傷害事件の示談金はいくら?相場と決まり方を弁護士が解説

傷害事件を起こしてしまった場合、まず多くの方が気になるのが、示談金はいくら必要になるのかという点です。
インターネット上では「示談金の相場は〇万円」「示談をすれば不起訴になる」といった情報も見られますが、実際の示談金額は一律に決まるものではありません

傷害事件の示談金は、ケガの程度や治療期間だけでなく、被害者の受け止め方や処罰感情事件の態様や経緯など、さまざまな事情を踏まえて判断されます。そのため、同じように見える事件であっても、示談金に大きな差が生じることがあります

また、示談金は単なる慰謝料ではなく、治療費や休業損害などを含めた一括の解決金として扱われるのが一般的です。相場だけを基準に示談を進めてしまうと、後になって追加請求やトラブルが生じるおそれもあります。この記事では、傷害事件における示談金について、一般的な相場の考え方金額が決まる実務上の要素示談が刑事処分に与える影響示談を進める際の注意点を、弁護士の立場から整理して解説します。示談金の仕組みを正しく理解することが、適切な解決につながります。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害事件における示談金とは

傷害事件における示談金とは、被害者と加害者の間で事件を解決するために支払われる金銭を指します。刑事事件であっても、当事者同士が合意に至れば、民事上の紛争を示談によって解決することが可能です。

示談金は、単なる謝罪の意味合いで支払われるものではありません。一般には、治療費や通院に伴う費用仕事を休んだことによる損害精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた、一括の解決金として扱われます。そのため、示談が成立した場合には、原則としてその後の追加請求は行わないという形で整理されることが多くなります。

また、傷害事件における示談は、刑事手続とは別に成立する合意です。示談が成立したからといって、必ずしも刑事事件が終了するわけではありませんが、被害者の処罰感情が緩和された事実として、検察官や裁判所が判断する際の重要な事情になります。

なお、示談金には法律で定められた金額や計算式は存在しません。同じような傷害事件であっても、被害者の状況や事件の内容によって金額は大きく異なります。そのため、インターネット上の金額だけを基準に判断するのではなく、どのような事情が示談金に影響するのかを理解することが重要です。

傷害事件の処分に好影響を与える(処分を軽くする)示談をしてもらう対価として、示談金を支払うという関係ですね。

傷害事件の示談金の相場

傷害事件の示談金については、法律で定められた一律の金額や計算式は存在しません。示談金は裁判で決まる損害賠償額とは異なり、被害者と加害者の合意によって決まる解決金であるため、事案ごとに金額に幅が生じます。

もっとも、実務上は、ケガの程度や治療状況を基準として、一定の目安が意識されることが多くなっています。一般的な示談金の水準は、次のとおり整理できます。

ケガの程度と示談金の目安

ケガの程度示談金の目安
軽い打撲・擦過傷など(通院をほとんど要しない場合)数万円〜10万円程度
一定期間の通院を要する傷害10万円〜50万円程度
骨折などの重い傷害50万円〜100万円以上

この表は、傷害事件における示談金の一般的な目安を示したものにすぎません。実際の示談金額は、傷病名だけで機械的に決まるものではありません。同じ「通院を要する傷害」であっても、通院期間や通院日数日常生活や仕事への影響の程度によって、金額には大きな差が生じます。

また、示談金は単なる慰謝料ではなく、治療費や通院交通費仕事を休んだことによる損害精神的苦痛に対する補償などを含めた、一括の解決金として扱われるのが一般的です。そのため、示談が成立した場合には、原則としてその後の追加請求を行わないことを前提に金額が調整されます。

さらに、被害者の処罰感情が強い場合や、事件の経緯に悪質性が認められる場合には、表の金額帯を上回る示談金が求められることもあります。一方で、早期に誠実な謝罪が行われ、被害者の理解が得られた場合には、比較的抑えた金額で示談が成立するケースもあります。

このように、傷害事件の示談金は、相場だけを見て一律に判断できるものではありません。示談金の目安を把握したうえで、どのような事情が金額に影響するのかを具体的に理解することが重要です。

示談金の金額が決まる主な要素

傷害事件の示談金は、相場表に当てはめて自動的に決まるものではありません。実務上は、個別の事情を総合的に考慮したうえで金額が調整されます。ここでは、示談交渉の場面で特に影響が大きい要素を整理します。

ケガの程度と治療期間

示談金を判断するうえで、最も基本となるのがケガの程度や治療状況です。ただし、示談金は診断書に記載された傷病名だけで決まるわけではありません。実際には、通院期間の長さや通院日数、治療内容などが重視されます。短期間で治療が終了した場合と、継続的な通院を要した場合とでは、示談金に差が生じやすくなります。

被害者の処罰感情

示談交渉においては、被害者がどの程度の処罰感情を抱いているかも重要な要素になります。被害者が強い処罰感情を持っている場合には、示談自体が難航したり、比較的高額な示談金を求められたりすることがあります。一方で、謝罪が受け入れられ、被害者の理解が得られている場合には、示談が成立しやすくなる傾向があります。

加害者の態度や対応状況

示談金の金額には、加害者側の対応の仕方も影響します。早期に誠実な謝罪が行われ、反省の姿勢が適切に伝わっている場合には、示談交渉が円滑に進むことがあります。これに対し、責任を否定する発言や不誠実な対応があった場合には、被害者の不信感が強まり、示談金が増額される要因となることもあります。

事件の態様や経緯

傷害事件がどのような状況で発生したのかという事件の態様や経緯も、示談金を判断する際の重要な事情です。突発的な口論の中で生じた傷害なのか、一方的・継続的な暴力行為なのかによって、事件の評価は大きく異なります。悪質性が高いと判断される場合には、示談金が高額になりやすい傾向があります。

前科・前歴の有無

加害者に前科や前歴があるかどうかも、示談交渉に影響することがあります。前科がある場合には、被害者が再犯を不安視し、示談に慎重になるケースがあります。ただし、前科があるからといって必ず示談金が高額になるわけではなく、あくまで被害者の受け止め方や事件の内容との関係で判断されます。このように、傷害事件の示談金は、複数の要素が重なり合って決まるものです。相場を把握することは重要ですが、それだけで金額を判断するのではなく、どの要素が自分のケースに影響するのかを整理することが、適切な示談につながります。

法律的に支払う義務がある金額と示談金額は必ずしも一致しません。むしろ、支払義務のある金額よりも大きな金額とする方が多いでしょう。

示談が刑事処分に与える影響

傷害事件において示談が成立した場合、刑事処分にどのような影響があるのかは、多くの方が気にする点です。示談は刑事手続そのものを終了させるものではありませんが、刑事上の判断に影響を与える重要な事情として考慮されます。

まず、示談が成立している場合、被害者の処罰感情が一定程度解消されていると評価されることがあります。この点は、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、裁判所が量刑を判断する際に、有利な事情の一つとして考慮される可能性があります。

特に、傷害の程度が比較的軽い事案や、初犯である場合には、示談が成立していることを理由に不起訴処分となるケースも見られます。ただし、示談が成立したからといって、必ず不起訴になるわけではありません。ケガの程度が重い場合や、事件の悪質性が高い場合には、示談があっても起訴されることがあります。

また、起訴された場合であっても、示談が成立していれば、刑が軽くなる方向で考慮されることがあります。具体的には、罰金刑にとどまったり、執行猶予が付されたりするなど、量刑面で有利に働く可能性があります。

一方で、示談が成立していない場合や、示談交渉が難航している場合には、被害者の処罰感情が強いまま残っていると評価され、刑事処分が重くなる要因となることもあります。そのため、刑事手続への影響を考えるうえでは、示談の有無や内容が重要な意味を持つといえます。このように、傷害事件における示談は、刑事処分を左右する一要素にすぎないものの、軽視できない事情です。示談の意義を正しく理解したうえで、事件全体の状況を踏まえた対応を検討することが重要になります。

傷害事件における示談の流れ

傷害事件の示談は、思いつきで進めるものではなく、一定の手順を踏んで進める必要があります。進め方を誤ると、示談がまとまらないだけでなく、後のトラブルにつながることもあります。ここでは、実務上一般的な示談の流れを整理します。

被害者との連絡・謝罪

示談は、被害者との連絡が取れることが前提になります。捜査段階では、警察や検察を通じて連絡先を確認することが多く、直接連絡を取ることが適切でない場合もあります。示談交渉の初期段階では、誠実な謝罪の意思を伝えることが重要です。

示談条件の調整

謝罪の意思が伝わった後、示談金の金額や支払方法など、具体的な条件の調整に入ります。示談金は、ケガの程度や治療状況、被害者の意向を踏まえて提示されます。金額だけでなく、支払時期や分割の可否といった点も、示談成立の可否に影響します。

示談書の作成

条件がまとまった場合には、示談書を作成して合意内容を明確にします。示談書には、示談金の金額や支払方法のほか、清算条項や宥恕に関する記載が盛り込まれるのが一般的です。口頭での合意だけでは、後日の紛争を防ぐことができません。

示談金の支払い

示談書の内容に従い、示談金の支払いを行います。支払いが確認されることで、示談は実質的に履行されたことになります。支払いの遅れや不履行があると、示談が無効と主張されるおそれがあるため注意が必要です。

示談成立の報告

示談が成立した後は、検察官や裁判所に対して示談成立の事実を伝えることになります。示談書の提出などを通じて、被害者の処罰感情が緩和されていることを示すことで、刑事処分の判断に反映される可能性があります。このように、傷害事件の示談は、謝罪から合意、履行までを一連の流れとして丁寧に進めることが重要です。手順を誤らず、内容を明確にしたうえで進めることが、円滑な解決につながります。

捜査機関に示談の成立を報告した場合、捜査機関から被害者側にその確認を行うことが一般的です。そのため、被害者側が心から納得した形で示談を締結することが不可欠と言ってよいでしょう。

示談書に記載すべき内容と注意点

傷害事件で示談が成立する場合、示談書を作成して合意内容を明確に残すことが重要です。示談書は、単なる形式的な書面ではなく、後日のトラブルを防ぐための証拠資料としての役割を持ちます。内容が不十分な場合、示談後に新たな紛争が生じるおそれがあります。

示談金の金額と支払方法

示談書には、示談金の金額とともに、支払期限や支払方法を具体的に記載します。一括払いか分割払いか、振込か現金かといった点を明確にしておかないと、支払いをめぐる認識の違いが生じる可能性があります。

清算条項の重要性

示談書で特に重要なのが、清算条項です。清算条項とは、示談金の支払いをもって、本件に関する一切の請求権を相互に放棄することを確認する条項を指します。この記載が不十分な場合、示談後に治療費や慰謝料の追加請求を受けるおそれがあります。

宥恕に関する記載

刑事事件においては、示談書に宥恕の意思を示す記載が含まれることがあります。これは、被害者が加害者を許し、処罰を求めない意思を示すものです。宥恕文言があるかどうかは、検察官や裁判所が刑事処分を判断する際の参考事情となることがあります。

当事者の特定と署名押印

示談書には、当事者の氏名や住所を正確に記載し、署名押印を行うことが必要です。記載内容が曖昧であったり、当事者が特定できなかったりすると、示談書としての効力が問題になることがあります。

示談書作成時の注意点

示談書は、一度作成すると修正が難しい書面です。内容を十分に確認しないまま署名してしまうと、後から不利な条件に気付いても争いにくくなります。特に、清算条項や宥恕に関する記載については、その意味を理解したうえで合意することが重要です。このように、傷害事件の示談書は、示談金の支払いだけでなく、その後の関係を整理する重要な書面です。形式だけでなく、記載内容の中身に十分注意する必要があります。

示談金を支払えない場合の対応

傷害事件において、示談の必要性は理解していても、示談金を一括で支払うことが難しいというケースは少なくありません。このような場合でも、直ちに示談を断念すべきとは限らず、現実的な対応を検討する余地があります。

分割払いによる示談

示談金を一括で支払えない場合、分割払いによる示談が認められることがあります。分割払いが可能かどうかは、被害者の意向が大きく影響しますが、支払計画を具体的に示すことで、理解を得られる場合もあります。分割払いとする場合には、支払回数や期限を明確に定めることが重要です。

示談金額の調整

支払能力に応じて、示談金額そのものを調整するという選択肢もあります。示談金は当事者間の合意で決まるため、必ずしも相場どおりの金額でなければならないわけではありません。ただし、被害者の処罰感情や事件の内容によっては、金額の調整が難しい場合もあります。

支払不能の場合の影響

示談金を支払うことができず、示談が成立しない場合には、刑事手続において不利に扱われる可能性があります。被害者の処罰感情が解消されないまま残ると、起訴や量刑の判断に影響することがあります。そのため、支払能力に不安がある場合には、早い段階で対応を検討することが重要です。

無理な約束をしないことの重要性

示談交渉の場面では、示談を成立させたいという思いから、実際には支払えない金額を約束してしまうケースも見られます。しかし、約束どおりに支払えなければ、示談が無効と主張されたり、新たなトラブルに発展したりするおそれがあります。支払可能な範囲で現実的な条件を提示することが重要です。このように、示談金を支払えない場合であっても、分割払いや条件調整などの対応策が検討できる場合があります。重要なのは、無理のない形で示談を目指し、結果として不利な状況を招かないようにすることです。

傷害事件の場合、示談金の分割払いはあまり推奨されません。当事者間の関係はできるだけ早く切り離すべきであって、関係が長期間継続することは望ましくない事件類型であるためです。

弁護士に示談交渉を依頼するメリット

傷害事件の示談は、当事者同士で進めることも可能ですが、実務上は弁護士を通じて行われるケースが多いのが実情です。そこには、示談交渉を専門家に任せることによる、いくつかの現実的なメリットがあります。

被害者との直接交渉を避けられる

示談交渉では、被害者の感情が強く表れる場面も少なくありません。弁護士に依頼することで、被害者との直接的なやり取りを避けることができるため、感情的な衝突や不用意な発言によるトラブルを防ぎやすくなります。

適正な示談金水準を見極めやすい

示談金には明確な基準がないため、相場だけを頼りに判断すると、過大な金額を提示してしまったり、逆に示談がまとまらない金額になったりするおそれがあります。弁護士が関与することで、事案に応じた現実的な示談金水準を見極めた交渉が可能になります。

示談書の内容を適切に整えられる

示談が成立した場合には、示談書の内容がその後のトラブルを左右します。弁護士に依頼すれば、清算条項や宥恕に関する記載など、実務上重要な点を踏まえた示談書を作成することができます。これにより、示談後の紛争リスクを抑えることが期待できます。

刑事手続を見据えた対応ができる

傷害事件の示談は、民事的な解決にとどまらず、刑事処分への影響を意識して進める必要があります。弁護士が関与することで、示談のタイミングや内容について、刑事手続との関係を踏まえた判断がしやすくなります。このように、弁護士に示談交渉を依頼することは、示談を成立させるためだけでなく、その後の法的リスクを抑えるうえでも有効です。傷害事件の示談について不安がある場合には、専門家の関与を検討することが、結果として適切な解決につながることがあります。

専門性ある弁護士に依頼することで、示談金を支払うことの具体的な効果を正しく把握できることは非常に大きなポイントになります。その効果の大きさに応じて負担できる示談金額が変わりやすいためです。

