【公然わいせつ事件の弁護士選び】タイミングは?判断基準は?注意すべき点は?

このページでは,公然わいせつ事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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公然わいせつ事件で弁護士を選ぶタイミング

①逮捕直後

公然わいせつ事件は,逮捕されるケースも一定数存在する事件類型です。特に,特定の相手を対象とした露出行為が問題になった場合や,店舗内で行為が発覚して店舗関係者とトラブルになった場合など,関係者を保護する必要がある場合には,現行犯逮捕されるケースも見られます。

しかし,逮捕されたとしてもその場で全てが手遅れとなるわけではありません。逮捕後に適切な対応を尽くすことができれば,早期に釈放してもらうことができ,生活への影響を最小限に抑えることが可能です。公然わいせつ事件の場合,逮捕されたとしても速やかな釈放の余地は残っていることが少なくないでしょう。

この点,逮捕直後には弁護士しか被疑者と接見できないことが通常であり,釈放を目指す動きも弁護士を通じて行う必要が生じやすいところです。そのため,逮捕直後に釈放を目指すときは,弁護士選びが重要と言えるでしょう。
逮捕直後に適切な弁護士選びができれば,早期釈放の実現できる可能性が大きく高まることは間違いありません。

ポイント
公然わいせつ事件は,逮捕後に早期釈放される場合も少なくない

②呼び出しを受けたとき

公然わいせつ事件の捜査を受ける場合の流れとしては,後日に警察などから呼び出しを受けることも考えられます。これは,被疑者に対する取り調べを行うため,警察署への出頭を求める目的であることが通常です。
そのため,出頭要請を受けたときには,その後に行われるであろう取り調べの対応について事前に検討しておく必要があります。想定される質問や質問への回答方法・内容を整理し,取り調べに備えることは非常に重要でしょう。

もっとも,個別の事件に応じた出頭時の対応方法・内容を当事者自身が判断することは容易ではありません。取調べがどのような流れで行われるのか,自分がどのように対応することが望ましいのか,警察から求められたことに応じてよいのか,といった点は,刑事事件に精通した専門家以外には判断が困難でしょう。

そのため,警察などの呼び出しを受けたタイミングで,取調べに備えて弁護士を選ぶことは有力な選択肢と言えます。適切な弁護士選びができれば,出頭時の対応が万全になるほか,その後の弁護活動も充実したものになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた場合,取調べされることが見込まれる
取り調べ対応を万全にするための弁護士選びが重要

③自首を試みたいとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

公然わいせつ事件では,現行犯で捜査が開始されたのでない限り,捜査機関が被疑者をすぐに特定できるケースはあまりありません。また,事件を目撃した人がいたとしても,すぐに警察へ通報などするとは限りません。
そうすると,公然わいせつ事件では自首を検討する時間的な猶予は一定程度あることが多いため,速やかな自首は有力な選択肢の一つです。

もっとも,本当に自首をすべきかどうか,自首をする場合にどのような手順・方法で行うか,という点は,当事者自身での判断が困難なポイントです。自首を試みようと考えるときには,適切な弁護士選びの上で,弁護士とともに検討・行動をするのが適切でしょう。
そのため,自首を試みたいと考えるときは,弁護士選びのタイミングということができます。

ポイント
公然わいせつ事件は,自首を行う時間的猶予のあるケースが多い

公然わいせつ事件の弁護士を選ぶ基準

①公然わいせつ事件の解決実績があるか

刑事事件は,過去の先例に沿った判断や運用をされることが一般的です。裁判所は,過去の先例と整合した取り扱いをすることで,公平を保ちながら適切に法律を運用する機関であるためです。

そうすると,先例を把握していること,過去に同種の事件を解決した実績があることは,事件の見通しを正確に持つ上で非常に重要な要素となります。弁護士が依頼者側に案内する見通しのほとんどは,過去の経験か過去の裁判例を根拠にしたものです。

特に,公然わいせつ事件の場合,ケースによって不起訴処分を目指せることも珍しくはないため,不起訴処分を目指せる見通しの有無や目指す場合の具体的方法を正確に把握することは非常に重要となります。具体的な弁護活動の経験から,それらを詳細に案内してくれる弁護士への依頼が適切でしょう。

②コミュニケーションにストレスがないか

公然わいせつ事件の場合,事件内容に応じて見込まれる処分の軽重や行うべき弁護活動が変わってくるため,弁護士としては詳細な聴取が必要となります。もっとも,事件の内容は不名誉な内容であることが一般的なので,話したくないことや話すことを躊躇してしまう点も生じやすいところです。

そのため,弁護士に安心して事件の内容を告げることができるか,弁護士とのコミュニケーションにストレスを感じないか,という点は非常に重要なポイントになります。もし,最初の段階で弁護士とのコミュニケーションに何らかの違和感がある場合,その違和感は将来的に大きなストレスや不信感につながりやすいため,注意することをお勧めします。

③弁護士からの連絡が滞らないか

弁護士と連絡を取る方法や連絡の頻度は,弁護士により様々です。特に,「弁護士と連絡したくても連絡が取れない」という問題は,セカンドオピニオンとして相談をお受けする場合に最も多く寄せられるお話の一つです。
電話をしても常に不通となって折り返しがない,メールへの返信も全くない,といったように,弁護士との連絡が滞るという問題は生じてしまいがちです。

そのため,弁護士とはどのような方法で連絡が取れるか,どのような頻度で連絡が取れるか,という点を重要な判断基準の一つとすることは,事件解決のために有力でしょう。

なお,法律事務所によっては,事務職員が窓口になって弁護士が直接には対応しない運用であるケースも考えられます。そのような運用が希望に合わない場合は,依頼後の連絡方法を具体的に確認することも有益でしょう。

④弁護士費用に不透明な点はないか

公然わいせつ事件の弁護士費用は,弁護活動の内容によって異なることが多く見られます。特に,目撃者との示談を行うか,身柄拘束を受けているか,といった点は,弁護活動の量に直接影響するため,弁護士費用の金額を左右しやすいでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,どのような場合にいくらの弁護士費用が発生するのか,契約内容に不透明な点が生じないよう十分に確認することをお勧めします。弁護士費用の発生する条件が細かく枝分かれしていて分かりづらい場合,結果として予想に反した高額の費用となる可能性も否定はできないので,弁護士費用の内容が明快であることは重要な基準とすることが有力です。

公然わいせつ事件で弁護士を選ぶ必要

①早期釈放のため

公然わいせつ事件の場合,逮捕されても早期に釈放してもらうことができるケースは決して少なくありません。そして,早期釈放が実現できるかどうかは,その後の日常生活を大きく左右する極めて重要な点と言えます。
そのため,早期釈放を目指すことは,逮捕された公然わいせつ事件において最も注力すべきポイントと言っても過言ではありません。

この点,早期釈放を目指す場合,具体的な活動は弁護士に委ねざるを得ません。接見で必要な話し合いを行ったり,ご家族と連絡を取り合ったり,捜査機関や裁判所に必要なアクションを尽くしたりと,早期釈放に向けて弁護士でしかできないことは多岐に渡ります。
公然わいせつ事件で早期釈放を目指す場合には,弁護士への依頼を早期に検討することが肝要です。

②不起訴処分のため

公然わいせつで不起訴処分を目指す方法としては,認め事件であれば目撃者との示談,否認事件であれば法的に整理された主張立証が有力です。

この点,目撃者との示談を試みる場合,弁護士を窓口にすることが不可欠です。当事者同士で直接やり取りするわけにはいかないため,弁護士に依頼することが示談の出発点となります。
また,否認事件で必要な主張立証は,法律上の要件や個別事件の争点を正確に理解して行う必要があるため,やはり弁護士へ依頼の上,弁護士から行ってもらうことが適切な内容となるでしょう。

そのため,不起訴処分を獲得するためには,弁護士を適切に選ぶことが非常に重要となります。

③適切な取り調べ対応のため

刑事事件の捜査では取調べが不可欠です。特に,被疑者への取調べは捜査の中核であって,被疑者からどのような話が引き出せるかによってその後の捜査が決定づけられる事件も少なくありません。

逆に,被疑者の立場にある場合,取調べにどのような対応を取るのが最も有益であるのかを把握していることは非常に重要です。自分が何を話すか,どのように話すかによって,その後の捜査や処分が決定づけられる可能性もあるため,取調べ対応の方法・内容は十分に検討する必要があるでしょう。

この点,個別の事件に応じてどのような取調べ対応をすべきかは,弁護士の法的な判断を仰ぐことが適切です。そのため,取調べ対応に万全を期すためには,弁護士選びが重要なポイントとなるでしょう。

④更生や治療を図るため

公然わいせつ事件は,その原因にご本人の疾患や依存症などが関係していることも一定数見られます。その場合,更生プログラムや治療を受けることで再発防止を図る動きが非常に重要となります。
また,再発防止の努力を尽くしていることは,不起訴処分を含めた処分の軽減を目指す面でも大きな影響を及ぼすことがあるため,できる限りの試みを行うことが適切でしょう。

この点,どのように更生を図るべきか,治療を通じた改善を目指すべきか,という点は,個別の事件や当事者の状況等により様々です。闇雲に通院だけをしても,あまり意味はないということになりかねません。
そのため,事件に応じた適切な更生や治療を図りたい場合には,案内やサポートに適した弁護士選びを行うことが重要と言えます。

公然わいせつ事件における弁護士選びの準備

①状況をまとめる

弁護士選びを適切に行うためには,相談相手の弁護士に事件の内容を正確に把握してもらうことが必要となります。そのため,事件の具体的内容は整理して伝えられるようまとめることが有益でしょう。

弁護士が事件の内容の一部を把握しているかいないかで,アドバイスの内容が大きく変わる場合も否定できません。弁護士に誤解が生じることを防ぐため,起きた出来事を漏れなく伝える用意をしておくとよいでしょう。

②証拠をまとめる

手元に証拠となる物がある場合,弁護士選びに際してまとめておくことが有益です。
公然わいせつ事件では,自家用車が関わっているケースのドライブレコーダー映像や,自分が録音録画したものなどがある場合,その記録内容が弁護士の判断を左右する重要な証拠である可能性もあり得ます。
そのため,弁護士への相談に際して,それらの証拠が手元にあれば,内容を確認の上で弁護士に示す準備をすることも有力でしょう。

もっとも,認め事件の場合にはそれほど慎重に証拠を確認する必要のないケースも少なくありません。証拠の重要度は事件により異なるため,個別の取り扱いについては弁護士の判断を求めるのが適切です。

③弁護士依頼の目的をまとめる

弁護士を選ぶ際,何のために,何を目指して弁護士に依頼するのか,という点を明確にしておくことが必要です。相談の目的に関して弁護士とズレが生じると,弁護士からの案内も目的から外れたものになってしまい,結果として弁護士選びが円滑にできないためです。
もちろん,弁護士側も法律相談の目的を想像することはできるため,理解が大きくズレることは多くありませんが,その目的が自分にとってどれだけ重要なものか,という詳細なニュアンスの面は,どうしても弁護士側の想像では補いきれないものです。

この点,公然わいせつ事件では,不起訴処分を目指す場合の意欲の強さが大きな分かれ目になり得るところです。公然わいせつ事件の場合,不起訴処分を獲得する確実な手段はないため,どこまで試みても不起訴となるかどうかは不明確にならざるを得ません。そのため,見通しが不透明ながらも負担を背負ってできる限りの動きを尽くすのか,ある程度にとどめるのかは,不起訴を目指す意欲の大きさに大きく影響を受けるでしょう。

弁護士選びを実のあるものにするためにも,弁護士選びの目的は明確に表現できるようにしましょう。

④予算を決める

弁護士への依頼には費用が発生しますが,弁護士費用は法律事務所によって異なり,同じ弁護士への依頼でも依頼内容によって異なります。当然ながら,弁護士への依頼内容が多いほど弁護士費用は高額になりやすく,逆もまた然りです。
また,示談を試みる場合には,弁護士費用に加えて示談金が経済的な負担となります。弁護士費用だけを支払えても,示談金が支払えないと示談はできないため,示談金の負担も事前の想定が必要です。

そのため,弁護士選びに際しては,あらかじめ予算の範囲を明確に決めておくのが有益でしょう。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが小さければ,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

公然わいせつ事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①弁護士ごとに弁護方針が異なる可能性

公然わいせつ事件の弁護活動は,詳細な内容や方針が弁護士により異なるケースが少なくありません。それだけ,活動内容の選択肢が多く,どのような弁護活動が結果に結びつくのか,不明確であるということでもあります。

そのため,弁護士に依頼する場合には,その弁護士から案内された弁護方針が唯一のものでない可能性を踏まえておくことをお勧めします。弁護方針の内容をしっかりと理解した上で,弁護士への依頼を判断したいところです。

②本人が動く必要

公然わいせつ事件の対応としては,示談や再発防止の試みが有力ですが,いずれも当事者本人の動きが不可欠です。示談の場合,示談の条件に拘束されるのは当事者本人であるため,本人の意思決定が必要ですし,再発防止は当然ながら当事者本人が講じなければならないためです。

そうすると,弁護活動には本人の同意や対応が不可欠であるため,弁護士選びに際しても本人抜きで行わないことを強くお勧めします。
もっとも,弁護士への依頼自体がご家族であることは特に問題ありません。ご本人も状況や方針を把握し,一緒に取り組んでいける体制を取ることができれば問題ないでしょう。

