談に応じることは,刑事処罰が全くなくなるという意味になりやすい,との理解を前提に,示談に応じるかどうか,示談に応じる場合の条件をどうするか,検討することが適切でしょう。

③(注意点②)終局的な解決を内容とする

当事者間で示談が成立した場合,被害者と加害者の間の法律関係は,示談の内容以外に存在しないという合意になるのが通常です。つまり,示談の内容を守るという条件で,当事者間では終局的に解決することになります。
したがって,示談の成立後に示談金を超える金額の請求をすることはできませんし,追加で何か約束をしてもらうこともできません。

示談に応じる場合には,合意した内容のみで解決となり,その後に重ねての請求ができないということを踏まえておくのが適切でしょう。

犯罪被害者が示談に応じるメリット

刑事事件における示談は,加害者側が自身の刑事処分を軽減させる目的で行うものですが,被害者側にも確かなメリットがあります。そのため,被害者側としては,そのメリットを理解した上で,刑事処罰を受けて欲しいという思いと比較検討するのが適切です。

犯罪被害者が示談に応じることによって生じるメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①手続負担なく金銭賠償が受けられる

【示談しない場合の金銭賠償】

犯罪被害を受けた場合,被害者は加害者に対して金銭賠償を請求する権利を持ちます。加害者の行為は,民法上「不法行為」に該当する違法な行為であり,不法行為の被害者は加害者に対して損害賠償請求権を有する,というのがその根拠です。
もっとも,法律上の権利が認められることと,現実に金銭を獲得できることは別の問題です。具体的には,金銭を獲得するため以下のステップが必要です。

金銭賠償を獲得するためのステップ
1.賠償金額を決定する
2.決定した賠償金額を獲得する

そして,被害者が示談しないで金銭賠償を獲得するためには,以下の手続が必要になります。

金銭賠償を獲得する手続
1.金銭賠償を決定するため,(民事)訴訟を提起する
2.決定した金額を獲得するため,強制執行する

つまり,被害者が示談以外の方法で金銭を獲得するためには,自ら積極的に裁判を試み,裁判所に金額を決定してもらった後,相手の財産から強制的に取り立てることが必要になるのです。
しかし,訴訟を行うのは負担が大きく期間もかかり,容易ではありません。また,そのような訴訟を行って金額が決まったとしても,加害者に財産がなければ強制執行ができず,金銭を回収できないリスクも生じます。
特に加害者の財産状況が分からない場合,このような方法で被害者が金銭の獲得を試みるのはあまり現実的でないことも多く見られます。

【示談の場合の金銭賠償】

示談を行う場合,金銭賠償を獲得するための具体的な手続は,以下のように整理されます。

金銭賠償を獲得する手続
1.金銭賠償を決定するため,示談交渉を行う
2.決定した金額を獲得するため,加害者側から支払ってもらう

つまり,加害者側から持ち掛けられた示談に応じて交渉を行い,合意ができれば加害者側から支払ってもらう,というのみで,金銭賠償が獲得できることになります。
また,この一連の流れの中で,被害者から積極的に行うべきことは特になく,被害者は加害者側からの話に応じて対応すれば足ります。被害者に生じる負担は,示談を行わない場合とは比較にならないほど軽いものということができるでしょう。

また,示談による金銭賠償の獲得には,基本的に金銭回収ができないというリスクがありません。加害者側は,金銭を支払わなければ刑罰の軽減ができないため,処分軽減という目的のためには金銭を支払うことが必須です。
むしろ,加害者側が進んで金銭を支払う状況になるため,回収リスクを恐れる必要がなくなるでしょう。

ポイント 金銭賠償の手続負担
示談以外:訴訟+強制執行が必要
示談:交渉に応じるのみで足りる

②賠償金額に制限がない

示談を行わず,裁判手続で金銭賠償を受領する場合,その金額は,最終的には裁判所が過去の先例を踏まえて決定することになります。そのため,賠償金額は裁判所の判断によって制限され,それ以上の金額を獲得する権利は得られません。

