傷害事件で被害届を出されたらどうなる?逮捕の可能性や示談・不起訴のポイントを弁護士が解説

傷害事件で被害届を出された場合、「逮捕されるのではないか」「警察からいつ連絡が来るのか」「前科が付いてしまうのではないか」と不安を感じる方は少なくありません。被害届が提出されたからといって、直ちに逮捕や有罪につながるわけではありませんが、その後の対応によって処分の内容が大きく変わることがあります。

傷害事件では、被害届の提出後に警察の捜査が進み、事情聴取や送致を経て、検察官が起訴・不起訴を判断します。また、示談の成立や被害者の処罰感情、事件の態様なども処分を左右する重要な事情です。そのため、まずは手続の流れを理解し、自身の状況に応じた対応を取ることが大切です。

対応を誤ると、逮捕の可能性が高まったり、不起訴となる可能性を低下させたりするおそれがあります。一方で、早い段階で適切な対応や示談交渉を行うことで、より有利な解決につながるケースもあります。本記事では、傷害事件で被害届を出された場合の流れや逮捕の可能性、示談や不起訴との関係、対応時の注意点について弁護士が解説します。

なお、傷害事件の弁護士については、以下の記事で詳細に解説しています。
傷害罪で弁護士に相談するメリットや聞いておくべきこととは?費用相場や事務所選びまで解説

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害事件で被害届を出された後の流れ|警察の捜査から処分決定まで

傷害事件で被害届が提出されると、警察は事件として受理するかどうかを判断した上で、必要に応じて捜査を開始します。被害届が提出されたからといって、直ちに逮捕や起訴が決まるわけではありませんが、捜査が進む中で事情聴取や証拠収集が行われ、その結果を踏まえて検察官が処分を決定します。

事件の内容や証拠の状況によって進み方は異なりますが、一般的な流れは次のとおりです。

被害届が提出・受理される

被害者が警察へ被害届を提出すると、警察は事件の内容や犯罪の成否を確認した上で、被害届を受理するかどうかを判断します。

傷害事件では、診断書や現場の状況、当事者双方の説明などから犯罪の疑いが認められれば、被害届が受理され、捜査が開始されるのが一般的です。

もっとも、被害届は犯罪被害の申告であり、加害者の処罰を求める意思表示そのものではありません。そのため、被害届が受理されたことだけを理由に処分が決まることはなく、その後の捜査結果によって刑事手続が進むかどうかが判断されます。

警察による捜査・事情聴取が行われる

被害届が受理されると、警察は被害者や目撃者から事情を聴取し、証拠を収集した上で、加害者とされる人物にも事情聴取を行います

加害者側には電話や書面で出頭を求められることが多く、取調べでは事件当日の状況や被害者との関係、暴行に至った経緯などについて説明を求められます。

また、防犯カメラ映像や診断書、SNSやメッセージのやり取りなどが証拠として収集されることもあります。供述内容と客観的証拠に矛盾があると信用性に影響する可能性があるため、事実関係を整理した上で対応することが重要です。

事件が検察官へ送致される

警察による捜査が終了すると、事件は検察官へ送致(送検)されます。

送致とは、警察が収集した証拠や捜査結果を検察官へ引き継ぐ手続です。送致された後は、必要に応じて検察官による取調べが行われる場合もあります。

送致されたからといって有罪になるわけではなく、検察官は証拠関係や被害者の処罰感情、示談の有無などを踏まえて、起訴するか不起訴にするかを判断します。

検察官が起訴・不起訴を判断する

検察官は、犯罪の成立だけでなく、事件の悪質性や被害の程度、示談の成立状況、反省の態度、前科・前歴の有無などを総合的に考慮して処分を決定します。

例えば、被害が比較的軽く、初犯であり、被害者との示談が成立しているような事案では、不起訴となる可能性があります。

一方、被害が重大である場合や、示談が成立していない場合、悪質性が高いと判断される場合には、起訴される可能性もあります。

被害届が提出された段階では最終的な処分は決まっておらず、その後の対応が結果に大きく影響するため、警察への対応や示談交渉を適切に進めることが重要です。

傷害事件で被害届を出されたら逮捕される?逮捕されるケースとされないケース

被害届が提出されても逮捕されないケースは多い

傷害事件では、逮捕する必要がないと判断されれば、在宅事件として捜査が進められることがあります。

刑事手続における逮捕は、単に犯罪の疑いがあるというだけで認められるものではありません。法律上は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることに加え、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなど、身体拘束を行う必要性があることが求められます。

例えば、住所や勤務先が明らかで、警察の呼び出しにも応じる意思があり、証拠隠滅のおそれも低い場合には、逮捕せずに事情聴取を重ねながら捜査が進められるケースが多くあります。

そのため、被害届が提出されたという事実だけで、逮捕を前提に考える必要はありません。

後日逮捕されるケースもある

傷害事件では、事件当日に逮捕されなくても、捜査が進んだ後に通常逮捕されるケースがあります。

例えば、被害者や目撃者の供述、防犯カメラ映像、診断書などの証拠がそろい、犯罪の嫌疑が固まった場合には、裁判官が発付した逮捕状に基づいて後日逮捕されることがあります。

また、警察から事情聴取の要請を受けているにもかかわらず正当な理由なく出頭を拒み続ける場合や、所在が不明となった場合には、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕の必要性が認められる可能性があります。

「事件当日に逮捕されなかったから安心」と考えるのではなく、警察から連絡を受けた場合は誠実に対応することが重要です。

逮捕の判断で重視される事情

逮捕するかどうかは、個別の事情を総合的に考慮して判断されます。

主な判断要素としては、次のようなものがあります。

  • 逃亡するおそれがあるか
  • 証拠を隠したり改ざんしたりするおそれがあるか
  • 被害者や関係者へ働きかける可能性があるか
  • 住所や身元が明らかであるか
  • 警察の呼び出しに応じる意思があるか

特に、被害者へ口止めをしたり、証拠となるメッセージを削除したりする行為は、証拠隠滅のおそれがあると評価される可能性があります。

また、被害者に対して執拗に連絡を取ったり、威圧的な言動をしたりすると、被害者への働きかけとして逮捕の必要性を基礎付ける事情となることもあります。

このように、逮捕の判断は傷害の程度だけで決まるものではなく、事件後の行動も重要な判断要素となります。被害届を出された後は、自身の判断で被害者へ接触することは避け、適切な対応を心掛けることが重要です。

警察から連絡が来たらどうする?傷害事件で注意すべき対応

警察からの呼び出しには誠実に応じる

警察から事情聴取のために連絡を受けた場合は、正当な理由なく呼び出しを拒否したり、連絡を無視したりすることは避けるべきです。

事情聴取は、事件の経緯や当事者双方の言い分を確認するために行われるものであり、必ずしも逮捕を前提とした手続ではありません。在宅事件では、任意の出頭を求めた上で事情聴取を行うことが一般的です。

もっとも、連絡を無視し続けたり、出頭要請に応じなかったりすると、逃亡のおそれがあると判断される事情の一つとなる可能性があります。その結果、通常逮捕の必要性が認められることもあるため、警察から連絡があった場合は誠実に対応することが重要です。

事情聴取では事実に基づいて説明する

事情聴取では、事実に基づいて一貫した説明をすることが重要です。

その場しのぎで事実と異なる説明をしたり、供述を何度も変えたりすると、供述の信用性が低いと評価される可能性があります。また、防犯カメラ映像や診断書、SNSのメッセージなどの客観的証拠と矛盾する供述をすると、不利な事情として扱われることもあります。

一方で、警察から質問された内容に対して、分からないことまで無理に答える必要はありません。記憶が曖昧な点については、その旨を率直に伝えた方が、結果として供述の信用性を損なわずに済むことがあります。

被害者へ直接連絡する前に慎重に判断する

被害者に謝罪したい、示談を申し入れたいと考える方もいますが、自ら被害者へ直接連絡を取ることは慎重に判断すべきです。

被害者が加害者との接触を望んでいない場合、電話やメッセージ、訪問などは精神的な負担となるだけでなく、事件によっては威迫や働きかけと受け止められるおそれがあります。

また、示談を申し入れる際に感情的なやり取りとなり、かえって紛争が深刻化するケースも少なくありません。

被害者が代理人弁護士を選任している場合はもちろん、選任していない場合でも、示談交渉は弁護士を通じて進めた方が円滑かつ適切に進むことが多いといえます。

早い段階で弁護士へ相談する

警察から連絡を受けた段階では、まだ最終的な処分が決まっているわけではありません。

そのため、事情聴取への対応や示談交渉の進め方について早い段階から弁護士へ相談することで、事件の状況に応じた適切な対応を取りやすくなります。

特に、被害者との示談が見込まれる事案では、早期に交渉を開始することで、不起訴処分につながる可能性が高まることもあります。また、供述内容について事前に整理しておくことで、事情聴取でも落ち着いて対応しやすくなります。

警察から連絡が来た時点では、「まだ捜査の途中」というケースがほとんどです。その後の対応が処分に影響することもあるため、一人で判断せず、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。

突然警察から連絡があると不安になることはやむを得ませんが、その連絡を無視してしまうことは必ず避けるようにしましょう。

傷害事件では示談が重要|早期の示談が不起訴につながる理由

示談は不起訴となる可能性を高める重要な事情

傷害事件では、被害者との示談が成立すると、不起訴となる可能性が高まります。

検察官は、犯罪の成立だけでなく、事件の悪質性や被害の程度、被害回復の状況、加害者の反省の程度などを総合的に考慮して起訴・不起訴を判断します。そのため、被害者との間で示談が成立し、被害弁償が済んでいることは、処分を決める上で重要な事情となります。

もっとも、示談が成立したからといって必ず不起訴になるわけではありません。 傷害の程度が重い場合や、常習性が認められる場合などには、示談が成立していても起訴される可能性があります。

一方で、被害が比較的軽微で、初犯であるなど加害者に有利な事情があり、示談も成立している事案では、不起訴となるケースも少なくありません。

示談はできるだけ早く進めることが重要

示談は、できるだけ早い段階で進めることが重要です。

検察官は起訴・不起訴を判断する際、判断時点までの事情を考慮します。そのため、処分が決まる前に示談が成立していれば、その内容が処分判断に反映される可能性があります。

反対に、起訴された後に示談が成立した場合でも、量刑判断に影響することはありますが、不起訴処分を得ることはできません。

そのため、警察から連絡を受けた段階や、事件化が見込まれる段階で示談交渉を開始することが望ましいといえます。

示談では宥恕条項を盛り込むことが重要

示談書には、被害者が加害者を許し、厳しい処罰を求めない意思を示す「宥恕(ゆうじょ)条項」を盛り込むことがあります。

宥恕条項があるからといって不起訴が保証されるわけではありません。しかし、被害者の処罰感情が一定程度解消されていることを示す事情として、検察官の処分判断に影響することがあります。

一方で、単に金銭を支払えば十分というものではありません。事件の内容によっては、謝罪の方法や再発防止への取組なども含めて評価されることがあります。

示談交渉は弁護士を通じて行うことが望ましい

傷害事件では、示談交渉を弁護士へ依頼することが望ましいといえます。

被害者が加害者との直接交渉を拒否している場合には、本人だけでは示談交渉を始めること自体が難しいケースがあります。また、警察は原則として被害者の連絡先を加害者へ教えません。

弁護士であれば、被害者側の了承を得た上で連絡を取り、示談交渉を進めることが可能です。また、適切な示談金額や示談条項を踏まえて交渉できるため、円滑な解決につながることも少なくありません。

示談は、不起訴となる可能性を高める重要な事情の一つです。 被害届を出された場合は、処分が決まる前に示談交渉を開始できるよう、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

傷害事件で不起訴になる可能性は?前科を避けるために重要なポイント

不起訴になれば前科は付かない

不起訴処分となった場合、前科は付きません。

前科とは、有罪の裁判を受けて刑罰を科された経歴をいいます。そのため、傷害事件で捜査を受けたり、逮捕されたりしても、最終的に不起訴となれば前科は付かないことになります。

一方で、不起訴になっても、警察や検察が事件を取り扱った事実が記録として残ることがあります。これは前科とは異なるため、不起訴処分である以上、「前科が付いた」と考える必要はありません。

不起訴になるかどうかはさまざまな事情を総合的に判断される

検察官は、事件の内容や事件後の事情を総合的に考慮して、起訴するか不起訴にするかを判断します。

主な判断要素としては、次のようなものがあります。

  • 被害の程度
  • 傷害に至った経緯
  • 示談が成立しているか
  • 被害者が厳しい処罰を求めているか
  • 反省や再発防止の状況
  • 前科・前歴の有無

例えば、被害が軽く、偶発的なトラブルで発生した事件であり、示談が成立しているような事案では、不起訴となる可能性があります。

一方、被害が重大である場合や、悪質性が高い場合、示談が成立していない場合などは、起訴される可能性が高くなります。

初犯であることは不起訴に有利な事情となる

初犯であることは、不起訴を判断する上で有利な事情の一つです。

もっとも、初犯だからといって当然に不起訴となるわけではありません。被害の程度が重い事件や、悪質性が高い事件では、初犯であっても起訴されることがあります。

反対に、初犯であることに加え、示談が成立していることや深く反省していることなど、複数の有利な事情がそろうことで、不起訴となる可能性が高まるケースもあります。

そのため、初犯かどうかだけではなく、事件全体の事情がどのように評価されるかが重要です。

不起訴を目指すためには早期対応が重要

不起訴を目指すためには、処分が決まる前に適切な対応を取ることが重要です。

例えば、早期に示談交渉を進めることや、事情聴取で事実に基づいて誠実に説明することは、事件後の対応として考慮される可能性があります。

また、事件の内容によっては、被害者への被害弁償や再発防止に向けた具体的な取組なども、反省の態度を示す事情として評価されることがあります。

不起訴となるかどうかは、事件発生時の事情だけでなく、その後の対応も含めて判断されます。 前科を避けたい場合は、できるだけ早い段階で弁護士へ相談し、事件の状況に応じた対応を進めることが重要です。

被害届を出される前なら解決できる?早期対応の重要性

被害届が提出される前に示談できれば事件化を防げる可能性がある

傷害事件では、被害届が提出される前に示談が成立すれば、事件化を防げる可能性があります。

被害者がまだ警察へ被害届を提出していない段階で、誠実な謝罪や被害弁償を行い、示談が成立すれば、被害者が被害届の提出を見送るケースがあります。その結果、警察による捜査が開始されず、刑事事件として扱われない可能性があります。

もっとも、示談が成立すれば必ず被害届が提出されないとは限りません。また、被害者が既に被害届を提出している場合には、この方法によって事件化を防ぐことはできません。

被害届が提出される前でも被害者への直接連絡は慎重に行う

被害届が提出される前であっても、加害者が自ら被害者へ繰り返し連絡を取ることは避けるべきです。

謝罪や示談を申し入れるつもりであっても、被害者が接触を望んでいない場合には、精神的な負担を与えるだけでなく、威圧や口止めと受け取られる可能性があります。

特に、何度も電話やメッセージを送ったり、自宅や勤務先を訪ねたりする行為は、かえって紛争を深刻化させる原因となることがあります。

示談を希望する場合は、相手方の意向を尊重しながら適切な方法で交渉を進めることが重要です。

早期に弁護士へ相談することで選択肢が広がる

被害届が提出される前は、事件の進展を左右できる可能性が最も高い時期です。

弁護士へ早期に相談すれば、示談交渉を進めるべきか、謝罪の方法はどうすべきか、被害者へどのように連絡を取るべきかなど、事件の状況に応じた助言を受けることができます。

また、弁護士が代理人となることで、被害者が安心して示談交渉に応じるケースも少なくありません。被害者との感情的な対立を避けながら交渉を進められるため、円滑な解決につながることがあります。

被害届が提出されてから対応を始めるよりも、提出前に適切な対応を取れる方が選択肢は広くなります。 被害届を出される可能性がある場合は、自分だけで判断せず、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。

事前に解決できるケースは、当事者間又は共通の第三者を通じて話し合いができる場合に限られやすいでしょう。逆に、そのような場合にはできる限り事前の解決を目指すことが有益です。

傷害事件の被害届と告訴の違い|手続や影響をわかりやすく解説

被害届は犯罪被害を申告するための書類

被害届とは、犯罪の被害に遭った事実を警察へ申告するための書類です。

被害者が事件の発生を警察へ知らせることを目的として提出するものであり、提出したからといって、直ちに加害者の処罰を求める法的な意思表示となるわけではありません。

傷害事件では、被害者から被害届が提出されると、警察は事件の内容を確認し、必要に応じて捜査を開始します。その後の捜査結果を踏まえて、検察官が起訴・不起訴を判断することになります。

告訴は処罰を求める意思表示を含む

告訴とは、犯罪事実を申告するとともに、犯人の処罰を求める意思表示です。

被害届との大きな違いは、被害の申告だけでなく、「処罰を求める」という意思が含まれている点にあります。

もっとも、傷害罪は親告罪ではありません。そのため、告訴がなくても、警察や検察は捜査を行い、起訴することができます。

そのため、傷害事件では、被害届が提出された事件でも、告訴が行われた事件でも、刑事手続が進む可能性がある点に大きな違いはありません。

傷害事件では被害届か告訴かよりも事件後の対応が重要

傷害事件では、被害届が提出されたのか、告訴されたのかという違いだけで処分が決まるわけではありません。

実際には、被害の程度や証拠の内容、示談の成立状況、被害者の処罰感情、加害者の反省状況などを踏まえて、検察官が起訴・不起訴を判断します。

そのため、「被害届だから安心」「告訴されたから必ず起訴される」と考えるのは誤りです。

傷害事件では、被害届か告訴かという形式よりも、事件後にどのような対応を取るかが、その後の処分に大きく影響します。

現実的には、傷害事件で捜査機関が告訴をさせることはほとんどないでしょう。その後の捜査の進行に対しては、告訴であっても被害届であっても同様の意味合いであると考えるのが適切です。

傷害事件で被害届を出された場合によくある質問

被害届を出されたら必ず逮捕されますか?

いいえ、被害届が提出されたからといって必ず逮捕されるわけではありません。

逮捕には、犯罪の嫌疑に加え、逃亡や証拠隠滅のおそれなどの要件が必要です。住所や身元が明らかで、警察の呼び出しにも応じている場合には、在宅事件として捜査が進むケースも少なくありません。

被害届を出されたら警察からどのくらいで連絡が来ますか?

警察から連絡が来る時期は事件によって異なります。

被害届が提出されて数日で連絡が来ることもあれば、証拠収集や被害者の事情聴取を終えてから数週間後に連絡が来ることもあります。また、事件の内容によっては、警察からの連絡より先に逮捕されるケースもあります。

被害届が提出された後でも示談はできますか?

はい、被害届が提出された後でも示談は可能です。

むしろ、傷害事件では被害届提出後に示談交渉が行われることも少なくありません。示談が成立すると、不起訴となる可能性が高まることがあります。

被害届を取り下げてもらえば不起訴になりますか?

被害届が取り下げられても、必ず不起訴になるわけではありません。

傷害罪は親告罪ではないため、被害届が取り下げられても捜査や起訴が行われることがあります。ただし、被害届の取下げや示談の成立は、検察官が処分を判断する際の有利な事情となる可能性があります。

被害者へ直接謝罪した方がよいですか?