よくある質問(FAQ)

Q. 傷害事件の示談金は、必ず支払わなければなりませんか。

傷害事件における示談は、当事者間の合意によって成立する解決方法であり、法律上、必ず示談金を支払わなければならないと定められているわけではありません。
ただし、示談が成立していない場合には、被害者の処罰感情が解消されないまま残ることになり、刑事手続において不利に扱われる可能性があります。そのため、状況に応じて示談を検討することが重要になります。


Q. 示談金を支払えば、必ず不起訴になりますか。

示談が成立していることは、不起訴や量刑判断において考慮される事情の一つですが、示談があれば必ず不起訴になるわけではありません
ケガの程度が重い場合や、事件の悪質性が高い場合には、示談が成立していても起訴されることがあります。示談はあくまで、刑事処分を判断する際の一要素として扱われます。


Q. 被害者と直接連絡が取れない場合でも、示談はできますか。

捜査段階では、警察や検察を通じて被害者の連絡先を確認できる場合があります。また、被害者が直接の連絡を望まないケースでも、弁護士を通じて示談交渉が行われることは少なくありません。
被害者との接触方法について不安がある場合には、無理に直接連絡を取ろうとせず、適切な方法を検討することが重要です。

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傷害罪は初犯でも罰金や前科がつく?処分の目安を解説

傷害罪は、初犯であっても、事案の内容や経緯によっては罰金刑が科され、結果として前科が残る可能性がある犯罪です。「初犯であれば処分は軽い」と考えられることもありますが、被害の程度や行為態様、被害者との関係などを踏まえ、処分の重さは個別に判断されます。また、状況によっては逮捕や起訴に至るケースもあり、必ずしも軽微な事件として扱われるとは限りません。傷害罪の処分を検討するうえでは、刑法上の構成要件や法定刑だけでなく、捜査段階での対応や示談の成否が、その後の処分に影響することもあります。本記事では、傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向、前科がつくかどうか、刑事手続の流れや示談の影響について、弁護士の立場から整理して解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害罪とは|初犯でも処分の対象となる犯罪の内容

傷害罪とは、人の身体に傷害を負わせた場合に成立する犯罪で、刑法204条に規定されています。ここでいう傷害には、骨折や出血といった明らかな外傷だけでなく、打撲や捻挫など、治療を要する身体的障害も含まれます。外見上は軽いケガに見える場合でも、医師の診断により一定期間の治療や通院が必要と判断されれば、傷害に該当する可能性があります。

傷害罪は、日常的なトラブルや口論の延長で問題となることも少なくありません。「強く殴ったつもりはなかった」「軽く押しただけだった」という認識であっても、結果として相手に傷害が生じていれば、刑事責任を問われる可能性があります。そのため、当事者の感覚と刑法上の評価が一致しないケースも多く見られます。

傷害罪と混同されやすい犯罪として暴行罪があります。暴行罪は、殴る、蹴る、突き飛ばすなどの有形力を行使したものの、結果として相手に傷害が生じなかった場合に成立する犯罪です。一方で、同じ行為であっても、治療を要するケガが生じた場合には、暴行罪ではなく傷害罪として扱われます。この「結果の有無」が、両者を分ける重要な判断基準となります。

傷害罪の法定刑は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされています(刑法204条)。このように、法律上は比較的重い刑罰が予定されている犯罪であるため、初犯であっても、事案の内容次第では罰金刑にとどまらない処分が検討されることもあります。

このように、傷害罪は「初犯だから軽い処分で済む」と一概に言える犯罪ではありません。処分の内容は、傷害の程度や発生状況、被害者との関係、事件後の対応などを踏まえて個別に判断されます。初犯の場合の処分を正しく理解するためには、まず傷害罪の基本的な性質を押さえておくことが重要です。

傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向

傷害罪が初犯であった場合の処分は、事件の内容や経緯を踏まえて個別に判断されます。一般論としては、初犯であることは処分を検討するうえで考慮される事情の一つとされることが多いものの、それだけで必ず軽い結果になるとは限りません。

初犯の場合に多い処分のパターン

初犯の傷害事件では、被害の程度が比較的軽く、事件後の対応に問題がない場合には、不起訴処分略式手続による罰金刑にとどまるケースが見られます。とくに、被害者との示談が成立している場合には、検察官が起訴を見送り、不起訴とする判断がなされることがあります。

また、不起訴とならず起訴された場合であっても、初犯であれば、略式命令による罰金刑が選択されることは少なくありません。この場合、公開の裁判は行われず、書面審理のみで処分が決まります。ただし、罰金刑であっても刑罰である以上、前科が付く可能性がある点には注意が必要です。

初犯でも軽い処分にとどまらないケース

一方で、傷害罪は法律上、比較的重い刑罰が予定されている犯罪であるため、初犯であっても、事案の内容によっては軽い処分にとどまらないことがあります。たとえば、被害者が長期間の治療を要する重傷を負った場合や、凶器を用いた行為により傷害を負わせた場合には、不起訴や略式手続にとどまらず、より重い処分が検討される可能性があります

また、行為態様が悪質と評価される場合や、事件の経緯から再犯のおそれが否定できないと判断される場合には、初犯であることのみを理由に、処分を大きく軽減することが難しくなることもあります。

初犯であることが考慮される場面

初犯であることは、量刑判断の段階で考慮される事情の一つです。前科がないことや、反省の態度が見られること、再犯のおそれが低いと判断されることなどは、処分を検討するうえで有利に働く場合があります。ただし、これらの事情は、被害の程度や示談の有無などとあわせて、総合的に評価されます。このように、傷害罪が初犯だった場合には一定の傾向はあるものの、「初犯だから必ず罰金で済む」「必ず不起訴になる」といった一律の基準は存在しません。処分の見通しを判断するためには、事件の具体的な内容を踏まえて検討することが重要です。

傷害罪の初犯で前科はつくのか

傷害罪が初犯だった場合でも、処分の内容によっては前科が付く可能性があります。前科が付くかどうかは、「初犯かどうか」ではなく、どのような刑事処分が下されたかによって決まります。

不起訴処分の場合

傷害事件について不起訴処分となった場合には、刑罰は科されないため、前科は付きません。不起訴には、証拠が不十分な場合のほか、被害者との示談が成立していることや、犯行の態様が比較的軽微であることなどを理由とするものも含まれます。

もっとも、不起訴となった場合でも、捜査を受けた事実そのものが完全に消えるわけではなく、いわゆる前歴として記録が残ることがあります。ただし、前歴は前科とは異なり、刑罰を受けた履歴ではありません。

罰金刑となった場合

傷害罪について罰金刑が科された場合には、初犯であっても前科が付くことになります。略式手続による罰金刑であっても、刑罰である以上、前科として扱われる点に違いはありません。

そのため、「裁判にならず罰金で済んだ」という場合であっても、法律上は有罪判決を受けたことになり、前科が付くことになります。この点は、一般的なイメージと異なることが多く、注意が必要です。

執行猶予付き判決の場合

傷害罪で執行猶予付きの判決が言い渡された場合にも、刑罰自体は言い渡されているため、前科は付きます。執行猶予は、一定期間、刑の執行を猶予する制度であり、無罪や処罰なしを意味するものではありません。

初犯であることと前科の関係

このように、前科が付くかどうかは、初犯か再犯かという点ではなく、最終的な処分の内容によって決まります。初犯であることは、不起訴や比較的軽い処分を検討する際に考慮される事情の一つではありますが、前科が付くかどうかを直接左右するものではありません。

前科の有無は、その後の生活や社会的評価に影響を及ぼす可能性があるため、処分の見通しを考えるうえで重要な要素です。傷害罪が初犯であっても、どのような処分が想定されるのかを正確に理解しておくことが大切です。

傷害罪で逮捕されるケースと刑事手続の流れ

傷害罪は、初犯であっても逮捕される可能性がある犯罪です。ただし、すべての傷害事件で直ちに逮捕されるわけではなく、逮捕の要否は事件の内容や状況に応じて判断されます。

初犯でも逮捕される主なケース

傷害罪で逮捕が検討されるのは、主に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断される場合です。たとえば、加害者の身元が不明確で連絡が取れない場合や、被害者や関係者への働きかけによって証拠が失われるおそれがある場合には、初犯であっても逮捕されることがあります。

また、被害の程度が重い場合や、凶器を用いた行為が認められる場合などでは、事件の重大性を理由として、逮捕が選択される可能性が高まります。もっとも、これらの事情があるからといって、必ず逮捕されるわけではなく、在宅のまま捜査が進められるケースも少なくありません。

逮捕されない「在宅事件」となる場合

傷害事件では、在宅事件として扱われることも多く見られます。在宅事件とは、身柄を拘束されることなく、呼び出しに応じて取調べを受けながら捜査が進められる形態です。被疑者が定職に就いている場合や、住所が定まっており逃亡のおそれが低いと判断される場合などには、初犯であることも考慮され、在宅事件とされることがあります。

逮捕後の刑事手続の流れ

逮捕された場合、まず警察で取調べが行われ、その後、検察官に送致されます。検察官は、勾留が必要かどうかを判断し、必要があると判断した場合には、裁判所に勾留請求を行います。裁判所が勾留を認めると、最大で20日間、身柄が拘束される可能性があります。

勾留期間中、検察官は、起訴するか不起訴とするかを判断します。不起訴となれば釈放され、刑事手続は終了します。一方、起訴された場合には、略式手続による罰金刑となるか、正式な裁判(公判)で審理されるかが検討されます。

初犯の場合に意識すべき点

このように、傷害罪の刑事手続は、逮捕されるかどうか、勾留されるかどうか、起訴されるかどうかといった複数の段階を経て進みます。初犯であることは、これらの判断において考慮される事情の一つではありますが、それだけで身柄拘束や起訴が回避されるとは限りません。

傷害罪が初犯であっても、事件の内容次第では、早い段階から慎重な対応が求められることになります。刑事手続の流れを把握しておくことは、今後の見通しを考えるうえで重要です。

傷害罪では、初犯であることと逮捕勾留の有無に直接の関係がないケースも多いです。初犯であっても身柄拘束の回避を目指す実益は非常に大きいと言えます。

示談が初犯の処分に与える影響

傷害罪が初犯だった場合、示談が成立しているかどうかは、その後の処分に大きく影響する事情の一つです。示談は、それ自体で刑罰が決まるものではありませんが、捜査や処分の判断において、重要な考慮要素として扱われます。

示談とは何か

示談とは、加害者と被害者の間で、損害賠償や謝罪などについて合意し、紛争を解決することをいいます。傷害事件における示談では、治療費や休業損害、慰謝料の支払いなどが合意内容となることが一般的です。示談が成立すると、被害者が処罰を求めない意思を示す、いわゆる宥恕の意思が確認される場合もあります。

示談が成立した場合の影響

示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性が高まる傾向があります。とくに、被害の程度が比較的軽く、初犯である場合には、示談の成立が判断の重要な要素となり、不起訴とされることも少なくありません。

また、起訴された場合であっても、示談が成立していれば、処分の内容を検討する際に有利な事情として考慮されます。たとえば、略式手続による罰金刑にとどまるかどうか、あるいは量刑を判断する場面で酌量される方向に働く可能性があります。

示談が成立しない場合の影響

一方で、示談が成立していない場合には、不起訴とする判断が難しくなることがあります。被害者の処罰感情が強い場合や、損害賠償が行われていない場合には、起訴される可能性が相対的に高まります。

もっとも、示談が成立していないからといって、必ず起訴されるわけではありません。事件の内容や被害の程度、そのほかの事情を踏まえて、検察官が総合的に判断することになります。

初犯と示談の関係

初犯であることは、示談が成立している場合に、その効果をより評価する方向に働くことがあります。反省の態度が示されていることや、再犯のおそれが低いと判断されることとあわせて、示談の成立が処分の見通しに影響を与えることになります。ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になる、あるいは前科が付かないといった保証があるわけではありません。示談の意義と限界を正しく理解しておくことが重要です。

初犯でも処分が重くなりやすいポイント

傷害罪が初犯であっても、事件の内容によっては、比較的重い処分が検討されることがあります。初犯であることは有利な事情の一つではありますが、それだけで処分が大きく軽減されるとは限りません。ここでは、実務上、処分が重くなりやすいとされる代表的なポイントを整理します。

被害の程度が重い場合

処分の重さを左右する最も重要な要素の一つが、被害の程度です。被害者が長期間の治療を要する重傷を負った場合や、後遺障害が残る可能性がある場合には、初犯であっても、軽い処分にとどまらない可能性があります。被害結果が重大であるほど、処分を慎重に検討すべき事案として扱われる傾向があります。

行為態様が悪質と評価される場合

行為の内容や方法が悪質と評価される場合にも、処分が重くなる可能性があります。たとえば、複数回にわたって暴行を加えた場合や、相手が抵抗できない状況を利用して傷害を負わせた場合などでは、初犯であっても厳しい評価がなされることがあります。

凶器を用いた場合

凶器を用いて相手に傷害を負わせた場合には、行為の危険性が高いと評価されやすく、処分内容の判断が厳しくなる傾向があります。凶器の種類や使用状況によって評価は異なりますが、偶発的なトラブルとして処理されにくくなる点には注意が必要です。

被害者との関係性や事件の経緯

被害者との関係性や、事件に至る経緯も重要な判断要素です。たとえば、日常的なトラブルがエスカレートした場合や、計画性が疑われる事情がある場合などには、処分が重くなる可能性があります。また、被害者との関係が近しい場合であっても、そのこと自体が処分を軽くするとは限りません。

事件後の対応に問題がある場合

事件後の対応も、処分に影響を与える要素の一つです。被害者への謝罪や損害賠償が行われていない場合や、反省の態度が十分に示されていないと判断される場合には、初犯であっても有利な事情として評価されにくくなります。このように、初犯であることだけでは処分の軽重は決まりません。被害の内容や行為態様、事件後の対応など、複数の事情が総合的に考慮されて処分が判断されます。初犯であっても、どのような点が問題視されやすいのかを理解しておくことが重要です。

法律的には、どれだけ大きな被害をもたらし得る行為だったのか、という点が処分の重さに影響しやすい傾向にあります。刑罰は行為責任に見合った重さにすべきである、という考え方からくるものです。

傷害罪の初犯で弁護士ができること

傷害罪については、事件の内容や対応の仕方によって、その後の処分が大きく左右されることがあります。とくに、捜査の初期段階からどのような対応を取るかは、処分の見通しを考えるうえで重要な要素となります。弁護士は、刑事手続の各段階に応じて、法的観点から適切な対応を行うことができます

捜査段階での対応

捜査が始まった段階では、取調べへの対応や供述内容が、その後の処分に影響を与えることがあります。弁護士は、事実関係を整理したうえで、どのような点に注意して対応すべきかを助言し、不利益な供述を避けるためのサポートを行います。また、逮捕や勾留が問題となる場面では、身柄拘束の必要性が低いことを主張し、在宅事件としての取扱いや早期の身柄解放を目指す活動を行うこともあります。

示談交渉への関与

傷害事件においては、被害者との示談が処分に影響を与える重要な要素となることがあります。弁護士が関与することで、法的に適切な内容での示談交渉が進められ、感情的な対立を避けながら話し合いを行うことが可能になります。示談の進め方や条件についても、処分への影響を踏まえた検討が行われます。

起訴・裁判段階での弁護活動

起訴された場合には、略式手続が相当かどうか、あるいは正式な裁判でどのような主張を行うべきかが検討されます。弁護士は、事件の内容や反省の状況などを踏まえ、処分が過度に重くならないようにするための弁護活動を行います。裁判においては、量刑を判断するための事情を整理し、適切に主張する役割を担います。

弁護士が関与する意義

このように、傷害罪については、弁護士が関与することで、刑事手続全体を見据えた対応が可能になります。捜査・示談・起訴・裁判といった各段階を個別に捉えるのではなく、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

手続の段階や事件の内容によって、弁護士にできることは変わってきます。臨機応変に、最良の結果を目指す動きを選択、実行できることが、専門性ある弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ|傷害罪が初犯でも押さえておくべきポイント

傷害罪は、初犯であっても、事件の内容や対応次第で処分の見通しが大きく変わる可能性がある犯罪です。初犯であることは有利に考慮され得る事情の一つではありますが、それだけで軽い処分にとどまると一概に言えるものではありません。

処分の判断においては、被害の程度や行為態様、事件後の対応、被害者との示談の有無など、複数の事情が総合的に考慮されます。不起訴や罰金刑にとどまるケースがある一方で、事案によっては軽い処分にとどまらないこともあります。また、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付く点にも注意が必要です。

刑事手続の進行においては、逮捕や勾留の有無、起訴の判断、裁判手続の選択など、複数の段階があります。これらは個別に判断されるものではありますが、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

このように、傷害罪については、初犯かどうかだけに目を向けるのではなく、事件の内容やその後の対応を含めて全体像を把握することが大切です。状況を正確に整理し、どのような点が判断材料となるのかを理解したうえで、冷静に対応を検討することが求められます。

傷害罪の初犯に関するよくある質問

Q1. 傷害罪が初犯であれば、必ず罰金で済みますか?