一方,示談の場合,賠償金額は当事者間での交渉により決められるため,特に制限がありません。当事者間で合意さえできれば,裁判所が認める金額より大きな水準であっても問題はありません。
刑事事件で示談を行う場合,被害者が加害者を許す(=刑事処罰を希望しない)という意思表明が含まれる関係で,その対価の意味を含めて金額を大きくするケースが少なくありません。この点を強調する場合には,当事者間で高額の合意を行い,より大きな金額を獲得することもあり得るでしょう。

ただ,逆に当事者間で合意ができない場合,その金額を受領することはできません。加害者に経済力がないなどの理由で,どうしても支払える金額に限りが生じる場合には,低い金額で示談をするか,示談をしないで処罰を希望するか選択しなければならないケースもあり得るところです。

③金銭以外の条件を付けられる

犯罪被害者が加害者に対して有する権利は,不法行為に基づく損害賠償請求権であり,つまり金銭の支払いを求める権利ということになります。そのため,法的には,被害者は加害者に対して金銭を請求することこそできるものの,それ以外の要求をすることはできません。
したがって,裁判手続での請求で得られるのは金銭のみです

一方,示談の場合,当事者間で合意ができれば金銭以外の条件を設けることも可能です。示談で合意する内容は,法律的に権利や義務のある内容には限られないため,法的には権利も義務もないような要求であっても,示談の条件とすることで相手に約束させられるわけです。
一般的に,犯罪の加害者が負う責任は,刑罰を受ける責任と被害者への金銭賠償の責任という2点ですが,それにとどまらない責任を負わせる手段としても,示談は有力な選択肢になることがあります。

犯罪被害者が示談に応じるデメリット

被害者が加害者の示談に応じる場合のデメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①重い処罰を科してもらうことが困難になる

示談に応じた場合,示談を行ったという事実は加害者の刑事処分を軽減させます。どの程度軽減するか,軽減した結果どのような処分になるかは,個別の事件や示談の内容によりますが,処分結果に対して最も影響の強い事情になる可能性が非常に高いでしょう。

示談に応じるか応じないかという判断は,示談金を受領するか重い刑罰を求めるか,という判断であると考えてもよいかもしれません。

②分割払いの場合に回収リスクが生じる

裁判で決定された賠償金は,加害者が支払わない場合に強制執行が可能です。具体的には,銀行口座の預金を差し押さえたり,給料の一部を差し押さえたり,所有する家や車を金銭に換価したりという方法で,強制的に金銭の回収が可能となります。

しかしながら,示談で合意をした金銭は,支払いが滞ったとしても直ちに強制執行することができません。強制執行をするためには,改めて裁判を提起して裁判所に強制執行を認めてもらう必要が生じます。
示談金が一括払いであれば,示談をした段階で全ての金銭が受領済みのため問題は生じませんが,示談成立後も継続的に支払いが生じる分割払いの場合には問題となることがあります。具体的には,以下の経過をたどる場合です。

回収リスクが生じる場合の流れ
①分割払いで示談成立
②示談を前提とした軽い刑事処分が決まる
③刑事処分後,分割払いが滞る

加害者の立場としては,刑事処分を軽くするために示談を試みたのみであるため,刑事処分が軽くさえなってしまえばそれ以降の支払を行う意欲が低下する可能性がある,ということですね。決して許されることではありませんが,被害者目線では重大な回収リスクとして考慮する必要があります。

そして,被害者がこの回収リスクを避けるための対策としては,以下のような手段が考えられます。

回収リスクの対策
①示談成立時の一括払いを条件とする(最も簡単)
②分割の場合には公正証書を作成する
連帯保証人を用意させる
物的担保になるものを用意させる

加害者にとっては,支払以上の負担が生じることになりますが,そもそも分割払い自体が加害者のみに利益のあるお話である以上,分割払いに条件を付けることは大いにあってしかるべきでしょう。