被害者へ直接連絡するかどうかは慎重に判断する必要があります。

被害者が接触を望んでいない場合には、謝罪のつもりであっても精神的負担を与えたり、口止めや威迫と受け取られたりする可能性があります。示談や謝罪を希望する場合は、弁護士を通じて進めることをおすすめします。

傷害事件で被害届を出されたら早めに弁護士へ相談を

傷害事件で被害届を出されたからといって、必ず逮捕や起訴となるわけではありません。しかし、警察への対応や示談交渉、事件後の行動は、その後の処分に影響する重要な事情となります。

特に、示談が成立しているか、被害回復が図られているか、反省の態度が示されているかなどは、検察官が起訴・不起訴を判断する際に考慮されることがあります。そのため、被害届が提出された場合は、状況に応じて早い段階から適切な対応を取ることが重要です。

一人で判断して対応を進めると、被害者への接触方法や事情聴取での受け答えが不利に働く場合もあります。被害届を出された場合や、被害届を提出される可能性がある場合は、早い段階で弁護士へ相談し、事件の状況に応じた対応を検討することが大切です。

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傷害罪の罰金はいくら?相場・前科・不起訴の可能性を弁護士が解説

傷害事件を起こしてしまい、「罰金はいくらになるのか」「初犯なら罰金で済むのか」「前科は付くのか」と不安を感じている方も多いでしょう。

傷害罪では、事件の内容や被害者のけがの程度、示談の有無などによって処分が大きく異なります。罰金刑となる事件もあれば、不起訴となる事件や、拘禁刑や執行猶予付きの有罪判決となる事件もあります。

この記事では、傷害罪の罰金相場や罰金になるケース・ならないケース、不起訴となる可能性、前科への影響などを、処分が決まる判断基準とともに弁護士が解説します。適切な対応を取らなければ処分が重くなる可能性もあるため、まずは処分がどのような基準で決まるのかを正しく理解することが重要です。

なお、傷害事件の弁護士については、以下の記事で詳細に解説しています。
傷害罪で弁護士に相談するメリットや聞いておくべきこととは?費用相場や事務所選びまで解説

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害罪の罰金はいくら?相場と法定刑を解説

傷害罪の法定刑は、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(刑法第204条)。もっとも、実際の事件では、すべての事件で罰金刑となるわけではなく、けがの程度や犯行態様、示談の有無などを総合的に考慮して処分が決まります。

そのため、「傷害罪なら罰金○万円になる」と一律に決まっているわけではありません。まずは傷害罪の法定刑と、実際の罰金相場について確認しましょう。

傷害罪の法定刑

刑法第204条は、傷害罪について次のように定めています。

(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。

法定刑とは、法律上定められた刑罰の範囲をいいます。裁判所は、この範囲内で事件ごとの事情を考慮し、具体的な刑罰を決定します。

傷害罪には拘禁刑と罰金刑の両方が定められているため、比較的軽微な事案では罰金刑で終わることもあります。一方で、犯行が悪質であったり、被害結果が重大であったりする場合には、拘禁刑が選択されることも少なくありません。

傷害罪の罰金相場

傷害罪の罰金額は事件ごとに異なりますが、10万円から50万円程度となるケースが多く見られます。

もっとも、これはあくまで一般的な目安です。実際には、

  • 被害者のけがの程度
  • 暴行の態様や悪質性
  • 示談が成立しているか
  • 前科・前歴の有無
  • 反省状況

などを総合的に考慮して決定されます。

例えば、軽傷で初犯、示談も成立しているような事件では比較的低額の罰金にとどまる可能性があります。他方、骨折など比較的重い傷害を負わせた事件や、犯行態様が悪質な事件では、罰金では済まず拘禁刑となる可能性もあります。

もっとも、これらの事情がどのように評価され、罰金刑となるかどうかを左右するかは事件ごとに異なります。具体的な判断基準については、次の見出しで詳しく解説します。

略式起訴と罰金刑

傷害事件で罰金刑が見込まれる場合は、略式起訴によって手続が進められることがあります。

略式起訴とは、公開の法廷で審理を行わず、書面審理によって罰金などの財産刑を科す簡易な手続です。被疑者本人の同意が必要であり、有罪となれば前科が付きます。

一方、罰金では適切な処分といえない事件では、正式な裁判が開かれ、拘禁刑や執行猶予付きの有罪判決が言い渡されることがあります。

つまり、略式起訴になるかどうかは、「罰金で処理できる事件か」という検察官の判断と密接に関係しています。 どのような事件で罰金刑となりやすいのかは、次の見出しで詳しく解説します。

略式起訴は、被疑者が内容を認めている場合に、公開の裁判を省略して罰金刑にする手続です。そのため、認め事件であることが前提であり、否認事件では行うことができません。

傷害罪で罰金になるのはどんなケース?判断基準を解説

傷害罪で罰金刑となるかどうかは、「初犯だから」「軽傷だから」といった一つの事情だけで決まるわけではありません。 検察官や裁判所は、事件の内容や犯行後の対応などを総合的に考慮して処分を判断します。

そのため、同じようなけがを負わせた事件でも、罰金刑となる場合もあれば、正式裁判となる場合もあります。どのような事情が処分に影響するのかを理解しておくことが重要です。

被害者のけがが比較的軽い

被害者のけがが比較的軽いことは、罰金刑となる方向に働く事情の一つです。

例えば、打撲や擦り傷など比較的軽いけがで、短期間の通院で治癒したような事件では、重傷事案に比べて軽い処分となる可能性があります。

もっとも、けがが軽いだけで罰金刑になるとは限りません。 暴行態様が悪質であったり、常習性が認められたりする場合には、軽傷であっても罰金では済まないことがあります。

初犯で前科・前歴がない

初犯で前科・前歴がないことも、量刑上有利に考慮される事情です。

前科がない場合は、更生の可能性が高いと評価されることがあり、比較的軽い処分となる可能性があります。

一方で、初犯であっても、凶器を使用した事件や重大な傷害結果が生じた事件では、拘禁刑が選択されることもあります。初犯という事情だけで処分を判断することはできません。

示談が成立している

被害者との示談が成立していることは、罰金刑となる方向に働く重要な事情です。

示談が成立すると、被害回復が図られたことや反省の意思を示したことが評価されるため、不起訴となる可能性や、起訴された場合でも量刑が軽くなる可能性があります。

もっとも、示談が成立すれば必ず罰金刑になるわけではありません。事件の悪質性や傷害結果が重大である場合には、示談成立後も正式裁判となることがあります。

犯行態様の悪質性が低い

偶発的な口論から一度だけ暴行に及んだような事件は、計画性のある事件や執拗な暴行に比べると、比較的軽い処分となる可能性があります。

これに対し、一方的に暴行を加えた場合や、多人数で暴行した場合、凶器を使用した場合などは悪質性が高いと評価され、罰金では済まない可能性が高くなります。

処分は複数の事情を総合的に判断して決まる

傷害罪で罰金刑となるかどうかは、一つの事情だけでは決まりません。

実務では、

  • 被害者のけがの程度
  • 犯行態様や悪質性
  • 示談の成否
  • 前科・前歴の有無
  • 反省状況や再発防止への取組み

などを総合的に考慮して処分が決定されます。

そのため、「軽傷だから必ず罰金」「初犯だから必ず罰金」と考えるのは適切ではありません。自分の事件ではどの事情が有利・不利に評価されるのかを踏まえて対応することが重要です。

傷害罪で罰金では済まないケースとは?実刑や執行猶予になる場合

傷害罪では、法定刑に拘禁刑が含まれているため、事件の内容によっては罰金では済まず、正式裁判となることがあります。また、有罪となった場合には、執行猶予付きの有罪判決や、実際に刑事施設へ収容される実刑となる可能性もあります。

どのような事件で重い処分が選択されやすいのかを理解しておくことは、今後の対応を検討するうえでも重要です。

被害者が重傷を負った場合

骨折や後遺障害が残るような重い傷害が生じた事件では、罰金刑では済まない可能性が高くなります。

傷害の結果が重大であるほど、被害の大きさが重く評価されるためです。例えば、長期間の入院や手術を要するような傷害では、正式裁判となり、拘禁刑が選択される可能性があります。

一方で、重傷事案であっても、示談の成立や反省状況などが量刑上有利に考慮されることはあります。しかし、重傷であるという事情自体をなくすことはできないため、軽傷事案よりも重い処分となる傾向があります。

凶器を使用した場合

ナイフや金属バットなどの凶器を使用した事件は、犯行態様の危険性・悪質性が高いと評価されやすく、罰金刑では済まない可能性が高まります。

実際に重大な傷害結果が生じなかった場合でも、凶器を使用したという事実自体が量刑に影響することがあります。

また、事件の状況によっては傷害罪だけでなく、他の犯罪が成立する可能性もあるため、より慎重な対応が必要です。

一方的・執拗な暴行や常習性がある場合

被害者が抵抗できない状況で暴行を加えた場合や、繰り返し暴行を加えた場合は、悪質性が高いと評価される傾向があります。

また、傷害事件の前科があるなど、暴力的な犯罪を繰り返している事情がある場合も、更生可能性が低いと判断され、重い処分につながることがあります。

反対に、偶発的な口論から一度だけ暴行に及んだ事件は、こうした事案と比較すると軽く評価される余地があります。

示談が成立していない場合

示談が成立していないことも、不利な事情として考慮されることがあります。

被害者の処罰感情が強く、被害回復も十分に図られていない場合には、不起訴ではなく起訴される可能性が高まり、起訴後の量刑にも影響することがあります。

もっとも、示談が成立していない事件が必ず拘禁刑となるわけではありません。傷害の程度や犯行態様なども含めて総合的に判断されます。

実刑と執行猶予はどのように決まる?

正式裁判となった場合でも、直ちに実刑となるわけではありません。

執行猶予が付くかどうかは、

  • 犯行の悪質性
  • 傷害結果の重大性
  • 前科・前歴の有無
  • 示談の成否
  • 反省状況や更生可能性

などを総合的に考慮して判断されます。

特に初犯で示談が成立している事件では、正式裁判となっても執行猶予付きの有罪判決となることがあります。一方、重大な傷害結果が生じた事件や、同種前科がある事件では、実刑となる可能性が高くなります。

罰金で済むかどうかだけでなく、正式裁判となった場合に執行猶予が付く可能性まで見据えて対応することが重要です。

傷害罪で不起訴になることはある?示談との関係を解説

傷害事件では、起訴されても必ず有罪になるわけではなく、起訴される前の段階で不起訴処分となることがあります。 不起訴となれば刑事裁判は開かれず、前科も付きません。

もっとも、傷害罪は被害者にけがを負わせる犯罪であるため、すべての事件が不起訴になるわけではありません。不起訴となるかどうかは、事件の内容や犯行後の対応などを総合的に考慮して判断されます。

不起訴とは

不起訴とは、検察官が刑事裁判を起こさないと判断する処分です。

不起訴となると刑事裁判は開かれず、有罪の裁判を受けることもありません。そのため、不起訴処分となった場合は前科は付きません。

一方、起訴されると、略式起訴であっても正式裁判であっても有罪となれば前科が付きます。そのため、傷害事件では起訴を避けられるかどうかが重要な意味を持ちます。

示談が不起訴につながる理由

被害者との示談が成立していることは、不起訴となる方向に働く重要な事情の一つです。

示談によって被害が一定程度回復され、被害者が処罰を望まない意思を示している場合には、刑事処分を軽くする方向で考慮されることがあります。

特に、初犯で傷害の程度が比較的軽く、早い段階で誠実な示談が成立している事件では、不起訴となる可能性が高まります。

もっとも、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありません。 重傷事案や悪質性が高い事件では、示談成立後も起訴されることがあります。

示談が成立していないと不起訴は難しい?

示談が成立していない場合でも、不起訴となる可能性が全くなくなるわけではありません。

例えば、

  • 証拠関係に問題がある場合
  • 傷害結果が軽微である場合
  • 被疑者の反省状況が十分である場合

などは、不起訴が選択される余地があります。

しかし、被害者との示談が成立していない事件では、起訴される可能性が高まる傾向があります。そのため、不起訴を目指すのであれば、できる限り早い段階で示談交渉を進めることが重要です。

不起訴を目指すために重要な対応

不起訴となるかどうかは、事件発生後の対応によっても大きく左右されます。

例えば、

  • 被害者への適切な謝罪
  • 早期の示談交渉
  • 反省の意思を具体的に示すこと
  • 再発防止策を講じること

などは、不起訴を判断する際に考慮される事情となります。

一方で、被害者へ繰り返し直接連絡したり、感情的なやり取りを続けたりすると、示談交渉が難航する原因となることもあります。相手方の代理人や弁護士を通じて適切に交渉を進めることが重要です。

傷害事件では、示談のタイミングや交渉方法によって処分の見通しが変わることもあります。 不起訴を目指す場合は、できるだけ早い段階から適切な対応を取ることが大切です。

傷害罪で前科は付く?罰金刑との関係を解説

罰金刑であっても、有罪となれば前科が付きます。 「実刑ではないから前科にならない」「罰金を支払えば記録は残らない」と考えている方もいますが、これは誤解です。

もっとも、前科が付くかどうかは、起訴されたかどうかによって大きく異なります。不起訴となった場合は前科は付きません。そのため、傷害事件では罰金額だけでなく、起訴を回避できるかどうかも重要なポイントになります。

罰金刑でも前科が付く

前科とは、有罪の裁判を受けた経歴をいいます。

略式起訴による罰金刑も、有罪の裁判の一つです。そのため、略式命令により罰金刑が科された場合も前科が付きます。

一方、正式裁判で拘禁刑に執行猶予が付いた場合も、有罪判決であることに変わりはないため、前科が付きます。

このように、罰金刑か拘禁刑かによって前科の有無が決まるわけではありません。 有罪の裁判を受けたかどうかがポイントになります。

前科と前歴の違い

前科と前歴は異なるものです。

前科は、有罪の裁判を受けた経歴を指します。

これに対し、前歴とは、捜査の対象となった経歴をいいます。例えば、逮捕されたものの不起訴となった場合や、逮捕されずに捜査だけを受けた場合は、前科ではなく前歴にとどまります。

そのため、不起訴となれば前歴は残ることがありますが、前科は付きません。

前科が生活に与える影響

前科が付いたからといって、直ちに仕事を失ったり、日常生活に大きな支障が生じたりするわけではありません。

もっとも、職業や保有資格によっては影響を受けることがあります。また、将来再び刑事事件を起こした場合には、前科が量刑判断で不利な事情として考慮される可能性があります。

そのため、傷害事件では、罰金額だけでなく、前科を回避できる可能性があるかという視点で対応を検討することが重要です。

前科を避けるには不起訴を目指すことが重要

傷害事件で前科を避けるためには、不起訴処分を目指すことが最も重要です。

不起訴となれば、有罪の裁判を受けることがないため、前科は付きません。

不起訴となるかどうかは、

  • 被害者との示談が成立しているか
  • 傷害の程度
  • 犯行態様
  • 反省状況
  • 前科・前歴の有無

などを総合的に考慮して判断されます。

早期に示談交渉を進め、被害回復に努めることは、不起訴を目指すうえで重要な対応です。また、取調べへの対応や反省の示し方によっても処分の見通しが変わることがあります。

「罰金で済めばよい」と考えるのではなく、前科を回避できる可能性があるかという視点で、できるだけ早い段階から適切に対応することが大切です。

傷害事件を起こしてしまったらどうする?弁護士へ早めに相談を

傷害事件を起こしてしまった場合は、できるだけ早い段階で適切な対応を取ることが重要です。初動対応を誤ると、示談がまとまりにくくなったり、不起訴となる可能性が低くなったりすることがあります。

一方で、事件直後に冷静な判断ができず、不用意な行動を取ってしまうケースも少なくありません。処分をできる限り軽くするためには、刑事手続の流れを理解したうえで、適切な順序で対応することが大切です。

被害者への対応は慎重に行う

被害者へ謝罪や被害弁償を行うことは重要ですが、直接連絡すればよいというものではありません。

被害者が連絡を望んでいない場合や、すでに代理人弁護士が就いている場合には、直接連絡を取ることでトラブルが大きくなることがあります。また、口論になったり、不適切な発言をしたりすると、反省していないと受け止められる可能性もあります。

そのため、示談を目指す場合は、相手方の意向を踏まえながら適切な方法で交渉を進めることが重要です。

取調べでは事実に基づいて説明する

警察や検察の取調べでは、事実と異なる説明をしたり、その場しのぎの供述をしたりしないことが重要です。

供述内容に矛盾が生じると、信用性に疑問を持たれ、事件全体の評価に影響することがあります。

一方で、自分に不利になるからといって、安易に認めたり否認したりすることも適切ではありません。事実関係を整理したうえで、一貫した説明を行うことが大切です。

できるだけ早く示談交渉を進める

示談は早い段階で進めるほど、不起訴や量刑に有利な事情として考慮される可能性があります。

被害者の感情がさらに悪化する前に誠実な対応を行うことで、示談成立につながることもあります。

もっとも、示談金の金額や示談条項は事件ごとに異なります。処分を軽くしたいという理由だけで拙速に示談を進めるのではなく、内容を十分確認したうえで合意することが重要です。

刑事事件に詳しい弁護士へ相談する

傷害事件では、弁護士へ早期に相談することが処分の見通しを大きく左右することがあります。

弁護士は、

  • 事件の見通しの説明
  • 取調べへの対応に関する助言
  • 被害者との示談交渉
  • 検察官へ有利な事情を伝えるための活動

などを行うことができます。

傷害事件では、示談の時期や対応方法によって不起訴となる可能性や量刑が変わることもあります。不安を抱えたまま対応するのではなく、できるだけ早い段階で弁護士へ相談し、適切な対応方針を検討することが大切です。

傷害事件で罰金刑を防ぐためには、弁護士に依頼の上で当事者間での解決(示談)を目指すことが最も有力になりやすいでしょう。

傷害罪の罰金に関するよくある質問

傷害罪の初犯でも罰金になりますか?

初犯だから必ず罰金になるわけではありません。被害者のけがの程度、犯行態様、示談の有無、前科・前歴などを総合的に考慮して処分が決まります。 軽傷で示談が成立している事件では罰金刑となる可能性がありますが、重傷事案や悪質な事件では初犯でも拘禁刑が選択されることがあります。

傷害罪で罰金を支払えば前科は付きませんか?

付きます。

略式起訴による罰金刑も有罪の裁判であるため、前科となります。前科を避けたい場合は、罰金刑を目指すのではなく、不起訴処分となることを目指すことが重要です。

示談が成立すれば必ず不起訴になりますか?

必ず不起訴になるわけではありません。

示談は不起訴に向けて有利な事情ですが、重傷事案や悪質性が高い事件では、示談成立後も起訴されることがあります。検察官は事件全体の事情を総合的に考慮して処分を決定します。

傷害罪の罰金は分割払いできますか?

裁判所から命じられた罰金は、原則として一括で納付します。

経済的な事情がある場合には、検察庁に納付方法について相談できる場合がありますが、当然に分割払いが認められるわけではありません。罰金を納付できない場合には、労役場留置となる可能性があります。

傷害事件では逮捕されますか?

傷害事件でも逮捕されないケースは少なくありません。

被疑者が逃亡するおそれや証拠隠滅のおそれが低い場合には、在宅事件として捜査が進むことがあります。一方で、事件の内容や被疑者の状況によっては逮捕されることもあるため、一概にはいえません。

傷害事件を起こしたらいつ弁護士へ相談すべきですか?