いいえ、必ず罰金で済むとは限りません。
初犯であることは処分を判断する際に考慮される事情の一つですが、被害の程度や行為態様、事件後の対応などによっては、罰金刑にとどまらない処分が検討されることもあります。処分の内容は、個別の事情を踏まえて判断されます。

Q2. 傷害罪が初犯でも前科が付くことはありますか?

はい、処分の内容によっては前科が付くことがあります。
不起訴処分となった場合には前科は付きませんが、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付きます。前科が付くかどうかは、初犯か再犯かではなく、最終的な処分の内容によって決まります。

Q3. 示談が成立すれば、傷害罪は不起訴になりますか?

示談が成立すれば不起訴となる可能性は高まりますが、必ず不起訴になるわけではありません。
示談は処分を判断する際の重要な考慮要素の一つですが、それだけで結果が決まるものではなく、被害の程度や事件の経緯などを踏まえて総合的に判断されます。

Q4. 傷害罪が初犯の場合、逮捕されないこともありますか?

はい、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むこともあります。
逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断される場合などには、初犯であることも考慮され、逮捕されないことがあります。ただし、被害の程度や事件の状況によっては、初犯であっても逮捕が検討されることがあります。

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さいたま市大宮区の藤垣法律事務所では,500件を超える様々な刑事事件に携わった実績ある弁護士が,最良の解決をご案内することができます。
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【刑事事件解決事例】傷害事件で逮捕後10日勾留の途中で不起訴釈放となった事例

傷害事件で逮捕された場合、勾留が決定すると10日間(場合によっては延長)にわたり身体拘束が続くのが通常です。もっとも、被害回復の状況や当事者間の解決状況によっては、満期を待たずに手続が終了することもあります。ここでは、勾留中に示談が成立し、途中で不起訴釈放となった事例を紹介します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

事案の概要

ご相談者は路上での口論をきっかけに、
相手を殴る行為に及んでしまいました。

通報により駆け付けた警察官により、
傷害事件として現行犯逮捕され、その後勾留されました。

早期解決を希望したご家族から、弁護士へ相談がありました。


想定された法的リスク

勾留が決定している以上、

  • 10日間の身体拘束(延長の可能性あり)
  • 起訴による前科の発生

が懸念される状況でした。


弁護士の対応

1 事案の性質の整理

事情を確認したところ、

  • 飲酒の影響による感情的な衝突
  • 重大な傷害結果ではない

などの事情があり、
適切な謝罪が伝われば早期解決の余地があると判断しました。


2 示談交渉の実施

被害者へ謝罪と事情説明を行い、
速やかな示談成立を目指しました。

その結果、比較的円滑に示談が成立しました。
示談成立は勾留5日目頃でした。


結果

示談成立後、速やかに処分が検討され、
勾留満期(10日)を待たず不起訴釈放となりました。

事件は早期に終了しました。


この事例のポイント

  • 勾留中でも途中釈放の可能性がある
  • 示談成立のタイミングが重要
  • 早期対応が身体拘束期間を左右する

勾留された事件でも、対応次第で結果や拘束期間が大きく変わることがあります。

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【刑事事件解決事例】家庭内トラブルによる傷害で逮捕後、早期釈放・不起訴となったケース

家庭内でのトラブルが警察沙汰となった場合、当事者同士の関係性にかかわらず、傷害事件として逮捕に至ることがあります。もっとも、家族間の事件では、被害者の意向や関係修復の状況が処分判断に影響することもあります。ここでは、逮捕後に早期釈放となり、その後不起訴で終了した事例を紹介します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

事案の概要

ご相談者は自宅で母親と口論となり、
物を投げつける行為に及んでしまいました。

母親は顔面に痣ができるけがを負い、警察へ相談。
警察の案内により被害届が提出され、傷害事件として逮捕されるに至りました。


想定された法的リスク

家庭内の事件であっても、傷害結果が生じている以上、

  • 勾留による身柄拘束の長期化
  • 起訴による前科の発生

といった可能性がある状況でした。

一方で、被害者が家族である場合には、関係修復の有無が処分判断に影響する余地もありました。


弁護士の対応

1 被害者の意向の調整

弁護士が双方から事情を確認したところ、

  • ご相談者は深く反省している
  • 母親は強い処罰を望んでいない

ことが分かりました。

そこで弁護士が間に入り、
反省状況や気持ちを丁寧に伝達しました。

その結果、母親から釈放を希望する意向が示され、
早期釈放に至りました。


2 関係修復と不問の合意

釈放後、弁護士が仲介して話し合いの場を設け、
家族間で本件を不問とする形で解決しました。

その内容を捜査機関へ報告しました。


結果

被害者の意思と関係修復の状況が考慮され、
不起訴処分となりました。

前科が付くことなく事件は終了しました。


この事例のポイント

  • 家族間事件では被害者の意向が重要な事情となる
  • 早期の調整により釈放につながる場合がある
  • 関係修復の具体的な状況が処分判断に影響する

家庭内トラブルが刑事事件化した場合でも、対応の仕方により結論が変わる可能性があります。

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傷害事件における自首のメリットや弁護士依頼の要否,注意すべき点などを解説

このページでは,傷害事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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傷害事件で自首をするべき場合

①被害者が重傷を負っている場合

自首を検討するべき場合の代表例は,事件が重大で刑事責任が重く評価されやすいケースです。自首は,逮捕や起訴の回避を目指す手段として有効なものですが,事件が重大であって刑事責任が重い場合は,特に逮捕や起訴の恐れが大きい傾向にあります。そのため,被害者が重傷を負っている傷害事件では,刑事責任が重く,自首を検討するメリットが類型的に大きいと言えるでしょう。

また,傷害事件の捜査は,基本的に被害者が捜査機関に相談等したことをきっかけに開始されます。逆に,被害者が声を上げなければ,捜査が始まるきっかけも生じないことになります。
この点,被害者が重傷を負った傷害事件の場合,被害者が事後に何のアクションも取らないことは考えにくいところです。そのため,捜査が開始される可能性が非常に高く,自首の検討が必要になりやすいでしょう。

ポイント
刑事責任が重く,逮捕や起訴の恐れが大きい
被害者が捜査を求める可能性が高い

②加害者を特定する証拠が十分にある場合

自首は,自分が加害者であると特定される可能性が高い場合に,先手を打つ形で行うことが非常に有益です。なぜなら,自首をしてもしなくても加害者が特定される状況であれば,先に自首をしても不利益がない一方,自首せずに捜査を受ける場合と比較して大きなメリットが期待できるからです。不利益がなくメリットが大きいのであれば,積極的に検討するべきことは間違いありません。

そのため,事件の加害者を特定する証拠が十分にあると思われるケースでは,積極的な自首の検討が有力です。傷害事件で生じやすい証拠としては,被害者側の記憶(特に被害者が知人である場合),目撃者,公共の場所における防犯映像などが挙げられます。

ポイント
先手を打って自首をしても不利益がなく,大きな効果が期待できるケースに当たる

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首をすることで,刑事事件の捜査は被疑者(=加害者)に配慮した方法で行われることになりやすいです。例えば,突然制服を着た複数の警察官が訪れたり,逮捕や捜索などの強制的な捜査が行われたりといった,周囲に事件の存在が知られるような方法はできるだけ回避してくれるケースが多い傾向にあります。
これは,自首をした被疑者であれば,穏やかな方法であっても捜査協力が期待できるため,周囲への発覚を防ぎたいという被疑者の希望に配慮した動きです。

逆に,周囲への発覚を防ぎたい,という希望が非常に大きい場合には,捜査機関の配慮を期待する意味も含めて自首を行うことが有力な手段と言えます。自首に込めた誠意や協力姿勢が伝われば,いたずらに周囲へ知られるような動きは控えてくれることが多いでしょう。

ポイント
自首した事件の捜査は,加害者に配慮した方法で行われやすい

④当事者間での示談交渉が困難な場合

傷害事件は,当事者間で解決すればその後に捜査が開始されることは通常ありません。そのため,当事者間で示談などをし,円満な解決に至れば,その後に捜査が始まることを考える必要はなく,捜査に備えた自首を検討する必要もないと言えるでしょう。
裏を返せば,当事者間での示談交渉が困難なケースでは,いつ被害者が捜査機関に被害申告をして捜査が始まることになるのか分からない,非常に不安定な状況にならざるを得ません。

そのため,当事者間で示談交渉ができる状況になく,不安定な状況を少しでも早く脱する必要がある場合には,自首の検討が有力です。適切に自首ができれば,刑事事件の進捗や見通しが分からない,という事態を避けることができるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば自首は不要
示談交渉困難で不安定な状況にある場合,自首の検討が有力

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

傷害事件の自首は弁護士に依頼すべきか

傷害事件の自首について検討する際や,実際に自首を進める際には,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら行うことが適切です。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低くなる

自首は,逮捕を防ぐことが大きな目的の一つですが,弁護士に依頼し,適切な方法で自首を進めることによって,逮捕の可能性はより低くなることが期待できます。弁護士に依頼した場合,弁護士が窓口となって捜査機関とやり取りすることで,自首の趣旨や申告したい犯罪事実を正しく把握してもらうことができるため,自首が円滑になり,その効果も十分に生じることが見込まれるでしょう。

自首は大きなリスクを背負った重大な行動であり,その効果を最大限にできる方法を取らないことは背負ったリスクに見合わない結果を招きかねません。そのため,自首を行う以上はできる限りの手段を尽くす,という発想を大切にすることをお勧めします。

②取調べへの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には捜査機関による捜査が始まることとなります。そして,捜査が行われる際に主要な動きとなるのが取調べです。
一般的に,自首を行った場合には,出頭した当日又は次回の出頭時に,捜査機関担当者から取り調べを受けることが見込まれます。取調べは警察署内の密室などで行われ,弁護士など第三者の立ち会いはできないことが通常です。

そのため,取り調べが始まってから対処を検討することはできず,事前の備えが不可欠ですが,弁護士に依頼することで,将来の取調べに対する備えもあわせて案内してもらうことが可能になります。
刑事手続や取調べの運用に精通した弁護士であれば,取調べの流れや取るべき対応や話すべき内容など,包括的なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。事前に取調べの備えができれば,自首への不安も最小限に抑えられます。

③手続や処分の見込みが分かる

自首は,その後の手続の流れや処分見込みが分かっていれば格段に行いやすくなります。自首した後自分がどうなってしまうのか,自首するのとしないのとで刑事処分がどのように変わるのか,という点が全く分からないまま,闇雲に自首をするのは難しいですが,見通しが持てていれば,リスクの大きな自首も心理的負担小さく行うことが可能になるでしょう。

この点,弁護士に依頼して自首を進めれば,自首後の手続の流れについて案内を受けてもらいながら対応することが可能です。また,自首を踏まえた処分見込みを専門的な知識経験を踏まえてアドバイスしてもらえるため,希望する解決に向けた取り組みが容易になります。

④自首後の弁護活動が迅速にできる

傷害事件で自首を行った場合には,被害者との示談交渉など,その後の弁護活動を適切に行ってもらうことで,自首の効果がより高く発揮されます。自首の主な目的である逮捕回避や不起訴処分の獲得は,被害者との示談が成立することでより確実になり,希望した結果の実現に大きく近づくでしょう。

この点,自首の段階から弁護士に依頼し,弁護士と協同する体制を設けておくことで,自首後の弁護活動を速やかに始めることができます。また,加害者が自首をした事実は,被害者の感情面にもプラスの影響を及ぼしやすく,示談成立の可能性は自首のないケースよりも高くなりやすいでしょう。

傷害事件で自首をする場合の注意点

①自首が相手方の意向に反する可能性

自首は,加害者が自分の判断で警察等の捜査を求める行動です。そのため,被害者の意向を確認することなく捜査が開始され,その後に捜査機関が被害者へ捜査協力を求める可能性もあります。

この点,自首による捜査の開始が被害者側の意向に反してしまう可能性があることは,事前に十分留意しておくのが適切でしょう。
被害者が特に捜査機関への相談などを行っていない場合,被害者は捜査機関の関与を希望していない可能性があります。その理由は,対応が面倒である,当事者間での解決を希望しているなど様々ですが,自首が被害者の意向に反している場合,自首が適切な動きではなかった,という結論になり得るでしょう。

②時期が遅れると自首が成立しない

自首は,捜査機関にとって犯罪事実か犯人の両方が発覚している状況では成立しません。そのため,被害者の申出をきっかけに捜査が開始され,犯罪事実と犯人が特定された後では,自ら警察への出頭を試みても法的には自首と評価されず,自首のメリットを十分に得られない可能性があります。

傷害事件の場合,被害者が警察に被害申告をする可能性が比較的高く,犯人を特定する証拠が得られやすいケースも少なくないため,検討に長期間をかけてしまっていると,自首ができない状態に陥ってしまう恐れがあります。
自首の検討は,できるだけ早期に行うことをお勧めします。

③自首すれば不起訴になるわけではない

自首の大きな目的の一つは不起訴処分です。刑事事件は,捜査を遂げた検察によって起訴又は不起訴の処分がなされますが,起訴されれば前科がつき,不起訴となれば前科が付かないため,極めて大きな分岐点になります。