示談するときの主な合意内容

示談する際には,以下のような内容を盛り込むことが考えられます。

①通常設ける合意内容

【確認条項】

示談金額がいくらであるかを確認する条項です。加害者が被害者に対していくらの損害賠償義務があるのかを明確にするため,金銭の支払を伴う示談では必ず明記します。

【給付条項】

示談金の支払(給付)を行う方法に関する条項です。日付,金額,支払方法を特定します。加害者は,給付条項の内容に沿った支払を行うことを約束します。

【清算条項】

示談で定めた内容以外に,当事者間の法律関係(債権債務関係)がないことを明らかにする条項です。示談を取り交わす場合,示談の条件を守ればそれ以上には互いに請求をしないことが前提になるため,清算条項という形で明らかにします。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)とは,被害者の加害者に対する許しを指します。被害者が加害者の刑事処罰を望まないことを明らかにするため,宥恕の旨を明記した条項を設けることが通常です。
刑事事件の示談は,加害者にとって宥恕の獲得が最大の目標になります。

②希望により設けることのある主な合意内容

【接触禁止】

示談成立後に加害者が被害者に接触することを禁止する条項です。示談の内容とすることは必須ではありませんが,被害者が加害者との接触を希望することはほぼないため,基本的にはほとんどの示談で設けることになります。

【行動制限(制約)】

日常生活における行動の制限を設ける条項です。具体的には,以下のようなものが挙げられます。

行動制限の例
・特定の電車利用を制限する
・特定の場所への立ち入りを制限する
・特定の人物への接触を制限する

行動制限は,接触禁止をさらに確実なものとするために設けることが多く見られます。電車内での事件であればその電車を利用しない,施設内の事件であればその施設に出入りしない,といった内容が代表的です。

【口外禁止】

事件や示談に関する内容を周囲に口外しないよう約束する条項です。当事者のプライバシーを守るために設けることが考えられます。
刑事事件の場合,加害者の方が周囲への発覚を恐れる場合も多く,加害者の求めに応じる形で盛り込むことも少なくありません。

【違約金】

示談に定めた条件が守られなかった場合,約束に反したことの責任を金銭で取らせるための条項です。現実に金銭を受領するためというよりは,約束を守らせるための枷の一つとして設けることが一般的でしょう。
また,違約金額に特段のルールはなく,当事者が合意できればどのような金額でも差し支えありません。一般的には,示談金の金額に近い水準や示談金額を踏まえた水準(倍額など)を設けることが多く見られます。

【権利留保】

将来不測の損害が生じた場合には,別途請求をする権利があることを確認する条項です。後遺障害を伴う重大な怪我が生じた事件で,治療が終わる前に示談する場合に設けられる場合が考えられます。
もっとも,刑事事件の示談は,その示談によって当事者間の関係が終了しなければあまり実益がないため,現実に権利留保の条項が設けられることはほとんどないと思われます。

示談書の作成は必要か

示談が成立する際,示談書の作成を行うのが一般的です。示談書を作成する場合は,合意した内容を文面にした上で,相互に署名押印し,各自保管するという流れが通常です。

示談書は,示談の際に法律上必要な書面というわけではありません。示談書がなくても,示談は有効に成立します。
示談書を作成する基本的な目的は,後から紛争の蒸し返しになることを防止する点にあります。書面化してないと,「約束した」「約束してない」という争いが生じる可能性を残しますが,書面化していれば,書面の内容に反するような紛争の蒸し返しは生じる余地がなくなるわけです。
そのため,示談書を作成するケースは,示談に関する紛争の蒸し返しを防止したい場合,ということになるでしょう。