③弁護士に相談できる時間の制限

弁護士への法律相談は,30分以内,又は1時間以内といった形で時間を区切って行われるのが通常です。その時間内で,必要な情報を伝え,弁護士から案内を受け,弁護士選びの検討を行う必要があります。
もっとも,その時間は決して長くはありません。無意識に相談時間を浪費してしまうと,肝心の弁護士選びに必要な話が聞けないまま相談が終了してしまう可能性もあるでしょう。

そのため,弁護士選びに際しては,弁護士への法律相談に時間的な制限があることを踏まえ,弁護士選びの基準や聞きたいことなどを可能な限り整理して法律相談に臨むことをお勧めします。そのようなスタンスは,法律相談をより有益な内容とする結果にもつながるでしょう。

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ひき逃げ事件で自首するメリットは?自首すべきケースから具体的な方法まで弁護士が解説

このページでは,ひき逃げ事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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ひき逃げ事件で自首をするべき場合

①事故の規模が重大なケース

ひき逃げ事件の責任の重さは,事故の規模に比例する傾向にあります。事故が大きいほど,ひき逃げによって生じる被害が大きくなりやすいため,その責任も重くなります。
また,事故の規模が重大である場合,「事故に気付かないまま走り去ってしまった」という可能性はほとんどなくなることになります。大規模な事故が起きるほどの衝撃がありながら,事故が起きたとは気づかなかった,という場合は考えにくいためです。

そのため,事故の規模が重大なひき逃げ事件は,加害者が事故に気付きながらひき逃げしたことが明らかである上,その行為の責任が特に重いということになります。この場合,逮捕勾留といった身柄拘束をして捜査が行われた上で,実刑判決を受けて刑務所に収容される,という流れを辿ることも十分に考えられます。

そうすると,事故の規模が重大なケースでは,最終的な刑事責任をできる限り軽減させるため,自首を行うことが非常に有力な手段となるでしょう。自首をしなければ実刑判決であったが,自首をしたことで実刑判決が避けられた,という場合も大いにあり得るところです。

ポイント
ひき逃げ事件の刑事責任は,事故の規模に比例しやすい

②被疑者として特定される見込みがあるケース

ひき逃げ事件の被疑者として自身が特定される見込みである場合,対応をせず放置しているメリットはあまりありません。なぜなら,被疑者の特定が可能なひき逃げ事件は,ほぼ確実に被疑者を特定し,被疑者に対する捜査へと移行することになるためです。
このとき,漫然と放置していると,やがて捜査を受けることになってしまい,自首の機会を失ってしまいかねません。

自首は,自分が被疑者として特定される前に行うことが必要です。自ら警察に出頭したとしても,既に被疑者として特定された後であれば,自首の要件を満たさず,自首が成立した場合のような効果は期待できなくなるでしょう。

事故状況や想定される証拠などから,自分が被疑者として特定される見込みがあるケースでは,できるだけ早期に自首の検討を行うことが適切でしょう。

ポイント
被疑者の特定が可能なひき逃げ事件では,放置するメリットに乏しい
捜査を受けた後では自首の機会が失われてしまう

③否認事件の自首

ひき逃げの心当たりがないものの,自分を加害者として捜査をされているひき逃げ事件があると分かった場合(または予想される場合),自首をするのは適切でしょうか。

この点,否認事件である以上,法的な自首を行うわけにはいきません。自首は,自身の犯罪行為を捜査機関に申告する行為であるためです。そのため,否認事件でありながら,出頭して情報提供などを積極的に行うか,という問題になるでしょう。

積極的に出頭するメリットとしては,以下の点が挙げられます。

否認事件で自ら出頭するメリット

1.逮捕リスクの低下
→後に被疑者として捜査を受ける場合でも逮捕されにくくなる

2.取り扱い状況の把握
→実際に捜査されているかが分かる場合もある

3.主張の容易さ
→捜査機関主導で取り調べなどを受ける場合より,自身の主張を伝えやすい

もっとも,否認事件でありながら進んで出頭するという行為は,一般的にはあまり見られないため,その趣旨や内容が正しく伝わるよう適切な方法で行う必要があります。行うべきかどうかも含め,慎重な検討をすべきことは間違いないでしょう。

ポイント
否認事件でありながら進んで出頭する行為にもメリットがある
もっとも,方法は慎重に検討するべき

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

ひき逃げ事件の自首は弁護士に依頼すべきか

ひき逃げ事件で自首を検討する場合,実際に自首を行う場合には,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士に依頼することで,より適切な方法での自首ができ,有益な効果が期待できます。

弁護士に依頼することの具体的なメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①逮捕を回避できる可能性が上がる

ひき逃げ事件の自首は,逮捕の回避が大きな目的になりやすいところです。ひき逃げ事件は類型的に逮捕の恐れが大きいため,自首をしなければ逮捕されるであろう事件も多く,自首による逮捕回避の重要性は高くなります。

もっとも,自首の方法や内容が不十分・不適切である場合,逮捕回避にとって十分な効果が生じない恐れがあります。せっかく自首をしても,逮捕を防ぐ効果が半減してしまうのであれば,それは非常にもったいないことです。

この点,弁護士に依頼することで,適切な方法・内容での自首ができ,逮捕回避につながりやすくなることが期待できるでしょう。自首を行う際の負担も大きく軽減できるため,自首に踏み切る心理的なハードルも低くなることが期待できます。

②取調べの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には取調べをうけることが見込まれます。自首とその後の取調べは基本的にセットとなるため,自首を行う場合には取調べに向けた準備も不可欠です。

しかしながら,自分で取調べ対応の準備を適切に行うのは容易ではありません。十分な備えを行うには,取調べの方法や内容を熟知している専門家の意見を仰ぐことが不可欠になるでしょう。

自首のサポートを弁護士に依頼している場合,自首後の取調べ対応についても,十分な備えのためのサポートを受けることが可能です。話すべきことや話すべきでないことはあるか,注意点は何かなど,取調べの対応方針を具体的に立てることができるでしょう。

③早期釈放を目指すことができる

ひき逃げ事件の場合,自首をしてもなお逮捕を防げないケースが少なくありません。その場合は,逮捕を前提にできる限り早期の釈放を目指すことが必要となります。

この点,弁護士に依頼して自首を行っていれば,逮捕後にも速やかに弁護活動を開始してもらうことができ,早期釈放を目指す動きが進められます。また,現実的に釈放が可能なタイミングや方法などについて,弁護士の専門的な判断を仰ぐことも可能になるでしょう。

④被害者への対応が早期に始められる

ひき逃げ事件は,個別の被害者が存在する事件のため,被害者にどのような対応をしたか,対応を受けた被害者がどのような心情であるか,といった点が刑事処分に大きな影響を及ぼします。ケースによっては,被害者が加害者を許しているという1点を理由に不起訴処分とされる場合すらあり得るところです。

この点,被害者の心情面に配慮するための対応は,できる限り早期に開始することが適切です。加害者からの謝罪などが速やかに行われるか長期間経過後に行われるか,どちらが望ましいかは明らかでしょう。

弁護士に依頼している場合には,自首を行った後,迅速に被害者への対応を始めることが可能です。また,やり取りの多くを弁護士に行ってもらうことができるため,被害者対応を円滑に進めることができます。

ひき逃げ事件で自首をする場合の注意点

①逮捕前に行う必要

ひき逃げ事件の自首は,逮捕を防ぐことを大きな目的とするため,逮捕されるかどうかが判断される前に行わなければなりません。逮捕後には,自首をする余地がないだけでなく,行われてしまった逮捕が遡って取り消されることなどもないため,目的を達成する余地がない状況と言わざるを得ないでしょう。

この点,逮捕されるか可能性があるかを見極めた上で,逮捕の恐れがあるならば自首をする,という動きを取りたいところですが,そのような方針を取ることも容易ではありません。逮捕されるかどうか,逮捕されるとして時期がいつか,といった点を事前に把握することは困難であるためです。

ひき逃げ事件で自首を検討する場合には,時期遅れとなることを避けられるよう,できる限り早期に進めることをお勧めします。

②損害賠償への備え

ひき逃げ事件では,被害者に対する損害賠償を想定する必要があります。被害者に生じる損害には,大きく分けて以下の2つがあります。

ひき逃げ事件で被害者に生じる損害

1.人身損害
→治療費,休業損害,精神的苦痛に対する慰謝料など

2.物的損害
→事故車両,破損した携行品,着衣など

被害者に生じる損害は,相当な規模になることも考えられる上,具体的な計算を当事者が行うのは非常に困難です。そのため,基本的には自動車保険を利用することが望ましいでしょう。損害賠償への備えとして,加入している自動車保険の確認や,対応の流れに関する保険会社への相談などを行っておくのは有益です。

③逮捕時の持参物

留置施設に持ち込む物品の例としては,以下のものが挙げられます。

留置施設に持ち込む物品の例

1.現金(1万円程度)

2.着替え(上下着衣,下着,靴下)

3.本

なお,着替えや本については,留置施設内で利用できるものに詳細なルールがあります。ルールに反した物品は利用できないため,具体的なルールを依頼する弁護士に確認の上,準備することをお勧めします。
また,留置施設へ直接の確認を行うことも可能です。警察署内に留置されている場合は,各警察署の留置管理課に問い合わせの上,差し入れたい物品について相談することで,必要な案内を受けることができます。

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【ひき逃げ事件での呼び出し】逮捕を防げる可能性や方法,弁護士依頼のメリットなどを徹底解説

このページでは,ひき逃げ事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
ひき逃げ事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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ひき逃げ事件で呼び出された場合の対応法

①心当たりがある場合

心当たりのあるひき逃げ事件で呼び出しを受けた場合,可能な限り逮捕を避けるための対応に注力することを強くお勧めします。

ひき逃げ事件は,捜査に際して逮捕されることが多い傾向にあります。その中で,逮捕しない状態で呼び出しを受けている状況は,逮捕されない可能性が残っているという意味で大きなチャンスであると言えるでしょう。この状況では,逮捕を回避するチャンスを逃さないよう対処することが極めて重要です。
具体的には,逃げ隠れをしない,言い逃れや証拠隠滅を図ろうとしていない,というスタンスであることを捜査機関に把握してもらうことが望ましいです。求められた捜査協力にはすべて応じ,事実をありのままに話すなど,捜査機関の期待する対応を尽くすことができれば,逮捕回避にとって非常に有益な動きと言えるでしょう。

心当たりのあるケースでは,逮捕リスクが十分にあることを踏まえた上で,逮捕しないとの温情的な判断を促せるような対応を見せることが重要です。

ポイント
逮捕リスクはあるが,逮捕を防ぐ余地のある状況
逃げ隠れや言い逃れ,証拠隠滅をしないスタンスであると理解してもらう

②事故発生の認識がない場合

ひき逃げ事件に関して呼び出しを受けたものの,事故を起こしたという認識がない場合,事故が発生したことに対する認識の有無を争う方針が有力です。

ひき逃げと呼ばれる行為は,交通事故発生時に自動車運転者が負う被害者の救護義務を果たさない,というものです。当然ながら,救護義務は事故が発生した場合に初めて生じる義務であり,義務に違反できるのは,事故の発生が分かっていた場合のみということになります。
そのため,事故発生の認識がない場合には,そもそも自分に救護義務が発生したとの認識もない(ため救護義務違反にならない),との主張が有力になるのです。

実際に事故が起きていたとしても,事故の発生に気づけなかったのであればひき逃げとはなりません。事故が起きてしまった場合,その点の謝罪や反省は別途行うべきところではありますが,ひき逃げの責任まで負うこととは必ずしもイコールでないことを十分に理解しましょう。

ポイント
ひき逃げは交通事故後の救護義務違反
事故発生の認識がなければ,救護義務違反にはならないため,ひき逃げではない

③事故は起きたがひき逃げではない場合

呼び出しを受けた事件に関して,確かに事故は起きたものの,被害者の救護は十分に行ったという場合,救護義務を尽くしているためひき逃げではないとの主張が有力でしょう。

比較的小さな事故だと,被害者側から身体に異常がないとの申し出があったり,その場で特に治療等の処置が必要なかったりと,医療機関への通院が直ちには生じないことも珍しくありません。しかし,その後に被害者が身体の不調を訴えて警察に相談すれば,ひき逃げ事件として捜査される可能性も十分にあり得るところです。
このときは,自分が尽くした救護の内容をできる限り具体的に説明し,ひき逃げには該当しないとの判断を促すことが一案です。

なお,交通事故が発生した際の自動車運転者の義務には,救護義務の他に警察への報告義務もあります。一定の救護を尽くしたとしても,警察への報告を怠ってしまうと報告義務の違反にはなるでしょう。
報告義務違反は,救護義務違反と比べてかなり軽微な違反行為ではありますが,刑罰法令に触れる犯罪行為であることは間違いないため,報告義務違反の点について反省を尽くすことは同時に行うのがよいでしょう。

ポイント
救護を尽くしていれば,ひき逃げには該当しない
もっとも,警察への報告義務に違反している可能性はある

ひき逃げ事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

ひき逃げ事件の場合,呼び出しに応じて出頭したその場で逮捕されるケースがないとは言い切れません。捜査機関の判断によっては,出頭した際に逮捕される可能性もあり得るでしょう。

この点,呼び出しに応じて出頭したことが逮捕の原因になる,というケースは考えにくいところです。逮捕をする方針かどうかは,呼び出す段階で概ね決まっていることが通常でしょう。
また,逮捕をする手段としては,呼び出すのでなく逮捕状を持って自宅等に直接行く方が一般的です。捜査機関のペースで進められる上,逃亡や証拠隠滅の機会を与えずに捜査ができる点で,望ましい方法と理解されることが通常と言えます。
もっとも,逮捕を決めてはいるものの,警察への出頭を求めるという動きが取られる場合も少数ながらあり得ます。理由としては,逃亡は考えにくいと判断されている,住居が不定のため呼び出した方が円滑である,といったケースが考えられますが,いずれにしても捜査機関の裁量的な判断になりやすいところです。