できるだけ早い段階で相談することをおすすめします。

早期に相談することで、取調べへの対応や示談交渉の進め方について助言を受けられます。また、被害者との示談を早期に開始できれば、不起訴や量刑に有利な事情となる可能性もあります。

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傷害罪の時効はいつ成立する?逮捕リスクや示談の影響を解説

傷害事件を起こしてしまい、「傷害罪の時効は何年なのか」「事件から数年経っているが、今でも逮捕される可能性はあるのか」と不安を抱えている方もいるでしょう。また、被害届が提出されていない場合示談が成立した場合に、時効や刑事手続へどのような影響があるのか分からず、対応に迷っている方も少なくありません。

この記事では、傷害罪の公訴時効の期間や起算点をはじめ、事件から時間が経過した後でも逮捕される可能性被害届や示談と時効との関係時効が完成した後の法的な扱い、さらに民事上の損害賠償請求との違いについて解説します。傷害事件を起こしてしまった場合に取るべき対応についても説明します。

時効について誤った認識のまま自己判断で対応すると、時効が完成していないにもかかわらず捜査や逮捕の対象となる可能性があります。また、示談の機会を逃した結果、刑事手続やその後の処分に不利な影響を受けることも考えられます。まずは傷害罪の時効に関する基本的なルールを理解し、ご自身の状況に応じた適切な対応を検討しましょう。

なお、傷害事件の弁護士については、以下の記事で詳細に解説しています。
傷害罪で弁護士に相談するメリットや聞いておくべきこととは?費用相場や事務所選びまで解説

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害罪の時効は10年|まず知っておきたい結論

傷害罪の公訴時効は10年

傷害罪の公訴時効は10年です。公訴時効とは、検察官が公訴を提起(起訴)できる期間をいいます。

公訴時効の期間は、犯罪ごとの法定刑を基準として刑事訴訟法で定められています。 傷害罪の法定刑は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であり、この法定刑に対応する公訴時効は10年です。

時効が完成すると起訴できない

公訴時効が完成すると、検察官は傷害罪について起訴できません。 そのため、公訴時効が完成した傷害事件については、刑事裁判で刑事責任を問われることはありません。

もっとも、時効が完成する前であれば、事件から数年が経過していても捜査や逮捕が行われる可能性があります。事件から長期間経過していることだけを理由に、「すでに時効が完成している」と自己判断することは避けるべきです。

被害者のけがが重いほど時効が長くなるわけではない

公訴時効の期間は、被害者のけがの程度ではなく、事件で成立する犯罪とその法定刑によって決まります。 そのため、全治期間が長い傷害事件であっても、それだけで公訴時効が長くなるわけではありません。

一方で、被害者が死亡した場合には、傷害罪ではなく傷害致死罪など別の犯罪が成立する可能性があります。成立する罪名が変われば法定刑も変わるため、公訴時効の期間も異なります。 時効期間を判断する際は、けがの程度だけではなく、最終的にどの犯罪が成立するかを確認することが重要です。

公訴時効の完成後は、現実的には逮捕を含む捜査自体が行われないことになるのが通常です。

傷害罪とは?時効を理解する前に押さえたい基礎知識

傷害罪が成立する条件

傷害罪は、人の身体を傷害した場合に成立する犯罪です。典型例としては、殴る、蹴る、物を投げつけるなどの暴行によって被害者がけがを負ったケースが挙げられます。けがには、骨折や切り傷だけでなく、打撲や捻挫など比較的軽いものも含まれます。

傷害罪が成立するかどうかは、暴行によって被害者の生理的機能や健康状態が害されたかという点を基準に判断されます。そのため、全治期間が短い場合でも、暴行によって傷害結果が生じたと認められれば、傷害罪が成立する可能性があります。

傷害罪の法定刑

傷害罪の法定刑は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。

法定刑とは、法律で定められた刑罰の範囲をいいます。実際にどのような処分が科されるかは事件ごとに異なりますが、公訴時効の期間は、この法定刑を基準として刑事訴訟法で定められています。

暴行罪との違い

暴行罪と傷害罪の違いは、傷害結果が生じたかどうかです。

例えば、人を突き飛ばしたものの傷害結果が生じなかった場合には、暴行罪が成立する可能性があります。一方、同じ行為によって打撲や擦り傷などの傷害結果が生じた場合には、傷害罪として扱われます。

この違いは、公訴時効の期間にも影響します。 暴行罪と傷害罪では法定刑が異なるため、公訴時効の期間も同じではありません。まずは、自分の事件がどちらの犯罪に当たるのかを確認することが重要です。

傷害の程度によって時効期間は変わる?

傷害罪として成立する限り、公訴時効は被害者のけがの程度だけでは変わりません。 全治1週間でも全治3か月でも、成立する犯罪が傷害罪であれば、公訴時効は10年です。

一方で、事件の内容によって傷害罪以外の犯罪が成立する場合には、公訴時効の期間も変わります。 時効を判断する際は、けがの重さだけではなく、最終的にどの犯罪が成立するのかを確認することが大切です。

傷害罪の公訴時効はいつから始まる?

公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行する

傷害罪の公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進行します。 傷害罪は継続して成立する犯罪ではないため、暴行が終了し、犯罪行為が終わった時点が公訴時効の起算点となるのが原則です。

例えば、その場で相手を殴って打撲を負わせた事件であれば、暴行が終わった時点から公訴時効が進行します。公訴時効の期間は、この起算点を基準に計算されます。

治療期間や示談交渉によって時効の開始時期は変わらない

被害者の治療が長期間続いていても、公訴時効の起算点は変わりません。 全治1週間でも全治6か月でも、公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行します。

また、示談交渉をしていることを理由に、公訴時効の進行が止まったり、起算点が後ろにずれたりすることもありません。 示談は処分に影響することがありますが、公訴時効の進行とは別の問題です。

公訴時効が停止する場合もある

公訴時効は、法律で定められた事由がある場合には進行が停止します。

例えば、犯人が国外にいる期間については、公訴時効が停止する場合があります。そのため、事件発生から10年が経過していても、公訴時効が完成していないことがあります。

「事件から10年経過したから時効が完成した」と判断することはできません。 時効が完成しているかどうかは、公訴時効の起算点や停止事由の有無を踏まえて判断する必要があります。

傷害事件から数年後でも逮捕される可能性はある?

公訴時効が完成する前であれば数年前の事件でも逮捕されることがある

事件から数年が経過していても、公訴時効が完成していなければ逮捕される可能性があります。 「何年も警察から連絡がないから時効になったはずだ」と自己判断するのは危険です。

逮捕されるかどうかは、事件からどれだけ時間が経過したかではなく、犯罪の嫌疑があり、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかなどの事情を踏まえて判断されます。 そのため、公訴時効が完成する前であれば、数年前の傷害事件であっても逮捕されることがあります。

時間が経ってから事件が発覚するケースもある

傷害事件は、事件発生から時間が経過した後に発覚することもあります。

例えば、被害者が後日被害届や告訴を提出した場合や、防犯カメラ映像、第三者からの通報、SNSへの投稿などをきっかけに事件が判明することがあります。また、別事件の捜査の過程で関係者の供述から過去の傷害事件が明らかになるケースもあります。

事件の発覚が遅れたとしても、公訴時効が完成していなければ捜査や逮捕の対象になります。 「今まで何も連絡がなかった」という事情だけで、公訴時効が完成したとはいえません。

在宅事件として捜査が進むこともある

傷害事件では、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むケースも少なくありません。 例えば、住所や身元が判明しており、任意の呼び出しにも応じている場合には、逮捕せずに捜査が進められることがあります。

一方で、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合には、事件から時間が経過していても逮捕される可能性があります。 逮捕されるかどうかは、経過年数だけではなく、捜査への対応状況や事件の内容なども踏まえて判断されます。

警察から連絡があったら放置せず対応する

警察から任意の事情聴取を求められた場合でも、任意捜査だからといって事件が終了したわけではありません。 捜査の結果によっては、検察庁へ事件が送致され、その後に起訴・不起訴が判断されます。

また、捜査の初期段階で事実関係を整理し、示談が可能かどうかを検討することは、その後の処分に影響することがあります。警察から連絡を受けた場合は放置せず、早い段階で弁護士へ相談し、今後の対応方針を検討することが重要です。

傷害事件は、後から証拠が多く見つかるような事件でないことが多いため、基本的には時間が経てば経つほど新たに捜査される可能性は低下する傾向にあります。

被害届が出ていなくても傷害罪で捜査される?

傷害罪は親告罪ではない

傷害罪は親告罪ではありません。 そのため、被害者が告訴をしていなくても、検察官は傷害罪で起訴することができます。

親告罪では、告訴がなければ起訴することができません。一方、傷害罪では告訴は起訴の条件ではないため、告訴がなくても刑事手続が進むことがあります。

被害届が提出されていなくても捜査が始まることがある

被害届は、警察が犯罪の被害を認知する重要な契機の一つです。 もっとも、被害届が提出されていなくても、警察が傷害事件の発生を認知すれば、職権で捜査を開始することができます。

例えば、警察官が現場に臨場して事件を認知した場合や、第三者からの通報、防犯カメラ映像などから犯罪の疑いが判明した場合には、被害届がなくても捜査が進められることがあります。

そのため、「被害届が提出されていないから捜査されない」と考えることはできません。 被害届がなくても、警察が事件を認知すれば傷害事件として捜査が行われる可能性があります。

被害届と告訴の違い

被害届と告訴は異なる制度です。

被害届は、犯罪の被害に遭った事実を警察などへ届け出るものです。一方、告訴は、犯罪事実を申告するとともに、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。

傷害罪では、被害届や告訴が提出されていることは捜査や処分の判断材料になりますが、告訴がないことだけを理由に起訴できなくなるわけではありません。

被害者が処罰を望んでいなくても捜査が行われることがある

被害者が処罰を望んでいなくても、傷害罪として捜査が行われることがあります。

もっとも、被害者の処罰感情や示談の成立は、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な事情になります。そのため、被害者が処罰を望んでいないことや示談が成立していることは、不起訴処分などを検討するうえで有利な事情として考慮される可能性があります。

実際の捜査の運用としては、被害者からの被害申告をきっかけにすることが一般的です。場合によっては、捜査機関側から積極的に被害者の意向を確認したり、被害申告を促したりするケースもあり得ます。

示談をすると傷害罪の時効や処分はどう変わる?

示談をしても公訴時効の期間は変わらない

示談が成立しても、公訴時効の期間や起算点は変わりません。 公訴時効は刑事訴訟法によって定められている制度であり、示談の有無によって進行が止まったり、期間が短くなったり長くなったりすることはありません。

そのため、示談が成立したからといって公訴時効が完成するわけではなく、反対に示談交渉が長引いたからといって公訴時効の進行が止まることもありません。示談と公訴時効は、それぞれ別の制度として考える必要があります。

示談は不起訴処分などを判断する重要な事情になる

示談が成立すると、不起訴処分となる可能性が高まります。 傷害罪は被害者が存在する犯罪であるため、被害回復が図られているかどうかは、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な考慮要素です。

特に、被害者が示談に応じ、処罰を望まない意思を示している場合は、加害者に有利な事情として評価されることがあります。ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではなく、けがの程度、犯行態様、前科・前歴の有無なども含めて総合的に判断されます。

示談は早い段階で進めることが望ましい

示談は、できるだけ早い段階で進めることが重要です。 捜査や起訴の判断が行われる前に示談が成立すれば、検察官が事件を処理する際に考慮される可能性があります。

一方で、起訴された後に示談が成立した場合でも、量刑を判断する際の有利な事情として考慮されることがあります。しかし、一般的には、示談は早期に成立している方が刑事手続への影響は大きいと考えられています。

示談交渉は弁護士を通じて進めることが多い

被害者が加害者本人との直接交渉を望まないケースは少なくありません。 そのため、実務では弁護士を通じて示談交渉が行われることが多くあります。

また、警察や検察が加害者に被害者の連絡先を教えることは通常ありません。そのため、示談を希望する場合は、弁護士を通じて被害者との連絡や示談交渉を進めることが現実的な方法となります。

傷害罪で時効完成を待つのは現実的なのか?

時効完成を待つことには大きなリスクがある

傷害罪で時効完成を待つことは、現実的な対応とはいえません。 傷害罪の公訴時効は10年であり、その間は捜査や逮捕、起訴の可能性があります。時効完成まで何も対応しないという選択は、長期間にわたって刑事手続の対象となるリスクを抱え続けることを意味します。

また、事件発生から時間が経過していても、公訴時効が完成していなければ捜査が始まることがあります。「何年も警察から連絡がないから、このまま時効になるだろう」と考えて対応を先送りにすることは避けるべきです。

示談の機会を逃すおそれがある

時間の経過によって、示談が成立しにくくなることがあります。

事件から長期間が経過すると、被害者の転居や連絡先の変更によって連絡が取れなくなることがあります。また、時間の経過によって被害感情が悪化したり、加害者への不信感が強くなったりして、示談交渉がまとまりにくくなるケースもあります。

そのため、示談による解決を目指すのであれば、できるだけ早い段階で対応することが重要です。

捜査が始まってからでは対応が限られることもある

警察から事情聴取の連絡を受けたり、逮捕されたりしてから対応を始めると、取れる選択肢が限られる場合があります。

例えば、捜査が進んでから示談交渉を始めても、検察官が起訴・不起訴を判断する時期に間に合わないことがあります。また、事実関係を十分に整理しないまま事情聴取を受けると、その後の刑事手続に影響を及ぼす可能性もあります。

傷害事件を起こしてしまった場合は、時効の完成を待つのではなく、早い段階で今後の対応方針を検討することが重要です。

時効が完成する前に弁護士へ相談することが重要

弁護士へ早めに相談することで、事件の見通しや取るべき対応を整理できます。

具体的には、公訴時効がいつ完成するのか、示談を進める余地があるのか、警察や検察への対応をどのように進めるべきかについて助言を受けることができます。

また、事件の内容によっては、弁護士が被害者との示談交渉を行うことで、早期解決につながる場合もあります。時効の完成を待つことを前提に行動するのではなく、事件の状況に応じた対応を検討することが大切です。

公訴時効の期間は長いので、早期から時効の完成を目指す動きを取っていくことはあまり現実的ではありません。

傷害罪の時効が完成したらどうなる?

公訴時効が完成すると起訴できなくなる

公訴時効が完成すると、検察官は傷害罪について公訴を提起することができません。 そのため、公訴時効が完成した傷害事件については、傷害罪として刑事裁判にかけられることはありません。

また、公訴時効完成後に傷害罪で起訴することは認められていないため、公訴時効が完成した事件について傷害罪で有罪の裁判を受けることもありません。

公訴時効が完成しても民事上の責任は残ることがある

公訴時効が完成しても、損害賠償責任まで当然になくなるわけではありません。

刑事事件の公訴時効と、民事上の損害賠償請求権の時効は別の制度です。そのため、公訴時効が完成していても、民事上の時効が完成していなければ、慰謝料や治療費などの損害賠償を請求される可能性があります。

もっとも、民事上の損害賠償請求にも時効があるため、永久に請求を受け続けるわけではありません。 民事上の時効については、次のH2で詳しく解説します。

時効が完成しているかどうかは慎重に判断する必要がある

公訴時効が完成しているかどうかは、自分で判断しないことが重要です。

公訴時効は、単純に事件から10年が経過したかどうかだけで判断できるものではありません。起算点や停止事由によっては、自分では時効が完成していると思っていても、実際には完成していないことがあります。

そのため、時効が完成していることを前提に行動するのではなく、判断に迷う場合は弁護士へ相談し、公訴時効が完成しているかどうかを確認することが大切です。

公訴時効の完成は、行ったことの責任がなくなるという意味ではない点に十分注意しましょう。

傷害事件の損害賠償請求にも時効がある

刑事の公訴時効と民事の消滅時効は別の制度

刑事事件の公訴時効と、民事上の損害賠償請求権の消滅時効は別の制度です。公訴時効は検察官が起訴できる期間を定めた制度ですが、消滅時効は被害者が損害賠償を請求できる期間を定めた制度です。

そのため、傷害罪の公訴時効が完成していても、民事上の消滅時効が完成していなければ、損害賠償を請求される可能性があります。 刑事事件が終了したとしても、民事上の責任まで当然に消滅するわけではありません。

傷害事件の損害賠償請求権の消滅時効

傷害事件に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知った時から5年間、また、不法行為の時から20年間で時効により消滅します。

もっとも、傷害事件で壊れた眼鏡や衣類などの物損について損害賠償を請求する場合は、その物損部分については、被害者が損害および加害者を知った時から3年間で消滅時効にかかります。

そのため、傷害事件では通常は5年の消滅時効が問題となりますが、物損も併せて請求する場合には、請求内容によって適用される時効期間が異なることがあります。

時効の完成が猶予・更新されることもある

民事上の消滅時効は、一定の場合には完成が猶予されたり、更新されたりします。

例えば、裁判上の請求をした場合や、加害者が債務を承認した場合などには、時効の完成猶予・更新が生じることがあります。そのため、事件から5年が経過したという事情だけで、消滅時効が完成したと判断することはできません。

民事上の消滅時効が完成しているかどうかは、請求の経過や当事者の対応も踏まえて判断する必要があります。

刑事事件とは別に民事対応も検討する必要がある

傷害事件では、刑事事件と民事事件は別々に進みます。

そのため、公訴時効が完成した場合や不起訴処分となった場合でも、民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。一方で、示談が成立すれば、刑事事件だけでなく民事上の紛争もまとめて解決できることがあります。

刑事手続だけではなく、損害賠償への対応も見据えて行動することが重要です。

傷害事件を起こしてしまったときに取るべき対応

事実関係を整理し、警察への対応を検討する

傷害事件を起こしてしまった場合は、まず事実関係を正確に整理することが重要です。 いつ、どこで、誰に対して、どのような行為をしたのか、被害者のけがの状況や当時のやり取りなどをできる限り整理しておきましょう。

警察から事情聴取を求められた場合は、事実関係を十分に確認しないまま説明することは避けるべきです。 供述内容は、その後の捜査や処分にも影響するため、不明な点がある場合には弁護士へ相談した上で対応を検討することをおすすめします。

被害者との示談を検討する

被害者との示談は、刑事処分や民事上の紛争の解決につながる重要な対応です。

もっとも、加害者本人が直接被害者へ連絡すると、かえってトラブルが大きくなったり、被害者が精神的な負担を感じたりするおそれがあります。また、警察や検察が被害者の連絡先を教えることは通常ありません。

そのため、示談を希望する場合は、弁護士を通じて交渉を進めることが望ましいといえます。

時効を待つことを前提に行動しない

「そのうち時効になるだろう」と考えて何もしないことは、おすすめできません。

公訴時効が完成する前であれば、事件から数年が経過していても捜査や逮捕が行われる可能性があります。また、時間の経過によって示談が難しくなることもあります。

事件が発覚していないことと、公訴時効が完成していることは別の問題です。 時効だけを意識して対応を先送りにするのではなく、事件の状況に応じて適切な対応を取ることが重要です。

早めに弁護士へ相談する

傷害事件では、早い段階で弁護士へ相談することが重要です。

弁護士は、事情聴取への対応方法や示談交渉、公訴時効の確認など、事件の状況に応じた助言を行います。また、被害者との示談交渉を代理し、早期解決を目指すことも可能です。

早期に対応を開始することで、より多くの選択肢を確保できる場合があります。 傷害事件を起こしてしまった場合は、一人で判断せず、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。

傷害事件の刑事処分は、被害者の意向を非常に強く反映することが通常です。当事者間の解決を目指すことの重要性がとても大きいと言えます。

傷害罪の時効に関するよくある質問

傷害罪の時効は何年ですか?

傷害罪の公訴時効は10年です。公訴時効は、検察官が起訴できる期間を定めた制度であり、傷害罪では犯罪行為が終わった時から原則として10年間進行します。

傷害罪は何年経てば逮捕されませんか?

「事件から何年経てば逮捕されない」と一概にいうことはできません。 公訴時効が完成していなければ、事件から数年が経過していても逮捕される可能性があります。また、逮捕されるかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれなども考慮して判断されます。

被害届が出ていなければ傷害罪にはなりませんか?