もっとも,刑事事件の示談は,加害者に弁護士が入っている上,加害者側は示談の成立を検察などに示さなければならないため,加害者(弁護士)が示談書の作成を希望するケースがほとんどです
その場合,加害者の弁護士が示談書の内容を作成し,被害者に示してくることになります。被害者としては,基本的にその内容を確認するのみで足りるでしょう。

なお,被害者目線で書面作成を求めるべき場合としては,加害者側に金銭の支払以上の約束をさせる場合が挙げられます。
法律上,被害者が加害者に請求できるのは金銭のみであるため,金銭以外の約束(電車利用禁止,特定場所の立入禁止等)をさせられるのは,合意がある場合に限られます。この点,加害者側が「約束してない」と言い出すと,約束を守らせることが困難になりかねないため,合意したことについて蒸し返しを防止するため,示談書の作成が有益になるでしょう。

ポイント 示談書の作成
蒸し返し防止したいときには作成すべき
通常は加害者の弁護士が作成を希望する
被害者が示談書作成を求めるべき場合は,金銭以外の約束をさせるとき

犯罪被害の示談交渉は弁護士に依頼すべきか

犯罪被害に遭った場合の加害者の示談交渉は,弁護士への依頼も有益でしょう。弁護士に依頼することによって,示談金額を適切な水準に増額させたり,適切な示談条件を設けたりすることが可能になります。
示談交渉の方法や示談交渉で目指すべき方針が分からない,という場合には,弁護士への依頼をご検討されることをお勧めします。

ただし,一点注意すべき点があります。
それは,経済的にプラスかマイナスかは不明確である,という点です。
弁護士に依頼して示談金の増額した場合,それが弁護士費用よりも大きな金額であれば,弁護士費用を負担してもプラスになりますが,弁護士費用を超える利益が得られるとは限りません。特に,想定される示談金額があまり大きくならない事件では,慎重な検討が必要になりやすいところです。
具体的な判断は,一度弁護士にご相談されてみるとよいでしょう。

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

犯罪被害を受けた場合,加害者が刑事処罰の軽減を目指すときには示談の申し入れを受けることが考えられます。
この場合,示談を受けることにも大きなメリットがありますので,示談の検討は有力でしょう。
もっとも,具体的にどのような内容で示談するのがより有益かは,専門的な知識や経験が必要な判断となりますので,犯罪被害の示談に強い弁護士への依頼をお勧めします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
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告訴の意味や方法,告訴と被害届・告発との違い,告訴を選択すべき場合や弁護士依頼すべき場合など,弁護士が徹底解説

●告訴とは何か?被害届とは違うのか?

●告訴と告発は何が違うか?

●告訴を選択するべき場合は?

●告訴を受理してもらえないことがある?

●告訴するとどうなるのか?

●告訴を取り下げることはできるか?

●告訴するときには弁護士に依頼すべきか?

というお悩みはありませんか?

このページでは,犯罪被害を受けた場合の告訴についてお困りの方へ,告訴の意味や内容告訴を試みる場合の方法や注意点などを解説します。

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告訴とは

告訴とは,以下のように定義されています。

告訴とは
被害者その他一定の者が,捜査機関に対して,犯罪事実を申告し犯人の訴追を求める意思表示

①告訴できる人(主体)
主な告訴権者は,以下の通りです。

主な告訴権者
・被害者
・被害者の法定代理人(親権者・後見人)
・被害者死亡の場合はその親族(配偶者・直系親族・兄弟姉妹)

②告訴の内容

・犯罪事実を申告すること
・犯人の訴追を求めること

告訴と被害届の違い

告訴と被害届は,いずれも捜査機関に犯罪事実を申告する手続ですが,以下のような違いが挙げられます。

①申告する内容

被害届は,捜査機関に犯罪の事実を申告するものですが,それ以上に何かを求める意思表明が含まれた手続ではありません。文字通り,被害を届けるのみの手続となります。

一方,告訴の場合,犯罪事実を申告するとともに犯人の訴追(処罰)を求める意思表示が含まれます。犯人の処罰を求めない告訴はあり得ず,告訴がある以上は被害者が処罰を希望していると理解されます。