具体的な逮捕の可能性は事件によりますが,逮捕の可能性が高くなりやすいケースには以下のような特徴が指摘できます。

逮捕の可能性が高いケース

1.事故の過失が大きい
→刑事責任が重いため,逮捕の可能性が高くなりやすい

2.受傷結果が重大である
→事件の重大性を踏まえ,逮捕の可能性が高くなりやすい

3.事故発生の認識が容易である
→ひき逃げをすることの悪質さが大きいと評価され,逮捕の可能性が高くなりやすい

ひき逃げ事件は,類型的に逮捕の可能性が高い傾向にあるため,呼び出しを受けたからといって油断することなく,逮捕を防ぐために最善を尽くすことをお勧めします。

ひき逃げ事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①事故車両を特定したとき

ひき逃げ事件の捜査は,事故車両を特定することを最初の目標とすることが多く見られます。車両が特定できれば,それを足掛かりに当事者を特定できるケースが多いためです。
そして,事故車両が特定できた場合,所有者や使用者が事情を知っている可能性が高いため,これらの人物を呼び出して話を聞こうとすることが考えられます。

事故車両の特定後に警察が呼び出すタイミングは,特定された時期によって大きく異なります。もっとも,車両を特定できてから呼び出しまでにそれほど長い時間を置くことはあまりないでしょう。証拠の散逸を防ぐためにも,車両の特定後は比較的速やかに呼び出されることが一般的です。

②現場の実況見分を行うとき

交通事故の重要な捜査手続の一つに,実況見分があります。実況見分は,事故発生場所の状況や事故態様などを現場で確認し,書面化することで捜査記録とする手続を言います。そして,実況見分に際しては,事故当事者に立ち会いをしてもらい,詳細な流れや場所を指摘してもらいながら進めることが通常です。そのため,実況見分を行う際には呼び出されることが見込まれるでしょう。

実況見分は,事故内容を把握するために必要となるため,捜査の比較的初期段階で行うことが通常です。多くの場合,事故から比較的早期の段階で呼び出されることとなるでしょう。

③車両の持参を求めるとき

ひき逃げを含む交通事故の事件では,事故車両そのものが重要な物的証拠となります。車両に損傷のあることが交通事故発生の裏付けになったり,損傷箇所や内容が事故態様の立証に影響したりと,事故車両が結論を左右することも一定数見られます。
そのため,捜査の一環として事故車両の持参を求め,写真撮影をするなどして証拠化する運用が広く行われています。

車両の持参を求める場合には,取調べ等にあわせて事故車両を運転しての出頭を依頼することが少なくありません。そのため,取調べと同じ機会に行われることが見込まれやすいでしょう。
事前に車両の持参を求められた場合には,基本的にその求めには応じる方が適切です。

④当事者間の連絡先交換を促すとき

交通事故では,加害者側から被害者側への金銭賠償を行わせるため,警察が当事者間での連絡先交換を促すことが多く行われます。当事者間で連絡先を交換した後,加害者が自動車保険担当者に引き継ぐなどすることで,自動車保険による被害者への対応が開始されることとなりやすいでしょう。

この点,警察が当事者間の連絡先交換を促す場合には,双方に出頭してもらい,警察署の中でやり取りをさせることがあります。当事者間のトラブルを防ぐため,担当警察官が立ち会うこともあり得ます。
そのため,当事者間で連絡先交換を行うよう求める目的で呼び出しを受けることが考えられるでしょう。

呼び出しの時期は,事故から間もないタイミングであることが一般的です。被害者保護のための動きであるため,極力早期に進めようとすることが多いでしょう。

ひき逃げ事件の呼び出しに応じたときの注意点

①逮捕の回避を目指す

ひき逃げ事件は,類型的に逮捕の可能性が高いため,逮捕が回避できるかどうかは非常に重要な問題となります。逮捕されるかどうかの判断は,極めて大きな分岐点と言えるでしょう。

この点,呼び出しを受けている状況は,少なくとも逮捕する方針とは決まっていないことが見込まれるため,逮捕の回避を目指す動きの重要度が高い状況であることが多いです。ひき逃げ事件でありながら呼び出しを受けているということを大きなチャンスと理解し,逮捕の回避にできる限り注力することが有益となりやすいでしょう。

②事故発生が認識できなかったと争う場合

ひき逃げ事件の否認事件では,「事故の発生が認識できなかった」との理由で否認主張されることが非常に多く見られます。事故の発生が認識できなければ,ひき逃げを意図して行う余地がないため,ひき逃げ事件の刑事責任を問われることはなくなります。

もっとも,「事故の発生が認識できなかった」かどうかは,本人の主観を基準とするのでなく,客観的な判断となる点に注意が必要です。当事者自身は認識できていなかったとしても,一般人であれば認識できた状況と言える場合,主張は認められません。

事故発生が認識できなかったとの主張をする場合には,通常の一般人が認識できないような状況,内容であったということを主張する必要がある点に留意しましょう。

③自動車運転者の義務を理解する

ひき逃げとは,「救護義務」という自動車運転者の義務に違反したことを指すのが通常です。この点,自動車運転者には,交通事故が発生したときに大きく分けて以下の2つの義務が発生します。

交通事故発生時の自動車運転者の義務

1.救護義務
→負傷者を保護し,その生命や身体を助ける義務

2.報告義務
→事故の発生を警察に報告する義務

また,救護義務が発生するのは「交通事故」が発生した場合ですが,具体的には「車両等の交通による人の死傷」を指します。車の交通に伴って人が死傷した場合に,自動車運転者は被害者を救護する義務を負うことになります。

ひき逃げも犯罪の一つである以上,犯罪に当たるかどうかの厳密な基準をクリアする必要があります。自身の行為が犯罪に当たるか,当たるとすればなぜかを把握することは,適切な対応を尽くすための重要なポイントになるため,自動車運転者の負う義務は正しく理解したいところです。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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ひき逃げは逮捕されるか?逮捕回避の方法は?ひき逃げ事件の流れを解説

ひき逃げは重大な交通犯罪とされ、発覚すれば逮捕に至る可能性が高い行為です。突然の逮捕や取調べに直面すると、仕事や生活に大きな影響が及び、不安を抱える方も少なくありません。本記事では「ひき逃げは必ず逮捕されるのか」「逮捕後はどのような流れになるのか」といった疑問に答えるとともに、ひき逃げ事件の逮捕を回避するための方法について弁護士が分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

ひき逃げをすると逮捕されるか?

ひき逃げ事件は,逮捕の可能性が十分に考えられる事件類型です。逮捕を避ける手段に乏しい場合も珍しくはないため,事件によっては逮捕を覚悟すべきケースも少なくはないでしょう。

ひき逃げ事件は類型的に逮捕の可能性が高いものですが,逮捕が見込まれやすい理由としては,以下の点が挙げられます。

ひき逃げ事件で逮捕されやすい理由

1.事件の重大性

2.逃亡の恐れ

3.被害者の救済

【1.事件の重大性】

ひき逃げは,非常に違法性の程度が大きい犯罪行為と考えられています。ひき逃げとは,自動車運転者が交通事故後に被害者を救護する義務(救護義務)に反してその場を立ち去ることを言いますが,それだけ救護義務を果たすことが重要と理解されているのです。

刑事事件の場合,事件が重大であるほど処分も重くなるため,重い処分を避ける目的で証拠隠滅などされる危険が大きい,と評価されることが通常です。そのため,重大であるひき逃げ事件は,証拠隠滅等を防ぐために逮捕されやすい事件類型ということになります。

【2.逃亡の恐れ】

逮捕するかどうかは,逃亡の恐れがあるかどうかを重要な判断基準として決められます。この点,ひき逃げ事件は,まさに事故現場から逃亡してしまった事件であるため,類型的に逃亡の恐れが高いと評価されやすい傾向にあります。

また,ひき逃げ事件は,事故の発生に気づいていない場合を除き,事件が捜査されていることが加害者にとって明らかです。被害者側が警察に通報などをしない可能性はほとんどないため,ひき逃げの自覚があれば,事件は捜査されていると理解するのが通常でしょう。
そうすると,加害者が逃亡を続ける動機はさらに大きくなってきます。ひき逃げをした加害者が逃亡を継続することになりやすいため,今後の逃亡を防ぐためにも逮捕の可能性が高くなります。

【3.被害者の救済】

ひき逃げ事件では,被害者に相当程度大きな損害が生じているケースが少なくありません。被害者は身体や車両にダメージを受けていることが多く,その救済が不可欠な状況となりやすいでしょう。

この点,被害者の救済は,加害者が損害を補填する形で実現する必要があります。そうすると,加害者を特定した上で,加害者が逃れられないよう逮捕することが,被害者の救済にとって適切な方法と判断されやすいことになります。
また,被害者の感情面に配慮する観点でも,逮捕をしない取り扱いは被害者の理解が得られづらいため,逮捕をすることが有力になりやすいところです。

ひき逃げで逮捕を避ける方法

①自ら警察に出頭する

ひき逃げ事件で逮捕の可能性が高まる大きな理由の一つが,現に逃亡をしており今後も逃亡することが危険視される,という点にあります。裏を返せば,逃亡の恐れがないと判断してもらうことができれば,逮捕の可能性は大きく後退するケースが多数です。

そのため,自ら警察に出頭することで,逃亡の意思がないことを表明する方法は有力と言えます。一般的に,自ら出頭した人がその後に逃走するというのは,不合理な行為であって考えにくいとの理解がなされるでしょう。
また,自ら出頭する行為は,捜査機関に犯罪事実などが発覚していない段階であれば自首に該当する可能性があります。自首が成立すれば,逮捕回避や処分の軽減などに対して,より有益な効果が期待できます。

②被害者への謝罪を尽くす

ひき逃げ事件における逮捕は,被害者保護の観点を強く考慮したものであることが少なくありません。つまり,重大な被害を受けた被害者の無念や憤りを踏まえ,被疑者にも相応の重い措置(=逮捕)を行う,という判断がなされやすいところです。

そうすると,被害者側が強い被害感情を抱えておらず,被害者保護のために逮捕する必要はないと判断してもらうことができれば,逮捕の可能性は大きく減少することが見込まれます。そのため,加害者としては被害者側に可能な限りの謝罪を尽くし,その感情に配慮した行動を取ることが有力な手段となります。

なお,被害者に対しては,感情面はもちろん経済面でも配慮の必要があります。経済的な配慮のためには,自動車保険の担当者へと円滑に引き継ぐなど,保険を通じた支払の便宜を図る動きが一案でしょう。

③金銭賠償を行う

ひき逃げ事件では,経済的な損害を被った被害者が泣き寝入りになることを防げるよう,加害者の身元を確保する目的で逮捕される場合もあります。被害者としては,捜査機関が加害者を特定し,逮捕してくれなければ,現実的に損害賠償を請求できないというケースも決して珍しくありません。

逆に,加害者から被害者への金銭賠償が尽くされていれば,被害者が金銭を回収するための配慮として逮捕をする必要はなくなります。また,適切な金銭賠償が行われている場合,当事者間の関係も比較的解決に近い状態であることが見込まれるため,逮捕という強い態様の捜査をする必要性はより低くなることが期待できるでしょう。

ひき逃げとは

ひき逃げの意味

ひき逃げは,法律で定められた語句ではありませんが,人身事故発生時,自動車運転者が救護義務に違反したことを指すのが一般的です。
つまり,被害者をひいておきながら,その場から逃げることを指して,俗にひき逃げと呼ばれています。

運転者は、交通事故を起こした際には、負傷者の救護や警察への報告など一定の義務を負いますが、救護を怠った場合には「救護義務違反」として処罰の対象となります。
この救護義務違反がいわゆる「ひき逃げ」に当たるものであり、極めて重い非難を受ける行為とされています。

参照:交通事故で救護義務違反(ひき逃げ事件)として処罰されないために

ひき逃げの刑罰

ひき逃げは、複数の法律に違反する重大な犯罪行為です。
交通事故を起こした後に現場から立ち去る行為は、単一の罪名ではなく、複数の法的責任を同時に問われることになります。

ひき逃げが重く処罰される理由は、被害者の救護義務を怠る点と、事故の発覚を免れようとする隠ぺいの意図にあります。事故直後の適切な救護措置は被害者の生命を左右する可能性があるため、法律はこれを特に重視し、厳しい刑罰を定めています。

ひき逃げの場合、自動車運転死傷行為処罰法と道路交通法の両方が適用されるのが一般的です。

① 自動車運転死傷行為処罰法違反

運転上の過失や危険な運転によって人を死傷させた場合、以下の罪が成立します。

過失運転致死傷罪(第5条)
→ 7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

危険運転致死傷罪(第2条)
→ 致傷の場合は15年以下の拘禁刑、致死の場合は1年以上20年以下の拘禁刑

② 道路交通法違反

事故後の対応義務に関する違反として、次の2つの罪が問われます。

救護義務違反(第72条1項前段)
→ 5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

報告義務違反(同条後段)
→ 3か月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

ひき逃げで逮捕された後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

ひき逃げで逮捕された場合の不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

ひき逃げの逮捕に関しては弁護士に依頼すべきか

ひき逃げ事件の逮捕を防ぎたい場合や,逮捕後の対応を万全にしたい場合は,弁護士への依頼が適切です。弁護士への依頼によって,最悪の事態を防ぎ,身柄拘束に伴う不利益を最小限にとどめることが可能になり得るでしょう。
ひき逃げ事件の逮捕に関して弁護士に依頼するメリットとしては,以下のような点が挙げられます。