この点,自首によって不起訴処分の可能性が高くなることは間違いありませんが,自首をすれば直ちに不起訴になる,というものではない点には注意が必要です。自首は,不起訴の判断を促す事情の一つに過ぎず,自首しても起訴され前科が付く可能性はあります。
特に,事件の重大性が著しいケースでは,自首という事情があっても事件の重大性の方が重く評価され,不起訴処分が逃れられない場合が多くなりやすいでしょう。

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【傷害事件での呼び出し】警察が呼び出す目的や流れ,逮捕される可能性や逮捕を防ぐ手段などを詳細解説

このページでは,傷害事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
傷害事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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傷害事件で呼び出された場合の対応法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

ポイント
犯罪の成否に影響しない場合,主張の時期や方法は慎重に検討するのが適切

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①取調べのため

傷害事件における警察の呼び出しは,基本的に被疑者を取り調べる目的で行われるものです。自分が起こしてしまった(又は起こしたと疑われている)事件で,初めて呼び出しを受けたときは,取調べ目的と考えて間違いないことがほとんどでしょう。

取調べ目的での呼び出しは,捜査機関が事件を把握した後,比較的早期の段階で行われることが一般的です。特に,客観的な証拠に乏しく当事者の言い分以外には証拠がない場合には,相手の話を聞いた後速やかに呼び出しが行われることも少なくありません。

②事件の再現を試みるため

傷害事件の捜査の一環として,事件当時の状況を再現し,写真に収めるなどの捜査が行われることも多数あります。これは,説明内容を文字だけにしたのでは第三者の理解が難しい場合に,事件の内容を明らかにする最適な証拠を作成する目的で行われるものです。
再現に際しては,当事者のいずれか一方が立ち会い,相手を模した人形や捜査官を相手に,当時の状況を身振り手振りで表現することが通常です。その内容を写真撮影し,警察にて「写真撮影報告書」という捜査資料を作成することが,基本的なゴールとなるでしょう。

事件の再現は,一通りの話を聞いた後に行われるものとなるため,取り調べの後に実施されるのが通常でしょう。必要な取調べの後,数週間~1か月程度の間隔を空けて実施されるケースが一定数見られます。

③証拠品の提出を求めるため

傷害事件では,事件の内容や結果を裏付ける証拠が存在するケースもあるため,証拠品の提出を求める目的で呼び出されることがあります。考えられる証拠としては,暴行に用いられた凶器,事件当時の着衣や靴,傷害結果が記載された診断書などが挙げられるでしょう。

証拠品の提出は,呼び出しの中でも比較的終盤で求められることが多く見られます。最後の取調べの後1週間~1か月程度を目安に呼び出されることが考えられるでしょう。

傷害事件の呼び出しに応じたときの注意点

①経緯に言い分があるとき

ケンカのような態様で生じた傷害事件は,互いに感情的になっており,その経緯を見ると双方に落ち度があると思われることも少なくありません。そのため,呼び出しに応じて話をする際には,経緯に関する言い分を主張したくなるところですが,主張の方法や内容は慎重に検討することをお勧めします。

まず,「取り調べを受けるのは納得いかない」と言わんばかりに,経緯に関する言い分を強く主張することはあまり適切ではありません。経緯に酌むべき事情があったとしても,それは犯罪事実がなかったという意味にはならないため,経緯の主張は,犯罪行為に対する反省と両立する形で行うべきです。

刑事事件の取り扱いは,犯罪事実があるかどうか(認め事件か否認事件か),という区別が前提となる以上,その取り扱いに適した対応が有益です。決して経緯を主張する場がないというわけではありませんので,適切な時期に適切な方法で主張できるよう,弁護士のアドバイスを受けながら対応していくことをお勧めします。

②互いに暴行があった場合の取り扱い

傷害事件では,互いに相手への暴行をしており,互いに被害を受けている場合もありますが,この場合の取り扱いは,互いに傷害事件の加害者である,というものになります。相手から暴行を受けたからと言って,自分の暴行が犯罪でなくなる,というものではない点に注意が必要です。

もっとも,この場合には,相手も刑罰を受けるリスクを背負っている,という点に特徴があります。喧嘩別れに終わった場合,双方が刑罰を受ける結果にもなりかねないため,互いにとって示談のメリットが大きい状況ということもできるでしょう。
その意味では,当事者間で何らかの解決を目指すことがより望ましいケースであると考えられます。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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傷害事件で逮捕される場合と逮捕されない場合の違いは?逮捕後の流れは?

傷害事件は被害者のケガの程度や事件の状況によって、逮捕される場合と逮捕されない場合があります。「初犯でも逮捕されるのか」「逮捕後はどうなるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。傷害で逮捕されると、取調べや勾留などの刑事手続きが進み、仕事や生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、傷害事件の逮捕について、逮捕されるケースとされないケースの違い、さらに逮捕後の流れについて分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害事件で逮捕された場合の流れ

傷害事件で逮捕されると、まず警察が身柄を確保して事情を聞きます。
その後、事件は検察に引き継がれ、検察官が「身柄をさらに拘束する必要があるか」「起訴すべきかどうか」を判断します。
必要な場合には裁判所の判断を経て勾留され、最終的に検察官が起訴するか、不起訴にするかを決めます。

段階期間の目安主な内容
① 逮捕~48時間以内警察が身柄を拘束し、事情聴取や証拠収集を行う。弁護士との面会は原則自由。
② 送検(検察への引き渡し)逮捕から48時間以内警察が事件を検察官に送致。検察官が勾留請求の要否を判断する。
③ 勾留請求・裁判官の判断送検後24時間以内検察官が裁判官に勾留を請求し、裁判官が許可するかどうかを決める。
④ 勾留期間中の取調べ原則10日間(必要に応じて延長10日以内)勾留が認められると、被疑者は裁判官の決定により10日間身柄を拘束。やむを得ない事情がある場合には、裁判官の判断で10日以内の延長が許可されることもある。
⑤ 起訴・不起訴の判断勾留期間中または終了時検察官が、証拠や被害者の意見、示談の有無などを考慮して処分を決定。
⑥ 釈放・保釈随時不起訴処分や勾留却下などにより釈放されることもある。

(1)逮捕から送検まで

逮捕後、警察で取り調べが行われ、証拠がそろえば48時間以内に検察官へ送致されます。
この間、家族との面会は制限される一方で、弁護士との接見は原則自由です。

(2)勾留決定とその影響

検察官が「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断すれば、裁判官に勾留を請求します。
勾留が認められると、警察署などに最大10日間拘束され、さらに必要に応じて10日間延長されます。

(3)起訴・不起訴の分かれ道

勾留期間中に、検察官は事件の性質、被害者との示談状況、被疑者の反省などを踏まえ、起訴するか否かを決めます。
被害者との示談成立や被害弁償がある場合は、不起訴になるケースも少なくありません。

(4)弁護士による早期対応の重要性

早期に弁護士が介入し、被害者との連絡・示談交渉・意見書の提出を行うことで、勾留回避や不起訴処分の可能性を高めることができます。

主なポイントは以下のとおりです。
・逮捕後48時間以内に送検され、検察官が勾留請求を検討
・勾留は裁判官の決定によって10日間
・延長は裁判官が許可する場合に限り10日以内
・弁護士の早期関与が、勾留回避や不起訴の鍵になる

傷害事件では現行犯逮捕か後日逮捕か

(1)逮捕の種類や手続

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

(2)現行犯逮捕で逮捕される可能性とタイミング

傷害事件では、現行犯逮捕が行われるケースが少なくありません。
一例として、次のような状況では現行犯逮捕となることが多くあります。

・けんかの最中や直後に、警察が通報を受けて駆けつけた場合
・被害者がその場で「殴られた」と通報し、加害者が逃げずに現場にいる場合
・防犯カメラや周囲の人の目前で暴行を加えた場合

現行犯逮捕は、「まさに犯行中」または「犯行直後」であることが条件です。
また、「犯罪の直後に行為者と疑うに足りる状況がある場合」(刑事訴訟法212条2項)は
準現行犯逮捕として扱われ、現行犯逮捕と同様に令状不要で逮捕が可能です。

もっとも、(準)現行犯逮捕されたとしても、その後の手続(送検・勾留・起訴など)は通常逮捕と同様に進みます。
つまり、「すぐに逮捕されたから処分が重くなる」というわけではありません。
その後の取調べや示談の状況が、処分の軽重に影響します。

ポイント
・傷害事件は、目撃者や被害者がいることが多く、現行犯逮捕の可能性が高い
・犯行直後であれば「準現行犯」として逮捕される場合もある
・現行犯逮捕は令状不要で迅速に行われるが、その後の手続は通常逮捕と同じ
・逮捕後の対応(弁護士依頼・示談など)が、処分結果を左右する

(3)逮捕の可能性が高いケース

傷害事件は,逮捕される可能性が十分に考えられる事件類型です。被害者の身体に危害が加えられているため,犯罪行為の危険性を踏まえると,被害者保護や証拠隠滅防止のために逮捕の必要性が高いと判断されるケースは少なくありません。

もっとも,傷害事件には大小様々なものがあり,逮捕の可能性も一律に判断することはできません。そのため,傷害事件で逮捕の可能性が高いのはどのような場合か,という点を把握しておくことは有益でしょう。

傷害事件で逮捕の可能性が高い場合

1.被害結果が大きい場合

2.暴行内容の危険性が大きい場合

3.現行犯で取り締まりを受けた場合

4.相手が弱い立場の場合

【1.被害結果が大きい場合】

被害者の傷害結果の大きさは,傷害事件の重大性を判断する際の非常に大きな材料になります。軽傷であるか重傷であるか,場合によっては命の危険があったかどうか,といった点は,刑事責任の重大性に直結します。

一般的に,刑事責任が重大な事件であるほど,見込まれる処分も重いものになるため,加害者が逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいと理解されます。そして,逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいほど,逮捕をする必要性も高くなります。逮捕は,まさに逃亡や証拠隠滅を防ぐための強制的な措置であるためです。

そのため,被害結果が大きい傷害事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

【2.暴行内容の危険性が大きい場合】

結果的に被害が大きくなかったとしても,暴行の内容が非常に危険である場合には,やはり刑事責任が重くなりやすいため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。一例としては,凶器を振り回したものの被害者にはうまく当たらなかった場合や,周囲が止めに入らなければもっと重大な被害を負わせてしまっていたであろう場合が挙げられるでしょう。

また,暴行の内容があまりに危険である場合には,そのような危険な行為を実行してしまう人物だ,という点を踏まえ,被害の拡大を予防する目的で逮捕をすることも多く見られます。特に,危険な行為を躊躇なく行っている場合や,無差別に行っている場合には,逮捕の可能性はより高くなると考えられます。

【3.現行犯で取り締まりを受けた場合】

現行犯で取り締まりをされた傷害事件の場合,その現場でのトラブルの深刻化を防ぐため,一方を逮捕するケースが多く見られます。
代表例としては,路上や飲食店などで泥酔者同士の喧嘩が起きた場合などが挙げられるでしょう。泥酔状態でコミュニケーションもうまく取れない状況では,逮捕以外の手段で加害者を制止させる方法がなく,その場を収める最も有効な手段として,逮捕が選択されることも少なくありません。

また,現行犯の場合には現行犯逮捕が可能ですが,逮捕状がなくても,誰でも行うことができる点で,逮捕を行うハードルが低いという特徴もあります。周囲の人が現行犯で取り押さえた後,駆け付けた警察官に引き渡すことで,自然と逮捕が成立してしまうこともあり得ます。

【4.相手が弱い立場の場合】

当事者間の立場に上下関係や筋力などの差があり,被害者が弱い立場にある場合には,被害者保護のために逮捕が選択される可能性が高くなり得ます。
逮捕は,証拠隠滅を大きな目的の一つとする手続ですが,被害者という人も重要な証拠です。この場合の逮捕は,被害者という証拠が隠滅されないことを目的に行われることになります。

特に,当事者間が容易に連絡を取り合える関係であるなど,加害者から被害者に対して何らかの圧力がかかりやすい事情がある場合には,特に被害者保護をする必要性が高く,逮捕に至るケースが増えるでしょう。

傷害事件で逮捕されたときのデメリット

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

傷害事件の逮捕を避ける方法

①当事者間での解決を目指す

傷害事件は,基本的には当事者個人間のトラブルであるため,当事者自身で解決されているのであれば,それ以上に捜査をすることはあまりありません。刑事手続の進み具合によっては,当事者間で解決しても直ちに手続が終わらないこともありますが,少なくとも当事者間で解決した後に逮捕されることは考えにくいでしょう。

そのため,逮捕を避ける手段としては,当事者間との解決が非常に有力と言えます。共通の知人が間を取り持ってくれる,当事者同士で連絡を取り合う手段がある,といった場合には,直接話し合うこともあってよいでしょう。もっとも,傷害事件の解決を当事者同士で直接行うことは,トラブルの深刻化につながる恐れもあるため,弁護士に間に入ってもらい,弁護士を通じてやり取りを試みる方が望ましいところです。

②自ら捜査機関に出頭する

逮捕をする必要性が高いケースの一つが,逮捕しなければ出頭してもらえない,捜査協力をしてもらえない,という恐れのある場合です。最悪の場合,被疑者に逃亡されて行方が分からなくなってしまうと,捜査が進められなくなってしまうため,その恐れが高いと考えるときには,逮捕が有力な選択肢になります。

一方で,加害者が自ら捜査機関に出頭し,自分のしてしまった行為を真摯に話すなどした場合には,捜査協力をしてもらえない可能性や逃亡されてしまう可能性は基本的にないと評価されます。自分から出頭していることと逃亡などは,行動として矛盾するためです。

そのため,逮捕を避ける手段の一つとして,自ら進んで捜査機関(警察や検察)に出頭し,自分の事件に対する取り調べなどを求める動きは有力でしょう。手続の状況によっては,いわゆる自首が成立し,法的にもプラスの効果が生じることも期待できます。

被害者と接触が難しく、かつ捜査されていることが明らかに見込まれる場合、自ら出頭する方法が有力になりやすいです。

③金銭賠償を行う

傷害事件の被害者には,具体的な金銭的被害の生じていることが通常です。怪我を治療するための通院費,仕事ができなかった場合の休業損害,精神的苦痛に対する慰謝料などが代表例です。

この点,被害者に生じた損害に対して,金銭賠償を行って埋め合わせたケースでは,その後に逮捕されるケースは少なくなるのが通常です。この場合,加害者が被害者に対するお詫びの意思を持っていることが明らかであり,現実に被害者の損害が一定程度補填されているため,逮捕のような強制力の強い取り扱いまでする必要はない,と評価されやすいためです。

できれば,金銭の支払だけでなく当事者間で解決した,という形が取れる方が望ましいですが,解決までは至らない場合,金銭賠償だけでも行っておくことは非常に有益と言えます。

刑事事件の取り扱いに際しては、被害者の損害を後から補填できたか、という点が重要な判断基準になります。傷害事件の被害者に生じた心身の損害を金銭で補填することは、この点で大きな影響をもたらします。