なりません。 傷害罪は親告罪ではないため、被害届や告訴がなくても、警察が事件を認知すれば捜査が始まることがあります。

示談をすれば傷害罪は時効になりますか?

なりません。 示談をしても、公訴時効の期間や起算点は変わりません。ただし、示談が成立すると、不起訴処分や量刑の判断において有利な事情として考慮されることがあります。

傷害罪の公訴時効が完成したら損害賠償も請求されませんか?

公訴時効が完成しても、直ちに損害賠償請求ができなくなるわけではありません。 刑事事件の公訴時効と民事上の消滅時効は別の制度であり、民事上の消滅時効が完成していなければ、損害賠償を請求される可能性があります。

まとめ

傷害罪の公訴時効は10年であり、犯罪行為が終わった時から進行します。事件から長期間が経過していても、公訴時効が完成していなければ、捜査や逮捕、起訴が行われる可能性があります。

また、示談をしても公訴時効の期間は変わりませんが、不起訴処分や量刑の判断に影響することがあります。一方で、公訴時効が完成しても、民事上の損害賠償請求権の消滅時効とは別の制度であるため、直ちに損害賠償責任までなくなるわけではありません。

傷害事件では、時効の完成を待つことを前提に行動するのではなく、できるだけ早い段階で適切な対応を取ることが重要です。警察から連絡を受けた場合や、示談を進めたい場合には、早めに弁護士へ相談することで、事件の状況に応じた対応を検討できます。

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傷害事件の示談金はいくら?相場と決まり方を弁護士が解説

傷害事件を起こしてしまった場合、まず多くの方が気になるのが、示談金はいくら必要になるのかという点です。
インターネット上では「示談金の相場は〇万円」「示談をすれば不起訴になる」といった情報も見られますが、実際の示談金額は一律に決まるものではありません

傷害事件の示談金は、ケガの程度や治療期間だけでなく、被害者の受け止め方や処罰感情事件の態様や経緯など、さまざまな事情を踏まえて判断されます。そのため、同じように見える事件であっても、示談金に大きな差が生じることがあります

また、示談金は単なる慰謝料ではなく、治療費や休業損害などを含めた一括の解決金として扱われるのが一般的です。相場だけを基準に示談を進めてしまうと、後になって追加請求やトラブルが生じるおそれもあります。この記事では、傷害事件における示談金について、一般的な相場の考え方金額が決まる実務上の要素示談が刑事処分に与える影響示談を進める際の注意点を、弁護士の立場から整理して解説します。示談金の仕組みを正しく理解することが、適切な解決につながります。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害事件における示談金とは

傷害事件における示談金とは、被害者と加害者の間で事件を解決するために支払われる金銭を指します。刑事事件であっても、当事者同士が合意に至れば、民事上の紛争を示談によって解決することが可能です。

示談金は、単なる謝罪の意味合いで支払われるものではありません。一般には、治療費や通院に伴う費用仕事を休んだことによる損害精神的苦痛に対する慰謝料などを含めた、一括の解決金として扱われます。そのため、示談が成立した場合には、原則としてその後の追加請求は行わないという形で整理されることが多くなります。

また、傷害事件における示談は、刑事手続とは別に成立する合意です。示談が成立したからといって、必ずしも刑事事件が終了するわけではありませんが、被害者の処罰感情が緩和された事実として、検察官や裁判所が判断する際の重要な事情になります。

なお、示談金には法律で定められた金額や計算式は存在しません。同じような傷害事件であっても、被害者の状況や事件の内容によって金額は大きく異なります。そのため、インターネット上の金額だけを基準に判断するのではなく、どのような事情が示談金に影響するのかを理解することが重要です。

傷害事件の処分に好影響を与える(処分を軽くする)示談をしてもらう対価として、示談金を支払うという関係ですね。

傷害事件の示談金の相場

傷害事件の示談金については、法律で定められた一律の金額や計算式は存在しません。示談金は裁判で決まる損害賠償額とは異なり、被害者と加害者の合意によって決まる解決金であるため、事案ごとに金額に幅が生じます。

もっとも、実務上は、ケガの程度や治療状況を基準として、一定の目安が意識されることが多くなっています。一般的な示談金の水準は、次のとおり整理できます。

ケガの程度と示談金の目安

ケガの程度示談金の目安
軽い打撲・擦過傷など(通院をほとんど要しない場合)数万円〜10万円程度
一定期間の通院を要する傷害10万円〜50万円程度
骨折などの重い傷害50万円〜100万円以上

この表は、傷害事件における示談金の一般的な目安を示したものにすぎません。実際の示談金額は、傷病名だけで機械的に決まるものではありません。同じ「通院を要する傷害」であっても、通院期間や通院日数日常生活や仕事への影響の程度によって、金額には大きな差が生じます。

また、示談金は単なる慰謝料ではなく、治療費や通院交通費仕事を休んだことによる損害精神的苦痛に対する補償などを含めた、一括の解決金として扱われるのが一般的です。そのため、示談が成立した場合には、原則としてその後の追加請求を行わないことを前提に金額が調整されます。

さらに、被害者の処罰感情が強い場合や、事件の経緯に悪質性が認められる場合には、表の金額帯を上回る示談金が求められることもあります。一方で、早期に誠実な謝罪が行われ、被害者の理解が得られた場合には、比較的抑えた金額で示談が成立するケースもあります。

このように、傷害事件の示談金は、相場だけを見て一律に判断できるものではありません。示談金の目安を把握したうえで、どのような事情が金額に影響するのかを具体的に理解することが重要です。

示談金の金額が決まる主な要素

傷害事件の示談金は、相場表に当てはめて自動的に決まるものではありません。実務上は、個別の事情を総合的に考慮したうえで金額が調整されます。ここでは、示談交渉の場面で特に影響が大きい要素を整理します。

ケガの程度と治療期間

示談金を判断するうえで、最も基本となるのがケガの程度や治療状況です。ただし、示談金は診断書に記載された傷病名だけで決まるわけではありません。実際には、通院期間の長さや通院日数、治療内容などが重視されます。短期間で治療が終了した場合と、継続的な通院を要した場合とでは、示談金に差が生じやすくなります。

被害者の処罰感情

示談交渉においては、被害者がどの程度の処罰感情を抱いているかも重要な要素になります。被害者が強い処罰感情を持っている場合には、示談自体が難航したり、比較的高額な示談金を求められたりすることがあります。一方で、謝罪が受け入れられ、被害者の理解が得られている場合には、示談が成立しやすくなる傾向があります。

加害者の態度や対応状況

示談金の金額には、加害者側の対応の仕方も影響します。早期に誠実な謝罪が行われ、反省の姿勢が適切に伝わっている場合には、示談交渉が円滑に進むことがあります。これに対し、責任を否定する発言や不誠実な対応があった場合には、被害者の不信感が強まり、示談金が増額される要因となることもあります。

事件の態様や経緯

傷害事件がどのような状況で発生したのかという事件の態様や経緯も、示談金を判断する際の重要な事情です。突発的な口論の中で生じた傷害なのか、一方的・継続的な暴力行為なのかによって、事件の評価は大きく異なります。悪質性が高いと判断される場合には、示談金が高額になりやすい傾向があります。

前科・前歴の有無

加害者に前科や前歴があるかどうかも、示談交渉に影響することがあります。前科がある場合には、被害者が再犯を不安視し、示談に慎重になるケースがあります。ただし、前科があるからといって必ず示談金が高額になるわけではなく、あくまで被害者の受け止め方や事件の内容との関係で判断されます。このように、傷害事件の示談金は、複数の要素が重なり合って決まるものです。相場を把握することは重要ですが、それだけで金額を判断するのではなく、どの要素が自分のケースに影響するのかを整理することが、適切な示談につながります。

法律的に支払う義務がある金額と示談金額は必ずしも一致しません。むしろ、支払義務のある金額よりも大きな金額とする方が多いでしょう。

示談が刑事処分に与える影響

傷害事件において示談が成立した場合、刑事処分にどのような影響があるのかは、多くの方が気にする点です。示談は刑事手続そのものを終了させるものではありませんが、刑事上の判断に影響を与える重要な事情として考慮されます。

まず、示談が成立している場合、被害者の処罰感情が一定程度解消されていると評価されることがあります。この点は、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、裁判所が量刑を判断する際に、有利な事情の一つとして考慮される可能性があります。

特に、傷害の程度が比較的軽い事案や、初犯である場合には、示談が成立していることを理由に不起訴処分となるケースも見られます。ただし、示談が成立したからといって、必ず不起訴になるわけではありません。ケガの程度が重い場合や、事件の悪質性が高い場合には、示談があっても起訴されることがあります。

また、起訴された場合であっても、示談が成立していれば、刑が軽くなる方向で考慮されることがあります。具体的には、罰金刑にとどまったり、執行猶予が付されたりするなど、量刑面で有利に働く可能性があります。

一方で、示談が成立していない場合や、示談交渉が難航している場合には、被害者の処罰感情が強いまま残っていると評価され、刑事処分が重くなる要因となることもあります。そのため、刑事手続への影響を考えるうえでは、示談の有無や内容が重要な意味を持つといえます。このように、傷害事件における示談は、刑事処分を左右する一要素にすぎないものの、軽視できない事情です。示談の意義を正しく理解したうえで、事件全体の状況を踏まえた対応を検討することが重要になります。

傷害事件における示談の流れ

傷害事件の示談は、思いつきで進めるものではなく、一定の手順を踏んで進める必要があります。進め方を誤ると、示談がまとまらないだけでなく、後のトラブルにつながることもあります。ここでは、実務上一般的な示談の流れを整理します。

被害者との連絡・謝罪

示談は、被害者との連絡が取れることが前提になります。捜査段階では、警察や検察を通じて連絡先を確認することが多く、直接連絡を取ることが適切でない場合もあります。示談交渉の初期段階では、誠実な謝罪の意思を伝えることが重要です。

示談条件の調整

謝罪の意思が伝わった後、示談金の金額や支払方法など、具体的な条件の調整に入ります。示談金は、ケガの程度や治療状況、被害者の意向を踏まえて提示されます。金額だけでなく、支払時期や分割の可否といった点も、示談成立の可否に影響します。

示談書の作成

条件がまとまった場合には、示談書を作成して合意内容を明確にします。示談書には、示談金の金額や支払方法のほか、清算条項や宥恕に関する記載が盛り込まれるのが一般的です。口頭での合意だけでは、後日の紛争を防ぐことができません。

示談金の支払い

示談書の内容に従い、示談金の支払いを行います。支払いが確認されることで、示談は実質的に履行されたことになります。支払いの遅れや不履行があると、示談が無効と主張されるおそれがあるため注意が必要です。

示談成立の報告

示談が成立した後は、検察官や裁判所に対して示談成立の事実を伝えることになります。示談書の提出などを通じて、被害者の処罰感情が緩和されていることを示すことで、刑事処分の判断に反映される可能性があります。このように、傷害事件の示談は、謝罪から合意、履行までを一連の流れとして丁寧に進めることが重要です。手順を誤らず、内容を明確にしたうえで進めることが、円滑な解決につながります。

捜査機関に示談の成立を報告した場合、捜査機関から被害者側にその確認を行うことが一般的です。そのため、被害者側が心から納得した形で示談を締結することが不可欠と言ってよいでしょう。

示談書に記載すべき内容と注意点

傷害事件で示談が成立する場合、示談書を作成して合意内容を明確に残すことが重要です。示談書は、単なる形式的な書面ではなく、後日のトラブルを防ぐための証拠資料としての役割を持ちます。内容が不十分な場合、示談後に新たな紛争が生じるおそれがあります。

示談金の金額と支払方法

示談書には、示談金の金額とともに、支払期限や支払方法を具体的に記載します。一括払いか分割払いか、振込か現金かといった点を明確にしておかないと、支払いをめぐる認識の違いが生じる可能性があります。

清算条項の重要性

示談書で特に重要なのが、清算条項です。清算条項とは、示談金の支払いをもって、本件に関する一切の請求権を相互に放棄することを確認する条項を指します。この記載が不十分な場合、示談後に治療費や慰謝料の追加請求を受けるおそれがあります。

宥恕に関する記載

刑事事件においては、示談書に宥恕の意思を示す記載が含まれることがあります。これは、被害者が加害者を許し、処罰を求めない意思を示すものです。宥恕文言があるかどうかは、検察官や裁判所が刑事処分を判断する際の参考事情となることがあります。

当事者の特定と署名押印

示談書には、当事者の氏名や住所を正確に記載し、署名押印を行うことが必要です。記載内容が曖昧であったり、当事者が特定できなかったりすると、示談書としての効力が問題になることがあります。

示談書作成時の注意点

示談書は、一度作成すると修正が難しい書面です。内容を十分に確認しないまま署名してしまうと、後から不利な条件に気付いても争いにくくなります。特に、清算条項や宥恕に関する記載については、その意味を理解したうえで合意することが重要です。このように、傷害事件の示談書は、示談金の支払いだけでなく、その後の関係を整理する重要な書面です。形式だけでなく、記載内容の中身に十分注意する必要があります。

示談金を支払えない場合の対応

傷害事件において、示談の必要性は理解していても、示談金を一括で支払うことが難しいというケースは少なくありません。このような場合でも、直ちに示談を断念すべきとは限らず、現実的な対応を検討する余地があります。

分割払いによる示談

示談金を一括で支払えない場合、分割払いによる示談が認められることがあります。分割払いが可能かどうかは、被害者の意向が大きく影響しますが、支払計画を具体的に示すことで、理解を得られる場合もあります。分割払いとする場合には、支払回数や期限を明確に定めることが重要です。

示談金額の調整

支払能力に応じて、示談金額そのものを調整するという選択肢もあります。示談金は当事者間の合意で決まるため、必ずしも相場どおりの金額でなければならないわけではありません。ただし、被害者の処罰感情や事件の内容によっては、金額の調整が難しい場合もあります。

支払不能の場合の影響

示談金を支払うことができず、示談が成立しない場合には、刑事手続において不利に扱われる可能性があります。被害者の処罰感情が解消されないまま残ると、起訴や量刑の判断に影響することがあります。そのため、支払能力に不安がある場合には、早い段階で対応を検討することが重要です。

無理な約束をしないことの重要性

示談交渉の場面では、示談を成立させたいという思いから、実際には支払えない金額を約束してしまうケースも見られます。しかし、約束どおりに支払えなければ、示談が無効と主張されたり、新たなトラブルに発展したりするおそれがあります。支払可能な範囲で現実的な条件を提示することが重要です。このように、示談金を支払えない場合であっても、分割払いや条件調整などの対応策が検討できる場合があります。重要なのは、無理のない形で示談を目指し、結果として不利な状況を招かないようにすることです。

傷害事件の場合、示談金の分割払いはあまり推奨されません。当事者間の関係はできるだけ早く切り離すべきであって、関係が長期間継続することは望ましくない事件類型であるためです。

弁護士に示談交渉を依頼するメリット

傷害事件の示談は、当事者同士で進めることも可能ですが、実務上は弁護士を通じて行われるケースが多いのが実情です。そこには、示談交渉を専門家に任せることによる、いくつかの現実的なメリットがあります。

被害者との直接交渉を避けられる

示談交渉では、被害者の感情が強く表れる場面も少なくありません。弁護士に依頼することで、被害者との直接的なやり取りを避けることができるため、感情的な衝突や不用意な発言によるトラブルを防ぎやすくなります。

適正な示談金水準を見極めやすい

示談金には明確な基準がないため、相場だけを頼りに判断すると、過大な金額を提示してしまったり、逆に示談がまとまらない金額になったりするおそれがあります。弁護士が関与することで、事案に応じた現実的な示談金水準を見極めた交渉が可能になります。

示談書の内容を適切に整えられる

示談が成立した場合には、示談書の内容がその後のトラブルを左右します。弁護士に依頼すれば、清算条項や宥恕に関する記載など、実務上重要な点を踏まえた示談書を作成することができます。これにより、示談後の紛争リスクを抑えることが期待できます。

刑事手続を見据えた対応ができる

傷害事件の示談は、民事的な解決にとどまらず、刑事処分への影響を意識して進める必要があります。弁護士が関与することで、示談のタイミングや内容について、刑事手続との関係を踏まえた判断がしやすくなります。このように、弁護士に示談交渉を依頼することは、示談を成立させるためだけでなく、その後の法的リスクを抑えるうえでも有効です。傷害事件の示談について不安がある場合には、専門家の関与を検討することが、結果として適切な解決につながることがあります。

専門性ある弁護士に依頼することで、示談金を支払うことの具体的な効果を正しく把握できることは非常に大きなポイントになります。その効果の大きさに応じて負担できる示談金額が変わりやすいためです。

よくある質問(FAQ)

Q. 傷害事件の示談金は、必ず支払わなければなりませんか。

傷害事件における示談は、当事者間の合意によって成立する解決方法であり、法律上、必ず示談金を支払わなければならないと定められているわけではありません。
ただし、示談が成立していない場合には、被害者の処罰感情が解消されないまま残ることになり、刑事手続において不利に扱われる可能性があります。そのため、状況に応じて示談を検討することが重要になります。


Q. 示談金を支払えば、必ず不起訴になりますか。

示談が成立していることは、不起訴や量刑判断において考慮される事情の一つですが、示談があれば必ず不起訴になるわけではありません
ケガの程度が重い場合や、事件の悪質性が高い場合には、示談が成立していても起訴されることがあります。示談はあくまで、刑事処分を判断する際の一要素として扱われます。


Q. 被害者と直接連絡が取れない場合でも、示談はできますか。

捜査段階では、警察や検察を通じて被害者の連絡先を確認できる場合があります。また、被害者が直接の連絡を望まないケースでも、弁護士を通じて示談交渉が行われることは少なくありません。
被害者との接触方法について不安がある場合には、無理に直接連絡を取ろうとせず、適切な方法を検討することが重要です。

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傷害罪は初犯でも罰金や前科がつく?処分の目安を解説

傷害罪は、初犯であっても、事案の内容や経緯によっては罰金刑が科され、結果として前科が残る可能性がある犯罪です。「初犯であれば処分は軽い」と考えられることもありますが、被害の程度や行為態様、被害者との関係などを踏まえ、処分の重さは個別に判断されます。また、状況によっては逮捕や起訴に至るケースもあり、必ずしも軽微な事件として扱われるとは限りません。傷害罪の処分を検討するうえでは、刑法上の構成要件や法定刑だけでなく、捜査段階での対応や示談の成否が、その後の処分に影響することもあります。本記事では、傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向、前科がつくかどうか、刑事手続の流れや示談の影響について、弁護士の立場から整理して解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害罪とは|初犯でも処分の対象となる犯罪の内容

傷害罪とは、人の身体に傷害を負わせた場合に成立する犯罪で、刑法204条に規定されています。ここでいう傷害には、骨折や出血といった明らかな外傷だけでなく、打撲や捻挫など、治療を要する身体的障害も含まれます。外見上は軽いケガに見える場合でも、医師の診断により一定期間の治療や通院が必要と判断されれば、傷害に該当する可能性があります。

傷害罪は、日常的なトラブルや口論の延長で問題となることも少なくありません。「強く殴ったつもりはなかった」「軽く押しただけだった」という認識であっても、結果として相手に傷害が生じていれば、刑事責任を問われる可能性があります。そのため、当事者の感覚と刑法上の評価が一致しないケースも多く見られます。

傷害罪と混同されやすい犯罪として暴行罪があります。暴行罪は、殴る、蹴る、突き飛ばすなどの有形力を行使したものの、結果として相手に傷害が生じなかった場合に成立する犯罪です。一方で、同じ行為であっても、治療を要するケガが生じた場合には、暴行罪ではなく傷害罪として扱われます。この「結果の有無」が、両者を分ける重要な判断基準となります。