①逮捕リスクの高さを把握できる

同じひき逃げ事件であっても,具体的な逮捕リスクの程度は個別の事件によって様々に異なります。もっとも,具体的な事件における逮捕リスクの高さを正確に把握することは,決して容易ではなく,専門家以外には困難である場合がほとんどでしょう。

この点,弁護士に依頼することで,自分の事件はどの程度の逮捕リスクがある内容か,自分の現状はどの程度の逮捕リスクがある状況か,といった点を理解することができます。逮捕リスクの高さを正しく理解することは,事件に応じた適切な対応方法の判断と直結するため,非常に重要なポイントということができるでしょう。

②手続の見通しが分かる

ひき逃げ事件の場合,見込まれる手続や処分の内容によって,手続の流れに複数の可能性があります。そして,複数の可能性のうちどの流れであるかによって,いつどのような対応をすべきかが変わってくるため,自分の事件はどの流れを辿るのか,正しく見通すことが必要となります。

この点,弁護士に依頼すれば,手がかりとなる事情をもとに,今後の手続の見通しを立ててもらうことが可能です。また,その見通しを踏まえて,どのタイミングでどのような対応をするか,といった方針を検討してもらうこともできるでしょう。
ケースによっては,見通しを一つに絞ることが難しい場合もあり得ますが,現実的に見込まれる可能性が絞れるだけでも,その後の検討の容易さは極めて大きく変わるでしょう。

③逮捕後の対応を迅速にしてもらえる

ひき逃げ事件の場合,逮捕される可能性を踏まえた検討や対応も不可欠です。逮捕が避けられず,逮捕後の対応が必要となったときには,できるだけ早く弁護士に適切な対応を講じてもらうことが重要となります。

この点,あらかじめ弁護士に依頼していれば,逮捕後の弁護活動を迅速に開始してもらうことが可能です。弁護士に依頼していない状態だと,家族など周囲の関係者が弁護士探しをし,弁護活動を依頼してもらう必要がありますが,そこにはやむを得ず大きなタイムロスが生じます。
逮捕後の手続に法律上の時間制限があることも踏まえると,速やかに弁護活動が開始できるメリットは非常に大きなものと言えます。

ひき逃げの逮捕に関する注意点

①対応を要する時期

ひき逃げ事件では,逮捕を防ぐための対応をいつ要するか,という点がケースにより様々です。被害者側が捜査を求めるタイミング,捜査の結果加害者が特定されるタイミングなどが,個々人の判断や発見される証拠等によって大きく異なるためです。事件によっては,事故発生直後に対応をしなければならないこともあり,一方で一向に逮捕できる状況に至らない事件もあります。

そのため,ひき逃げ事件の逮捕に関しては,いつ具体的な対応を要するかが事前には分からない,という点に注意することが必要です。この点,通常,対応が遅れるメリットはほとんどないため,対応するのであれば早めに行うに尽きるでしょう。

②逮捕の回避が困難な場合

ひき逃げ事件の場合,捜査の進展などによっては,逮捕を回避するための方策を講じるための時間的余裕がない場合も少なくありません。捜査機関が速やかに加害者を特定した場合,何をする間もなく逮捕されてしまう場合は十分に考えられます。

また,捜査機関が被疑者の逮捕を決めており,その判断が変わる余地がない場合には,逮捕回避の努力を尽くしても結果的に逮捕が防げない場合はあり得ます。重大な事件類型である以上,逮捕を避ける手段がない可能性も踏まえておくことが必要です。

③逮捕後の考え方

ひき逃げ事件は,逮捕が防げない可能性も低くはないため,逮捕された場合の考え方についても押さえておくことが適切です。逮捕後の対応を十分に尽くせれば,最終的な結論はより不利益の小さなものになることも十分に考えられます。

この点,逮捕後の基本的な考え方としては,一定期間の身柄拘束を想定しつつ,最終的な刑事処罰の回避や軽減を目指す,という方針が有力でしょう。
ひき逃げ事件で逮捕された場合,速やかに釈放されるケースは残念ながら多くありません。事件類型上,収集の必要な証拠が多く想定される上に,逃亡や証拠隠滅の危険が大きいと評価されやすいためです。そのため,早期釈放のみに執着することは結果の伴わないことが多いでしょう。
一方,最終的な刑事処分が軽減する可能性は十分にあり得ます。被害者側への対応などを通じて,処分の軽減が期待される状況となれば,結果的に釈放が早まる可能性すらあり得るところです。

そのため,逮捕後の基本的な考え方としては,早期釈放に執着せず処分の軽減を目指す,というスタンスをお勧めします。

ひき逃げの自首に関するポイント

ひき逃げ事件で自首をするべき場合

①事故の規模が重大なケース

ひき逃げ事件の責任の重さは,事故の規模に比例する傾向にあります。事故が大きいほど,ひき逃げによって生じる被害が大きくなりやすいため,その責任も重くなります。
また,事故の規模が重大である場合,「事故に気付かないまま走り去ってしまった」という可能性はほとんどなくなることになります。大規模な事故が起きるほどの衝撃がありながら,事故が起きたとは気づかなかった,という場合は考えにくいためです。

そのため,事故の規模が重大なひき逃げ事件は,加害者が事故に気付きながらひき逃げしたことが明らかである上,その行為の責任が特に重いということになります。この場合,逮捕勾留といった身柄拘束をして捜査が行われた上で,実刑判決を受けて刑務所に収容される,という流れを辿ることも十分に考えられます。

そうすると,事故の規模が重大なケースでは,最終的な刑事責任をできる限り軽減させるため,自首を行うことが非常に有力な手段となるでしょう。自首をしなければ実刑判決であったが,自首をしたことで実刑判決が避けられた,という場合も大いにあり得るところです。

ポイント
ひき逃げ事件の刑事責任は,事故の規模に比例しやすい

②被疑者として特定される見込みがあるケース

ひき逃げ事件の被疑者として自身が特定される見込みである場合,対応をせず放置しているメリットはあまりありません。なぜなら,被疑者の特定が可能なひき逃げ事件は,ほぼ確実に被疑者を特定し,被疑者に対する捜査へと移行することになるためです。
このとき,漫然と放置していると,やがて捜査を受けることになってしまい,自首の機会を失ってしまいかねません。

自首は,自分が被疑者として特定される前に行うことが必要です。自ら警察に出頭したとしても,既に被疑者として特定された後であれば,自首の要件を満たさず,自首が成立した場合のような効果は期待できなくなるでしょう。

事故状況や想定される証拠などから,自分が被疑者として特定される見込みがあるケースでは,できるだけ早期に自首の検討を行うことが適切でしょう。

ポイント
被疑者の特定が可能なひき逃げ事件では,放置するメリットに乏しい
捜査を受けた後では自首の機会が失われてしまう

③否認事件の自首

ひき逃げの心当たりがないものの,自分を加害者として捜査をされているひき逃げ事件があると分かった場合(または予想される場合),自首をするのは適切でしょうか。

この点,否認事件である以上,法的な自首を行うわけにはいきません。自首は,自身の犯罪行為を捜査機関に申告する行為であるためです。そのため,否認事件でありながら,出頭して情報提供などを積極的に行うか,という問題になるでしょう。

積極的に出頭するメリットとしては,以下の点が挙げられます。

否認事件で自ら出頭するメリット

1.逮捕リスクの低下
→後に被疑者として捜査を受ける場合でも逮捕されにくくなる

2.取り扱い状況の把握
→実際に捜査されているかが分かる場合もある

3.主張の容易さ
→捜査機関主導で取り調べなどを受ける場合より,自身の主張を伝えやすい

もっとも,否認事件でありながら進んで出頭するという行為は,一般的にはあまり見られないため,その趣旨や内容が正しく伝わるよう適切な方法で行う必要があります。行うべきかどうかも含め,慎重な検討をすべきことは間違いないでしょう。

ポイント
否認事件でありながら進んで出頭する行為にもメリットがある
もっとも,方法は慎重に検討するべき

ひき逃げ事件の自首は弁護士に依頼すべきか

ひき逃げ事件で自首を検討する場合,実際に自首を行う場合には,弁護士への依頼を強くお勧めします。弁護士に依頼することで,より適切な方法での自首ができ,有益な効果が期待できます。

弁護士に依頼することの具体的なメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①逮捕を回避できる可能性が上がる

ひき逃げ事件の自首は,逮捕の回避が大きな目的になりやすいところです。ひき逃げ事件は類型的に逮捕の恐れが大きいため,自首をしなければ逮捕されるであろう事件も多く,自首による逮捕回避の重要性は高くなります。

もっとも,自首の方法や内容が不十分・不適切である場合,逮捕回避にとって十分な効果が生じない恐れがあります。せっかく自首をしても,逮捕を防ぐ効果が半減してしまうのであれば,それは非常にもったいないことです。

この点,弁護士に依頼することで,適切な方法・内容での自首ができ,逮捕回避につながりやすくなることが期待できるでしょう。自首を行う際の負担も大きく軽減できるため,自首に踏み切る心理的なハードルも低くなることが期待できます。

②取調べの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には取調べをうけることが見込まれます。自首とその後の取調べは基本的にセットとなるため,自首を行う場合には取調べに向けた準備も不可欠です。

しかしながら,自分で取調べ対応の準備を適切に行うのは容易ではありません。十分な備えを行うには,取調べの方法や内容を熟知している専門家の意見を仰ぐことが不可欠になるでしょう。

自首のサポートを弁護士に依頼している場合,自首後の取調べ対応についても,十分な備えのためのサポートを受けることが可能です。話すべきことや話すべきでないことはあるか,注意点は何かなど,取調べの対応方針を具体的に立てることができるでしょう。

③早期釈放を目指すことができる

ひき逃げ事件の場合,自首をしてもなお逮捕を防げないケースが少なくありません。その場合は,逮捕を前提にできる限り早期の釈放を目指すことが必要となります。

この点,弁護士に依頼して自首を行っていれば,逮捕後にも速やかに弁護活動を開始してもらうことができ,早期釈放を目指す動きが進められます。また,現実的に釈放が可能なタイミングや方法などについて,弁護士の専門的な判断を仰ぐことも可能になるでしょう。

④被害者への対応が早期に始められる

ひき逃げ事件は,個別の被害者が存在する事件のため,被害者にどのような対応をしたか,対応を受けた被害者がどのような心情であるか,といった点が刑事処分に大きな影響を及ぼします。ケースによっては,被害者が加害者を許しているという1点を理由に不起訴処分とされる場合すらあり得るところです。

この点,被害者の心情面に配慮するための対応は,できる限り早期に開始することが適切です。加害者からの謝罪などが速やかに行われるか長期間経過後に行われるか,どちらが望ましいかは明らかでしょう。

弁護士に依頼している場合には,自首を行った後,迅速に被害者への対応を始めることが可能です。また,やり取りの多くを弁護士に行ってもらうことができるため,被害者対応を円滑に進めることができます。

ひき逃げ事件で自首をする場合の注意点

①逮捕前に行う必要

ひき逃げ事件の自首は,逮捕を防ぐことを大きな目的とするため,逮捕されるかどうかが判断される前に行わなければなりません。逮捕後には,自首をする余地がないだけでなく,行われてしまった逮捕が遡って取り消されることなどもないため,目的を達成する余地がない状況と言わざるを得ないでしょう。

この点,逮捕されるか可能性があるかを見極めた上で,逮捕の恐れがあるならば自首をする,という動きを取りたいところですが,そのような方針を取ることも容易ではありません。逮捕されるかどうか,逮捕されるとして時期がいつか,といった点を事前に把握することは困難であるためです。

ひき逃げ事件で自首を検討する場合には,時期遅れとなることを避けられるよう,できる限り早期に進めることをお勧めします。

②損害賠償への備え

ひき逃げ事件では,被害者に対する損害賠償を想定する必要があります。被害者に生じる損害には,大きく分けて以下の2つがあります。

ひき逃げ事件で被害者に生じる損害

1.人身損害
→治療費,休業損害,精神的苦痛に対する慰謝料など

2.物的損害
→事故車両,破損した携行品,着衣など

被害者に生じる損害は,相当な規模になることも考えられる上,具体的な計算を当事者が行うのは非常に困難です。そのため,基本的には自動車保険を利用することが望ましいでしょう。損害賠償への備えとして,加入している自動車保険の確認や,対応の流れに関する保険会社への相談などを行っておくのは有益です。

③逮捕時の持参物

留置施設に持ち込む物品の例としては,以下のものが挙げられます。

留置施設に持ち込む物品の例

1.現金(1万円程度)

2.着替え(上下着衣,下着,靴下)

3.本

なお,着替えや本については,留置施設内で利用できるものに詳細なルールがあります。ルールに反した物品は利用できないため,具体的なルールを依頼する弁護士に確認の上,準備することをお勧めします。
また,留置施設へ直接の確認を行うことも可能です。警察署内に留置されている場合は,各警察署の留置管理課に問い合わせの上,差し入れたい物品について相談することで,必要な案内を受けることができます。

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【ひき逃げ事件の不起訴処分】不起訴となる具体的な可能性をケースごとに詳細解説

このページでは,ひき逃げ事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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ひき逃げ事件で不起訴を目指す方法

①金銭賠償

ひき逃げ事件では,怪我をした被害者に具体的な損害が生じています。そのため,生じた損害を補填することは,処分の軽減を目指す上で非常に重要な動きとなるところです。
損害を補填する具体的な方法は,金銭の支払であることが通常です。精神的苦痛などを金銭換算し,適切な金額を支払うことで損害の補填とする,ということになります。