傷害事件で呼び出しを受けた場合の対処法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

傷害事件の場合、経緯に理不尽な出来事があったというケースも少なくありません。しかし、その経緯を最初から強く主張するより、まず傷害行為を真摯に認めるステップを踏む方が結果的に得をすることも多いです。

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

殺意の有無は、傷害行為の危険の大きさを主な基準とすることが一般的です。刃物やけん銃で急所を狙った場合などが代表例ですが、実際の行為が被害者の生命に影響し得るケースでは、殺意があると判断されやすいでしょう。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件の逮捕に関するよくある質問

(1)傷害事件の逮捕については弁護士に依頼するべきか

傷害事件の逮捕について対応をする場合には,弁護士に依頼し,弁護士の法的な判断を仰ぎながら進めることが適切です。弁護士に依頼した場合,以下のような利点が見込まれます。

①逮捕が懸念される状況か分かる

逮捕への対策をどの程度講じるかは,現状でどの程度逮捕が懸念されるか,という点により大きく変わります。逮捕が強く懸念される場合には,まず逮捕を避けることに全力を注ぐべきですが,一方で逮捕の危険がそれほどないならば,その分の労力や負担を他に充てる方が,最終的な結果はより望ましいものになる可能性が高いでしょう。
そのため,逮捕に関する対処は,正確な現状把握が出発点となります。

この点,弁護士に依頼することで,現在逮捕が懸念される状況かどうか,という点について,専門的な判断を仰ぐことが可能です。あわせて,個別の状況に応じた適切な対応方法についても,弁護士から助言を受けたり弁護士に進めてもらったりすることができるでしょう。

②速やかに示談を目指せる

傷害事件で逮捕を防ぐ手段として,示談は非常に強力な効果があります。示談が成立した傷害事件では,その後に逮捕されることはないと言っても過言ではありません。
もっとも,傷害事件では,示談を試みるために弁護士への依頼が必要となります。弁護士に依頼し,弁護士を窓口とすることで,初めて示談の試みが可能になるのが通常です。

裏を返すと,早期に弁護士に依頼している場合,早期に示談を目指す動きに着手でき,結果的に逮捕を回避しやすくなる可能性が高まるでしょう。もし示談自体が早期に決着できなくても,示談交渉を開始している,というだけで逮捕が防げる場合は少なくありません。

③不適切な逮捕を抑止できる

傷害事件の場合,当事者間の感情的な対立が非常に激しいため,被害者側が加害者の逮捕を強く求める場合は多くなりがちです。このとき,取り扱う警察官としては,本来は逮捕まで必要ないケースであっても,被害者の強い主張を受けて逮捕する,という選択になってしまうことが少なくありません。
しかしながら,本来逮捕まで必要ないにもかかわらず,被害者が強く主張したから逮捕するというのは,適切な逮捕とは言い難いでしょう。逮捕は非常に強力な手続であるため,本当に逮捕が必要かどうかは慎重に判断されるべきです。

この点,弁護士に依頼をしているケースでは,弁護士が目を光らせることで,不適切な逮捕の判断を抑止する効果を期待できます。また,万一不適切な逮捕が行われた場合には,不服申し立ての手続を講じるなどして,早期釈放を目指すことも可能です。

(2)逮捕された場合は不起訴にならないか

逮捕された場合,事件が重い取り扱いを受けていることが明らかになりますが,だからといって事件が起訴されるとは限りません。逮捕は,あくまで捜査をする際の手段の一つに過ぎず,捜査を終えた後に起訴するか不起訴にするかは全く別の問題です。

そのため,万一逮捕されてしまった場合でも,起訴されず前科が付かない可能性は十分に残っている,ということには注意しておくのが良いでしょう。逮捕されたことで全てに悲観的になってしまうのではなく,逮捕後でも最良の結果を目指すことが,結果に大きな違いをもたらします。

(3)傷害事件で逮捕されたとき家族ができることはあるか

家族の行動も、事件の結果を左右する重要な要素です。

まず、速やかに弁護士へ依頼し、接見を通じて本人の状況を確認します。
そのうえで、

・示談金や被害弁償の準備
・謝罪文や反省文の作成サポート
・勤務先・学校への連絡や社会的信用の維持

といった支援を行うことが大切です。

これらの対応は、被疑者が真摯に反省していることを示す資料となり、不起訴や執行猶予など処分の軽減につながる可能性があります。
家族の協力が、被疑者の再出発を支える大きな力になります。

(4)傷害事件で前科がつくのはどんな場合か

起訴され、有罪の裁判(正式裁判または略式命令)が確定した場合に前科がつきます。
不起訴や無罪の場合は、前科は残りません。
軽微な事件で示談が成立しているケースでは、不起訴となり前科を回避できることも数多くあります。

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傷害事件で不起訴処分となるには?具体的方法を徹底解説|示談や自首を検討すべき場合とは

このページでは,傷害事件の不起訴処分について知りたい方へ,不起訴処分を目指す方法や不起訴処分となった場合のメリットなどを弁護士が徹底解説します。
示談や自首の方法やメリットについても紹介しているので、不起訴処分を目指す場合の参考にしてみてください。

傷害事件で不起訴を目指す方法

①被害者の宥恕を獲得する

傷害事件では,被害者の宥恕(ゆうじょ)が獲得できた場合,不起訴になる可能性が飛躍的に上がります。宥恕とは許しのことで,多くの場合は被害届の取り下げや告訴の取り消しといった方法で表明されることになります。
つまり,被害者と示談が成立し,被害届の取り下げなどがなされれば,不起訴に大きく近づくと考えてよいでしょう。

傷害事件は,基本的には一人の被害者のみに対する犯罪行為です。事件によって法的な利益を侵害されているのはその被害者だけであるため,被害者本人が宥恕を明らかにしているのであれば,起訴して刑罰を科す必要はほとんどなくなることになります。
そのため,被害者の宥恕が獲得できることは,不起訴を目指す方法の代表例ということができるでしょう。事件によっては,被害者の宥恕があれば不起訴,なければ起訴,という判断になるケースも非常に多く見られるほどです。

ポイント
宥恕の有無が起訴不起訴を決めることも非常に多い

②被害者へ損害賠償を行う

傷害事件は,加害者による暴行の結果被害者が傷害を負った,という事件類型です。そうすると,被害者には,負った傷害に対する治療のために費用が発生するほか,肉体的・精神的苦痛,仕事の休業を要した場合の休業損害等,金銭的な損害の発生が見込まれます。
刑事事件の処分は,被害者に発生してしまった被害をどれだけ補填できているか,という点が重要な判断基準となりやすいため,このような被害者の金銭的な損害に対して支払を行い,埋め合わせを行うことは不起訴処分を目指す方法の一つと言えます。

この点,多くの場合,損害賠償は示談(及び宥恕)とセットで行われることになります。加害者から積極的な金銭賠償がなされなければ,被害者が示談に応じるメリットはないため,被害者が示談に応じるのは,加害者による損害賠償が前提となる場合がほとんどです。被害者としては,特にアクションを起こさなくても相当額の損害賠償が受け取れることを条件に,引き換えとして宥恕する(=許す),という形を取ることが通常でしょう。

なお,宥恕はないものの損害賠償は行う,というケースもあり得ます。被害者が宥恕を拒否しているときには,損害賠償だけでも実施することで,可能な限り刑事処分の軽減を目指すべき場合もあり得るでしょう。
宥恕が獲得できている場合には及ばないものの,不起訴処分の可能性を高める効果が期待できることは間違いありません。

ポイント
被害者の損害を補填できているかどうかは,判断基準の一つ
示談及び宥恕とセットになりやすい

③否認事件の場合

否認事件の場合には,主張すべき争点を明確にした上で,争点に応じた適切な主張を行っていく必要があります。

傷害事件の否認事件で生じやすい争点としては,疑われている行為をしていない,というものが挙げられます。被害者は「こんなことをされた」と言っているものの,それは事実とは異なるという場合です。
他には,自分の行為と傷害結果(ケガなど)は無関係である共犯者だと疑われているが共犯者ではない,といったポイントが争点になることも一定数あり得るでしょう。
いずれの場合にも,自分の主張の根拠を指摘しながら,自分の主張が真実であることを粘り強く表明していくことが適切です。

この点,傷害事件の場合に注意すべき主張が正当防衛です。特に,喧嘩のような態様であった場合に,「相手が先に手を出してきたからこちらも応戦した」との主張を,正当防衛の意味で行うことには注意が必要でしょう。
正当防衛は,防衛のためにやむを得ない行為をした場合にしか成立しないため,互いに相手を傷つけようとする喧嘩の場合,基本的に正当防衛とは評価されません。相手から先に手を出してきたとしても,直ちに正当防衛となるわけではないことは踏まえておくのが良いでしょう。

ポイント
争点に応じて自分の主張の根拠を粘り強く主張する
喧嘩の場合,正当防衛の主張は難しいことが多い

傷害事件で不起訴になる可能性

傷害事件の場合,疑われている犯罪事実に間違いがなければ,基本的に起訴されることが見込まれやすいです。もっとも,手段を尽くすことで,結果が伴えば不起訴処分になることも決して珍しくはありません。

事後的な対応としては,やはり被害者との示談が非常に有力です。被害者と示談が成立し,被害者の許しが得られていれば,不起訴になる可能性は極めて大きくなりやすいでしょう。
ただ,感情的な対立が激しい傷害事件では,示談や被害者の許しが難しい場合も少なくはありません。示談以外に,不起訴の可能性が高くなる事情としては,以下のようなものが挙げられます。

不起訴になる可能性が高い傷害事件の内容

1.被害が小さい

2.暴行の内容が悪質でない

3.暴行の経緯に事情がある

【1.被害が小さい】

傷害事件によって生じた被害が非常に小さい場合,刑事責任の程度も比例して小さくなるため,不起訴になる可能性が高くなります。
一口に傷害事件と言っても,傷害結果の程度は様々です。第三者が見ても分からない程度の打撲や捻挫と,手術を要するような骨折とでは,全く重みが異なると考える方がむしろ自然と言えます。

また,被害の程度があまりに小さい場合,傷害事件というよりも暴行事件と同様であると考えるべきケースもあり得ます。暴行事件は,暴行したものの傷害結果(被害)が生じなかった,という事件類型で,傷害事件よりも軽微なものと理解されています。
暴行事件は,傷害事件と比較して不起訴の可能性が高い類型であるため,暴行事件類似と評価される場合には,不起訴の可能性が高くなるでしょう。

【2.暴行の内容が悪質でない】

加害者のしてしまった暴行の内容がどれほど悪質か,という点は,刑事責任の大きさに影響を及ぼしやすい事情です。相手に被害の生じる恐れがどれほど大きいか,どの程度重大な被害が生じる可能性のある行為か,といったポイントが,行為の悪質さを判断する基準になりやすいでしょう。

この点,大きな区別として設けられやすいのが,凶器の有無です。凶器を用いた傷害事件は,暴行の悪質さが非常に大きく,不起訴処分となることは難しいと言えます。一方,凶器を用いない素手素足での傷害事件は,具体的な暴行の内容によっては悪質さがさほどでなく,不起訴の可能性が高くなるケースがあり得ます。

【3.暴行の経緯に事情がある】

傷害事件は,加害者が強く興奮した結果起きてしまうことが少なくありません。そして,加害者が興奮するに至った経緯には,色々なケースがありますが,被害者の言動が原因で加害者が感情的になってしまったという傷害事件も多く見られます。

この点,被害者の言動が原因であるなど,加害者が暴行に及んだ経緯に事情が見られる場合には,これを踏まえて不起訴処分となることもあり得ます。経緯に事情がある,というだけで不起訴処分になることは考えにくいですが,その経緯の具体的内容や暴行の程度などを踏まえ,加害者に酌むべき事情があると評価される可能性は十分にあるでしょう。

不起訴の種類や得られる効果

不起訴の意味・種類

不起訴処分とは,検察官が事件を起訴しないとする処分をいいます。不起訴になった事件は,裁判の対象にならず,刑罰が科せられる可能性がなくなるため,前科がつくこともなくなります。

不起訴処分には,以下のような類型があります。

不起訴処分の類型

1.嫌疑なし
捜査の結果,犯罪の疑いがないと明らかになった場合です。真犯人が明らかになった場合などが代表例です。

2.嫌疑不十分
捜査を遂げた結果,犯罪を立証するための証拠が不十分であり,犯罪事実を立証できないと判断された場合です。具体例としては,犯人が特定できない場合などが挙げられます。

3.起訴猶予
犯罪事実は明らかに立証できるものの,犯罪者の年齢や性格,過去の経歴,犯行動機,犯罪後の事情などを踏まえ,検察官があえて起訴をしない場合です。被害者と示談が成立した場合などが代表例とされます。

4.その他の類型

・訴訟条件を欠く場合
→被疑者が死亡した場合,公訴時効が完成した場合など

・罪とならず
→被疑者の行為が犯罪に当たらない場合,被疑者が14歳未満の場合など

なお,犯罪事実が間違いなくある認め事件の場合,不起訴になる手段は基本的に「起訴猶予」を目指す以外にありません。起訴猶予は,検察官から大目に見てもらうという意味合いの処分であるため,認め事件では誠意ある対応を尽くすことが非常に重要となるでしょう。

ポイント
不起訴処分には,嫌疑なし,嫌疑不十分,起訴猶予等の類型がある
認め事件では起訴猶予を目指す必要がある

逮捕と不起訴の関係

逮捕をされてしまった場合でも,不起訴にならないわけではありません。逮捕された事件の最終的な処分が不起訴となって終了することは,数多く見られるところです。一方,逮捕されなかった事件(いわゆる在宅事件)でも不起訴処分になるとは限らず,在宅事件の処分が起訴という場合も珍しくありません。

これは,逮捕が捜査を行う手段の一つであるのに対し,不起訴が捜査の結果なされる処分であることに原因があります。
刑事事件の捜査は,逮捕をするかしないか,いずれかの方法で進行しますが,いずれの捜査手法を取ったとしても,起訴されるか不起訴となるかは同様に判断されることとなるのです。

刑事手続の流れ

なお,起訴されやすい事件が逮捕されやすい,という側面はあります。起訴されやすい事件は,類型的に重大な事件であることが多いところ,重大な事件では,重い処分を免れるために逃亡や証拠隠滅をされる恐れが大きいと判断される傾向にあると考えられます。そのため,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための逮捕が必要になりやすいのです。
裏を返せば,逮捕された事件では,不起訴を獲得するにはより積極的な努力が必要となりやすいでしょう。弁護士に相談の上,不起訴を目指すために適切な対応を試みるようにしましょう。

ポイント
逮捕は捜査の手段,不起訴は捜査を終えた後の処分
逮捕と不起訴は両立する
起訴されやすい事件は逮捕されやすい傾向にある,という側面も

不起訴になった場合の効果

不起訴処分となった場合には,以下のような効果が生じます。

①前科がつかない

前科とは,刑罰を科せられた経歴を指しますが,不起訴となった場合には刑罰が科せられません。そのため,不起訴となれば刑罰の経歴=前科がつくことなく,刑事手続が終了することになります。

そして,前科がつかないことには,以下のようなメリットがあると考えられます。

前科がつかないことのメリット

1.資格に対する影響を避けられる

国家資格を用いた職業の場合,前科によって資格制限が生じると,仕事の継続ができない可能性が生じてしまいます。
前科がつかなければ,資格制限は生じず,仕事への悪影響もありません