②捜査義務の有無

捜査機関が告訴を受理した場合,捜査を開始しなければなりません。警察等に捜査を尽くす義務が発生するとされている点で,告訴により捜査義務が生じると言われます。

一方,被害届にはそのような定めがなく,被害届を受理した後に捜査を行うかどうかは捜査機関の判断となります。少なくとも法的には,被害届の受理後に捜査を開始しなかったとしても問題ないということになります。

③処分結果の通知義務の有無

告訴された事件について,検察官が起訴又は不起訴の処分をした場合,検察官から告訴人にその処分結果が通知されます。検察官がこの通知をしなければならないという点で,告訴には処分結果の通知義務があると言われます。
また,告訴人がその理由の通知を求めた場合には,理由を告げる義務も発生します

一方,被害届については,処分結果の通知に関する定めはありません。現実的には何らかの形で通知する方が通常ではありますが,通知がなかった場合でも法的な問題はないことになります。

④親告罪における処分

親告罪とは,起訴をするために告訴を要する事件をいいます。
代表例は器物損壊罪や名誉棄損罪ですが,被害者が起訴を望まない限り起訴する必要のない事件や,被害者の意向に反して起訴した場合に被害者のプライバシーなどを侵害する可能性がある事件では,告訴がなければ起訴ができないとのルールが定められています。

告訴がなければ親告罪の起訴はできませんが,被害届がなくても親告罪の起訴は可能です。

⑤期間制限

告訴については,期間制限の生じることがあります。
具体的には,親告罪(告訴がなければ起訴できない事件)の場合,原則として「犯人を知った日から六箇月」以内に告訴を行う必要があります
なお,非親告罪については,告訴期間の制限はありません。

一方,被害届には提出期限の定めはありません。被害届というもの自体が法律に定められた書面ではないため,その提出期限も特に決まっていない,ということになります。

ポイント 被害届と告訴の違い
内容:告訴には犯人の訴追を求める意思表示が含まれる
捜査義務:告訴にのみ捜査義務がある
通知義務:告訴にのみ起訴不起訴の通知義務がある
親告罪:起訴するためには告訴が必要。被害届は不要
期間制限:親告罪の告訴に期限がある。被害届にはない

告訴と告発の違い

告発とは,以下のように定義されています。

告発とは
告訴権者や犯人でない第三者が,捜査機関に対して犯罪の事実を申告し,犯人の訴追を求める意思表示

企業による犯罪について,その従業員が公益保護のために行う場合などが代表例です。

告訴と告発には,以下のような共通点と相違点があります。

【共通点】

犯罪事実の申告と犯人の訴追を求める意思表示であること
②捜査機関に捜査義務が発生すること
③起訴不起訴処分の通知義務が発生すること

【相違点】

①行う主体
告訴:被害者や法定代理人,遺族
告発:被害者及び犯人を除く第三者

②親告罪の取り扱い
告訴:なければ起訴不可
告発:なくても起訴可

告訴を選択すべき場合

被害者が捜査機関に犯罪事実を申告する場合,被害届を提出するか告訴を行うか,という選択肢が生じますが,告訴を選択すべき場合としては以下のケースが挙げられます。

①捜査機関に放置されている場合

被害届を提出しても捜査義務は発生しないため,捜査機関に十分な捜査がなされないまま,放置されたような状態が継続する可能性もあります。捜査機関側にも多忙などの事情があり,事件の優先順位を設ける必要がありますが,内部的に優先順位が低くされた結果,被害者目線では事件が放置されているように映ることが多数見られます。

このような場合には,捜査の優先順位を改めてもらい,多忙な捜査機関に放置されないようにするため,捜査義務のある告訴を選択することが有力な選択肢になるでしょう。

②処罰を求める意思をより強く表明したい場合

事件の最終的な処分には,被害者の処罰感情(加害者の処罰を希望するかどうかの気持ち)が強く反映される傾向にあります。被害者が加害者を処罰しないよう希望すれば,加害者は処罰されない可能性が非常に高くなり,逆に処罰を希望する場合には加害者が処罰される可能性が高くなります。