この点,自動車保険(任意保険)に加入している場合は,基本的な金銭賠償の対応は保険会社で行うことが通常です。損害の金銭換算にも一定のルールがあるため,そのルールに沿った適切な支払を期待することができるでしょう。

もっとも,保険による金銭賠償はいわば加害者の義務であり,当然の対応ではあるため,保険から賠償をしたのみで不起訴が目指せるわけではありません。金銭賠償は,不起訴を目指す場合の前提であるとの理解が適切でしょう。

ポイント
被害者の損害を金銭で補填することが適切
もっとも,金銭賠償はあくまで不起訴を目指す前提にとどまる

②示談

ひき逃げ事件の場合,具体的な被害者が存在するため,被害者の意向が刑事処分を大きく左右しやすい傾向にあります。被害者の許し(=宥恕(ゆうじょ))が得られているかどうかが,起訴不起訴の判断に決定的な影響を及ぼすことも珍しくはありません。
そのため,加害者の立場としては,被害者との間で示談を行い,被害者の宥恕を獲得することが非常に重要な試みと言えます。

ちなみに,ここでの示談は,保険会社が行う金銭の支払とは別のものであり,被害者の宥恕を内容とする合意を指します。保険会社は,金銭賠償のみを加害者の代わりに行う立場であるため,被害者が宥恕するかどうか,という点に関与することはできません。そのため,被害者の宥恕を獲得したい場合には,保険会社とは別に,積極的に被害者側との示談を試みることが必要となります。

ポイント
被害者側の許しの有無が起訴不起訴を左右しやすい
保険会社の対応とは別に,被害者との間で示談を目指すことが適切

③自首

ひき逃げ事件がまだ捜査されていない,あるいは捜査されているものの被疑者が特定できていない,という段階では,不起訴を目指す手段として自首が有力となります。
自首は,自ら捜査機関に犯罪事実を告げる行動であるため,深い反省の意思が表明されているとの評価につながりやすい傾向にあります。起訴不起訴の判断は,被疑者の反省状況を踏まえて行われるものであるので,自首を通じて深い反省が示されていることは,不起訴処分を目指すための重要な材料となることが見込まれるでしょう。

もっとも,ひき逃げ事件の場合,事件自体の重大性があるため,自首によって確実に不起訴が実現するというわけではありません。特に被害結果が重大なケースでは,自首を試みても結果的に起訴されてしまう可能性も踏まえておくことをお勧めします。

ポイント
捜査前の段階であれば,自首が有力
もっとも,重大事故では不起訴が期待できない可能性も

④否認事件の場合

否認事件では,犯罪の成立することが証明できない,という形での不起訴を目指すことが有力です。法的には,「嫌疑なし」(犯罪の疑いがないと分かること)または「嫌疑不十分」(犯罪事実を立証する証拠が不十分であること)と呼ばれます。

この点,ひき逃げ事件の否認事件で最も多いのが,自動車運転者に「交通事故が発生したことの認識がなかった」というケースです。
ひき逃げ事件は,交通事故が起きた際の自動車運転者が負う救護義務に違反するものであるため,自動車運転者に「救護義務が発生している」との認識が必要となります。そして,「救護義務が発生している」との認識があると言えるためには,事故発生の認識が必要です。交通事故の発生を認識できている場合にのみ,救護義務の発生が認識できるためです。

ひき逃げ事件の前提となる交通事故には,大小様々なものがあります。そのため,特に事故の規模が小さく,自動車運転者からは事故が起きたかどうかも不明確であるという場合には,事故発生の認識を欠き,不起訴となる可能性があり得るところです。

ポイント
否認事件では,犯罪の立証ができないとの結論を目指す
事故発生の認識がない場合には不起訴が見込まれる

ひき逃げ事件で不起訴になる可能性

ひき逃げ事件で不起訴になることは容易ではありません。ひき逃げ事件は,被害者の生命や身体に大きな影響を及ぼしやすい重大事件であるため,「反省している」「初犯である」といった一般的な事情のみで不起訴になる可能性が非常に低い事件類型と言うことができるでしょう。

また,ひき逃げ事件の場合,事故現場を無責任に離れてしまっている,という点の重みが非常に重視されやすい傾向にあります。交通事故のみであれば,むしろ比較的軽微な事件類型であることも少なくありませんが,ひき逃げが伴うと事件の重大性が極めて大きく変わってきます。それだけ,現場を離れる行為の刑事責任が重く評価されているのです。

もっとも,事故が非常に軽微であり,被害者の受傷も軽微な場合であれば,被害者との解決状況次第で不起訴となる可能性も十分に考えられます。この場合は,事件の重大性が比較的小さいと理解されやすいためです。
また,事故の規模が非常に小さい場合には,自動車運転者の感じる衝撃も小さいため,事故の発生を認識できなかった可能性が高くなります。事故発生の認識ができない場合,運転者に救護義務は発生しないため,犯罪の立証ができないことを理由に不起訴となる可能性も出てくることがあり得ます。

ポイント
重大事件のため,反省や初犯といった事情のみで不起訴になる可能性は非常に低い
軽微な事故であれば,不起訴処分の可能性も高くなる

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

ひき逃げ事件で不起訴を目指す場合の注意点

①自動車保険の利用は不起訴の根拠にならない

交通事故の場合,被害者への金銭賠償のために自動車保険を利用することが一般的です。任意保険に加入していれば,被害者の経済的な損害は自動車保険が全て賠償してくれることになりやすいでしょう。
そして,自動車保険と被害者との間では,金銭面の解決内容が合意できた場合,示談を取り交わすことが見込まれます。示談により,加害者と被害者の間では一定の解決となります。

しかしながら,自動車保険を通じて金銭賠償の合意ができた(示談ができた)としても,それだけで不起訴処分となるわけではない,という点に十分な注意が必要です。なぜなら,自動車保険ができる解決は,あくまで金銭面のみであるため,不起訴のために重要な被害者の意向(起訴を望むか不起訴を望むか)という面に対しては何も手当てがなされていないためです。

不起訴を目指すためには,自動車保険の対応とは別に,被害者に不起訴を望む意向を表明してもらうことが重要となります。「示談」という言葉に惑わされることのないようにしましょう。

②示談をしても不起訴にならない可能性

ひき逃げ事件で不起訴を目指すためには,被害者との示談が非常に重要となります。ただ,示談ができたからといって必ずしも不起訴にはならないという点には注意が必要です。

ひき逃げ事件は,特定の被害者に対する犯罪であると同時に,公共の利益に悪影響を及ぼす犯罪であると理解されています。自動車運転者が被害者を救護しないでひき逃げをしてしまうと,社会の秩序が大きく乱れてしまうため,ひき逃げ事件は社会にも損害を及ぼす事件類型とされているのです。
被害者との示談は,被害者に生じた損害に対する許しではありますが,社会に生じた損害を許すものにはなりません。そのため,社会における公共の利益を害した,という面が重視された場合,示談が成立していてもなお不起訴は獲得できない可能性があり得るのです。

③身柄事件の期間制限

ひき逃げ事件は,逮捕勾留といった身柄拘束を伴う捜査が行われやすいですが,身柄拘束には厳密な期間制限があります。
逮捕されると,最大72時間以内に「勾留」されるかどうかの判断が行われます。勾留された場合には10日間の身柄拘束が引き続き,その後に「勾留延長」となれば更に最大10日間の拘束を受けることとなります。

逮捕から起訴までの流れ

もっとも,裏を返せば,逮捕後に捜査が行われるのはこの最大23日程度の期間に限られます。不起訴を目指すのであれば,この限定された期間の中で必要な弁護活動を尽くし,不起訴の判断に必要な結果を獲得することが求められますが,これは容易なことではありません。

身柄事件では,期間制限が厳格であるため,獲得できる結果に限りが生じ得ることを注意しておくようにしましょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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ひき逃げ事件で弁護士を選ぶタイミング

①自首を試みるとき

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。犯罪事実や犯人が捜査機関に知られる前に,自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

ひき逃げ事件の場合,被害者は基本的に捜査機関に捜査を依頼することになりやすいところです。もっとも,直ちに加害者が特定できないケースも少なくないため,加害者の特定前に自首がなされれば,有益な法律上の効果が期待できるでしょう。
もっとも,具体的に自首を試みることは相当にハードルが高いため,当事者自身で自首を決断し実行するのは容易ではありません。そのため,自首を検討する場合には,弁護士に依頼をし弁護士と協同して行うことが非常に有力と言えます。

ひき逃げ事件では,自首がなければ逮捕されていたが自首したために逮捕を免れた,という場合も珍しくはないため,弁護士とともに自首を検討することは極めて重要な行動となるでしょう。

ポイント
ひき逃げ事件でも,加害者特定前であれば自首は可能
自首が逮捕回避につながることもある

②逮捕されたとき

ひき逃げ事件は,逮捕の可能性が十分に考えられる事件類型です。事故現場から逃走してしまった事件であり,類型的に逃亡が懸念されやすい事件類型であることから,逃亡を防ぐため逮捕をする必要性が高いと評価されやすいのです。

もっとも,逮捕によって刑事手続や処分の方向性が決まるわけではありません。逮捕は,あくまで捜査手続の一つに過ぎず,被疑者に対する捜査の初期段階と言うことも可能です。そのため,逮捕後の対応によっては,刑事処分の結果に大きな影響を及ぼす可能性があり,逮捕されたときこそその後の動きを迅速に検討・判断すべきでしょう。

逮捕直後は,弁護士選びが非常に重要な局面と言えます。早期に有効な弁護活動を開始してもらうためにも,速やかに妥協のない弁護士選びを行うことをお勧めします。

ポイント
ひき逃げ事件は逮捕の可能性が十分にある
もっとも,逮捕は捜査の初期段階であり,その後の対応を速やかに決めるのが有益

③起訴されたとき

ひき逃げ事件は,その内容の重大性から,起訴が免れられないケースも珍しくありません。そして,起訴された後は,公開の法廷で裁判を受け,刑事処罰が決定されることになります。

この点,ひき逃げ事件では,起訴後の裁判での対応を誤ってしまうと,実刑判決を含めた重大な刑事処罰の恐れが生じ得ます。実刑判決となってしまった場合,刑務所に入ることを強いられ,日常生活から引き離される結果となることが見込まれます。そのため,実刑判決でなく,刑務所への収監が生じない執行猶予判決を目指し,適切な対応を取るべきケースが少なくないでしょう。

刑事罰の種類

起訴された後は,裁判で万全の対応を尽くすため,公判対応に適した弁護士を探すことが重要となります。

ポイント
ひき逃げ事件で起訴された場合,実刑判決を避ける努力が必要
具体的な対応は弁護士の判断が適切

④示談を試みるとき

ひき逃げ事件は,特定の被害者が存在する事件のため,刑事処分に対する被害者の意見が処分結果を大きく左右する傾向にあります。そのため,処分の軽減を目指すためには被害者側への配慮は不可欠となるでしょう。
この点,被害者へのアプローチとして代表的な示談の試みは,基本的に弁護士を窓口として行うことが必要です。当事者間での直接の協議は適切でないため,弁護士と被害者との間で連絡を取ってもらい,協議を進めることが一般的です。

もっとも,示談の成否やその内容は,担当する弁護士によって様々に変わりやすいものです。示談における合意内容は当事者間の自由であり,無数の選択肢があるため,示談交渉の巧拙が示談の内容に直結することも珍しくありません。
そのため,示談を試みたいときには示談に精通した適任の弁護士を選ぶ必要があるでしょう。

ポイント
示談の協議は弁護士を窓口に行うことが適切
示談の成否や内容は,弁護士によって様々に変わる

ひき逃げ事件の弁護士を選ぶ基準

①迅速な対応ができるか

ひき逃げ事件は,逮捕や勾留といった身柄拘束が伴いやすいこともあり,弁護活動にスピードが要求されやすい傾向にあります。ケースによっては,対応の迅速さによって釈放時期や刑事処分が大きく変わる可能性もあり得るところです。

もっとも,弁護士がどのタイミングでどのような弁護活動を行うかは,基本的に弁護士側の判断に委ねられています。刑事事件のスピード感に合わせた迅速な対応のできる弁護士であれば問題ありませんが,万一弁護活動がタイミングを逃したものになってしまうと決定的な悪影響につながる可能性も生じてしまいます。

迅速対応を約束してくれるかどうかは,必ず弁護士選びの基準として設けるようにしましょう。

②刑事弁護の専門性があるか

ひき逃げ事件の弁護活動には,知識や経験がないと見通すことが困難な特徴的な取り扱いが少なくありません。弁護士は,それらの特徴を踏まえて手続や処分の見通しを立て,その見通しを前提に弁護活動の方針や内容を検討することになります。

そのため,弁護士がひき逃げ事件の特徴を把握しているか,事件分野に関する知識や経験があるか,といった点は,弁護活動の内容や結果を直接左右する重要なポイントとなるでしょう。
弁護士選びに際しては,ひき逃げ事件の対応に必要な知識や経験を持ち合わせていることを重要視したいところです。

もっとも,弁護士にひき逃げ事件の知識や経験があるかをピンポイントで把握することは容易ではありません。そこで,刑事弁護がその弁護士の重点的な取り扱い分野であるか,という点を判断基準の一つとすることは,現実的でもあり有力でしょう。

③弁護方針が具体的か

ひき逃げ事件の場合,個別の内容によって実現可能な結果が大きく異なりやすいところです。例えば,運転者が事故が起きたことを把握することすら困難な内容であれば,犯罪が立証できないことを理由に不起訴処分となる可能性も十分にありますが,明らかな重大事故でひき逃げの事実も明白であれば,不起訴を目指すこと自体に無理があるケースも考えられます。