2.就職・転職への影響を避けられる

前科のあることは,就職や転職の差異に不利益な事情として考慮されやすい傾向にあります。
前科がつかなければ,履歴書に前科を記載する必要もなく,就職先に刑事事件のことを知られずに済みます

3.海外渡航の制限を避けられる

前科がある場合,パスポートやビザ,エスタなどの手続に悪影響が生じ,海外渡航が認められない場合があります。
前科がつかなければ,海外渡航の制限が生じる事情もなくなるため,海外渡航を自由に行うことが可能です。

②釈放される

不起訴処分となった場合,身柄拘束されている状況であれば速やかに釈放されます。不起訴処分が出た以上,捜査のために身柄拘束を継続する必要がなくなるためです。

③逮捕されない

不起訴処分とされた事件では,その後に逮捕されることがありません。逮捕は,捜査を行う場合の選択肢の一つであるところ,不起訴処分によって捜査が終了するため,逮捕を行う余地もなくなるからです。
ただし,余罪がある場合には,余罪での逮捕が行われる可能性が残ります。

④取り調べを受けない

不起訴処分によって捜査が終了するため,警察や検察から取り調べを受けることがなくなります。もっとも,不起訴処分は今後の捜査を禁じるものではないため,新しい証拠が発見された場合には捜査が再開され,改めて取調べを受ける場合もあり得るところです。

傷害事件の示談に関する重要ポイント

傷害事件で示談は必要か

傷害事件では,円滑な解決のために示談が必要であると理解するのが適切です。

傷害事件とは,他人に暴行を加えた結果,傷害結果を負わせる事件を言います。殴ってケガをした,という場合はもちろん,大音量で睡眠障害に陥らせる場合なども含むもので,広く「他人の生理的機能に障害を与えること」があれば傷害罪に該当します。

そうすると,傷害事件の場合,必ず相手になる被害者が存在し,被害者には何らかの具体的なダメージが生じているということになります。そして,傷害事件に対する処分は,被害者に対するダメージがどの程度のものか,加害者がダメージをどのくらい補填したのか,していないのか,といった点が考慮されるものとなります。

この点,加害者が被害者のダメージを補填する最も有効な手段が,示談です。示談金の支払で経済的に被害者の損害を埋め合わせるとともに,その内容を被害者も納得(合意)しているとなれば,被害者のダメージは大部分が補填されたという理解になることが一般的でしょう。

そのため,傷害事件の処分は,示談が直接の影響を大きく及ぼす性質のものであり,傷害事件では示談が必要と理解するべきところです。

ポイント
傷害事件は被害者に具体的な損害が生じている
加害者が損害を補填したかどうかが処分に大きく影響する
損害を補填する最も有効な手段が示談

傷害事件における示談のメリット

①逮捕を防ぐことができる

傷害事件は,逮捕されることが比較的多い事件類型です。傷害事件は,当事者間に強い感情的な対立があるか,加害者が一方的に被害者への強い感情を抱いているか,という経緯で起きることが通常ですが,そのような状況を放置すると,トラブルが再発したり深刻化したりする恐れが大きいと考えられます。
そのため,当事者を物理的に引き離し,二次被害を防ぎながら捜査をする,という方針が取られやすいのです。
逮捕された場合,最大72時間の身柄拘束の後,勾留が決定されればさらに10日間,勾留延長となれば加えて最大10日間という,長期間の身柄拘束も懸念されます。20日を超える身柄拘束となれば,日常生活への影響は避けられません。

逮捕から起訴までの流れ

この点,示談が成立した傷害事件で逮捕を行うことは通常考えにくいということができます。示談が成立している以上,当事者を物理的に引き離さなくてもトラブルが再発したり深刻化したりする可能性がないためです。

傷害事件が逮捕の恐れもある事件類型であることを踏まえ,早期の示談を試みることが有益でしょう。

②刑事裁判を防ぐことができる

傷害事件の場合,犯罪の立証ができないケースを除いて,基本的に起訴することが通常です。被害者に暴行し,傷害結果を負わせた以上,その責任を刑罰という形で取らせる運用が一般的とされます。
起訴されてしまうと,刑事裁判を受け,無罪にならない限り裁判所から刑罰を受けることになります。こうなれば,前科(=刑罰を受けた経歴)が付くことは避けられません。前科に伴う数々の不利益が,その後の生活に悪影響を及ぼす可能性も高くなってしまいます。

この点,傷害事件で示談が成立した場合,刑事裁判には至らない方が多数です。傷害事件は,特定の被害者に対する事件であるため,その被害者が刑事裁判を希望しない以上,刑事裁判を行う必要がない,との判断になりやすいのです。

刑事裁判を受けるのは,その手続に応じる負担自体も決して軽くはないため,刑事裁判を防げることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

③金銭問題が解決できる

傷害事件が起きた当事者間では,刑罰の問題と同時に金銭問題も発生します。被害者に具体的な傷害結果が生じている以上,治療費もかかりますし,精神的苦痛に対する慰謝料も想定されるところです。
そして,この金銭問題は,加害者が刑罰を受けたとしても解決するものではありません。刑罰の問題(刑事事件)と金銭問題(民事事件)は独立した別々のものであるため,刑罰を受けた上で,さらに金銭を請求されるという可能性も十分に存在します。

この点,傷害事件の示談は,傷害事件によって被害者が受けた損害についての金銭的解決もあわせて行う内容になります。示談を取り交わした後には,互いに金銭を請求しない(請求する権利がない),という合意をするため,示談後に被害者から金銭請求を受ける可能性がなくなるのです。

傷害事件では,金銭問題が必ずついてくるため,示談によって金銭問題も同時に解決できることは大きなメリットでしょう。

ポイント 示談のメリット

傷害事件は逮捕の恐れが小さくない
→示談をすれば逮捕を防げる

傷害事件は基本的に起訴される
→示談すれば起訴を回避でき,刑事裁判を防げる

傷害事件では金銭問題が同時に生じる
→示談によって金銭問題を含めた解決ができる

傷害事件で示談をする方法

傷害事件で示談を試みる場合,まずは弁護士に依頼することが必要です。示談は,自分で直接行うのではなく,代理人となる弁護士を窓口にして行うことになります。
一応,両当事者が了承すれば,当事者間で直接示談交渉を行うことも不可能ではありません。しかし,傷害事件では被害者側が加害者と直接示談交渉したいと希望するとは考え難く,当事者が直接交渉を行うのはトラブルの原因になりかねないので,当事者間の直接交渉は基本的には不適切と考えるのが合理的でしょう。

弁護士が依頼を受けた場合,警察や検察の捜査担当者に問い合わせ,示談を希望したい旨を被害者に伝えてもらうよう依頼します。捜査担当者が被害者の意思を確認し,被害者が了承すれば,連絡先を交換するなどして直接のやり取りに移行することが可能となります。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

なお,捜査機関が間を取り持つのは,加害者が弁護士に依頼し,弁護士から動きを取った場合のみです。捜査機関は,トラブル回避のため当事者同士を引き合わせることは拒否するので,その意味でも弁護士に依頼することが必要になります。

傷害事件の示談金相場

傷害事件の示談金は,暴行の具体的な内容や被害者に生じた傷害結果などによって大きく左右されます。
そのため,具体的な金額水準は個別のケースによりますが,最も代表的である「素手素足の暴行により加療2週間程度の打撲を負わせた」というような例では,20~30万円程度が有力な目安になりやすいでしょう。

ただし,これはあくまで暴行の内容や傷害結果を限定した場合の目安にとどまります。特に,重大な傷害結果が生じてしまった場合は,百万円単位の示談金が発生することも考えられるため,個別事件における金額の目安は弁護士に相談することお勧めします。

一般に,示談金額を左右する事情としては,以下のような点が挙げられます。

示談金額を左右する事情

1.暴行の内容
→凶器を用いている場合,身体生命の危険が大きな暴行の場合には,高額になりやすい

2.傷害結果
→傷害が重い場合や,後遺障害が残る場合には,高額になりやすい

3.被害者の業務への影響
→被害者の収入額に直接の影響が生じている場合,その分高額になりやすい

傷害事件における自首の考え方

傷害事件で自首をするべき場合

①被害者が重傷を負っている場合

自首を検討するべき場合の代表例は,事件が重大で刑事責任が重く評価されやすいケースです。自首は,逮捕や起訴の回避を目指す手段として有効なものですが,事件が重大であって刑事責任が重い場合は,特に逮捕や起訴の恐れが大きい傾向にあります。そのため,被害者が重傷を負っている傷害事件では,刑事責任が重く,自首を検討するメリットが類型的に大きいと言えるでしょう。

また,傷害事件の捜査は,基本的に被害者が捜査機関に相談等したことをきっかけに開始されます。逆に,被害者が声を上げなければ,捜査が始まるきっかけも生じないことになります。
この点,被害者が重傷を負った傷害事件の場合,被害者が事後に何のアクションも取らないことは考えにくいところです。そのため,捜査が開始される可能性が非常に高く,自首の検討が必要になりやすいでしょう。

ポイント
刑事責任が重く,逮捕や起訴の恐れが大きい
被害者が捜査を求める可能性が高い

②加害者を特定する証拠が十分にある場合

自首は,自分が加害者であると特定される可能性が高い場合に,先手を打つ形で行うことが非常に有益です。なぜなら,自首をしてもしなくても加害者が特定される状況であれば,先に自首をしても不利益がない一方,自首せずに捜査を受ける場合と比較して大きなメリットが期待できるからです。不利益がなくメリットが大きいのであれば,積極的に検討するべきことは間違いありません。

そのため,事件の加害者を特定する証拠が十分にあると思われるケースでは,積極的な自首の検討が有力です。傷害事件で生じやすい証拠としては,被害者側の記憶(特に被害者が知人である場合),目撃者,公共の場所における防犯映像などが挙げられます。

ポイント
先手を打って自首をしても不利益がなく,大きな効果が期待できるケースに当たる

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首をすることで,刑事事件の捜査は被疑者(=加害者)に配慮した方法で行われることになりやすいです。例えば,突然制服を着た複数の警察官が訪れたり,逮捕や捜索などの強制的な捜査が行われたりといった,周囲に事件の存在が知られるような方法はできるだけ回避してくれるケースが多い傾向にあります。
これは,自首をした被疑者であれば,穏やかな方法であっても捜査協力が期待できるため,周囲への発覚を防ぎたいという被疑者の希望に配慮した動きです。

逆に,周囲への発覚を防ぎたい,という希望が非常に大きい場合には,捜査機関の配慮を期待する意味も含めて自首を行うことが有力な手段と言えます。自首に込めた誠意や協力姿勢が伝われば,いたずらに周囲へ知られるような動きは控えてくれることが多いでしょう。

ポイント
自首した事件の捜査は,加害者に配慮した方法で行われやすい

④当事者間での示談交渉が困難な場合

傷害事件は,当事者間で解決すればその後に捜査が開始されることは通常ありません。そのため,当事者間で示談などをし,円満な解決に至れば,その後に捜査が始まることを考える必要はなく,捜査に備えた自首を検討する必要もないと言えるでしょう。
裏を返せば,当事者間での示談交渉が困難なケースでは,いつ被害者が捜査機関に被害申告をして捜査が始まることになるのか分からない,非常に不安定な状況にならざるを得ません。

そのため,当事者間で示談交渉ができる状況になく,不安定な状況を少しでも早く脱する必要がある場合には,自首の検討が有力です。適切に自首ができれば,刑事事件の進捗や見通しが分からない,という事態を避けることができるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば自首は不要
示談交渉困難で不安定な状況にある場合,自首の検討が有力

傷害事件の自首は弁護士に依頼すべきか

傷害事件の自首について検討する際や,実際に自首を進める際には,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら行うことが適切です。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低くなる

自首は,逮捕を防ぐことが大きな目的の一つですが,弁護士に依頼し,適切な方法で自首を進めることによって,逮捕の可能性はより低くなることが期待できます。弁護士に依頼した場合,弁護士が窓口となって捜査機関とやり取りすることで,自首の趣旨や申告したい犯罪事実を正しく把握してもらうことができるため,自首が円滑になり,その効果も十分に生じることが見込まれるでしょう。

自首は大きなリスクを背負った重大な行動であり,その効果を最大限にできる方法を取らないことは背負ったリスクに見合わない結果を招きかねません。そのため,自首を行う以上はできる限りの手段を尽くす,という発想を大切にすることをお勧めします。

②取調べへの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には捜査機関による捜査が始まることとなります。そして,捜査が行われる際に主要な動きとなるのが取調べです。
一般的に,自首を行った場合には,出頭した当日又は次回の出頭時に,捜査機関担当者から取り調べを受けることが見込まれます。取調べは警察署内の密室などで行われ,弁護士など第三者の立ち会いはできないことが通常です。

そのため,取り調べが始まってから対処を検討することはできず,事前の備えが不可欠ですが,弁護士に依頼することで,将来の取調べに対する備えもあわせて案内してもらうことが可能になります。
刑事手続や取調べの運用に精通した弁護士であれば,取調べの流れや取るべき対応や話すべき内容など,包括的なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。事前に取調べの備えができれば,自首への不安も最小限に抑えられます。

③手続や処分の見込みが分かる

自首は,その後の手続の流れや処分見込みが分かっていれば格段に行いやすくなります。自首した後自分がどうなってしまうのか,自首するのとしないのとで刑事処分がどのように変わるのか,という点が全く分からないまま,闇雲に自首をするのは難しいですが,見通しが持てていれば,リスクの大きな自首も心理的負担小さく行うことが可能になるでしょう。

この点,弁護士に依頼して自首を進めれば,自首後の手続の流れについて案内を受けてもらいながら対応することが可能です。また,自首を踏まえた処分見込みを専門的な知識経験を踏まえてアドバイスしてもらえるため,希望する解決に向けた取り組みが容易になります。

④自首後の弁護活動が迅速にできる

傷害事件で自首を行った場合には,被害者との示談交渉など,その後の弁護活動を適切に行ってもらうことで,自首の効果がより高く発揮されます。自首の主な目的である逮捕回避や不起訴処分の獲得は,被害者との示談が成立することでより確実になり,希望した結果の実現に大きく近づくでしょう。

この点,自首の段階から弁護士に依頼し,弁護士と協同する体制を設けておくことで,自首後の弁護活動を速やかに始めることができます。また,加害者が自首をした事実は,被害者の感情面にもプラスの影響を及ぼしやすく,示談成立の可能性は自首のないケースよりも高くなりやすいでしょう。

傷害事件で自首をする場合の注意点

①自首が相手方の意向に反する可能性

自首は,加害者が自分の判断で警察等の捜査を求める行動です。そのため,被害者の意向を確認することなく捜査が開始され,その後に捜査機関が被害者へ捜査協力を求める可能性もあります。

この点,自首による捜査の開始が被害者側の意向に反してしまう可能性があることは,事前に十分留意しておくのが適切でしょう。
被害者が特に捜査機関への相談などを行っていない場合,被害者は捜査機関の関与を希望していない可能性があります。その理由は,対応が面倒である,当事者間での解決を希望しているなど様々ですが,自首が被害者の意向に反している場合,自首が適切な動きではなかった,という結論になり得るでしょう。