そのため,被害者の立場としては,処罰感情をより明確にするため,加害者の処罰を求める意思を強く表明することが有力な手段となり得ます
告訴は,被害届と異なり犯人の訴追を求める意思表示を内容とするものであり,一般的に被害届よりも強い処罰感情の表明と理解されるものです。より強く処罰感情を示したい場合には,告訴を選択することが有益でしょうお。

③親告罪の場合

親告罪では,告訴をしなければ加害者が起訴される可能性がありません。そのため,被害届では不十分であり,告訴を選択する必要があります。
もっとも,親告罪であれば,捜査機関から告訴に関する案内がなされるのが通常です。捜査機関の案内に沿って対応すれば,問題の生じることは考えにくいところです。

④弁護士に依頼する場合

告訴を選択する場合の問題としては,その手続の煩雑さ,面倒さが挙げられます。被害届と異なり,より積極的に動く必要のある手続のため,比較的負担の大きな手続となることから,これを避けるために被害届を選択する場合があり得るでしょう。
また,警察の立場では,いずれの方法でも捜査を行うつもりである場合,被害届を選択してくれた方が法的な義務や負担がなく動きやすいため,警察は被害者に対して被害届を選択するよう促すことが多いと思われます。

もっとも,弁護士に対応を依頼する場合には,負担のある手続や警察とのやり取りを弁護士に任せられるため,心配なく告訴を選択することができます。捜査機関の対応を求めるという意味では,告訴が被害届に劣る要素はないので,負担なく告訴が選択できるのであればその方が適切でしょう。

ポイント 告訴を選択するメリット
捜査の放置を防げる
処罰感情をより明確に表明できる
親告罪を起訴してもらえる
弁護士に依頼すれば負担がなくなる

告訴を受理してもらえない場合

告訴は,被害届と比べて受理のハードルが高い傾向にあり,特に弁護士に依頼せず自分で行う場合には,受理を拒まれる場合が少なくありません。
告訴の受理が拒まれるケースとしては,以下のものが考えられます。

①犯罪が成立しない場合

明らかに犯罪が成立しない内容であると,告訴が受理されないことが見込まれます

もっとも,内容が軽微である,証拠がないなど,「処罰に至らない可能性ある」というのみでは,告訴を不受理とするのは問題があるでしょう。処罰されるかどうかは,告訴を受理する段階で判断する事柄ではなく,捜査を尽くした結果,検察庁や裁判所で判断されるべきものであるためです。

②金銭問題(民事事件)の交渉道具とする場合

形式は犯罪捜査を求めているように見えても,実際は当事者の金銭問題の交渉道具にするための告訴である場合には,告訴が受理されないことがあり得ます
警察は個人間の紛争には介入しないという,「民事不介入」の原則がその根拠になるところです。

もっとも,金銭問題の交渉道具としての告訴かどうかは,第三者から容易に判断できるものではないため,このような理由での告訴の不受理は不適切である場合も少なくないでしょう。
例えば,金額以外の示談条件は合意したが加害者が金額面で歩み寄ってくれない,という経緯での告訴など,交渉道具であることが明らかな場合には,告訴を受理しない対応も不合理とは言い難いところです。もっとも,そのような事情がないにもかかわらず「個人の争いだから民事不介入」とするのは不当である可能性が高いでしょう。

なお,被害者が加害者に金銭を請求したいと考えていたとしても,それによって告訴が受理されなくなるわけではありません。捜査や処罰を求める意思と,金銭賠償を求める意思は十分に両立し得るためです。