そのため,ひき逃げ事件の弁護に際しては,個別の内容に応じて目指すべき着地点を明確に定め,その着地点に向けた弁護方針を設けることが重要となります。ひき逃げ事件の弁護活動は,活動内容も目標も具体的であることが要求されます。

弁護士選びに際しては,弁護士の案内する弁護活動の方針や目標がどれだけ具体的か,という点を重要な判断基準とすることをお勧めします。弁護方針が具体的であることは,依頼後の動きやすさにも直結する点で大切なポイントになるでしょう。

④事務所所在地

ひき逃げ事件は,交通事故現場を基準とした取り扱いや手続が少なくありません。そのため,弁護士の事務所所在地が事故現場からあまりに離れていると,機動的な弁護活動が難しくなりやすい傾向にあります。

また,逮捕や勾留を伴ういわゆる身柄事件の場合,身柄が留置される場所は事故現場の近くであることが一般的です。そのため,事務所所在地が事故現場から遠く離れていると,留置されている警察へ行くことも容易ではなく,弁護活動に支障が生じる可能性も否定できないところです。

そのため,弁護士選びに際しては,事務所所在地があまりに遠方でないかを重要な判断基準の一つとするのが有力でしょう。

ひき逃げ事件で弁護士を選ぶ必要

①早期釈放のため

ひき逃げ事件であっても,ケースによっては早期釈放を期待できる場合があり得るところです。もっとも,このときに漫然と構えていては,早期釈放の重要な機会を失う結果となりかねません。

ひき逃げ事件で身柄拘束があった場合には,まず速やかに弁護士選びを行い,早期釈放の可否を含めて弁護士の専門的の判断を仰ぐことが適切です。また,早期釈放を目指す際の具体的な動きは,現実的には弁護士に行ってもらう必要があります。実際に早期釈放を試みる場合にも,弁護士選びは必要不可欠と言えるでしょう。

②周囲との連携のため

ひき逃げ事件で逮捕や勾留をされた場合,ご家族や仕事関係者などの周囲の方は,被疑者本人と自由に連絡を取ることができません。面会はできる場合がありますが,環境や時間に大きな限界があり,必要なコミュニケーションを図ることは困難でしょう。
しかも,ひき逃げ事件では,弁護士以外との面会や手紙の授受を禁じる「接見禁止」の処分がなされる場合もあります。接見禁止が決定された事件では,弁護士に接見をしてもらう以外に逮捕勾留された本人と連絡を取り合う手段は存在しません。

このように,身柄拘束されてしまうと,周囲との連携は極めて困難な状況となります。この場合の連携方法は,現実的には弁護士を介した伝言の方法を取るほかないため,連携を図りたい場合には弁護士選びが必要不可欠となるでしょう。

③重大な刑罰を防ぐため

ひき逃げ事件の場合,内容の重大性を踏まえて加害者への刑罰も重大なものとなりやすい傾向にあります。特に,以下のような場合には,重大な刑事罰が懸念されやすいでしょう。

ひき逃げ事件で重大な刑罰が科されやすい場合

1.事故における加害者の過失が大きい
→事故を引き起こした落ち度が大きい分,ひき逃げの責任が重大視されやすい

2.被害者の受傷結果が大きい
→生命や身体の危険が大きい状況であるほど,ひき逃げ行為の責任は重くなりやすい

重大な刑罰が懸念されるケースでは,処分の軽減を目指すためには相応の対応が不可欠となります。その具体的な方法・内容に関しては,弁護士へ依頼し,弁護士の判断を仰ぐことが適切でしょう。

ひき逃げ事件における弁護士選びの準備

①現状をまとめる

弁護士に適切な案内をしてもらうためには,弁護士に現状を正しく把握してもらうことが必要です。事故の内容,事故から現在までの経過などを,時系列に沿って極力詳細にまとめておくことが有益でしょう。

また,自身の言い分がある場合には,言い分に関連する事実関係を特に詳細にまとめておくことが重要です。この点,ひき逃げ事件の場合に特徴的な言い分としては,「事故発生を知らなかった」というものが挙げられます。事故の規模が非常に小さかった場合など,自動車運転者が事故の発生を認識できなかった場合です。このようなケースでは,事故が起きたとされるタイミングで何があったのかを,可能な限り詳細に把握してもらい,弁護士の法的見解を仰ぐことが必要となります。

②証拠資料をまとめる

事件に関連する証拠が手元にある場合は,その内容を弁護士と共有し,弁護士の判断や案内に反映してもらうことが有益です。

この点,ひき逃げ事件の場合に特徴的な証拠としては,事故車両や車両のドライブレコーダー映像が挙げられます。特に,ひき逃げした事実の有無を争う否認事件の場合,事故態様を立証するための証拠として,車両やドライブレコーダー映像が重要な役割を果たす場合は少なくありません。被害者と主張する相手の言い分と客観的な証拠が整合していなければ,相手の言い分に沿った犯罪の立証は困難であるとの判断を促す大きな要因にもなり得るでしょう。

③できる限り早期に相談する

ひき逃げ事件の弁護士選びは,時間との勝負になるケースも少なくありません。ひき逃げ事件で早期の弁護士選びが適切である理由としては,以下の点が挙げられます。

ひき逃げ事件で早期の相談をすべき理由

1.証拠が散逸しやすい
→事故の状況や態様に関する証拠は,後に収集することが困難

2.身柄拘束が伴いやすい
→身柄拘束には法律上の期間制限があるため,期間制限内の対応が必要

弁護士選びに際しては,できる限り速やかに進めることが非常に重要となるでしょう。

ひき逃げ事件で弁護士に依頼する場合の注意点

①土日祝日の対応

身柄拘束を伴うひき逃げ事件の場合,手続の期限は土日祝日であっても関係ありません。そのため,手続上の分岐点となるタイミングが土日祝日に当たる可能性もあります。このとき,弁護士が一切対応できない状態となると,必要な弁護活動が行われず,重大な不利益につながる恐れもあるため,注意することをお勧めします。

当然ながら,すべての土日祝日に弁護士の対応を求めることは現実的ではありません。もっとも,手続上重要なタイミングが土日祝日に当たった場合に,一律対応できないとの取り扱いなのか,ある程度柔軟な対応が可能なのか,という点は,弁護士やそのスケジュールによっても様々であるため,事前に確認することが有益です。

②弁護士との相性を重視する必要

ひき逃げ事件の場合,当初の目的がやむを得ず達成できないことも珍しくありません。不起訴を目指したい,早期に釈放して欲しい,被害者との間で円滑に解決したいなど,ひき逃げ事件で実現したい事柄は多数考えられますが,事件によっては実現の余地がない場合も考えられます。

もっとも,目的が達成できなかった場合,依頼者目線ではその原因が明確には分かりません。そのため,弁護活動に問題があったせいなのか,弁護士が何をしても達成できない状況だったのかは,分からずじまいとなりやすいところです。

このとき,弁護士との相性や弁護士への信頼という点が非常に重要な問題となります。なぜなら,依頼者としては弁護士への信頼を前提とし,「弁護士に対応してもらってもダメだった以上はしょうがない」と判断するほかないためです。弁護士との相性に疑問を感じていたり,信頼が不十分だったりすると,弁護士への不満や弁護士とのトラブルの原因となってしまいます。

納得できる結果を得るためにも,弁護士との相性は重視することをお勧めします。

③トータルの弁護士費用額

弁護士への依頼には弁護士費用が必要となりますが,その金額は弁護士や法律事務所によって大きく異なる可能性があります。そのため,弁護士費用の見込みについては,十分な確認が望ましいところです。

この点,ひき逃げ事件の場合には,身柄拘束が長期間生じた場合に想定を大きく超えないか把握するため,費用の支払基準を正しく理解することが望ましいでしょう。一見すると安価そうに見える場合でも,手続の各段階で加算される費用が多いと,結果的に高額の弁護士費用となる可能性もあり得ます。
刑事事件の弁護士費用は,事前にゆっくりと検討することが難しい性質のものであるため,できるだけ支払の基準や金額が分かりやすい法律事務所を選択するのが有力でしょう。

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交通事故では自首が必要か?自首しないとどうなるか?自首すると逮捕されてしまうか?

このページでは,交通事故加害者の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

交通事故加害者が自首をするべき場合

①交通事故で自首が必要なケースとは

交通事故の場合,自首が必要なケースはあまり多くありません。なぜなら,交通事故が発生した段階で,自動車運転者には警察への報告義務が発生するためです。
事故発生から間もないタイミングで,報告義務に従って警察に報告がなされ,警察が事故の存在を把握することになるため,自然と自首の機会は生じないこととなります。
そのため,交通事故で自首が必要なケースは,警察への報告義務を怠った場合や,報告後に警察の捜査への対応を怠った場合のいずれかとなるでしょう。

交通事故の処理を適切に行っていれば,自首が必要となることは考えにくいと言えます。

ポイント
交通事故は,発生直後に警察への報告が必要
適切な事故処理をしていれば,自首は必要ない

②口頭で身体に異常がないと確認した場合

自動車での走行中,歩行中又は自転車乗車中の相手と軽く接触した,という場合に,口頭で相手の身体に異常がないことを確認し,その場を離れてしまうケースが散見されます。この場合,後になって相手が怪我を主張し,警察に捜査を求めることになれば,いわゆるひき逃げ事件として捜査の対象となる可能性が否定できません。

もちろん,実際に相手に何も異常がなく,相手が特に警察への連絡等をしなければ,何事もなく終了することになります。しかしながら,相手に全く怪我がなかったか,後になって怪我を主張して警察に捜査を求めたかは,事前に把握する手段がありません。

そのため,口頭での確認のみを取ってその場を去った場合には,後にひき逃げとして扱われることを防ぐために,自首を検討することが有力でしょう。

ポイント
事故直後に身体の異常がないと告げた被害者も,後から怪我を主張する場合がある
後から怪我を主張された場合,ひき逃げ事件として扱われる恐れがある

③事故発生の有無が不安な場合

自動車の運転中に,背後で何か音がした,軽く何かが接触した感覚があったなど,交通事故を想起させる出来事があった場合,実際に交通事故が起きているかどうかは非常に大きな問題です。交通事故が起きてしまっていると,やはりひき逃げ事件として捜査の対象とされる可能性が生じてしまいます。

そのため,運転中に異常を感じ,事故が発生したかどうか不安に感じている場合には,将来的にひき逃げ事件の被疑者とされる危険を避けるため,自首を検討することが一案です。なお,実際には事故が起きていなかった,又は事故が起きたかどうか分からなかったという場合には,特に捜査が行われることなく対応が終了することになるため,不要な捜査を招くことにはなりにくいでしょう。

ポイント
事故が起きたかどうか分からず不安な場合には自首が有力
事故が起きていなければ,特に捜査されないことが通常

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

交通事故加害者の自首は弁護士に依頼すべきか

交通事故加害者として自首を検討する場合や,実際に自首を行う場合には,弁護士への依頼が適切です。弁護士に依頼をすることで,法的に適切な検討や対応が可能となります。
弁護士に依頼することの具体的なメリットとしては,以下の点が挙げられます。

①自首すべき状況かが分かる

自首は,自身の行為について逮捕や刑罰が想定される場合に有力な手段となります。裏を返せば,交通事故の内容などを踏まえて逮捕や刑罰が想定されないと判断される場合には,自首すべき状況にはない,と考えるのが適切です。
もっとも,個別の事件について逮捕や刑罰が想定されるかどうか,という点を具体的に検討することは,専門家でなければ困難と言わざるを得ません。もし自分自身で一定の判断をしたとしても,それが本当に適切な判断かを知る手段がなければ,事態はあまり好転していないと言えます。

この点,弁護士に依頼することで,逮捕や刑罰が想定される状況か,言い換えれば自首すべき状況かを弁護士に判断してもらうことが可能です。交通事故の場合,逮捕や刑罰をそれほど懸念しなくてよいケースも少なくはないため,この点が正しく判断できることは非常に重要となるでしょう。

②適切な自首の方法が分かる

自首を行うことに決めたとしても,具体的にどこへ何をしに行けばいいのか,まず最初にはどのようなアクションを起こすべきか,といった点が次の課題となります。せっかく自首を試みたとしても,その方法を誤ってしまうと,手続が滞る上に自首のメリットを最大限に得られないリスクも生じます。
大きなリスクと負担を背負って自首をする以上,適切な方法での自首を行うべきです。

この点,弁護士に依頼をすれば,自首の方法や流れは弁護士に判断してもらい,弁護士から案内してもらうことができるため,手段を誤る恐れなく自首を試みることが可能です。交通事故の場合,交通課が取り扱う関係で,その他の事件類型とは異なる独特の取り扱いも生じ得るため,適切な対応を尽くすため弁護士のサポートを受けることをお勧めします。

③自首に伴う負担が大きく軽減する

自首は,自分から捜査機関に連絡を取って事件の内容を詳細に説明しなければならないなど,行動の負担や動きに伴う心理的な負担が非常に重くなりがちです。それらの負担が,自首を躊躇させやすい要因でもあります。
もっとも,自首をすべき状況であるのに,負担を理由に自首を控えてしまうのは合理的な判断とは言い難く,チャンスを逃すことにもなりかねません。

この点,弁護士に依頼すれば,弁護士が代行できる対応はすべて弁護士に行ってもらうことができます。警察への電話連絡や自首希望であることの意思表明,事件内容の説明,警察とのスケジュール調整など,負担の生じやすい動きを弁護士に委ねることができれば,自首を試みるハードルは大きく下がるでしょう。