②時期が遅れると自首が成立しない

自首は,捜査機関にとって犯罪事実か犯人の両方が発覚している状況では成立しません。そのため,被害者の申出をきっかけに捜査が開始され,犯罪事実と犯人が特定された後では,自ら警察への出頭を試みても法的には自首と評価されず,自首のメリットを十分に得られない可能性があります。

傷害事件の場合,被害者が警察に被害申告をする可能性が比較的高く,犯人を特定する証拠が得られやすいケースも少なくないため,検討に長期間をかけてしまっていると,自首ができない状態に陥ってしまう恐れがあります。
自首の検討は,できるだけ早期に行うことをお勧めします。

③自首すれば不起訴になるわけではない

自首の大きな目的の一つは不起訴処分です。刑事事件は,捜査を遂げた検察によって起訴又は不起訴の処分がなされますが,起訴されれば前科がつき,不起訴となれば前科が付かないため,極めて大きな分岐点になります。

この点,自首によって不起訴処分の可能性が高くなることは間違いありませんが,自首をすれば直ちに不起訴になる,というものではない点には注意が必要です。自首は,不起訴の判断を促す事情の一つに過ぎず,自首しても起訴され前科が付く可能性はあります。
特に,事件の重大性が著しいケースでは,自首という事情があっても事件の重大性の方が重く評価され,不起訴処分が逃れられない場合が多くなりやすいでしょう。

傷害事件で不起訴を目指す場合の注意点

①示談の位置づけ

傷害事件で不起訴を目指す場合には,複数の手段や方針があり得ますが,犯罪事実を争わない認め事件の場合には,示談の重要度が特に高いという点に注意しておくことが望ましいでしょう。
反省している,初犯である,といった事情も,刑罰を軽減する方向で考慮されるポイントではありますが,その影響力は示談には遠く及びません。初犯で反省している,というだけで不起訴になる傷害事件は多くありませんが,示談が成立したというだけで不起訴になる傷害事件は非常に多く見られるところです。

認め事件の場合には,示談と他のポイントとでは重要度が全く違う可能性が高いため,その点をあらかじめ踏まえた上で方針を検討することが望ましいでしょう。

②不起訴と金銭賠償の関係

不起訴処分となった場合,その段階で捜査が終わり,事件が裁判所で裁かれることもないため,刑事手続は直ちに終了します。もっとも,不起訴処分になったからと言って金銭賠償が必要なくなるわけではない,という点には注意が必要です。

犯罪に対する捜査や刑罰の問題を「刑事事件」,当事者間の法律関係に関する問題を「民事事件」と言いますが,不起訴処分によって終了するのは刑事事件の面のみです。当事者間の法律関係が不起訴処分によってなくなるわけではないため,不起訴処分の後でも,被害者から金銭の支払いを求められるなど,民事事件の面で対応をしなければならない可能性はあり得ます。

なお,被害者との間で示談を行う場合,基本的には民事事件の面も解決した,という形を取ることになります。もっとも,示談によって民事事件の面も解決できるかは,示談の内容によるため,弁護士に依頼の上で適切な内容の示談を取り付けてもらうのが望ましいでしょう。

③否認事件における相手方の言い分

傷害事件は,当事者間で主張の内容が隔たっていることの多い事件類型です。互いの主張が矛盾していて,何が真実であるかが分からない,という場合が多く見られるのも,傷害事件の特徴の一つです。

特に,否認事件の場合にはこの特徴が顕著に見られます。互いが何をしたのか,されたのか,という点について,当事者間の言い分が真っ向から対立してしまうことは珍しくないため,その可能性にはあらかじめ注意することが望ましいでしょう。

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【傷害事件の弁護士選び】判断基準や必要な準備,注意点などを詳細解説

このページでは,傷害事件の弁護士選びについてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。弁護士への依頼を検討する際の参考にご活用ください。

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傷害事件で弁護士を選ぶタイミング

①呼び出しを受けたとき

傷害事件の捜査を受ける場合には,警察から電話などで呼び出しを受け,それに応じて警察に出頭する形で始まることが多く見られます。これは,被疑者として取り調べを行い,事件に関する事実関係を把握する目的であることが通常です。

そのため,呼び出しを受けた際には,その後に行われるであろう取り調べを想定し,取り調べへの対応を十分に検討しておくことが必要です。どのような質問をされるか,どのような方針で,内容で回答すべきか,といった点は,事前に整理しておくのが適切なポイントと言えます。
しかしながら,出頭後の取り調べに対する備えを自分で整理することは容易ではありません。刑事事件に接した経験がなければ,取り調べの状況をイメージすることすら困難なことでしょう。

そこで,呼び出しを受けた際には,そのタイミングで弁護士選びを行い,取り調べの備えを万全にしておくことが有益です。適切な弁護士選びができれば,その後の手続の見通しもクリアにできるほか,具体的な弁護活動に関する案内や助言を受けることもできるでしょう。

ポイント
呼び出しは,被疑者として取り調べをする目的であることが通常
取り調べの適切な準備には,弁護士選びが必要

②逮捕されたとき

傷害事件は,逮捕されることも十分にあり得る事件類型です。特に,事件発生直後のトラブルから被害者を保護する必要があるなど,緊急性の高い状況では,速やかに現行犯逮捕されてしまうことも決して珍しくありません。

もっとも,逮捕されたとしてもそれで手続の行方が決まるわけではありません。逮捕はあくまで捜査の出発点であり,その後に身柄拘束を続けるかどうかは別の問題であるためです。逮捕後に適切な対応を尽くすことができれば,早期釈放となり,生活への影響を最小限に抑えられるケースも多くあります。

しかしながら,逮捕後に早期釈放を求める動きは,現実的には弁護士なしではできないのが通常です。逮捕直後の段階では,原則として被疑者と接見できる人が弁護士だけである上,具体的にどのような手立てで早期釈放を目指すかは,手続に精通した弁護士以外には判断が困難であるためです。
そのため,逮捕直後は弁護士選びが非常に重要な局面と言えるでしょう。この段階での弁護士選びは,時間的猶予の少ないことが多いですが,安易に妥協した選択をすることなく,後悔のない弁護士選びを強くお勧めします。

ポイント
傷害事件では,逮捕後の早期釈放が可能なケースもあり得る
弁護士選びの時間的猶予は少ないことが多い

③示談を試みるとき

傷害事件は,示談の有無が刑事処分の結果に直接影響しやすい事件類型です。そのため,傷害事件について十分な対応をしたいと考える場合,示談を避けて通ることはできません。
裏を返せば,示談が成立し,当事者間での解決さえできれば,それ以外の条件を要することなく傷害事件が解決を見るケースも非常に多いところです。否認事件の場合を除き,傷害事件ではできる限り示談を目指すことが望ましいと言えます。

この点,示談交渉には弁護士の存在が不可欠です。示談を試みる一般的な方法は,弁護士を介して捜査機関に連絡し,被害者と弁護士との間で連絡が取り合えるか,被害者の意向を確認することから始まるのが一般的な流れとなります。

示談交渉の流れ

そして,示談の成否やその内容は,担当する弁護士によって様々に変わりやすいものです。示談における合意内容は当事者間の自由であり,無数の選択肢があるため,示談交渉の巧拙が示談の内容に直結することも珍しくありません。
そのため,示談を試みたいときには示談に精通した適任の弁護士を選ぶ必要があるでしょう。

ポイント
傷害事件の結果は,示談の有無で大きく変わる
示談の成否やその内容は,弁護士によって様々に変わる

④起訴されたとき

傷害事件が起訴され,公開の法廷での裁判(公判)を受けることになった際には,速やかな弁護士選びが適切です。

公判は,法廷で提出される証拠や当事者の発言などを踏まえて,裁判所が判決を決めるための手続となります。そのため,どのような証拠を提出すべきか,どのような発言をすべきか,といったことを事前に検討し,綿密な準備を行うことが適切です。
また,提出すべき証拠をどのように収集(又は作成)するか,といった検討も要するため,結果や見込みから逆算して適切な用意を進められる弁護士の存在が不可欠と言えるでしょう。

また,身柄拘束されたまま起訴された場合には,保釈という手続で釈放してもらうことも要検討のポイントですが,保釈を進める際にも弁護士の存在が必要となります。法律上の手続から釈放後の動きまで,適切な案内のできる弁護士を選ぶことができるかは,保釈に大きな影響を及ぼします。

ポイント
公判の準備には,適切な準備のできる弁護士が不可欠
身柄拘束されている場合には,保釈の対応をしてもらうことも必要

傷害事件の弁護士を選ぶ基準

①傷害事件の示談に精通しているか

傷害事件では,弁護士を通じて試みる示談の結果や内容が,その後を大きく左右することになります。そのため,弁護士選びに際しては,示談への影響を重視しないわけにはいきません。

この点,傷害事件の示談は,他の事件類型にはない特徴が複数あります。代表的な特徴の一つが,「当事者相互の主張に隔たりが大きくなりやすい」という点です。
起きた出来事の内容一つを取っても,同じトラブルの話をしているとは思えないほど当事者間の言い分に開きがあることは少なくありません。特にケンカのような態様で起きた傷害事件は,互いに感情的になって視野が狭くなっているケースも多く,話が大きく食い違うことになりやすいものです。

このような傷害事件の特徴は,示談の条件に大きな影響を及ぼします。特に,いわゆる示談金の金額については,どちらの言い分を基準に検討するかによってその水準が変わりやすい上,被害者側からは感情を乗せた高額の請求がなされやすくもなるでしょう。
そのようなポイントを事前に踏まえて示談に臨めるか,想定不十分なまま行き当たりばったりの対応に終始するかは,示談交渉を行う個々の弁護士によって大きく異なるでしょう。

②解決実績があるか

刑事事件は,過去の先例に沿った判断や運用をされることが一般的です。裁判所は,過去の先例と整合した取り扱いをすることで,公平を保ちながら適切に法律を運用する機関であるためです。

そうすると,先例を把握していること,過去に同種の事件を解決した実績があることは,事件の見通しを正確に持つ上で非常に重要な要素となります。弁護士が依頼者側に案内する見通しのほとんどは,過去の経験か過去の裁判例を根拠にしたものです。特に,同種事件を解決した実績があることは,より具体的で正確な判断をするために極めて重要な材料と言えます。

そのため,弁護士選びに際しては,その弁護士が同種事件の解決実績を持っているかどうか,という点を基準にすることが有力でしょう。

③迅速な対応ができるか

傷害事件の弁護活動は,迅速さを要する場合が少なくありません。身柄事件で釈放を目指す場合はその代表例ですが,他にも早期の示談を試みるべき場合や証拠の確保に努めるべき場合など,対応の迅速さが大きな影響を及ぼす局面が多く見られやすい傾向にあります。
弁護士の業務の中でも,多くの場面で迅速さが求められるのは刑事事件の特徴の一つと言えるでしょう。

一方で,弁護士がいつどのような対応をしてくれるかは,個々の弁護士のやり方により様々です。刑事事件のスピード感に合わせた迅速な対応のできる弁護士であれば問題ありませんが,万一弁護活動がタイミングを逃したものになってしまうと決定的な悪影響につながる可能性も生じます。

弁護士の活動に迅速さが期待できるかどうかは,重要な弁護士選びの基準とされることをお勧めします。

④聴き取り能力は十分か

傷害事件は,その経緯や実際になされた行為などを具体的に把握した上で,個別の事情を踏まえた解決方針を立てる必要があります。また,示談交渉を試みる際には,当事者間で言い分の食い違いが大きくなりやすいことを踏まえ,双方から十分な聴き取りを行い,言い分の相違点を正しく理解しなければ,円滑な協議が難しくなります。示談交渉においては,被害者側の感情面に配慮する趣旨でも,弁護士が被害者の話を冷静に聴き取り,その主張に耳を傾けられるかは,大きな意味を持つことが多いでしょう。

そのため,弁護士選びの際には,その弁護士の聴き取り能力を十分に確認することが適切です。あわせて,示談交渉を依頼する際には,聴き取りを行う弁護士が相手に与える印象も判断材料の一つとすることが有益でしょう。

傷害事件で弁護士を選ぶ必要

①示談交渉のため

傷害事件において,極めて重要であるものの弁護士がいなければ難しい動きの代表例は,やはり示談交渉です。示談が成立すれば,事実上は直ちに解決できると言える事件も非常に多いため,示談交渉は傷害事件に対する弁護活動の中核となりやすいものと言えます。

傷害事件のように,当事者間で直接連絡を取ったり交渉をしたりすることが適切でない事件では,弁護士がいなければ示談交渉に着手すること自体ができません。示談を目指すスタートラインに立つことも,示談を無事ゴールに到達させることも,弁護士選びなしでは困難でしょう。

②早期釈放のため

逮捕された傷害事件では,早期釈放を目指すことで,身柄拘束の期間を最小限に抑えられる可能性があり得ます。もちろん,現実に早期釈放ができるかは,個別の事件の内容や,釈放を促すことのできる材料の有無にもより異なりますが,早期釈放を目指す動きを取ることができるのは,現実的には弁護士のみです。
その意味では,弁護士がいれば早期釈放できるとは限らないものの,早期釈放を積極的に試みることができるのは弁護士がいる場合に限られる,ということができるでしょう。

なお,早期釈放を目指す手段はいくつかありますが,その中には時期が遅れると試みる余地のない手段もあります。早期釈放を目指すための弁護士選びは,時間との勝負にもなることに注意が望ましいでしょう。

③不起訴処分のため

不起訴処分を実現するための具体的な方法は,個別の事件によって異なります。特に,認め事件と否認事件とでは大きな差異があり,否認事件の中でも争点次第で様々に枝分かれするものです。

もっとも,特定の事件で不起訴処分を目指す方法を正しく決めるのは,弁護士以外には困難なことです。法的な知識や経験が必要となる上,必要となる証拠の有無や収集方法にも考えを巡らせることが不可欠であるため,当事者自身での判断は難しく,非常に危険とも言えるでしょう。
また,不起訴処分のための動きを実際に行うに当たっても,弁護士選びが必要です。弁護士を通じて行うことが多数あるため,適切な動きを取ってくれる弁護士を選ぶことが非常に重要となるでしょう。

傷害事件における弁護士選びの準備

①経緯をまとめる

弁護士選びの際には,弁護士への法律相談が必要ですが,法律相談の中で弁護士から適切な案内を受けるためには,その弁護士に事件の内容を正しく把握してもらうことが重要となります。
特に,傷害事件の場合,行ってしまった(又は疑われている)行為そのものだけでなく,その結果に至るまでの経緯も,大切な判断材料となることが少なくありません。何の前触れもなく突然に傷害事件が発生することは考えにくいため,何らかのきっかけがあるケースがほとんどですが,そのきっかけがどのようなものか,という点が結論に影響を及ぼし得ます。

弁護士が事件の内容の一部を把握しているかいないかで,アドバイスの内容が大きく変わる場合も否定できません。弁護士に誤解が生じることを防ぐため,起きた出来事を漏れなく伝える用意をしておくとよいでしょう。