③当事者間で示談見込みの場合

犯罪事実の存在する可能性のあるものの,当事者間で示談が見込まれる状況にある場合,加害者の訴追を求める意思があるか不明確であるとの理由で告訴の受理を控えられることがあり得ます。

この場合,実際に示談が見込まれる状況なのか,示談でなく捜査や処罰を求めたいのか,という点を事前に明確にすることが望ましいでしょう。また,示談という言葉は一人歩きしやすいため,あまり安易に「示談予定」「示談中」などという言葉を捜査機関に告げない方が望ましいでしょう。

④犯罪事実の特定が困難な場合

犯人や犯罪の内容が特定できず,犯罪事実の特定に至らない場合です。犯罪であるかどうかわからない内容については,告訴の受理が困難であると判断されることがあり得ます。

このような問題は,事件が法的に整理できていないことに原因のある場合が多く,被害者本人が行う場合に特有のものです。つまり,被害者は事件内容をありったけ伝えたものの,捜査機関との間で話が整理できず,どの部分がどんな犯罪に当たるのか分からない,という場合に生じやすいところです。

事件の内容や経緯が複雑で,簡潔な説明が困難な場合には,事件を法的に整理して伝えることが適切です。具体的な対応は弁護士に依頼するのが円滑でしょう。

ポイント 告訴不受理の主なケース
犯罪に当たらない
金銭交渉の道具に過ぎない
既に示談が見込まれている
犯罪に当たる事実が特定できない

告訴を取り下げられるか

一度行った告訴は,告訴の取消という手続で取り下げることが可能です。

告訴を取り消した場合,告訴がなかったのと同じ状況になるため,親告罪では起訴される可能性がなくなり,非親告罪でも犯人の処罰を求める意思がなかったという扱いになります

この点,告訴の取消について注意すべき点としては,以下の事項が挙げられます。

①取消の時期

告訴の取消は公訴提起(起訴)前に限られます。告訴の取消は,処罰を求める意思が後から消滅した,ということをその後の手続に反映するための処理ですが,起訴されてしまうと,告訴の取消を反映して不起訴にすることができなくなるためです。

②取消の回数

刑事訴訟法上,告訴の取消がされた場合,同一の事件でさらに告訴することができません。そのため,告訴の取消は,再度の告訴ができないことを前提に判断するのが適切です。

なお,再度の告訴ができないという刑事訴訟法の定めは,親告罪に対するものと理解されています。そのため,非親告罪であれば再度の告訴も不可能ではないと考えられます。もっとも,現実的には困難であることがほとんどなので,やはり再度の告訴はできないとの前提で検討すべきでしょう。

告訴は弁護士に依頼すべきか

告訴は,捜査機関に法律上の義務を負わせる手続でもあるため,被害者の方自身が容易に行えるものではありません。警察から求められて行う場合は別ですが,自ら積極的に告訴を試みる場合,必要な説明やできる限りの証拠の提出は,被害者側の負担と判断で行う必要があり,適切な対応には専門的な判断が必要になるでしょう。

また,告訴は行うことがゴールでなく,行ってからがむしろスタートであるとも言えます。告訴はあくまで犯罪被害からの救済を受けるための最初の動きであって,最終的に希望の結果に至るためには,その後も継続的な対応を要します加害者の刑事処罰や加害者からの金銭賠償など,個別の対応も含めて弁護士への依頼が適切でしょう

犯罪被害に強い弁護士をお探しの方へ

告訴は,被害届と並んで犯罪被害者が警察の捜査を求めるときに取り得る手段ですが,捜査機関に法的な義務が生じる手続のため,警察側も安易には受け付けられないという事情があります。
そのため,告訴を行う場合には,警察をしっかり味方に付けられるよう,適切な方法・内容で行うべきであり,必要に応じて弁護士と一緒に行うことをお勧めいたします。

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所は,刑事事件の経験豊富な弁護士が,専門的な知識・経験を踏まえて,犯罪被害にお悩みの方への最善のサポートを提案することができます。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

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