傷害罪の法定刑は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされています(刑法204条)。このように、法律上は比較的重い刑罰が予定されている犯罪であるため、初犯であっても、事案の内容次第では罰金刑にとどまらない処分が検討されることもあります。

このように、傷害罪は「初犯だから軽い処分で済む」と一概に言える犯罪ではありません。処分の内容は、傷害の程度や発生状況、被害者との関係、事件後の対応などを踏まえて個別に判断されます。初犯の場合の処分を正しく理解するためには、まず傷害罪の基本的な性質を押さえておくことが重要です。

傷害罪が初犯だった場合の処分の傾向

傷害罪が初犯であった場合の処分は、事件の内容や経緯を踏まえて個別に判断されます。一般論としては、初犯であることは処分を検討するうえで考慮される事情の一つとされることが多いものの、それだけで必ず軽い結果になるとは限りません。

初犯の場合に多い処分のパターン

初犯の傷害事件では、被害の程度が比較的軽く、事件後の対応に問題がない場合には、不起訴処分略式手続による罰金刑にとどまるケースが見られます。とくに、被害者との示談が成立している場合には、検察官が起訴を見送り、不起訴とする判断がなされることがあります。

また、不起訴とならず起訴された場合であっても、初犯であれば、略式命令による罰金刑が選択されることは少なくありません。この場合、公開の裁判は行われず、書面審理のみで処分が決まります。ただし、罰金刑であっても刑罰である以上、前科が付く可能性がある点には注意が必要です。

初犯でも軽い処分にとどまらないケース

一方で、傷害罪は法律上、比較的重い刑罰が予定されている犯罪であるため、初犯であっても、事案の内容によっては軽い処分にとどまらないことがあります。たとえば、被害者が長期間の治療を要する重傷を負った場合や、凶器を用いた行為により傷害を負わせた場合には、不起訴や略式手続にとどまらず、より重い処分が検討される可能性があります

また、行為態様が悪質と評価される場合や、事件の経緯から再犯のおそれが否定できないと判断される場合には、初犯であることのみを理由に、処分を大きく軽減することが難しくなることもあります。

初犯であることが考慮される場面

初犯であることは、量刑判断の段階で考慮される事情の一つです。前科がないことや、反省の態度が見られること、再犯のおそれが低いと判断されることなどは、処分を検討するうえで有利に働く場合があります。ただし、これらの事情は、被害の程度や示談の有無などとあわせて、総合的に評価されます。このように、傷害罪が初犯だった場合には一定の傾向はあるものの、「初犯だから必ず罰金で済む」「必ず不起訴になる」といった一律の基準は存在しません。処分の見通しを判断するためには、事件の具体的な内容を踏まえて検討することが重要です。

傷害罪の初犯で前科はつくのか

傷害罪が初犯だった場合でも、処分の内容によっては前科が付く可能性があります。前科が付くかどうかは、「初犯かどうか」ではなく、どのような刑事処分が下されたかによって決まります。

不起訴処分の場合

傷害事件について不起訴処分となった場合には、刑罰は科されないため、前科は付きません。不起訴には、証拠が不十分な場合のほか、被害者との示談が成立していることや、犯行の態様が比較的軽微であることなどを理由とするものも含まれます。

もっとも、不起訴となった場合でも、捜査を受けた事実そのものが完全に消えるわけではなく、いわゆる前歴として記録が残ることがあります。ただし、前歴は前科とは異なり、刑罰を受けた履歴ではありません。

罰金刑となった場合

傷害罪について罰金刑が科された場合には、初犯であっても前科が付くことになります。略式手続による罰金刑であっても、刑罰である以上、前科として扱われる点に違いはありません。

そのため、「裁判にならず罰金で済んだ」という場合であっても、法律上は有罪判決を受けたことになり、前科が付くことになります。この点は、一般的なイメージと異なることが多く、注意が必要です。

執行猶予付き判決の場合

傷害罪で執行猶予付きの判決が言い渡された場合にも、刑罰自体は言い渡されているため、前科は付きます。執行猶予は、一定期間、刑の執行を猶予する制度であり、無罪や処罰なしを意味するものではありません。

初犯であることと前科の関係

このように、前科が付くかどうかは、初犯か再犯かという点ではなく、最終的な処分の内容によって決まります。初犯であることは、不起訴や比較的軽い処分を検討する際に考慮される事情の一つではありますが、前科が付くかどうかを直接左右するものではありません。

前科の有無は、その後の生活や社会的評価に影響を及ぼす可能性があるため、処分の見通しを考えるうえで重要な要素です。傷害罪が初犯であっても、どのような処分が想定されるのかを正確に理解しておくことが大切です。

傷害罪で逮捕されるケースと刑事手続の流れ

傷害罪は、初犯であっても逮捕される可能性がある犯罪です。ただし、すべての傷害事件で直ちに逮捕されるわけではなく、逮捕の要否は事件の内容や状況に応じて判断されます。

初犯でも逮捕される主なケース

傷害罪で逮捕が検討されるのは、主に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断される場合です。たとえば、加害者の身元が不明確で連絡が取れない場合や、被害者や関係者への働きかけによって証拠が失われるおそれがある場合には、初犯であっても逮捕されることがあります。

また、被害の程度が重い場合や、凶器を用いた行為が認められる場合などでは、事件の重大性を理由として、逮捕が選択される可能性が高まります。もっとも、これらの事情があるからといって、必ず逮捕されるわけではなく、在宅のまま捜査が進められるケースも少なくありません。

逮捕されない「在宅事件」となる場合

傷害事件では、在宅事件として扱われることも多く見られます。在宅事件とは、身柄を拘束されることなく、呼び出しに応じて取調べを受けながら捜査が進められる形態です。被疑者が定職に就いている場合や、住所が定まっており逃亡のおそれが低いと判断される場合などには、初犯であることも考慮され、在宅事件とされることがあります。

逮捕後の刑事手続の流れ

逮捕された場合、まず警察で取調べが行われ、その後、検察官に送致されます。検察官は、勾留が必要かどうかを判断し、必要があると判断した場合には、裁判所に勾留請求を行います。裁判所が勾留を認めると、最大で20日間、身柄が拘束される可能性があります。

勾留期間中、検察官は、起訴するか不起訴とするかを判断します。不起訴となれば釈放され、刑事手続は終了します。一方、起訴された場合には、略式手続による罰金刑となるか、正式な裁判(公判)で審理されるかが検討されます。

初犯の場合に意識すべき点

このように、傷害罪の刑事手続は、逮捕されるかどうか、勾留されるかどうか、起訴されるかどうかといった複数の段階を経て進みます。初犯であることは、これらの判断において考慮される事情の一つではありますが、それだけで身柄拘束や起訴が回避されるとは限りません。

傷害罪が初犯であっても、事件の内容次第では、早い段階から慎重な対応が求められることになります。刑事手続の流れを把握しておくことは、今後の見通しを考えるうえで重要です。

傷害罪では、初犯であることと逮捕勾留の有無に直接の関係がないケースも多いです。初犯であっても身柄拘束の回避を目指す実益は非常に大きいと言えます。

示談が初犯の処分に与える影響

傷害罪が初犯だった場合、示談が成立しているかどうかは、その後の処分に大きく影響する事情の一つです。示談は、それ自体で刑罰が決まるものではありませんが、捜査や処分の判断において、重要な考慮要素として扱われます。

示談とは何か

示談とは、加害者と被害者の間で、損害賠償や謝罪などについて合意し、紛争を解決することをいいます。傷害事件における示談では、治療費や休業損害、慰謝料の支払いなどが合意内容となることが一般的です。示談が成立すると、被害者が処罰を求めない意思を示す、いわゆる宥恕の意思が確認される場合もあります。

示談が成立した場合の影響

示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性が高まる傾向があります。とくに、被害の程度が比較的軽く、初犯である場合には、示談の成立が判断の重要な要素となり、不起訴とされることも少なくありません。

また、起訴された場合であっても、示談が成立していれば、処分の内容を検討する際に有利な事情として考慮されます。たとえば、略式手続による罰金刑にとどまるかどうか、あるいは量刑を判断する場面で酌量される方向に働く可能性があります。

示談が成立しない場合の影響

一方で、示談が成立していない場合には、不起訴とする判断が難しくなることがあります。被害者の処罰感情が強い場合や、損害賠償が行われていない場合には、起訴される可能性が相対的に高まります。

もっとも、示談が成立していないからといって、必ず起訴されるわけではありません。事件の内容や被害の程度、そのほかの事情を踏まえて、検察官が総合的に判断することになります。

初犯と示談の関係

初犯であることは、示談が成立している場合に、その効果をより評価する方向に働くことがあります。反省の態度が示されていることや、再犯のおそれが低いと判断されることとあわせて、示談の成立が処分の見通しに影響を与えることになります。ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になる、あるいは前科が付かないといった保証があるわけではありません。示談の意義と限界を正しく理解しておくことが重要です。

初犯でも処分が重くなりやすいポイント

傷害罪が初犯であっても、事件の内容によっては、比較的重い処分が検討されることがあります。初犯であることは有利な事情の一つではありますが、それだけで処分が大きく軽減されるとは限りません。ここでは、実務上、処分が重くなりやすいとされる代表的なポイントを整理します。

被害の程度が重い場合

処分の重さを左右する最も重要な要素の一つが、被害の程度です。被害者が長期間の治療を要する重傷を負った場合や、後遺障害が残る可能性がある場合には、初犯であっても、軽い処分にとどまらない可能性があります。被害結果が重大であるほど、処分を慎重に検討すべき事案として扱われる傾向があります。

行為態様が悪質と評価される場合

行為の内容や方法が悪質と評価される場合にも、処分が重くなる可能性があります。たとえば、複数回にわたって暴行を加えた場合や、相手が抵抗できない状況を利用して傷害を負わせた場合などでは、初犯であっても厳しい評価がなされることがあります。

凶器を用いた場合

凶器を用いて相手に傷害を負わせた場合には、行為の危険性が高いと評価されやすく、処分内容の判断が厳しくなる傾向があります。凶器の種類や使用状況によって評価は異なりますが、偶発的なトラブルとして処理されにくくなる点には注意が必要です。

被害者との関係性や事件の経緯

被害者との関係性や、事件に至る経緯も重要な判断要素です。たとえば、日常的なトラブルがエスカレートした場合や、計画性が疑われる事情がある場合などには、処分が重くなる可能性があります。また、被害者との関係が近しい場合であっても、そのこと自体が処分を軽くするとは限りません。

事件後の対応に問題がある場合

事件後の対応も、処分に影響を与える要素の一つです。被害者への謝罪や損害賠償が行われていない場合や、反省の態度が十分に示されていないと判断される場合には、初犯であっても有利な事情として評価されにくくなります。このように、初犯であることだけでは処分の軽重は決まりません。被害の内容や行為態様、事件後の対応など、複数の事情が総合的に考慮されて処分が判断されます。初犯であっても、どのような点が問題視されやすいのかを理解しておくことが重要です。

法律的には、どれだけ大きな被害をもたらし得る行為だったのか、という点が処分の重さに影響しやすい傾向にあります。刑罰は行為責任に見合った重さにすべきである、という考え方からくるものです。

傷害罪の初犯で弁護士ができること

傷害罪については、事件の内容や対応の仕方によって、その後の処分が大きく左右されることがあります。とくに、捜査の初期段階からどのような対応を取るかは、処分の見通しを考えるうえで重要な要素となります。弁護士は、刑事手続の各段階に応じて、法的観点から適切な対応を行うことができます

捜査段階での対応

捜査が始まった段階では、取調べへの対応や供述内容が、その後の処分に影響を与えることがあります。弁護士は、事実関係を整理したうえで、どのような点に注意して対応すべきかを助言し、不利益な供述を避けるためのサポートを行います。また、逮捕や勾留が問題となる場面では、身柄拘束の必要性が低いことを主張し、在宅事件としての取扱いや早期の身柄解放を目指す活動を行うこともあります。

示談交渉への関与

傷害事件においては、被害者との示談が処分に影響を与える重要な要素となることがあります。弁護士が関与することで、法的に適切な内容での示談交渉が進められ、感情的な対立を避けながら話し合いを行うことが可能になります。示談の進め方や条件についても、処分への影響を踏まえた検討が行われます。

起訴・裁判段階での弁護活動

起訴された場合には、略式手続が相当かどうか、あるいは正式な裁判でどのような主張を行うべきかが検討されます。弁護士は、事件の内容や反省の状況などを踏まえ、処分が過度に重くならないようにするための弁護活動を行います。裁判においては、量刑を判断するための事情を整理し、適切に主張する役割を担います。

弁護士が関与する意義

このように、傷害罪については、弁護士が関与することで、刑事手続全体を見据えた対応が可能になります。捜査・示談・起訴・裁判といった各段階を個別に捉えるのではなく、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

手続の段階や事件の内容によって、弁護士にできることは変わってきます。臨機応変に、最良の結果を目指す動きを選択、実行できることが、専門性ある弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ|傷害罪が初犯でも押さえておくべきポイント

傷害罪は、初犯であっても、事件の内容や対応次第で処分の見通しが大きく変わる可能性がある犯罪です。初犯であることは有利に考慮され得る事情の一つではありますが、それだけで軽い処分にとどまると一概に言えるものではありません。

処分の判断においては、被害の程度や行為態様、事件後の対応、被害者との示談の有無など、複数の事情が総合的に考慮されます。不起訴や罰金刑にとどまるケースがある一方で、事案によっては軽い処分にとどまらないこともあります。また、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付く点にも注意が必要です。

刑事手続の進行においては、逮捕や勾留の有無、起訴の判断、裁判手続の選択など、複数の段階があります。これらは個別に判断されるものではありますが、全体の流れを踏まえて対応することが、処分の見通しを考えるうえで重要となります。

このように、傷害罪については、初犯かどうかだけに目を向けるのではなく、事件の内容やその後の対応を含めて全体像を把握することが大切です。状況を正確に整理し、どのような点が判断材料となるのかを理解したうえで、冷静に対応を検討することが求められます。

傷害罪の初犯に関するよくある質問

Q1. 傷害罪が初犯であれば、必ず罰金で済みますか?

いいえ、必ず罰金で済むとは限りません。
初犯であることは処分を判断する際に考慮される事情の一つですが、被害の程度や行為態様、事件後の対応などによっては、罰金刑にとどまらない処分が検討されることもあります。処分の内容は、個別の事情を踏まえて判断されます。

Q2. 傷害罪が初犯でも前科が付くことはありますか?

はい、処分の内容によっては前科が付くことがあります。
不起訴処分となった場合には前科は付きませんが、罰金刑や執行猶予付き判決となった場合には、初犯であっても前科が付きます。前科が付くかどうかは、初犯か再犯かではなく、最終的な処分の内容によって決まります。

Q3. 示談が成立すれば、傷害罪は不起訴になりますか?

示談が成立すれば不起訴となる可能性は高まりますが、必ず不起訴になるわけではありません。
示談は処分を判断する際の重要な考慮要素の一つですが、それだけで結果が決まるものではなく、被害の程度や事件の経緯などを踏まえて総合的に判断されます。

Q4. 傷害罪が初犯の場合、逮捕されないこともありますか?

はい、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むこともあります。
逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断される場合などには、初犯であることも考慮され、逮捕されないことがあります。ただし、被害の程度や事件の状況によっては、初犯であっても逮捕が検討されることがあります。

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【刑事事件解決事例】傷害事件で逮捕後10日勾留の途中で不起訴釈放となった事例

傷害事件で逮捕された場合、勾留が決定すると10日間(場合によっては延長)にわたり身体拘束が続くのが通常です。もっとも、被害回復の状況や当事者間の解決状況によっては、満期を待たずに手続が終了することもあります。ここでは、勾留中に示談が成立し、途中で不起訴釈放となった事例を紹介します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

事案の概要

ご相談者は路上での口論をきっかけに、
相手を殴る行為に及んでしまいました。

通報により駆け付けた警察官により、
傷害事件として現行犯逮捕され、その後勾留されました。

早期解決を希望したご家族から、弁護士へ相談がありました。


想定された法的リスク

勾留が決定している以上、

  • 10日間の身体拘束(延長の可能性あり)
  • 起訴による前科の発生

が懸念される状況でした。


弁護士の対応

1 事案の性質の整理

事情を確認したところ、

  • 飲酒の影響による感情的な衝突
  • 重大な傷害結果ではない

などの事情があり、
適切な謝罪が伝われば早期解決の余地があると判断しました。


2 示談交渉の実施

被害者へ謝罪と事情説明を行い、
速やかな示談成立を目指しました。

その結果、比較的円滑に示談が成立しました。
示談成立は勾留5日目頃でした。


結果

示談成立後、速やかに処分が検討され、
勾留満期(10日)を待たず不起訴釈放となりました。

事件は早期に終了しました。


この事例のポイント

  • 勾留中でも途中釈放の可能性がある
  • 示談成立のタイミングが重要
  • 早期対応が身体拘束期間を左右する

勾留された事件でも、対応次第で結果や拘束期間が大きく変わることがあります。

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【刑事事件解決事例】家庭内トラブルによる傷害で逮捕後、早期釈放・不起訴となったケース

家庭内でのトラブルが警察沙汰となった場合、当事者同士の関係性にかかわらず、傷害事件として逮捕に至ることがあります。もっとも、家族間の事件では、被害者の意向や関係修復の状況が処分判断に影響することもあります。ここでは、逮捕後に早期釈放となり、その後不起訴で終了した事例を紹介します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

事案の概要

ご相談者は自宅で母親と口論となり、
物を投げつける行為に及んでしまいました。

母親は顔面に痣ができるけがを負い、警察へ相談。
警察の案内により被害届が提出され、傷害事件として逮捕されるに至りました。


想定された法的リスク

家庭内の事件であっても、傷害結果が生じている以上、

  • 勾留による身柄拘束の長期化
  • 起訴による前科の発生

といった可能性がある状況でした。

一方で、被害者が家族である場合には、関係修復の有無が処分判断に影響する余地もありました。


弁護士の対応

1 被害者の意向の調整

弁護士が双方から事情を確認したところ、

  • ご相談者は深く反省している
  • 母親は強い処罰を望んでいない

ことが分かりました。

そこで弁護士が間に入り、
反省状況や気持ちを丁寧に伝達しました。

その結果、母親から釈放を希望する意向が示され、
早期釈放に至りました。


2 関係修復と不問の合意

釈放後、弁護士が仲介して話し合いの場を設け、
家族間で本件を不問とする形で解決しました。

その内容を捜査機関へ報告しました。


結果

被害者の意思と関係修復の状況が考慮され、
不起訴処分となりました。

前科が付くことなく事件は終了しました。


この事例のポイント

  • 家族間事件では被害者の意向が重要な事情となる
  • 早期の調整により釈放につながる場合がある
  • 関係修復の具体的な状況が処分判断に影響する

家庭内トラブルが刑事事件化した場合でも、対応の仕方により結論が変わる可能性があります。

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傷害事件における自首のメリットや弁護士依頼の要否,注意すべき点などを解説

このページでは,傷害事件の自首に関して,自首をすべきかどうか,自首のメリット,自首を試みる際の具体的な方法などを弁護士が解説します。自首を検討する際の参考にしてみてください。

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傷害事件で自首をするべき場合

①被害者が重傷を負っている場合

自首を検討するべき場合の代表例は,事件が重大で刑事責任が重く評価されやすいケースです。自首は,逮捕や起訴の回避を目指す手段として有効なものですが,事件が重大であって刑事責任が重い場合は,特に逮捕や起訴の恐れが大きい傾向にあります。そのため,被害者が重傷を負っている傷害事件では,刑事責任が重く,自首を検討するメリットが類型的に大きいと言えるでしょう。