②解消したい悩みをまとめる

弁護士選びをしているということは,弁護士選びによって解決したい何らかの悩みや迷いがあるはずです。「弁護士に依頼するような事件なのか」「弁護士に依頼することで何かが変わるのか」「弁護士が変わると結果も変わるのか」「経済的に不安である」など,具体的な悩みの内容は,人により様々です。場合によっては,「何に迷うべきかも分からない」ということすらあり得るでしょう。

弁護士選びは,抱えている悩みや迷いの解消に最も適した弁護士を選ぶことが重要です。「悩みを解消してくれそう」という信頼感があるかないかだけでも,その後の動きに大きな影響を及ぼすでしょう。
そのため,弁護士選びに際しては,自分が弁護士選びによって解消したいと考えている悩みを,できる限り整理して,弁護士に言葉で伝えられるようにすることをお勧めします。

③依頼時の予算を決める

弁護士への依頼には費用が発生しますが,弁護士費用は法律事務所によって異なり,同じ弁護士への依頼でも依頼内容によって異なります。当然ながら,弁護士への依頼内容が多いほど弁護士費用は高額になりやすく,逆もまた然りです。
また,示談を試みる場合には,弁護士費用に加えて示談金が経済的な負担となります。弁護士費用だけを支払えても,示談金が支払えないと示談はできないため,示談金の負担も事前の想定が必要です。

そのため,弁護士選びに際しては,あらかじめ予算の範囲を明確に決めておくのが有益でしょう。現在は,ホームページ上で詳細に弁護士費用を明示している法律事務所も少なくないため,ご自身なりに費用負担のイメージを持って弁護士選びを行うのも有力です。
また,現実の弁護士費用と予算との開きが限定的であれば,弁護士への依頼内容を一部削るなど,柔軟な依頼方法で開きを埋めることができる場合もあり得ます。個別のケースに関しては弁護士と十分に相談してみましょう。

④早期に相談する

弁護活動の内容が同じでも,その時期が早いか遅いかによって,結果が変わってしまうことは珍しくありません。基本的に全ての弁護活動において,早い方が遅いよりも有益な結果に至りやすいものです。
示談一つを取っても,事件直後に謝罪の意思を示すのか,数か月経過した後に初めて謝罪の意思を示すのかは,被害者側への影響に大きな違いが生まれるでしょう。

そのため,事件解決に当たっては,できるだけ早い段階で弁護士選びを行うことをお勧めします。早期に動き出せば,弁護士にできることがそれだけ多く残っている可能性も高くなり,希望する解決に近づきやすくなるでしょう。

刑事事件に強い弁護士をお探しの方へ

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【傷害事件の示談を知りたい人のために】傷害事件で不起訴を獲得するために示談は必要か?示談金相場や計算方法も紹介

このページでは,傷害事件の示談についてお悩みの方へ,弁護士が徹底解説します。
示談の方法,内容に加え,当事務所で弁護活動を行う場合の費用も紹介していますので,示談を弁護士に依頼するときの参考にしてみてください。

【このページで分かること】

傷害事件で示談は必要か
傷害事件における示談のメリット
傷害事件で示談をする方法
傷害事件の示談金相場
傷害事件の示談内容・条項
傷害事件の示談で注意すべきこと
傷害事件の示談に必要な費用

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傷害事件で示談は必要か

傷害事件では,円滑な解決のために示談が必要であると理解するのが適切です。

傷害事件とは,他人に暴行を加えた結果,傷害結果を負わせる事件を言います。殴ってケガをした,という場合はもちろん,大音量で睡眠障害に陥らせる場合なども含むもので,広く「他人の生理的機能に障害を与えること」があれば傷害罪に該当します。

そうすると,傷害事件の場合,必ず相手になる被害者が存在し,被害者には何らかの具体的なダメージが生じているということになります。そして,傷害事件に対する処分は,被害者に対するダメージがどの程度のものか,加害者がダメージをどのくらい補填したのか,していないのか,といった点が考慮されるものとなります。

この点,加害者が被害者のダメージを補填する最も有効な手段が,示談です。示談金の支払で経済的に被害者の損害を埋め合わせるとともに,その内容を被害者も納得(合意)しているとなれば,被害者のダメージは大部分が補填されたという理解になることが一般的でしょう。

そのため,傷害事件の処分は,示談が直接の影響を大きく及ぼす性質のものであり,傷害事件では示談が必要と理解するべきところです。

ポイント
傷害事件は被害者に具体的な損害が生じている
加害者が損害を補填したかどうかが処分に大きく影響する
損害を補填する最も有効な手段が示談

傷害事件における示談のメリット

①逮捕を防ぐことができる

傷害事件は,逮捕されることが比較的多い事件類型です。傷害事件は,当事者間に強い感情的な対立があるか,加害者が一方的に被害者への強い感情を抱いているか,という経緯で起きることが通常ですが,そのような状況を放置すると,トラブルが再発したり深刻化したりする恐れが大きいと考えられます。
そのため,当事者を物理的に引き離し,二次被害を防ぎながら捜査をする,という方針が取られやすいのです。
逮捕された場合,最大72時間の身柄拘束の後,勾留が決定されればさらに10日間,勾留延長となれば加えて最大10日間という,長期間の身柄拘束も懸念されます。20日を超える身柄拘束となれば,日常生活への影響は避けられません。

逮捕から起訴までの流れ

この点,示談が成立した傷害事件で逮捕を行うことは通常考えにくいということができます。示談が成立している以上,当事者を物理的に引き離さなくてもトラブルが再発したり深刻化したりする可能性がないためです。

傷害事件が逮捕の恐れもある事件類型であることを踏まえ,早期の示談を試みることが有益でしょう。

②刑事裁判を防ぐことができる

傷害事件の場合,犯罪の立証ができないケースを除いて,基本的に起訴することが通常です。被害者に暴行し,傷害結果を負わせた以上,その責任を刑罰という形で取らせる運用が一般的とされます。
起訴されてしまうと,刑事裁判を受け,無罪にならない限り裁判所から刑罰を受けることになります。こうなれば,前科(=刑罰を受けた経歴)が付くことは避けられません。前科に伴う数々の不利益が,その後の生活に悪影響を及ぼす可能性も高くなってしまいます。

この点,傷害事件で示談が成立した場合,刑事裁判には至らない方が多数です。傷害事件は,特定の被害者に対する事件であるため,その被害者が刑事裁判を希望しない以上,刑事裁判を行う必要がない,との判断になりやすいのです。

刑事裁判を受けるのは,その手続に応じる負担自体も決して軽くはないため,刑事裁判を防げることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

③金銭問題が解決できる

傷害事件が起きた当事者間では,刑罰の問題と同時に金銭問題も発生します。被害者に具体的な傷害結果が生じている以上,治療費もかかりますし,精神的苦痛に対する慰謝料も想定されるところです。
そして,この金銭問題は,加害者が刑罰を受けたとしても解決するものではありません。刑罰の問題(刑事事件)と金銭問題(民事事件)は独立した別々のものであるため,刑罰を受けた上で,さらに金銭を請求されるという可能性も十分に存在します。

この点,傷害事件の示談は,傷害事件によって被害者が受けた損害についての金銭的解決もあわせて行う内容になります。示談を取り交わした後には,互いに金銭を請求しない(請求する権利がない),という合意をするため,示談後に被害者から金銭請求を受ける可能性がなくなるのです。

傷害事件では,金銭問題が必ずついてくるため,示談によって金銭問題も同時に解決できることは大きなメリットでしょう。

ポイント 示談のメリット

傷害事件は逮捕の恐れが小さくない
→示談をすれば逮捕を防げる

傷害事件は基本的に起訴される
→示談すれば起訴を回避でき,刑事裁判を防げる

傷害事件では金銭問題が同時に生じる
→示談によって金銭問題を含めた解決ができる

傷害事件で示談をする方法

傷害事件で示談を試みる場合,まずは弁護士に依頼することが必要です。示談は,自分で直接行うのではなく,代理人となる弁護士を窓口にして行うことになります。
一応,両当事者が了承すれば,当事者間で直接示談交渉を行うことも不可能ではありません。しかし,傷害事件では被害者側が加害者と直接示談交渉したいと希望するとは考え難く,当事者が直接交渉を行うのはトラブルの原因になりかねないので,当事者間の直接交渉は基本的には不適切と考えるのが合理的でしょう。

弁護士が依頼を受けた場合,警察や検察の捜査担当者に問い合わせ,示談を希望したい旨を被害者に伝えてもらうよう依頼します。捜査担当者が被害者の意思を確認し,被害者が了承すれば,連絡先を交換するなどして直接のやり取りに移行することが可能となります。

示談交渉の流れ

示談交渉の流れ

1.弁護士が捜査機関に示談したい旨を申し入れる
2.捜査機関が被害者に連絡を取り,示談に関する意思確認をする
3.被害者が捜査機関に返答をする
4.被害者が了承すれば,捜査機関を介して連絡先を交換する
5.弁護士が被害者に連絡を取り,交渉を開始する

なお,捜査機関が間を取り持つのは,加害者が弁護士に依頼し,弁護士から動きを取った場合のみです。捜査機関は,トラブル回避のため当事者同士を引き合わせることは拒否するので,その意味でも弁護士に依頼することが必要になります。

傷害事件の示談金相場

傷害事件の示談金は,暴行の具体的な内容や被害者に生じた傷害結果などによって大きく左右されます。
そのため,具体的な金額水準は個別のケースによりますが,最も代表的である「素手素足の暴行により加療2週間程度の打撲を負わせた」というような例では,20~30万円程度が有力な目安になりやすいでしょう。

ただし,これはあくまで暴行の内容や傷害結果を限定した場合の目安にとどまります。特に,重大な傷害結果が生じてしまった場合は,百万円単位の示談金が発生することも考えられるため,個別事件における金額の目安は弁護士に相談することお勧めします。

一般に,示談金額を左右する事情としては,以下のような点が挙げられます。

示談金額を左右する事情

1.暴行の内容
→凶器を用いている場合,身体生命の危険が大きな暴行の場合には,高額になりやすい

2.傷害結果
→傷害が重い場合や,後遺障害が残る場合には,高額になりやすい

3.被害者の業務への影響
→被害者の収入額に直接の影響が生じている場合,その分高額になりやすい

傷害事件の示談内容・条項

①一般的な示談条項

【確認条項】

加害者の被害者に対する支払金額を確認する条項です。

【給付条項】

確認条項に記載した金銭の支払をどのように行うのかを定める条項です。

【清算条項】

示談で定めた条項以外には,当事者間に権利義務の関係がないことを定める条項です。清算条項を取り交わせば,その後に相手から金銭を追加請求される可能性は法的になくなります。
金銭問題を同時に解決できるのは,示談の中に清算条項を設けるためです。

【宥恕条項】

宥恕(ゆうじょ)条項とは,被害者が加害者を許す,という意味の条項です。
示談が刑事処分に有利な影響を及ぼすのは,基本的にこの宥恕条項があるためです。被害者が加害者を許している,という事実が,刑事処分を劇的に軽減させる要素となります。
加害者にとっては,示談=宥恕の獲得と理解してもよいかもしれません。

②傷害事件で特に定めやすい条項

【接触禁止】

加害者が被害者に対して接触を図ることを禁止する条項です。
家族間や仲直りした間柄などの例外的なケースを除き,傷害事件の当事者間は示談後に一切接触しないことが適切です。そのため,傷害事件の示談では,互いのために双方が相手に接触しないことを合意する場合が多く見られます。

相手が接触禁止を求めた場合,接触禁止に応じるデメリットは基本的にないため,この点は示談に盛り込むことが適切でしょう。

【現場への接近禁止】

事件の現場になった場所の近辺に接触することを禁止する条項です。偶然にでも加害者と会うことがないよう,被害者から求められることがあります。
具体的な接近禁止の対象としては,以下のような例が挙げられます。

接近禁止の例

1.事件の発生した店舗や施設
2.事件の発生した電車
3.路上で事件が起きた場合の現場周辺

もっとも,これらの接近禁止は,あまり広範囲に定めてしまうと加害者側の負担が過度に大きくなる可能性もあり得ます。具体的に接近禁止を合意する場合には,無理が生じないよう条件を慎重に検討するのが適切です。

傷害事件の示談で注意すべきこと

①感情的な請求を受ける場合

特にケンカのような態様で起きた傷害事件では,被害者側が強烈な悪感情を持っていることが珍しくありません。そして,その感情は示談条件の要求という形でぶつけられることも多く見られます。
非常に大きな金額の示談金を求められる,といったことが代表例ですが,事件の内容を客観的に踏まえた金額を大きく超えた請求がなされ,「これに応じないのであれば示談しない」という強いスタンスで応じられる場合がある,というのが傷害事件の特徴の一つでしょう。

この場合,基本的には金銭面で譲歩するかしないか,という選択肢にならざるを得ません。受けている請求が過大である場合,過大な請求であることを踏まえながら受け入れるか,過大な請求だから断るか,という二択になりやすいでしょう。
過大な請求であると断る場合,結果的に示談は成立しないことも考えられます。これは,示談が当事者間の契約である以上,やむを得ないと言わざるを得ないところです。

②捜査担当者から示談を勧められる場合

傷害事件では,捜査機関(特に担当検察官)から示談を勧められる場合もあり得ます。捜査機関としては,当事者間で解決できるのであればその方が望ましいと考えることが多いため,刑罰だけで終了させるのではなく示談の道がないか,という検討を行うことが少なくありません。

そして,担当検察官から示談を積極的に勧められた場合は,可能な限り示談の試みを行うことをお勧めします。なぜなら,示談を勧める検察官の真意は,「示談が成立すれば速やかに不起訴処分にできる」というものであることが非常に多いためです。不起訴処分となれば,刑罰を受けることなく手続が終了するため,そのメリットは非常に大きなものとなります。
また,担当検察官が示談を勧める場合,事前に被害者側の意向を確認していることも少なくありません。そのため,勧めに応じて示談を試みたものの,結局被害者に拒否されて終わった,ということはあまりないでしょう。

ポイント
傷害事件の被害者からは,感情的に過大な請求がされることもある
担当検察官から示談を勧められた場合には,できる限り示談を試みる

傷害事件の示談に必要な費用

藤垣法律事務所で傷害事件の弁護活動を行う場合,必要な費用のモデルケースとしては以下の内容が挙げられます。

①活動開始時

着手金33万円
実費相当額1万円
合計34万円

一般的な在宅事件では,34万円のお預かりにて活動の開始が可能です。

②弁護活動の成果発生時

不起訴処分33万円
示談成立22万円(※)
出張日当・実費実額
※金銭賠償で5.5万円,清算条項締結で5.5万円,宥恕の獲得で11万円

活動の成果が生じた場合に限り,55万円(実費日当を除く)の費用が発生します。

③示談金

傷害事件の場合,素手素足での暴行で加療2週間程度の打撲を負わせたケースであれば,20~30万円の示談金が目安として想定されます。

④合計額

上記①~③の合計額が必要な費用負担となります。

目安となる費用総額(30万円で示談成立+不起訴の場合)

弁護士費用:34万円+55万円=89万円
示談金:30万円

計:119万円

弁護士費用の例

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