④捜査機関の対応が軟化しやすい

捜査機関は,弁護士が入っているケースの方がそうでないケースよりも穏やかで緩やかな取り扱いをしやすい傾向にあります。法律の専門家である弁護士が目を光らせているため,法的な根拠に乏しいことを強引に行うケースはほとんどなくなるのが通常です。

当事者自身が,捜査機関の対応について法的に適切かどうかを判断するのは容易でありません。知識面はもちろんのこと,その場で突然行われたことや言われたことを,直ちに判断するのは非常に難しいと言わざるを得ないでしょう。
そのため,弁護士の存在によって捜査機関の対応が軟化することは,困難な判断が不要になる意味でも非常に価値の高い効果と言えます。

交通事故加害者が自首をする場合の注意点

①事故後の対処の重要性

交通事故は,事故後に適切な対応を尽くすかどうかによってその刑事責任の重さが極めて大きく異なります。なぜなら,事故後に被害者の救護や警察への報告を怠ると,ただの交通事故でなくひき逃げ事件となってしまうためです。
ひき逃げ事件は,法的には救護義務違反を指しますが,被害者の生命や身体に対する危険が非常に強い行為であるため,厳罰の対象となりやすいものです。ひき逃げ事件になってしまうと,後に自首をしても逮捕を防げない場合は珍しくありません。

ひき逃げ事件となって自首の検討に苦慮することのないよう,事故直後に適切な救護や報告を尽くすことがまず何よりです。

②自首しても進展しない可能性

交通事故の場合,基本的に当事者のいずれかから報告がないと,警察はその存在も把握することができません。そのため,交通事故があったかもしれないと思って自首しても,相手が警察に報告をしていなければ,警察にとって事故の有無は分からないままとなります。この場合,警察は具体的な捜査を行うことが困難となりやすく,自首をしても事態は何も変わらない結果となる可能性は否定できないでしょう。

そのため,交通事故について自首をする場合には,必ずしも自首によって警察の処理が進行するとは限らず,特に事態が進展しない可能性をあらかじめ踏まえておくことをお勧めします。
なお,もし事態が進展しなかったとしても,自首が無意味だったというわけではありません。万一その後に被害者が発見され,捜査されるに至った場合には,自首は加害者に有利な材料として考慮されることになります。

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【交通事故加害者の呼び出し】呼び出しに応じると何がある?出頭したときの注意点は?弁護士は必要?

このページでは,交通事故加害者として警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
交通事故加害者の呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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交通事故加害者で呼び出された場合の対応法

①基本的な考え方

交通事故加害者となった件について,捜査機関から呼び出しを受けた場合,基本的には「呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じない」と理解をしておくことが適切です。

交通事故は,不注意で起きてしまった過失犯であるため,特段の事情がなければそれほど加害者の不利益が大きな手続(長期の身柄拘束など)を用いることはありません。特に,事故直後にしっかりと事故処理の対応を尽くしていれば,その後の呼び出しに応じている限り不測の不利益は生じないことが通常でしょう。

このような考え方を持っておくことは,自身の不安な感情を適切にコントロールする意味でも非常に重要です。交通事故は,刑事事件の中でも件数が非常に多い分野のため,手続が進むのを待つ期間が長く,手続全体も長期化しがちです。そのため,手続がなかなか終わらない中で自身をコントロールする必要がありますが,「呼ばれたときに適切に応じればよい」と割り切ることができれば,長期化による精神的負担は最小限に抑えることが可能になります。

ポイント
呼び出しに適切に応じていれば大きな不利益は生じ難い
交通事故の刑事手続は長期化しやすい

②反省内容の表明

交通事故加害者に対する呼び出しの際に確認されやすい点の一つが,反省状況です。その背景には,交通事故は,故意でなく過失(=注意義務違反)によって起きたものである,という点があります。

故意に起こした事件の場合,認め事件であれば反省の意思を表明しないことは稀です。故意に起こした犯罪行為に反省しない余地が考えにくいためです。一方,過失犯の場合,自分の過失をどのように評価しているかによって,反省を深めているケースもあれば,捜査を受けていることが不服であると考えているケースもあり得ます。
そうすると,捜査機関の目線では反省すべき過失があるのに,加害者本人が「自分にそれほどの落ち度はない」とのスタンスだと,捜査機関の理解との間に大きなギャップが生まれ,不利益な刑事処分につながる可能性もあり得ます。

そのため,自身の過失として指摘されている内容を冷静に確認し,反省すべき内容であればその反省を明確に表明していくことが適切な対応となります。

ポイント
反省すべきケースで反省が見られないと,大きな不利益につながる

③保険会社による対応状況の把握

呼び出しを受けた場合,警察署等で取り調べを受けることが見込まれますが,その際には被害者との間での解決状況についても確認されることが一般的です。そのため,自動車保険に加入している場合は,保険会社と被害者との間のやり取りの進捗をある程度把握しておくようにしましょう。

保険会社の対応状況を把握することは,以下のようなメリットにつながります。

保険会社の対応状況を把握するメリット

1.捜査機関に解決見込みありと理解してもらえる
→対応が順調に進んでいれば,当事者間の金銭的解決を前提にしてもらえる

2.十分な被害者対応をしているとの評価が得られる
→被害者対応を積極的に尽くそうとしている態度があるとの評価につながる

3.被害者側の感情面に有益な効果が期待できる
→加害者が状況把握に努めていると被害者に伝われば,被害者側の感情面の緩和につながる

交通事故加害者が呼び出しに応じると逮捕されるか

刑事事件では,呼び出しをした上で,呼び出しに応じたところを逮捕するケースも一定数見られます。もっとも,交通事故加害者として呼び出しを受けた場合,これに応じたところを逮捕されるという可能性は基本的にないでしょう。

その理由としては,以下のような点が挙げられます。

交通事故加害者が呼び出しの際に逮捕されない理由

1.過失犯である
→故意犯より刑事責任が軽いため,類型的に逮捕の必要性が高くない

2.逮捕の必要性が高い状況にない
→事故直後に一定の必要な捜査がされており,証拠隠滅が生じにくい

3.呼び出しを選択している際の捜査方針
→あえて呼び出しを選択しているのは,呼び出しに応じれば逮捕不要との判断であるため

交通事故加害者として呼び出された場合には,円滑にその求めに応じ,端的に求められた捜査協力を尽くすことが適切でしょう。「逮捕されるのではないか」といった不要な警戒心を示すのは,警戒するだけの事情があるのではないか,との疑念を招く恐れがあり,かえって不利益の原因となる可能性もあります。

交通事故加害者を警察が呼び出すタイミングや方法

①実況見分のため

交通事故の場合,事故現場の道路状況や事故の起きた具体的場所等を,現場に行って確認することが一般的です。このような捜査を「実況見分」と言います。
実況見分を行う場合,当事者の双方又は一方の立ち会いを要するため,捜査機関からの呼び出しがこの実況見分への立ち会いを求める目的であるケースは多いでしょう。

実況見分は,交通事故捜査の比較的早期の段階で行われることが一般的です。場合によっては,事故発生当日又は直後に行うこともあり得ます。事故当日に行われた場合,その後に実況見分目的で呼び出されることは通常なくなります。

②取調べのため

交通事故加害者に対する捜査では,基本的に当事者双方から事情を聴き,事故発生状況等の把握を進めることが必要となります。そのため,捜査機関による呼び出しは取調べを実施するためであることも多くあるでしょう。

取調べ目的で呼び出しがなされるタイミングは,警察側のスケジュールによって様々です。交通事故や交通違反は,件数自体が非常に多いため,警察側も迅速な処理が難しく,順番待ちが生じやすい,というのがその大きな理由です。
場合によっては月単位で待機する可能性も否定はできませんが,期間が空いたからと言って不利益な事情というわけではないため,自分だけが一方的に焦ってしまうことはないように注意しましょう。

③車両の持参を求めるため

交通事故では,当事者双方の乗っていた車両が重要な証拠物となります。特に,事故態様や過失の内容が争いになっているケースでは,車両の損傷箇所や損傷状況を根拠に結論が出る場合もあります。
そのため,警察の捜査の一環として,事故車両の持参を求め,写真撮影などの証拠化を行うことは広く行われているところです。

車両の持参を求められるのは,基本的に自走が可能な状況にあるケースです。事故車両に乗って警察に向かい,その場で車両の確認や撮影等が行われる,という流れが多く見られるでしょう。

交通事故加害者が呼び出しに応じたときの注意点

①供述調書の内容

呼び出しに応じて出頭した場合,取調べの上で「供述調書」を作成されることが考えられます。供述調書は,自身の話した内容を捜査機関が書面化したものです。供述調書には,供述した本人の署名押印が求められますが,この署名押印は,「調書の内容は自分の話したことで間違いない」というお墨付きを与える趣旨のものです。

供述調書の作成をされると,その内容が気になるところですが,供述調書の内容に対してどのような考え方でいるべきかは,認め事件か否認事件かによって大きく異なります。

【認め事件の場合】

認め事件では,あまり細部に過敏になる必要はありません。供述調書上での言い回しや細かい内容によって,処分結果が変わる可能性が考え難いためです。
認め事件の場合には,厳密な内容よりも自身の反省状況・内容が反映されていることを重視する方が有益でしょう。反省の内容や程度は,刑事処分の結果に直接影響を及ぼす可能性があります。

【否認事件の場合】

否認事件では,争点となるポイントに関する記載が適切かどうか,厳密に確認することが必要です。争点に対する最終的な判断が,供述調書の内容を根拠に行われる場合もあり得るため,慎重な判断が不可欠となります。
また,記載内容が適切か判断できない場合には,供述調書への署名押印を拒否する手段も有力です。署名押印のない供述調書は,捜査機関の内部資料となるのみで,犯罪の成否を立証するための証拠とすることはできません。

②呼び出しの時期

交通事故は,件数が非常に多い類型でもあるため,呼び出しがなされるまでに順番待ちを要することが少なくありません。呼び出されるまで数週間~数か月待機することは決して珍しくないでしょう。
また,最終的な刑事処分までの期間も長くなりやすい傾向にあります。事故発生から1年近く経って刑事処分が決まる,という例も散見されるところです。

交通事故の場合には,呼び出しまでの待期期間が長くなりやすい可能性にあらかじめ注意しておくことをお勧めします。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
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【交通事故加害者の逮捕】逮捕されやすいケース・されにくいケースは?避けるためには?

このページでは,交通事故加害者の逮捕に関して,刑事弁護士が徹底解説します。逮捕の可能性はどの程度あるか,逮捕を避ける方法はあるか,逮捕された場合に釈放を目指す方法はあるかなど,対応を検討する際の参考にしてみてください。

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交通事故加害者が逮捕される可能性

交通事故加害者の場合,逮捕される可能性は否定できません。その背景には,交通事故が発生すると,自動車運転者には警察に報告をする義務が生じるため,基本的に現行犯で事件が発覚する,という点があります。現行犯で取り締まる際には,逃亡や証拠隠滅の可能性を直ちに詳細に確認することが難しいため,確認不足による不利益を避けるため,逮捕に踏み切るという例が散見されます。

もっとも,これは交通事故のケースで逮捕の可能性が高い,という意味ではなく,個別事件における逮捕の可能性はそれぞれの事情によって大きく変わります。それほど重大ではない交通事故であれば,逮捕されない方が通常とも言えるでしょう。
なお,一般的に逮捕の可能性が高くなるケースとしては,以下のような場合が挙げられます。

交通事故で逮捕の可能性が高くなるケース

1.被害結果が重い
→死亡事故など,被害結果が重大である場合

2.重大な交通違反がある
→酒気帯び運転,無免許運転,極端な速度超過など,重大な交通違反を伴う場合

3.現行犯で逃亡が懸念される
→事故直後に当事者間でトラブルが起きた,その場を去ろうとした,という場合

逮捕の種類・方法

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

逮捕後の流れ

逮捕されると,警察署での取り調べが行われた後,翌日又は翌々日に検察庁へ送致され,検察庁でも取り調べ(弁解録取)を受けます。この間,逮捕から最大72時間の身柄拘束が見込まれます。
その後,「勾留」となれば10日間,さらに「勾留延長」となれば追加で最大10日間の身柄拘束が引き続きます。この逮捕から勾留延長までの期間に,捜査を遂げて起訴不起訴を判断することになります。

逮捕から起訴までの流れ

ただし,逮捕後に勾留されるか,勾留後に勾留延長されるか,という点はいずれの可能性もあり得るところです。事件の内容や状況の変化によっては,逮捕後に勾留されず釈放されたり,勾留の後に勾留延長されず釈放されたりと,早期の釈放となる場合も考えられます。

逮捕をされてしまった事件では,少しでも速やかな釈放を目指すことが非常に重要になりやすいでしょう。

ポイント
逮捕後は最大72時間の拘束,その後10日間の勾留,最大10日間の勾留延長があり得る
勾留や勾留延長がなされなければ,その段階で釈放される

逮捕による不利益

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

交通事故加害者が逮捕を避ける方法

①事故直後の対応

自動車の運転中に交通事故が発生した場合,自動車運転者には,被害者を救護する義務(救護義務)と警察に事故発生を報告する義務(報告義務)が発生します。まずは被害者の容態を確認し,110番通報をする必要があるということですね。

これらの義務を果たすことで,やむを得ず交通事故の発生が警察に知られることにはなります。場合によっては,そのまま逮捕される可能性も否定できません。しかしながら,救護義務と報告義務をしっかりと果たすことは,逮捕を避けるため非常に重要な対応です。