また,傷害事件の捜査は,基本的に被害者が捜査機関に相談等したことをきっかけに開始されます。逆に,被害者が声を上げなければ,捜査が始まるきっかけも生じないことになります。
この点,被害者が重傷を負った傷害事件の場合,被害者が事後に何のアクションも取らないことは考えにくいところです。そのため,捜査が開始される可能性が非常に高く,自首の検討が必要になりやすいでしょう。

ポイント
刑事責任が重く,逮捕や起訴の恐れが大きい
被害者が捜査を求める可能性が高い

②加害者を特定する証拠が十分にある場合

自首は,自分が加害者であると特定される可能性が高い場合に,先手を打つ形で行うことが非常に有益です。なぜなら,自首をしてもしなくても加害者が特定される状況であれば,先に自首をしても不利益がない一方,自首せずに捜査を受ける場合と比較して大きなメリットが期待できるからです。不利益がなくメリットが大きいのであれば,積極的に検討するべきことは間違いありません。

そのため,事件の加害者を特定する証拠が十分にあると思われるケースでは,積極的な自首の検討が有力です。傷害事件で生じやすい証拠としては,被害者側の記憶(特に被害者が知人である場合),目撃者,公共の場所における防犯映像などが挙げられます。

ポイント
先手を打って自首をしても不利益がなく,大きな効果が期待できるケースに当たる

③周囲への発覚を防ぎたい場合

自首をすることで,刑事事件の捜査は被疑者(=加害者)に配慮した方法で行われることになりやすいです。例えば,突然制服を着た複数の警察官が訪れたり,逮捕や捜索などの強制的な捜査が行われたりといった,周囲に事件の存在が知られるような方法はできるだけ回避してくれるケースが多い傾向にあります。
これは,自首をした被疑者であれば,穏やかな方法であっても捜査協力が期待できるため,周囲への発覚を防ぎたいという被疑者の希望に配慮した動きです。

逆に,周囲への発覚を防ぎたい,という希望が非常に大きい場合には,捜査機関の配慮を期待する意味も含めて自首を行うことが有力な手段と言えます。自首に込めた誠意や協力姿勢が伝われば,いたずらに周囲へ知られるような動きは控えてくれることが多いでしょう。

ポイント
自首した事件の捜査は,加害者に配慮した方法で行われやすい

④当事者間での示談交渉が困難な場合

傷害事件は,当事者間で解決すればその後に捜査が開始されることは通常ありません。そのため,当事者間で示談などをし,円満な解決に至れば,その後に捜査が始まることを考える必要はなく,捜査に備えた自首を検討する必要もないと言えるでしょう。
裏を返せば,当事者間での示談交渉が困難なケースでは,いつ被害者が捜査機関に被害申告をして捜査が始まることになるのか分からない,非常に不安定な状況にならざるを得ません。

そのため,当事者間で示談交渉ができる状況になく,不安定な状況を少しでも早く脱する必要がある場合には,自首の検討が有力です。適切に自首ができれば,刑事事件の進捗や見通しが分からない,という事態を避けることができるでしょう。

ポイント
当事者間で解決できれば自首は不要
示談交渉困難で不安定な状況にある場合,自首の検討が有力

自首とは

自首とは,罪を犯した者が,捜査機関に対してその罪を自ら申告し,自身に対する処分を求めることをいいます。自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告することが必要とされます。

また,自首が成立するためには,犯罪事実や犯人が捜査機関に発覚する前でなければなりません。これは,犯罪事実自体が発覚していない場合のほか,犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定できていない場合も含まれます。つまり,犯罪事実か犯人のどちらかが発覚していなければ,自首が成立するということになります。

ポイント 自首の意味
自分の犯罪行為を自発的に捜査機関へ申告し,自分への処分を求めること
犯罪事実又は犯人が特定できていない段階であることが必要

自首のメリット

①刑罰の減軽事由に当たる

自首は,刑法で定められているものですが,その定めは「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは,その刑を減軽することができる。」という内容です。つまり,自首が成立した場合の直接の効果は「刑を減軽できる」ということになります。

刑罰が減軽される場合,基本的には言い渡される刑罰の上限が2分の1になります。そのため,自首によって刑罰が減軽されると,自首がなかった場合に比べて最大でも半分の刑罰までしか科せられません。

なお,「刑を減軽することができる」という定めは,任意的減軽と呼ばれます。これは,減軽することも減軽しないこともできる,というもので,自首したから必ず減軽の対象になるわけではありません。この点の最終的な判断は裁判所に委ねられますが,自首が刑罰の重みに大きく影響することは間違いありません。

ポイント
自首は刑の任意的減軽事由

②逮捕が回避できる可能性が高まる

被疑者が自首をした事件では,その被疑者を逮捕する可能性が非常に低くなることが一般的です。それは,逮捕の必要性が大きく低下するためです。

逮捕の要件には,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があるとされています。

逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

この点,自首をする人物は,自分の犯罪事実を自発的に捜査機関へ告げ,その事件に関する刑事処分を受けるきっかけを自ら作っています。そのため,自分から捜査や処分を求めている人が逃亡や証拠隠滅をすることは考えにくいと言わざるを得ません。
そうすると,自首がなされた事件は,類型的に逃亡や罪証隠滅の恐れ(逮捕の必要性)が低いため,逮捕を回避できる可能性が高くなるのです。

逮捕の回避は,自首を試みる場合の大きな目的の一つと言えます。自分から捜査機関に犯罪を打ち明ける対価として,逮捕を避けてほしいと申し出る試みである,ということもできるでしょう。
ただし,必ず逮捕が防げるというわけではありません。自首をしたとしても逮捕せざるを得ないような重大事件であれば,自首は刑罰の軽減を目指して行うべきことになるでしょう。

ポイント
自首したケースは逮捕の必要性が低いと判断されやすい

③示談の可能性が高まる

被害者のいる事件の場合,自首をした被疑者自身が加害者であることが明らかです。そのため,被疑者ががさらに処分の軽減を図ろうとする場合,示談の試みが非常に大切となります。なぜなら,被疑者の刑事処分は,被害者の意向を可能な限り反映したものになるためです。
示談によって被害者の許しが得られた場合,許したという被害者の意向を反映して刑事処分を軽減することがほとんどでしょう。事件によっては,被害者が加害者の刑罰を希望しない,という意向を表明すれば,事実上不起訴が見込まれると言えるケースも少なくありません。
それだけ,示談の成否は刑事処分を決定的に左右し得るものです。

この点,被害者としては,加害者が自首をしたのか,警察に特定されて捕まったのかによって,示談を受け入れる気持ちが生じるかどうかに大きな違いが生じます。自首した場合の方が,被害者が示談を受け入れる気持ちになりやすいことは明らかです。
そのため,自首という行動は,その後の示談が成立する可能性を高めるという大きなメリットももたらすものと言えます。

ポイント
自首した場合の方が,被害者に示談を受け入れられる可能性が高くなる

④不起訴の可能性が高まる

自首した場合,刑の任意的減軽事由となりますが,これは刑罰を受けることを前提としたお話です。受ける刑罰が半減する可能性がある,というわけですね。

この点,自首が処分を軽減させるのは,決して刑罰が科せられる場合のみではありません。そもそも刑罰を科すかどうか,つまり起訴するか不起訴にするか,という局面でも,自首は処分を軽減させる事情として考慮されます。それは,自首をすることで刑事責任を軽くすべき,という考え方がこの局面にも当てはまるためです。

事件によっては,自首の有無で起訴不起訴が分かれるケースもあり得ます。自首以外に不起訴の判断を促せる事情がなかったとしても,自首を考慮して不起訴になる場合があり得るのは,自首の大きなメリットでしょう。

ポイント
自首を理由に不起訴処分が得られる場合もある

自首の方法と流れ

自首を円滑に,効果的に行うためには,適切な手順を踏んで自首することが望ましいところです。適切な自首ができれば,自首のメリットがより早期に,明確に得られるでしょう。

①自首の方法1.警察への連絡

自首は,警察署に直接出頭して行うこともできますが,事前に警察署に電話連絡をすることがより適切でしょう。事前連絡なく出頭した場合,警察側に自首を受け入れる体制や準備がなく,かえって手続が煩雑になってしまう可能性があります。

連絡先=自首をする先の警察署としては,事件の発生場所を管轄する警察とすることが最も円滑になりやすいです。ただ,自分の生活圏と事件の発生場所が遠く離れている場合は,自分の住居地の最寄りの警察署でもよいでしょう。

自首先の警察署

1.事件の発生場所を管轄する警察署
2.自分の住居地を管轄する警察署

また,連絡先は,自首をする事件分野を取り扱う担当課,担当係に行うことが望ましいです。事件を取り遣う部署は事件類型ごとに異なりますが,一般的には以下のような区別が可能です。

事件を取り扱う部署の例

暴行・傷害
→刑事課 強行犯係

詐欺・横領
→刑事課 知能犯係

窃盗
→刑事課 盗犯係

痴漢・盗撮
→生活安全課

児童買春・児童ポルノ
→生活安全課(少年係)

警察に連絡をした際は,事件を取り扱う係に電話を回してもらい,担当部署の電話応対者に自首を希望する旨とその内容を伝えるとスムーズになりやすいです。

なお,事件の概要や自首を希望するに至った経緯などを伝える可能性が高いため,整理して伝えられるよう,事前にメモを作成するなどして伝えたいことをまとめるのが望ましいでしょう。

②自首の方法2.警察への出頭

予定した日時に警察へ出頭します。
出頭した際にまずどこへ行き,どのようにして担当者に話を通してもらうかは,事前連絡の時点で確認しておくことが望ましいでしょう。

出頭後は,警察所で話を聞かれることが想定されます。どの程度の時間,どのような手続を行うことになるのかは事前の想定が困難であるため,当日の予定は終日空けておくことが適切です。

警察の受付から担当者につないでもらうと,担当課の取調室などへ案内されることが一般的です。

③自首後の流れ1.取り調べの実施

自首後は,まず事件の内容や流れについて取調べを受けることになります。自首をより円滑に進めるため,事前の準備に沿って事件の内容をできるだけ詳細に話すようにしましょう。
取調べの内容としては,以下のような事項が想定されます。

自首後の取調べ内容

1.事件の日時・場所
2.事件の具体的な内容
3.事件が発生した理由
4.自首を試みた経緯・理由
5.身上経歴

自首は,自分の犯罪行為を申告して処分を求めるものであるため,対象となる犯罪の内容については,何かを包み隠していると疑われないよう真摯な供述に努めることが有益です。また,反省・後悔の意思や,被害者に対する謝罪の意思が十分に伝わるような対応が尽くせれば,より望ましい内容になるということができるでしょう。

ポイント
自首を受けた警察で取調べが行われる
真摯な供述を心掛け,反省や謝罪の意思が伝わることを目指す

④自首後の流れ2.自首の受理

警察では,取調べで自首をした人から一通りの話を聞いた後,「自首調書」を作成します。
内容や形式は一般的な供述調書と大きく異なりませんが,自首を受理したことを明らかにするため自首調書を作成するものとされています。

自首調書には,事件の概要,本人の身上経歴,自首をした理由や経緯などが記載されます。

ポイント
自首を受け付けた警察では「自首調書」が作成される

⑤自首後の流れ3.逮捕の判断

自首を受けた警察では,取調べの内容等を踏まえ,その被疑者を逮捕するかどうか判断することになります。自首した事件では,被疑者を逮捕する必要は大きく低下すると理解されるのが通常ですが,それでも逮捕の可能性が否定できるわけではありません。

逮捕をするかどうかは,逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れを主な基準に判断されますが,自首をしているケースでは自首後に逃亡することは想定されづらいと言えます。そのため,罪証隠滅の恐れがどの程度あるか,という基準が重視されやすいでしょう。
そして,自首を通じて罪証隠滅の恐れがないと判断してもらうためには,以下のような対応方法が考えられます。

逮捕を防ぐための自首の方法

1.時系列に沿った詳細な供述に努める
→隠し事なく供述していると評価してもらえれば,その上で証拠隠滅する恐れがあるとは判断されづらい

2.証拠の持参
→事件の内容に応じて想定される物的証拠を積極的に持参することで,罪証隠滅の余地がないと判断してもらいやすい

自首のやり方によって逮捕されるかどうかに差が生じる可能性もあるため,自首に際しては罪証隠滅の恐れがないと理解してもらうことをできる限り目指すようにしましょう。

ポイント
逮捕の有無は,罪証隠滅の恐れの有無によって判断されやすい

傷害事件の自首は弁護士に依頼すべきか

傷害事件の自首について検討する際や,実際に自首を進める際には,弁護士に依頼し,弁護士の判断を仰ぎながら行うことが適切です。弁護士への依頼によって,以下のようなメリットが見込まれます。

①逮捕の可能性が低くなる

自首は,逮捕を防ぐことが大きな目的の一つですが,弁護士に依頼し,適切な方法で自首を進めることによって,逮捕の可能性はより低くなることが期待できます。弁護士に依頼した場合,弁護士が窓口となって捜査機関とやり取りすることで,自首の趣旨や申告したい犯罪事実を正しく把握してもらうことができるため,自首が円滑になり,その効果も十分に生じることが見込まれるでしょう。

自首は大きなリスクを背負った重大な行動であり,その効果を最大限にできる方法を取らないことは背負ったリスクに見合わない結果を招きかねません。そのため,自首を行う以上はできる限りの手段を尽くす,という発想を大切にすることをお勧めします。

②取調べへの備えができる

自首は,あくまで捜査の出発点であり,自首後には捜査機関による捜査が始まることとなります。そして,捜査が行われる際に主要な動きとなるのが取調べです。
一般的に,自首を行った場合には,出頭した当日又は次回の出頭時に,捜査機関担当者から取り調べを受けることが見込まれます。取調べは警察署内の密室などで行われ,弁護士など第三者の立ち会いはできないことが通常です。

そのため,取り調べが始まってから対処を検討することはできず,事前の備えが不可欠ですが,弁護士に依頼することで,将来の取調べに対する備えもあわせて案内してもらうことが可能になります。
刑事手続や取調べの運用に精通した弁護士であれば,取調べの流れや取るべき対応や話すべき内容など,包括的なアドバイスをしてもらうことができるでしょう。事前に取調べの備えができれば,自首への不安も最小限に抑えられます。

③手続や処分の見込みが分かる

自首は,その後の手続の流れや処分見込みが分かっていれば格段に行いやすくなります。自首した後自分がどうなってしまうのか,自首するのとしないのとで刑事処分がどのように変わるのか,という点が全く分からないまま,闇雲に自首をするのは難しいですが,見通しが持てていれば,リスクの大きな自首も心理的負担小さく行うことが可能になるでしょう。

この点,弁護士に依頼して自首を進めれば,自首後の手続の流れについて案内を受けてもらいながら対応することが可能です。また,自首を踏まえた処分見込みを専門的な知識経験を踏まえてアドバイスしてもらえるため,希望する解決に向けた取り組みが容易になります。

④自首後の弁護活動が迅速にできる

傷害事件で自首を行った場合には,被害者との示談交渉など,その後の弁護活動を適切に行ってもらうことで,自首の効果がより高く発揮されます。自首の主な目的である逮捕回避や不起訴処分の獲得は,被害者との示談が成立することでより確実になり,希望した結果の実現に大きく近づくでしょう。

この点,自首の段階から弁護士に依頼し,弁護士と協同する体制を設けておくことで,自首後の弁護活動を速やかに始めることができます。また,加害者が自首をした事実は,被害者の感情面にもプラスの影響を及ぼしやすく,示談成立の可能性は自首のないケースよりも高くなりやすいでしょう。

傷害事件で自首をする場合の注意点

①自首が相手方の意向に反する可能性

自首は,加害者が自分の判断で警察等の捜査を求める行動です。そのため,被害者の意向を確認することなく捜査が開始され,その後に捜査機関が被害者へ捜査協力を求める可能性もあります。

この点,自首による捜査の開始が被害者側の意向に反してしまう可能性があることは,事前に十分留意しておくのが適切でしょう。
被害者が特に捜査機関への相談などを行っていない場合,被害者は捜査機関の関与を希望していない可能性があります。その理由は,対応が面倒である,当事者間での解決を希望しているなど様々ですが,自首が被害者の意向に反している場合,自首が適切な動きではなかった,という結論になり得るでしょう。

②時期が遅れると自首が成立しない

自首は,捜査機関にとって犯罪事実か犯人の両方が発覚している状況では成立しません。そのため,被害者の申出をきっかけに捜査が開始され,犯罪事実と犯人が特定された後では,自ら警察への出頭を試みても法的には自首と評価されず,自首のメリットを十分に得られない可能性があります。

傷害事件の場合,被害者が警察に被害申告をする可能性が比較的高く,犯人を特定する証拠が得られやすいケースも少なくないため,検討に長期間をかけてしまっていると,自首ができない状態に陥ってしまう恐れがあります。
自首の検討は,できるだけ早期に行うことをお勧めします。

③自首すれば不起訴になるわけではない

自首の大きな目的の一つは不起訴処分です。刑事事件は,捜査を遂げた検察によって起訴又は不起訴の処分がなされますが,起訴されれば前科がつき,不起訴となれば前科が付かないため,極めて大きな分岐点になります。

この点,自首によって不起訴処分の可能性が高くなることは間違いありませんが,自首をすれば直ちに不起訴になる,というものではない点には注意が必要です。自首は,不起訴の判断を促す事情の一つに過ぎず,自首しても起訴され前科が付く可能性はあります。
特に,事件の重大性が著しいケースでは,自首という事情があっても事件の重大性の方が重く評価され,不起訴処分が逃れられない場合が多くなりやすいでしょう。

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【傷害事件での呼び出し】警察が呼び出す目的や流れ,逮捕される可能性や逮捕を防ぐ手段などを詳細解説

このページでは,傷害事件で警察から呼び出された場合について,適切な対応方法などを弁護士が解説します。
傷害事件に関する呼び出しへの対応や今後の見込みを検討するときの参考にご活用ください。

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傷害事件で呼び出された場合の対応法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

ポイント
犯罪の成否に影響しない場合,主張の時期や方法は慎重に検討するのが適切

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件で警察が呼び出すタイミングや方法

①取調べのため

傷害事件における警察の呼び出しは,基本的に被疑者を取り調べる目的で行われるものです。自分が起こしてしまった(又は起こしたと疑われている)事件で,初めて呼び出しを受けたときは,取調べ目的と考えて間違いないことがほとんどでしょう。

取調べ目的での呼び出しは,捜査機関が事件を把握した後,比較的早期の段階で行われることが一般的です。特に,客観的な証拠に乏しく当事者の言い分以外には証拠がない場合には,相手の話を聞いた後速やかに呼び出しが行われることも少なくありません。

②事件の再現を試みるため

傷害事件の捜査の一環として,事件当時の状況を再現し,写真に収めるなどの捜査が行われることも多数あります。これは,説明内容を文字だけにしたのでは第三者の理解が難しい場合に,事件の内容を明らかにする最適な証拠を作成する目的で行われるものです。
再現に際しては,当事者のいずれか一方が立ち会い,相手を模した人形や捜査官を相手に,当時の状況を身振り手振りで表現することが通常です。その内容を写真撮影し,警察にて「写真撮影報告書」という捜査資料を作成することが,基本的なゴールとなるでしょう。

事件の再現は,一通りの話を聞いた後に行われるものとなるため,取り調べの後に実施されるのが通常でしょう。必要な取調べの後,数週間~1か月程度の間隔を空けて実施されるケースが一定数見られます。

③証拠品の提出を求めるため

傷害事件では,事件の内容や結果を裏付ける証拠が存在するケースもあるため,証拠品の提出を求める目的で呼び出されることがあります。考えられる証拠としては,暴行に用いられた凶器,事件当時の着衣や靴,傷害結果が記載された診断書などが挙げられるでしょう。

証拠品の提出は,呼び出しの中でも比較的終盤で求められることが多く見られます。最後の取調べの後1週間~1か月程度を目安に呼び出されることが考えられるでしょう。

傷害事件の呼び出しに応じたときの注意点

①経緯に言い分があるとき

ケンカのような態様で生じた傷害事件は,互いに感情的になっており,その経緯を見ると双方に落ち度があると思われることも少なくありません。そのため,呼び出しに応じて話をする際には,経緯に関する言い分を主張したくなるところですが,主張の方法や内容は慎重に検討することをお勧めします。

まず,「取り調べを受けるのは納得いかない」と言わんばかりに,経緯に関する言い分を強く主張することはあまり適切ではありません。経緯に酌むべき事情があったとしても,それは犯罪事実がなかったという意味にはならないため,経緯の主張は,犯罪行為に対する反省と両立する形で行うべきです。

刑事事件の取り扱いは,犯罪事実があるかどうか(認め事件か否認事件か),という区別が前提となる以上,その取り扱いに適した対応が有益です。決して経緯を主張する場がないというわけではありませんので,適切な時期に適切な方法で主張できるよう,弁護士のアドバイスを受けながら対応していくことをお勧めします。

②互いに暴行があった場合の取り扱い

傷害事件では,互いに相手への暴行をしており,互いに被害を受けている場合もありますが,この場合の取り扱いは,互いに傷害事件の加害者である,というものになります。相手から暴行を受けたからと言って,自分の暴行が犯罪でなくなる,というものではない点に注意が必要です。

もっとも,この場合には,相手も刑罰を受けるリスクを背負っている,という点に特徴があります。喧嘩別れに終わった場合,双方が刑罰を受ける結果にもなりかねないため,互いにとって示談のメリットが大きい状況ということもできるでしょう。
その意味では,当事者間で何らかの解決を目指すことがより望ましいケースであると考えられます。

警察が呼び出す主な目的

警察から呼び出しを受ける場合,その目的には主に以下のようなケースが考えられます。

①参考人である場合

参考人とは,特定の事件について捜査の参考とすべき情報を持っているであろう人を言います。具体例としては,事件の目撃者や,被疑者の同僚・友人といった近しい人物,会社で犯罪が起きた場合の従業員などが挙げられます。

参考人の呼び出しは,犯罪捜査のために必要な情報を参考人から教えてもらうために行われるものです。参考人は捜査や処罰の対象となることが想定されていないため,逮捕をされたり前科が付いたりすることは通常ありません。

②身元引受人である場合

身元引受人とは,文字通り被疑者の身元を引き受ける人を言います。身柄を拘束しない事件(=在宅事件)の場合,捜査機関は被疑者の任意の出頭を求めることになりますが,出頭をより確かに見込めるように,適任者を警察署に呼び出し,身元引受人となることを求める取り扱いが広く行われています。

身元引受人は,同居家族(配偶者や親など)であることが一般的です。同居家族に適任者がいない場合は,勤務先の上司や被疑者の依頼した弁護士が身元引受人になることもあります。
身元引受人に対する呼び出しは,通常,被疑者の初回の取り調べが終了した後に行われます。捜査機関から身元引受人に電話連絡がなされ,被疑者を連れて帰ることと身元引受人になることが依頼される,という流れが一般的です。

身元引受人は,被疑者の監督者というのみの立場であるため,呼び出しに応じても逮捕されたり前科が付いたりすることはありません。また,呼び出しに応じなかったとしても特に問題が生じることはありません。

③被疑者である場合

被疑者とは,犯罪の嫌疑をかけられている者をいいます。ニュースなどでは「容疑者」と呼ばれますが,法律的には「被疑者」が正しい呼び方となります。

被疑者を呼び出す目的は,犯人候補として取調べを行うことに尽きます。犯罪の疑いを認めるかどうか,認める場合には具体的に何をしたか,などを確認し,記録化するために,被疑者を警察署へ呼び出します。

被疑者として呼び出される場合,事件の内容や状況によっては逮捕される可能性も否定できません。また,犯罪事実が明らかになれば,刑事処罰を受けて前科が付く可能性もあり得ます。

参考人身元引受人被疑者
呼び出しの理由事件の情報獲得被疑者の出頭確保犯人候補の取り調べ
逮捕の可能性通常なしなしあり
前科の可能性通常なしなしあり

警察の呼び出しを拒むことは可能か

警察の呼び出しには強制力がありません。そのため,呼び出しを拒んだとしても法的にペナルティを科せられることはなく,その意味では呼び出しを拒むことはどのような場合でも可能,ということになるでしょう。
もっとも,立場によって呼び出しを拒むことにリスクや問題の生じる可能性はあり得ます。

①参考人の場合

参考人は,捜査への協力を依頼されている立場に過ぎないため,呼び出しに応じなかったとしてもリスクを抱えたり問題が生じたりすることは通常ありません。

ただし,「現在は参考人にとどまる取り扱いだが,犯罪への関与が疑われる可能性がある」という状況の場合には,呼び出しに応じないことのリスクが生じ得ます。呼び出しに対して積極的な協力や情報提供を尽くす場合に比べると,呼び出しを拒んで捜査協力を一切しない場合の方が,より強く犯罪の関与を疑われやすい傾向にあるためです。
そして,具体的な犯罪への関与を疑われた場合,今度は参考人でなく被疑者として,呼び出しを受けるなどの捜査が行われる可能性も否定はできません。

そのため,呼び出しを拒むことで犯罪への関与を疑われかねない場合には,拒むリスクが生じ得ると言えるでしょう。

②身元引受人の場合

身元引受人は,犯罪への関与が想定されていない立場の人物であるため,呼び出しを拒むことで犯罪の疑いをかけられるものではありません。

もっとも,同居している被疑者の身元引受人となるよう求められ,これを拒んだ場合,被疑者に不利益が生じる可能性は考えられます。身元引受人が拒んだから逮捕をする,ということはあまりありませんが,所在確認のために警察が自宅に訪れることは珍しくありません。そうすると,周囲の人々に警察と関わっている事実が分かってしまい,私生活に影響を及ぼす恐れがあり得ます。

被疑者が同居の家族であって今後も同居を予定している,という場合には,可能な限り身元引受人としての呼び出しに応じる方が無難なケースが多いでしょう。

③被疑者の場合

被疑者に対する呼び出しは,取り調べを行うための方法の一つとして行われるものです。この点,捜査機関が被疑者の取り調べを行う方法は,逮捕して強制的に行うか,呼び出しをして任意の出頭を求めるかの二択であることが通常です。

被疑者を取り調べる方法

1.逮捕をして強制的に行う
2.呼び出して任意の出頭を求める

この点,呼び出しても任意に出頭してくれないとなると,取り調べをするためには逮捕をするほかない,という判断になる可能性もあり得ます。二択のうち一方がダメであった以上,もう一方の方法が取られるのは自然なことであるためです。

そのため,被疑者として呼び出しを受けた場合,可能な限り応じることが適切になりやすいでしょう。もちろん,あまりに回数が多かったり,あまりに時間が長かったりという場合には,その点の配慮を求めることは全く問題ありませんが,呼び出しを徹頭徹尾拒む,というスタンスを取って被疑者自身が得をすることはあまりないと考えるのが適切です。

ポイント 呼び出しを拒む行動の注意点
参考人の場合,拒むことで事件への関与を疑われないように注意
身元引受人の場合,同居する被疑者への不利益に注意
被疑者の場合,拒んだことで逮捕を誘発する可能性に注意

呼び出された場合に弁護士へ依頼するメリット

被疑者として警察に呼び出された場合には,弁護士に依頼をすることが有益になりやすいです。具体的には,以下のようなメリットが生じます。

①逮捕を回避できる

呼び出しがなされた場合,そのまま逮捕されるというケースも否定できないところです。呼び出しに応じた流れで逮捕されると,その後に弁護士への相談や依頼をすることは困難となり,一定期間の身柄拘束を強いられてしまいます。

この点,呼び出された段階で弁護士に依頼し,弁護士を通じて適切な対応を取ることで,逮捕を回避できる場合があります。具体的に逮捕を回避するための手段は,ケースによっても異なりやすいため,弁護士と十分に相談するようにしましょう。

②不適切な取り調べを防げる

警察に呼び出された際の取り調べは,捜査担当者のやり方によっては違法・不適切なものになる場合もあり得ます。強く恫喝されたり,侮辱的な発言を受けたりと,取り調べがヒートアップするほど精神的苦痛を伴うケースが珍しくありません。

この点,弁護士に依頼をしている場合,捜査担当者による不適切な取り調べは多くの場合で防ぐことが可能です。これは,捜査担当者が,弁護士の目があることに配慮するためです。
不適切な取り調べを行えば,後から弁護士を通じて問題視される可能性があるため,不用意な取り調べは行えない,というわけです。

弁護士の目を光らせる意味でも,呼び出しに際して弁護士に依頼することは有力な手段でしょう。

③前科を防げる

被疑者として呼び出される場合,その後に起訴されて前科が付く可能性を想定する必要があります。被疑者として呼び出されるということは,自分に対して捜査が行われていることが明らかであるため,その先に控える処分に無関心でいるわけにはいきません。

この点,呼び出しという早期の段階で弁護士に依頼することで,適切な弁護活動を尽くしてもらい,前科を防げる可能性が高くなります。被害者のいる事件であれば被害者との示談を目指す,否認事件であれば自分が犯人でないことを主張するなど,個別のケースに応じた適切な弁護活動を通じて,前科を防ぐ試みができるのは大きなメリットになるでしょう。

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傷害事件で逮捕される場合と逮捕されない場合の違いは?逮捕後の流れは?

傷害事件は被害者のケガの程度や事件の状況によって、逮捕される場合と逮捕されない場合があります。「初犯でも逮捕されるのか」「逮捕後はどうなるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。傷害で逮捕されると、取調べや勾留などの刑事手続きが進み、仕事や生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、傷害事件の逮捕について、逮捕されるケースとされないケースの違い、さらに逮捕後の流れについて分かりやすく解説します。

この記事の監修者

藤垣圭介

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介

全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。

傷害事件で逮捕された場合の流れ

傷害事件で逮捕されると、まず警察が身柄を確保して事情を聞きます。
その後、事件は検察に引き継がれ、検察官が「身柄をさらに拘束する必要があるか」「起訴すべきかどうか」を判断します。
必要な場合には裁判所の判断を経て勾留され、最終的に検察官が起訴するか、不起訴にするかを決めます。

段階期間の目安主な内容
① 逮捕~48時間以内警察が身柄を拘束し、事情聴取や証拠収集を行う。弁護士との面会は原則自由。
② 送検(検察への引き渡し)逮捕から48時間以内警察が事件を検察官に送致。検察官が勾留請求の要否を判断する。
③ 勾留請求・裁判官の判断送検後24時間以内検察官が裁判官に勾留を請求し、裁判官が許可するかどうかを決める。
④ 勾留期間中の取調べ原則10日間(必要に応じて延長10日以内)勾留が認められると、被疑者は裁判官の決定により10日間身柄を拘束。やむを得ない事情がある場合には、裁判官の判断で10日以内の延長が許可されることもある。
⑤ 起訴・不起訴の判断勾留期間中または終了時検察官が、証拠や被害者の意見、示談の有無などを考慮して処分を決定。
⑥ 釈放・保釈随時不起訴処分や勾留却下などにより釈放されることもある。

(1)逮捕から送検まで

逮捕後、警察で取り調べが行われ、証拠がそろえば48時間以内に検察官へ送致されます。
この間、家族との面会は制限される一方で、弁護士との接見は原則自由です。

(2)勾留決定とその影響

検察官が「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断すれば、裁判官に勾留を請求します。
勾留が認められると、警察署などに最大10日間拘束され、さらに必要に応じて10日間延長されます。

(3)起訴・不起訴の分かれ道

勾留期間中に、検察官は事件の性質、被害者との示談状況、被疑者の反省などを踏まえ、起訴するか否かを決めます。
被害者との示談成立や被害弁償がある場合は、不起訴になるケースも少なくありません。

(4)弁護士による早期対応の重要性

早期に弁護士が介入し、被害者との連絡・示談交渉・意見書の提出を行うことで、勾留回避や不起訴処分の可能性を高めることができます。

主なポイントは以下のとおりです。
・逮捕後48時間以内に送検され、検察官が勾留請求を検討
・勾留は裁判官の決定によって10日間
・延長は裁判官が許可する場合に限り10日以内
・弁護士の早期関与が、勾留回避や不起訴の鍵になる

傷害事件では現行犯逮捕か後日逮捕か

(1)逮捕の種類や手続

法律で定められた逮捕の種類としては,「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」が挙げられます。それぞれに具体的なルールが定められているため,そのルールに反する逮捕は違法ということになります。逮捕という強制的な手続を行うためには,それだけ適切な手順で進めなければなりません。

①現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,犯罪が行われている最中,又は犯罪が行われた直後に,犯罪を行った者を逮捕することを言います。現行犯逮捕は,逮捕状がなくてもでき,警察などの捜査機関に限らず一般人も行うことができる,という点に特徴があります。

典型例としては,目撃者が犯人の身柄を取り押さえる場合などが挙げられます。犯罪の目撃者であっても,他人の身柄を強制的に取り押さえることは犯罪行為になりかねませんが,現行犯逮捕であるため,適法な逮捕行為となるのです。

ただし,現行犯逮捕は犯行と逮捕のタイミング,犯行と逮捕の場所それぞれに隔たりのないことが必要です。犯罪を目撃した場合でも,長時間が経った後に移動した先の場所で逮捕するのでは,現行犯逮捕とはなりません。

なお,現行犯逮捕の要件を満たさない場合でも,犯罪から間がなく,以下の要件を満たす場合には「準現行犯逮捕」が可能です。

準現行犯逮捕が可能な場合

1.犯人として追いかけられている

2.犯罪で得た物や犯罪の凶器を持っている

3.身体や衣服に犯罪の痕跡がある

4.身元を確認されて逃走しようとした

ポイント
現行犯逮捕は,犯罪直後にその場で行われる逮捕
捜査機関でなくても可能。逮捕状がなくても可能

②通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕は,裁判官が発付する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。逮捕には,原則として逮捕状が必要であり,通常逮捕は逮捕の最も原則的な方法ということができます。

裁判官が逮捕状を発付するため,そして逮捕状を用いて通常逮捕するためには,以下の条件を備えていることが必要です。

通常逮捕の要件

1.罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
→犯罪の疑いが十分にあることを言います。「逮捕の理由」とも言われます。

2.逃亡の恐れ又は罪証隠滅の恐れ
→逮捕しなければ逃亡や証拠隠滅が懸念される場合を指します。「逮捕の必要性」ともいわれます。

通常逮捕の要件がある場合,検察官や警察官の請求に応じて裁判官が逮捕状を発付します。裁判官は,逮捕の理由がある場合,明らかに逮捕の必要がないのでない限りは逮捕状を発付しなければならないとされています。

ポイント
通常逮捕は,逮捕状に基づいて行う原則的な逮捕
逮捕の理由と逮捕の必要性が必要

③緊急逮捕

緊急逮捕は,犯罪の疑いが十分にあるものの,逮捕状を待っていられないほど急速を要する場合に,逮捕状がないまま行う逮捕手続を言います。

緊急逮捕は,逮捕状なく行うことのできる例外的な逮捕のため,可能な場合のルールがより厳格に定められています。具体的には以下の通りです。

緊急逮捕の要件

1.死刑・無期・長期3年以上の罪
2.犯罪を疑う充分な理由がある
3.急速を要するため逮捕状を請求できない
4.逮捕後直ちに逮捕状の請求を行う

緊急逮捕と現行犯逮捕は,いずれも無令状で行うことができますが,緊急逮捕は逮捕後に逮捕状を請求しなければなりません。また,現行犯逮捕は一般人にもできますが,緊急逮捕は警察や検察(捜査機関)にしか認められていません。

緊急逮捕と現行犯逮捕の違い

現行犯逮捕緊急逮捕
逮捕状不要逮捕後に請求が必要
一般人の逮捕可能不可能

(2)現行犯逮捕で逮捕される可能性とタイミング

傷害事件では、現行犯逮捕が行われるケースが少なくありません。
一例として、次のような状況では現行犯逮捕となることが多くあります。

・けんかの最中や直後に、警察が通報を受けて駆けつけた場合
・被害者がその場で「殴られた」と通報し、加害者が逃げずに現場にいる場合
・防犯カメラや周囲の人の目前で暴行を加えた場合

現行犯逮捕は、「まさに犯行中」または「犯行直後」であることが条件です。
また、「犯罪の直後に行為者と疑うに足りる状況がある場合」(刑事訴訟法212条2項)は
準現行犯逮捕として扱われ、現行犯逮捕と同様に令状不要で逮捕が可能です。

もっとも、(準)現行犯逮捕されたとしても、その後の手続(送検・勾留・起訴など)は通常逮捕と同様に進みます。
つまり、「すぐに逮捕されたから処分が重くなる」というわけではありません。
その後の取調べや示談の状況が、処分の軽重に影響します。

ポイント
・傷害事件は、目撃者や被害者がいることが多く、現行犯逮捕の可能性が高い
・犯行直後であれば「準現行犯」として逮捕される場合もある
・現行犯逮捕は令状不要で迅速に行われるが、その後の手続は通常逮捕と同じ
・逮捕後の対応(弁護士依頼・示談など)が、処分結果を左右する

(3)逮捕の可能性が高いケース

傷害事件は,逮捕される可能性が十分に考えられる事件類型です。被害者の身体に危害が加えられているため,犯罪行為の危険性を踏まえると,被害者保護や証拠隠滅防止のために逮捕の必要性が高いと判断されるケースは少なくありません。

もっとも,傷害事件には大小様々なものがあり,逮捕の可能性も一律に判断することはできません。そのため,傷害事件で逮捕の可能性が高いのはどのような場合か,という点を把握しておくことは有益でしょう。

傷害事件で逮捕の可能性が高い場合

1.被害結果が大きい場合

2.暴行内容の危険性が大きい場合

3.現行犯で取り締まりを受けた場合

4.相手が弱い立場の場合

【1.被害結果が大きい場合】

被害者の傷害結果の大きさは,傷害事件の重大性を判断する際の非常に大きな材料になります。軽傷であるか重傷であるか,場合によっては命の危険があったかどうか,といった点は,刑事責任の重大性に直結します。

一般的に,刑事責任が重大な事件であるほど,見込まれる処分も重いものになるため,加害者が逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいと理解されます。そして,逃亡や証拠隠滅を図る恐れが大きいほど,逮捕をする必要性も高くなります。逮捕は,まさに逃亡や証拠隠滅を防ぐための強制的な措置であるためです。

そのため,被害結果が大きい傷害事件では,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。

【2.暴行内容の危険性が大きい場合】

結果的に被害が大きくなかったとしても,暴行の内容が非常に危険である場合には,やはり刑事責任が重くなりやすいため,逮捕の可能性が高くなる傾向にあります。一例としては,凶器を振り回したものの被害者にはうまく当たらなかった場合や,周囲が止めに入らなければもっと重大な被害を負わせてしまっていたであろう場合が挙げられるでしょう。

また,暴行の内容があまりに危険である場合には,そのような危険な行為を実行してしまう人物だ,という点を踏まえ,被害の拡大を予防する目的で逮捕をすることも多く見られます。特に,危険な行為を躊躇なく行っている場合や,無差別に行っている場合には,逮捕の可能性はより高くなると考えられます。