交通事故加害者が,被害者への救護義務を怠ってその場を去ることを,俗にひき逃げと言います。逮捕は,加害者の逃亡を防ぐために行われる手続であるため,実際に事故現場から逃亡した人物に対しては,逮捕の必要性が非常に高くなってしまうことになるでしょう。
ひき逃げとなることを防ぎ,逮捕が必要との判断を自ら招かないよう,事故直後に救護義務や報告義務を尽くすことは極めて重要と言えます。

②取調べや実況見分への協力

交通事故の捜査では,警察署等での取調べや,事故現場の実況見分(現場の道路状況や事故発生状況の確認)が行われます。捜査機関としては,これらの捜査が円滑に進むのであれば,特に被疑者を逮捕する必要はないとの判断に至ることが多数でしょう。

そのため,加害者側の対応方針としては,捜査機関による取調べや実況見分には積極的に協力し,捜査手続の円滑化に配慮した動きを取ることが適切です。このような対応は,速やかな手続の進行にもつながるため,より早期の事件解決も期待しやすくなるでしょう。

③被害者側への対応

交通事故の場合,被害者側への真摯な対応が尽くされている状況であれば,殊更に逮捕すべきとの判断はなされないことが非常に多く見られます。逮捕勾留によって当事者間の連絡手段を断ってしまうことは,かえって被害者の救済を困難にする結果になりかねず,特段の必要がなければ逮捕を控える要因となりやすいでしょう。

そのため,加害者にとっては,被害者側にできる限りの対応を尽くすことが,逮捕回避にもつながる適切な方法と言えます。被害者への真摯なお詫び等の動きは,道徳的にも望ましい上,被害者側の許しにもつながれば最終的な処分にも有益な効果が期待できるため,行わないメリットはないでしょう。

交通事故加害者の逮捕は弁護士に依頼すべきか

交通事故加害者の立場で逮捕への対応を検討する場合には,弁護士への相談・依頼を行うことが適切です。専門的な弁護士への依頼により,以下のような利点があるでしょう。

①見通しを持つことができる

交通事故の場合,逮捕回避の努力を尽くすべきケースもあれば,特に逮捕を懸念する必要がないケースもあります。実際の事件がどちらのケースに当たるかを事前に理解できていれば,その後の対応が格段に容易なものとなることは間違いありません。

この点,弁護士に依頼し,専門的な判断をしてもらうことができれば,個別の事件内容を踏まえた逮捕リスクの見通しを把握することが可能になります。あわせて,見通しを踏まえた具体的な対策についても案内が得られるため,安心して適切な対応を尽くすことができるでしょう。

②捜査への対応方針が分かる

交通事故の場合,捜査への適切な対応ができれば,それのみで逮捕を回避できる場合も少なくはありません。逆に,捜査への対応が不適切なものだと,逮捕リスクに影響し得るほか,手続の長期化を招く可能性もあり,大きな不利益につながりかねないところです。

この点,弁護士に依頼すれば,個別の事件内容に応じて適切な対応方針を検討・判断してもらうことができます。この点は,当事者自身が判断することの難しい問題であるため,弁護士に依頼することの重要性が非常に大きいポイントと言えます。

③被害者側とのやり取りが円滑になる

多くの交通事故では,当事者間でのやり取りが不可欠ですが,加害者自身が被害者側と連絡や交渉を行うのは現実的に困難と言わざるを得ません。自身の希望を表明しづらい立場である上,そもそも自身の主張は適切な内容なのかを判断することも容易ではないでしょう。

この点,弁護士に依頼した場合には,弁護士が被害者との連絡窓口となるため,直接のやり取りを要することなく円滑な対応が被害者可能になります。また,加害者側の主張を法的に検討し,適切な主張のみを適切な方法で表明していくことも可能です。

交通事故加害者の逮捕に関する注意点

①現行犯逮捕の場合

交通事故加害者に対する逮捕は,現行犯逮捕となることが非常に多く見られます。事故発生の報告を受けた警察が現場に駆け付け,その流れで逮捕に至る,ということが典型例です。

この場合,事故発生から逮捕までの間に時間的な猶予があまりないことが見込まれます。そのため,逮捕を未然に防ぐための対応を取ることが現実的に難しく,逮捕後の対応とならざるを得ない点に注意しておくことが必要です。

なお,事故現場では,現行犯逮捕の必要性が高くないことをできる限り示すため,極力冷静で真摯な対応を心掛けることが有益でしょう。

②後日逮捕の可能性

交通事故で想定される逮捕には,大きく分けて現行犯逮捕と後日逮捕の2種類があります。このうち,後日逮捕とは,事故当日でなく後日の段階で,逮捕状を用いて行われる逮捕手続で,法的には通常逮捕と呼ばれます。

この点,交通事故の場合,一般的には後日逮捕が選択されるケースはあまりないと言えるでしょう。少なくとも,あえて現行犯逮捕でなく後日逮捕を選択することは考えにくいところです。
交通事故の場合,後日の逃亡や証拠隠滅が懸念されることは類型的に少数であるため,捜査に対して適切な対応さえ尽くしていれば,後日逮捕の心配は不要であることが通常でしょう。

③逮捕後の考え方

交通事故加害者として逮捕された場合,そこで止まってしまうのではなく,速やかに早期釈放に向けた動きを進めることが重要です。なぜなら,交通事故の場合,逮捕されたとしても早期の釈放が実現できるケースは少なくないからです。

逮捕をされると,最長72時間以内に,「勾留」という10日間の身柄拘束に移るかどうかが判断されます。勾留された場合には,さらに最長10日間の「勾留延長」がなされる可能性もあるため,逮捕及び勾留はトータルで最長22~23日程度になることがあります。

逮捕から起訴までの流れ

交通事故の場合には,逮捕後に勾留をされるかどうかが非常に大きな分岐点であり,勾留を回避できるケースも相当数見られることに特徴があります。勾留されなければ,身柄拘束は最長でも2~3日にとどまるため,生活への影響は最小限にとどめることが可能です。

逮捕後には,できるだけ速やかに早期釈放を目指すことをお勧めします。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
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【交通事故の不起訴処分】交通事故加害者が不起訴となるために必要な対応や注意点を詳細解説

このページでは,交通事故事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

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交通事故事件で不起訴を目指す方法

①被害者対応を尽くす

交通事故は,特定の被害者に対する事件であるため,被害者の意向が刑事処分を左右しやすい傾向にあります。過失の程度や被害者の受傷結果があまりに著しいケースでなければ,被害者の意向によって起訴不起訴の処分結果が分かれる場合も決して少なくはありません。

そのため,交通事故の事件で不起訴を目指す手段としては,まずどれだけ被害者へのお詫びの対応を尽くせるか,という点が非常に重要となるでしょう。被害者側の意向は,どうしても感情的な面に大きく影響を受けることになるため,感情面に最大限配慮したお詫びの動きが取れれば,有益な結果につながりやすいと言えます。

ポイント
交通事故の処分は被害者の意向に大きく影響を受ける
被害者の感情面に配慮したお詫びの対応が重要

②適切な法的評価を促す

交通事故によって加害者が刑事処分を受けるのは,加害者の行為に「過失」があるためです。過失とは,注意義務違反(注意すべき義務があったのに必要な注意を怠ったこと)をいい,具体的にどのような注意義務が課せられ,どのような義務違反があったか,という点は,個別のケースによるところです。
そして,刑事処分の程度は,過失の程度に比例して重くなるとの取り扱いが一般的とされます。センターオーバーや追突事故のように一方だけに過失のある事故か,被害者側にも相当程度の過失が認められる事故かによって,刑事処分は大きく異なってきます。

交通事故の場合,加害者とされる人の過失がさほど大きくないケースだと,他の事情も踏まえて不起訴処分の対象となることも相当数見受けられます。そのため,過失の程度が大きくないと主張すべきケースでは,過失の程度に関して適切な評価をするよう求めることで,不起訴処分を促す動きも有力になり得るでしょう。

ポイント
交通事故の刑事処分は過失の重さに比例しやすい
過失が小さい場合,不起訴処分の判断材料となり得る

③再発防止

刑事処罰が科せられる目的の一つに,加害者の再発防止を促す目的が挙げられます。「犯罪を犯すと大きな不利益(=刑罰)を受けなければならない」ということを経験的に理解させ,再発を踏みとどまらせる効果を期待する,ということです。
もっとも,交通事故の場合,そもそもが故意に起こした事件ではないため,再発を踏みとどまらせるために刑罰を科す必要が決して大きいとは言えません。そのため,交通事故では,刑罰以外の方法で再発防止の見込みが立つのであれば,再発防止の意味を込めて刑事処罰を科す積極的な意味はとても小さいと理解されるところです。

したがって,交通事故で不起訴処分を目指す手段としては,具体的な再発防止策を検討し,実行することが非常に有力でしょう。具体的な再発防止策の内容は,事故の原因等によって異なるため,個別に弁護士などと相談し,検討することをお勧めします。

ポイント
刑罰には再発防止の目的がある
刑罰を科さずとも再発防止が見込める場合,不起訴処分が有力になる

④交通違反が伴う場合

交通事故の事件では,事故の発生原因や事故前後の運転行為に,交通違反が伴うケースも少なくありません。そのため,交通違反を伴う交通事故では,交通違反の重大さを踏まえた検討・対応が必要となるでしょう。

この点,それ自体が犯罪として処罰されるような交通違反がある場合,不起訴処分は容易ではなくなるため,不起訴を目指す積極的な試みは不可欠と言えるでしょう。例えば,速度超過をした上で交通事故を起こした場合,速度超過の分だけ刑事責任が重くなることに配慮した努力が必要となります。

また,酒気帯び運転など,交通違反の程度が著しい場合には,そもそも不起訴を目指すことが現実的でない可能性もあります。手段を尽くしてもなお起訴を免れないケースは珍しくないため,弁護士に見通しを判断してもらうなど,事前の検討を十分に行うことが適切です。

ポイント
犯罪として処罰されるような交通違反があると,不起訴は容易でない
程度が著しい交通違反の場合,不起訴が現実的でないことも

交通事故事件で不起訴になる可能性

交通事故の場合,不起訴となる可能性は十分に考えられます。もちろん,ケースによっては不起訴処分の見込みが現実的にない場合もありますが,一般的な交通事故であれば,不起訴処分を目指す努力は十分に結果を左右し得ると考えてよいでしょう。

交通事故で不起訴の可能性が十分に考えられる大きな理由の一つが,過失犯であるという点です。交通事故は,わざと引き起こしているわけではなく,加害者自身も希望しないまま,不注意で起きてしまうものであるため,刑事責任は故意犯に比べて小さく評価されることが一般的です。起訴不起訴の判断は,事件ごとの刑事責任の重さを重要な基準とするため,交通事故が過失犯であることによる責任の小ささは,不起訴処分の可能性を高くする事情と言えます。

一方,過失犯であっても,刑事責任が重く評価されざるを得ない場合には,安易に不起訴を見込むわけにはいきません。交通事故の場合,被害者側に全く落ち度がない場合や,被害者に深刻な損害を与えた場合には,刑事責任が重大であると評価され,不起訴処分の可能性は低下しやすいでしょう。

ポイント
不起訴の可能性は,刑事責任の重さに大きく左右される
過失犯である交通事故は,故意犯よりも刑事責任が小さく評価されやすい

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

交通事故事件で不起訴を目指す場合の注意点

①被害者の意向の重大性

交通事故の刑事処分を左右する事情は複数ありますが,その中でも非常に重要であるのは被害者の意向です。刑事処分を直接決定づけることができるのは,被害者の意向以外にないと言っても過言ではありません。
また,刑事処分の判断材料のうち,事後的に内容が変わり得る唯一の点としても,被害者の意向は重要な位置づけにあります。過失や怪我の程度は,事故が発生した後に結果が変わるものではありませんが,被害者の意向だけは事故後の心境の変化などによって内容が大きく変わり得るため,不起訴を目指すのであれば最大限の努力を注ぐべきポイントと言えるでしょう。

交通事故加害者が被害者の心情に配慮するということは,道義的にも適切な動きであるため,加害者としては積極的に努力をしていきたいところです。

②保険会社に委ねられる内容・範囲

交通事故の場合,自動車保険会社が加害者に代わって被害者側とやり取りをしてくれるのが通常です。任意保険に加入している場合,当事者間で連絡を取り合うのではなく,保険会社担当者と被害者との間で連絡を取り合うことが一般的でしょう。

もっとも,保険会社に被害者への対応を委ねることによって不起訴処分が目指せるか,というと,そうではありません。なぜなら,保険会社は刑事処罰に関する被害者の意向に配慮する立場にはないからです。
保険会社は,加害者がすべき金銭賠償を代わりに行う役割を担います。逆に,金銭賠償と関係のない事柄については,保険会社が介入することは許されていません。

保険会社に被害者とのやり取りを委ねても,不起訴を目指す動きとしては不十分である,という点に注意することをお勧めします。

③過失やケガの程度を争うことの問題点

交通事故の場合,加害者の過失や被害者の怪我の程度は様々です。そして,過失の程度や怪我の程度によって,刑事処分は異なってくることになります。
そのため,加害者の立場としては,実際よりも過失や怪我の程度を大きく見積もられていると考える場合,この点を争う方針もあり得るところです。

もっとも,過失や怪我の程度がさほど大きくない,との主張は,犯罪が成立するかどうかとは無関係な主張であるということに注意が必要です。この主張は,「過失や怪我の程度が大きくないから処分を軽くしてほしい」という意味合いのものであり,いわゆる情状の一内容にとどまるのです。

そのため,過失や怪我の程度を主張する場合には,「温情的な判断を期待する動きだ」ということを十分に理解し,主張する際のスタンスや主張の仕方を誤らないように注意することが適切でしょう。

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