【3.現行犯で取り締まりを受けた場合】

現行犯で取り締まりをされた傷害事件の場合,その現場でのトラブルの深刻化を防ぐため,一方を逮捕するケースが多く見られます。
代表例としては,路上や飲食店などで泥酔者同士の喧嘩が起きた場合などが挙げられるでしょう。泥酔状態でコミュニケーションもうまく取れない状況では,逮捕以外の手段で加害者を制止させる方法がなく,その場を収める最も有効な手段として,逮捕が選択されることも少なくありません。

また,現行犯の場合には現行犯逮捕が可能ですが,逮捕状がなくても,誰でも行うことができる点で,逮捕を行うハードルが低いという特徴もあります。周囲の人が現行犯で取り押さえた後,駆け付けた警察官に引き渡すことで,自然と逮捕が成立してしまうこともあり得ます。

【4.相手が弱い立場の場合】

当事者間の立場に上下関係や筋力などの差があり,被害者が弱い立場にある場合には,被害者保護のために逮捕が選択される可能性が高くなり得ます。
逮捕は,証拠隠滅を大きな目的の一つとする手続ですが,被害者という人も重要な証拠です。この場合の逮捕は,被害者という証拠が隠滅されないことを目的に行われることになります。

特に,当事者間が容易に連絡を取り合える関係であるなど,加害者から被害者に対して何らかの圧力がかかりやすい事情がある場合には,特に被害者保護をする必要性が高く,逮捕に至るケースが増えるでしょう。

傷害事件で逮捕されたときのデメリット

逮捕をされてしまうと,以下のように多数の不利益が見込まれます。

①社会生活を継続できない

逮捕をされてしまうと,身柄が強制的に留置施設へ収容されてしまうため,日常の社会生活を続けることができません。スマートフォンの所持も許されないので,外部の人と連絡を取ることも不可能です。
そのため,周囲と連絡等ができないことによる様々な問題が生じやすくなります

また,逮捕後勾留されるまでの間は,原則として弁護士以外の面会ができません。面会によって最低限の連絡を図ろうと思っても,勾留前の逮捕段階では面会すら叶わないことが一般的です。
さらに,勾留後についても,接見禁止決定がなされた場合には弁護士以外の面会ができません。

②仕事への影響

逮捕された場合,仕事は無断欠勤となることが避けられません。その後,身柄拘束が長期化すると,それだけの間欠勤をし続けなければならないことにもなります。こうして仕事ができないでいると,仕事への悪影響を回避することも難しくなります。

また,逮捕によって勤務先に勤め続けることが事実上難しくなる場合も考えられます。
逮捕は罰則ではなく捜査手法の一つに過ぎないため,逮捕だけを理由に懲戒解雇されることは考え難いですが,一方で仕事の関係者に自分の逮捕が知れ渡ると,事実上仕事が続けられなくなるケースも珍しくはありません。

③家族への影響

逮捕されると,通常,同居の家族には捜査機関から逮捕の事実が告げられます。場合によっては,家族が逮捕に伴う各方面への対応を強いられることも考えられます。また,家族にとっては,被疑者が逮捕された,という事実による精神的苦痛も計り知れず,一家の支柱が逮捕された場合には経済的な問題も生じ得ます。

このように,逮捕は本人のみならず家族にも多大な影響を及ぼす出来事となりやすいものです。

④報道の恐れ

刑事事件は,一部報道されるものがありますが,報道されるケースの大半が逮捕された事件の場合です。通常,逮捕された事件の情報が警察から報道機関に通知され,報道機関はその情報を用いて刑事事件の報道を行うことになります。
そのため,逮捕された場合は,そうでない事件と比較して報道の恐れが大きくなるということができます。

万一実名報道の対象となり,氏名や写真とともに逮捕の事実が公になると,その記録が後々にまで残り,生活に重大な支障を及ぼす可能性も否定できません。
一般的には,重大事件や著名人の事件,社会的関心の高い事件など,報道の価値が高い事件が特に報道の対象となりやすいため,逮捕=報道ということはありませんが,逮捕によって報道のリスクを高める結果が回避できるに越したことはありません。

⑤前科が付く可能性

逮捕と前科に直接の関係はありませんが,逮捕されるケースは重大事件と評価されるものであることが多いため,事件の重大性から前科が付きやすいということが言えます。
逮捕をするのは逃亡や証拠隠滅を防ぐためですが,逃亡や証拠隠滅はまさに前科を避ける目的で行われる性質のものです。そのため,逮捕の必要が大きいということは前科が付く可能性の高い事件である,という関係が成り立ちやすいでしょう。

傷害事件の逮捕を避ける方法

①当事者間での解決を目指す

傷害事件は,基本的には当事者個人間のトラブルであるため,当事者自身で解決されているのであれば,それ以上に捜査をすることはあまりありません。刑事手続の進み具合によっては,当事者間で解決しても直ちに手続が終わらないこともありますが,少なくとも当事者間で解決した後に逮捕されることは考えにくいでしょう。

そのため,逮捕を避ける手段としては,当事者間との解決が非常に有力と言えます。共通の知人が間を取り持ってくれる,当事者同士で連絡を取り合う手段がある,といった場合には,直接話し合うこともあってよいでしょう。もっとも,傷害事件の解決を当事者同士で直接行うことは,トラブルの深刻化につながる恐れもあるため,弁護士に間に入ってもらい,弁護士を通じてやり取りを試みる方が望ましいところです。

②自ら捜査機関に出頭する

逮捕をする必要性が高いケースの一つが,逮捕しなければ出頭してもらえない,捜査協力をしてもらえない,という恐れのある場合です。最悪の場合,被疑者に逃亡されて行方が分からなくなってしまうと,捜査が進められなくなってしまうため,その恐れが高いと考えるときには,逮捕が有力な選択肢になります。

一方で,加害者が自ら捜査機関に出頭し,自分のしてしまった行為を真摯に話すなどした場合には,捜査協力をしてもらえない可能性や逃亡されてしまう可能性は基本的にないと評価されます。自分から出頭していることと逃亡などは,行動として矛盾するためです。

そのため,逮捕を避ける手段の一つとして,自ら進んで捜査機関(警察や検察)に出頭し,自分の事件に対する取り調べなどを求める動きは有力でしょう。手続の状況によっては,いわゆる自首が成立し,法的にもプラスの効果が生じることも期待できます。

被害者と接触が難しく、かつ捜査されていることが明らかに見込まれる場合、自ら出頭する方法が有力になりやすいです。

③金銭賠償を行う

傷害事件の被害者には,具体的な金銭的被害の生じていることが通常です。怪我を治療するための通院費,仕事ができなかった場合の休業損害,精神的苦痛に対する慰謝料などが代表例です。

この点,被害者に生じた損害に対して,金銭賠償を行って埋め合わせたケースでは,その後に逮捕されるケースは少なくなるのが通常です。この場合,加害者が被害者に対するお詫びの意思を持っていることが明らかであり,現実に被害者の損害が一定程度補填されているため,逮捕のような強制力の強い取り扱いまでする必要はない,と評価されやすいためです。

できれば,金銭の支払だけでなく当事者間で解決した,という形が取れる方が望ましいですが,解決までは至らない場合,金銭賠償だけでも行っておくことは非常に有益と言えます。

刑事事件の取り扱いに際しては、被害者の損害を後から補填できたか、という点が重要な判断基準になります。傷害事件の被害者に生じた心身の損害を金銭で補填することは、この点で大きな影響をもたらします。

傷害事件で呼び出しを受けた場合の対処法

①心当たりのある場合

疑われている行為に心当たりのある場合は,犯罪事実に争いのない事件となり,認め事件と呼ばれます。認め事件では,犯罪が成立するかどうかは問題にならないため,犯罪行為があったことを前提に,その処分が重くなるか軽くなるか,という判断になります。
そのため,心当たりのある場合には,その後の処分ができるだけ軽くなるような対応に努めるのが最も適切と言えるでしょう。

具体的には,最初から一貫して自身の行為を認め,深い反省の意思を示すとともに,真摯な捜査協力を行うことが望ましいと言えます。認め事件で処分が軽くなるかどうかは,いわゆる情状酌量をしてもらえるかという問題になるため,深い反省を有利な情状として考慮してもらうことを目指すのが最も有効です。

突然呼び出しを受けてしまうと,認めることにリスクを感じてしまい,反射的に心当たりがないなどの返答をしがちですが,反省は一貫して示すことが非常に重要です。反省の意思が最初から一貫している,と評価してもらうため,呼び出しへの最初の対応は大きなポイントになるでしょう。

ポイント
呼び出しを受けた段階から,一貫して反省の意思を示し続けることが重要

②相手に落ち度があると考える場合

傷害事件の場合,互いに感情的になって不適切な行為をしている場合も多いため,事件の原因などについて相手に落ち度があると考えるケースもあり得るところです。相手が暴言を吐いてきた,挑発してきたなど,「相手が不適切な行為をしなければ事件は起きなかったのに」という思いになる場合もあるでしょう。
その他,相手も手を出してきた,相手に迷惑をかけられてきた経緯があるなど,相手の落ち度を指摘したいケースが増えやすいのも,傷害事件の特徴と言えます。

もっとも,呼び出しを受けた際に相手の落ち度を強く指摘するのか,という点は,慎重な判断が望ましいです。呼び出しを行う警察は,まず犯罪事実を認めているか認めていないか,という基準で事件を区別し,その区別に沿って取り扱いを進めていくのが通常です。そのため,犯罪事実を認めるか認めないか,という点に関係しない事情は,あまり聞く意思を持っていないことが多く見られます。
相手に落ち度があると考える場合でも,それが犯罪の成否に影響しない事柄であれば,呼び出しをした警察にとって必要な情報ではなく,伝えてもその後の流れが好転することが考えにくいものです。正当防衛の主張であるなど,犯罪の成否に関係する主張以外は,あまり強く述べていくべき状況ではないかもしれません。

相手の落ち度に関する言い分は,主張するべきタイミングや方法を慎重に判断することが望ましいものです。感情的な主張になってしまわないよう,弁護士に依頼するなどして十分に検討することをお勧めします。

傷害事件の場合、経緯に理不尽な出来事があったというケースも少なくありません。しかし、その経緯を最初から強く主張するより、まず傷害行為を真摯に認めるステップを踏む方が結果的に得をすることも多いです。

③相手が怪我するほどの内容ではないと考える場合

傷害事件は,加害者が被害者に暴行を加えた結果,被害者が傷害を負った場合に成立する犯罪類型です。そのため,暴行をしても被害者に怪我が生じなかった場合や,被害者が怪我をしているもののそれは暴行とは無関係の原因で生じたものである場合などは,傷害罪は成立せず,傷害事件として扱うことが不適切である,ということになります。
そのため,実際の出来事や自身の記憶を踏まえて,相手に傷害結果が生じるのは考え難いという場合には,その旨の主張を行うのも有力な選択肢と言えます。

ただし,この場合には,法的にどのような主張になるかは十分に理解しておくことが適切です。暴行を加えたものの傷害結果が生じなかった,という場合には,傷害罪は成立しないものの暴行罪は成立することになるのが通常です。つまり,犯罪に当たることは争わないものの,より軽微な犯罪であるとの主張になるため,認め事件で重要な反省の意思を示すことは忘れないようにする必要があります。

なお,主張の内容によっては,暴行罪すら成立せず「自分の行為は犯罪でない」という意味の主張になる場合もあり得ますが,高度な法律の理解が必要な問題になるので,必ず弁護士の見解を仰いだ上で主張するようにしましょう。

ポイント
傷害罪でなくより軽微な暴行罪にとどまるとの主張
認め事件に変わりないことは忘れないよう注意する

④全く心当たりがない場合

疑われている傷害事件に全く心当たりがない場合,捜査に対しては否認(認めない)の立場を取ることになります。そのため,まずは否認事件であることを明らかにし,捜査機関に把握してもらうように努めましょう。

刑事事件は,認め事件であるか否認事件であるかによって,必要な捜査やその後の取り扱いが大きく変わります。否認事件の場合,被疑者が認めなくてもなお犯罪が証明できる,という場合でなければ刑事処罰はできないため,一般的に犯罪立証のハードルが高く,より慎重な捜査が必要とされる傾向にあります。
そのため,否認事件では,犯罪立証の高いハードルを越えることが必要である,ということを捜査機関に認識してもらい,できれば「犯罪立証が困難である」との判断を早期に行ってもらうことが有力な対応と言えるでしょう。

また,自分に心当たりのないことを裏付ける事情などがある場合,その内容は積極的に示していくことが適切です。否認の主張が信用できるとの判断を引き出しやすく,より早期の解決が期待しやすくなります。

ポイント
否認の立場を早期に表明する
主張を裏付ける事情がある場合は,積極的に示す

傷害事件の呼び出しに応じると逮捕されるか

傷害事件で呼び出しを受けた場合,呼び出しに応じて出頭した際に逮捕される,という流れはあまりありません。傷害事件は,逮捕目的で呼び出しを行うケースが少ない事件類型と言うことができるでしょう。
もっとも,傷害事件は事件の程度が非常に幅広く,そのすべてを一律に取り扱うことは困難です。傷害事件の中でも,事件の重大性や悪質性が特に大きい場合には,呼び出しの際に逮捕される可能性も否定できません。

具体的には,以下のような場合が挙げられるでしょう。

傷害事件で呼び出し後に逮捕されやすいケース

①殺意がある可能性を疑われている

傷害事件として取り扱ってはいるものの,殺意があったのではないかと疑われている場合,殺意を裏付ける証拠が発見されたなどの事情によっては,呼び出しの後に逮捕される可能性が考えられます。
殺人罪又は殺人未遂罪は,犯罪の中でも特に重大な類型であり,その重さは当然ながら傷害罪を大きく上回るものです。刑事事件では,事件が重大であればあるほど逮捕の可能性が高くなるため,傷害罪にとどまらず殺人罪や殺人未遂罪の可能性がある場合は,特に逮捕リスクが高くなるのです。

殺意の有無は、傷害行為の危険の大きさを主な基準とすることが一般的です。刃物やけん銃で急所を狙った場合などが代表例ですが、実際の行為が被害者の生命に影響し得るケースでは、殺意があると判断されやすいでしょう。

②被害結果が非常に重い

被害者の傷害結果が非常に重く,傷害事件の中でも特に重大と評価される場合には,逮捕の可能性が高くなります。特に,死亡結果に近いほどの深刻な被害が生じている場合,殺意がある場合と同様に殺人事件又は殺人未遂事件類似の内容として,逮捕リスクが上がりやすいでしょう。

また,たまたま重大な被害結果になってしまったのではなく,意図して重大な傷害結果を招こうとし,実際にその通り重大な結果となった場合には,より逮捕の可能性が高くなりやすいと言えます。呼び出し後の取り調べなどを踏まえて,暴行の意図がはっきりと確認できた場合には,それを踏まえて逮捕に踏み切るケースもあり得ます。

③呼び出しへの対応が不適切である

捜査機関が呼び出しを行うのは,呼び出しに対して適切に応じてくれることが大前提となります。出頭して欲しいと求めれば来てくれる,物の提出を求めたいと言えば提出してくれるなど,捜査協力をしてくれるのであれば,逮捕までは必要ないと考えているわけです。

逆に,呼び出しに対して不適切な対応に終始し,捜査協力の意思が見られない場合には,逮捕の可能性が高くなりやすいでしょう。呼び出しを無視し続ける,合理的な理由なく拒否し続けるなど,逮捕なしでは出頭や取調べへの協力が期待できないと理解されるケースでは,特に逮捕が懸念されます。

傷害事件の逮捕に関するよくある質問

(1)傷害事件の逮捕については弁護士に依頼するべきか

傷害事件の逮捕について対応をする場合には,弁護士に依頼し,弁護士の法的な判断を仰ぎながら進めることが適切です。弁護士に依頼した場合,以下のような利点が見込まれます。

①逮捕が懸念される状況か分かる

逮捕への対策をどの程度講じるかは,現状でどの程度逮捕が懸念されるか,という点により大きく変わります。逮捕が強く懸念される場合には,まず逮捕を避けることに全力を注ぐべきですが,一方で逮捕の危険がそれほどないならば,その分の労力や負担を他に充てる方が,最終的な結果はより望ましいものになる可能性が高いでしょう。
そのため,逮捕に関する対処は,正確な現状把握が出発点となります。

この点,弁護士に依頼することで,現在逮捕が懸念される状況かどうか,という点について,専門的な判断を仰ぐことが可能です。あわせて,個別の状況に応じた適切な対応方法についても,弁護士から助言を受けたり弁護士に進めてもらったりすることができるでしょう。

②速やかに示談を目指せる

傷害事件で逮捕を防ぐ手段として,示談は非常に強力な効果があります。示談が成立した傷害事件では,その後に逮捕されることはないと言っても過言ではありません。
もっとも,傷害事件では,示談を試みるために弁護士への依頼が必要となります。弁護士に依頼し,弁護士を窓口とすることで,初めて示談の試みが可能になるのが通常です。

裏を返すと,早期に弁護士に依頼している場合,早期に示談を目指す動きに着手でき,結果的に逮捕を回避しやすくなる可能性が高まるでしょう。もし示談自体が早期に決着できなくても,示談交渉を開始している,というだけで逮捕が防げる場合は少なくありません。

③不適切な逮捕を抑止できる

傷害事件の場合,当事者間の感情的な対立が非常に激しいため,被害者側が加害者の逮捕を強く求める場合は多くなりがちです。このとき,取り扱う警察官としては,本来は逮捕まで必要ないケースであっても,被害者の強い主張を受けて逮捕する,という選択になってしまうことが少なくありません。
しかしながら,本来逮捕まで必要ないにもかかわらず,被害者が強く主張したから逮捕するというのは,適切な逮捕とは言い難いでしょう。逮捕は非常に強力な手続であるため,本当に逮捕が必要かどうかは慎重に判断されるべきです。

この点,弁護士に依頼をしているケースでは,弁護士が目を光らせることで,不適切な逮捕の判断を抑止する効果を期待できます。また,万一不適切な逮捕が行われた場合には,不服申し立ての手続を講じるなどして,早期釈放を目指すことも可能です。

(2)逮捕された場合は不起訴にならないか

逮捕された場合,事件が重い取り扱いを受けていることが明らかになりますが,だからといって事件が起訴されるとは限りません。逮捕は,あくまで捜査をする際の手段の一つに過ぎず,捜査を終えた後に起訴するか不起訴にするかは全く別の問題です。

そのため,万一逮捕されてしまった場合でも,起訴されず前科が付かない可能性は十分に残っている,ということには注意しておくのが良いでしょう。逮捕されたことで全てに悲観的になってしまうのではなく,逮捕後でも最良の結果を目指すことが,結果に大きな違いをもたらします。

(3)傷害事件で逮捕されたとき家族ができることはあるか

家族の行動も、事件の結果を左右する重要な要素です。

まず、速やかに弁護士へ依頼し、接見を通じて本人の状況を確認します。
そのうえで、

・示談金や被害弁償の準備
・謝罪文や反省文の作成サポート
・勤務先・学校への連絡や社会的信用の維持

といった支援を行うことが大切です。

これらの対応は、被疑者が真摯に反省していることを示す資料となり、不起訴や執行猶予など処分の軽減につながる可能性があります。
家族の協力が、被疑者の再出発を支える大きな力になります。

(4)傷害事件で前科がつくのはどんな場合か

起訴され、有罪の裁判(正式裁判または略式命令)が確定した場合に前科がつきます。
不起訴や無罪の場合は、前科は残りません。
軽微な事件で示談が成立しているケースでは、不起訴となり前科を回避できることも数多くあります。

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