不倫による慰謝料請求を検討している方の中には、「示談書を作った方がいいの?」「どう書けば法的に有効なの?」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
慰謝料の取り決めを口約束だけで済ませてしまうと、後から支払いが滞ったりトラブルに発展する可能性があるため、法的効力を持たせるためには正しい形式で示談書を作成することが大切です。
本記事では、示談書の基礎知識を踏まえた上で、書き方や効力の有無などについて解説します。
藤垣法律事務所では、離婚・男女問題に精通した弁護士が在籍しており、迅速対応により最適な解決方法をご提案いたします。下記からぜひご相談ください。
この記事の監修者

藤垣法律事務所
代表 藤垣 圭介
全国に支店を展開する弁護士法人で埼玉支部長を務めた後、2024年7月に独立開業。
これまでに刑事事件500件以上、交通事故案件1,000件以上に携わり、豊富な経験と実績を持つ。
トラブルに巻き込まれて不安を抱える方に対し、迅速かつ的確な対応で、安心と信頼を届けることを信条としている。
不倫の慰謝料請求における「示談書」の基礎知識

不倫による慰謝料を請求する場面では、感情的なやり取りだけでなく、後々のトラブルを防ぐために示談書を取り交わすことが重要です。
示談書とは、当事者同士が話し合いで合意した内容を文書として明確に残すものを指し、主に慰謝料の金額や支払い方法、今後の取り決めなどを記載します。
ここからは、示談書の基礎知識について深掘りしていきます。
示談書の目的
示談書の目的は、当事者間で合意に至った慰謝料や関連条件を明確に記録し、将来的な紛争を防ぐことです。
不倫の慰謝料請求では、感情的な対立が強いため、口頭の約束やLINE・メールのやり取りだけでは後になって「言った・言わない」の争いに発展する可能性があります。
そのため、示談書を作成して双方の署名・押印をすることで、合意の存在を客観的に証明できるのです。
また、示談書があれば慰謝料の支払いが滞った場合に法的措置を取る根拠となり、請求を実効的に進められます。
さらに、今後追加で請求をしないことを明記することで、長期的に争いを引きずらず生活を再建するための区切りをつける役割も果たします。
示談書は「解決を明確化するための契約文書」であり、双方の安心と公平を担保する必要な存在といえるでしょう。
示談書と誓約書の違い
不倫問題に関連してよく耳にする書類に「誓約書」がありますが、示談書とは性質が異なります。
示談書は、慰謝料の支払いを含む具体的な合意事項を双方で確認し、その効力をもって将来のトラブルを防ぐための契約文書です。
一方、誓約書は主に加害者側が一方的に「もう二度と不倫しません」や「今後一切接触しません」といった約束を誓うための書類であり、法的な拘束力は示談書ほど強くありません。
たとえば、誓約書だけでは慰謝料の支払い義務を強制することは難しいのに対し、示談書には金銭の支払い条件が明記されるため、証拠力が高く、万一支払いが滞れば訴訟や差し押さえの根拠にもなります。
したがって、不倫慰謝料の請求においては「誓約書よりも示談書を優先して作成するべき」であり、両者を混同せずに正しく位置付けることが重要です。
一般的に、示談書は当事者双方が合意した契約を書面化したものであり、誓約書は当事者の一方がある約束をする旨意思表明した書面である、という点に違いがあります。契約違反の場合に責任追及ができる点で、示談書の方が強い効力を持っていることが多いでしょう。
不倫慰謝料の示談書に盛り込むべき項目

不倫慰謝料の示談書に盛り込むべき項目は、主に以下の通りです。
- 金額・支払い方法の明記
- 支払い期日・分割の条件
- 再発防止・接触禁止などの条項
- 今後の請求をしない旨の文言
詳しく解説します。
金額・支払い方法の明記
慰謝料の示談書で最も重要なのは、具体的な支払い金額とその方法を明確に記載することです。
単に「慰謝料を支払う」と記すだけでは、後に支払いを巡る争いが生じる恐れがあり、実効性に欠けます。
たとえば「慰謝料として300万円を一括で支払う」あるいは「総額200万円を10回の分割で支払う」といったように、額と方法を細かく記載する必要があります。
また、支払いの手段(銀行振込、現金手渡しなど)や振込口座も特定しておくと、履行確認が容易になります。
このように金額と支払い方法を明確化することで、後のトラブルを防ぎ、請求権を確実に担保できるのです。
支払い期日・分割の条件
金額と並んで重要なのが、支払い期日や分割の条件です。示談書に「○月○日までに一括で支払う」と具体的な期限を明記することで、履行状況を明確に確認できます。
また、分割払いを認める場合には、支払い回数や各回の金額、支払い期日を細かく設定する必要があります。
たとえば「毎月末日までに20万円を10回に分けて支払う」といった記載が望ましいです。
さらに、分割払いが滞った場合に残額を一括で請求できる「期限の利益喪失条項」を盛り込むことで、支払いが滞るリスクを抑えられます。
こうした記載がなければ、相手方が支払いを引き延ばす余地を与え、回収が困難になる恐れがあるため、必ず条件を明記しておくことが重要です。
再発防止・接触禁止などの条項
不倫問題は慰謝料の支払いだけでなく、その後の関係性においてもトラブルが生じやすいため、再発防止や接触禁止の条項を盛り込むことが望ましいです。
たとえば「今後一切の不倫関係を持たない」「被害者への連絡や接触を禁止する」といった文言を加えることで、再び同じ問題が起こることを防げます。
これにより被害者側は精神的な安心感を得られ、相手側も誓約を守る義務が生じます。
さらに、この条項があることで万一接触があった場合に新たな慰謝料請求や法的対応の根拠とすることが可能です。
慰謝料請求においては金銭面だけでなく心理的な負担軽減も大切であり、この条項はその両面をカバーする役割を果たすのです。
今後の請求をしない旨の文言
示談書には「今回の慰謝料の支払いをもって、本件について今後一切請求を行わない」という文言を必ず記載しておく必要があります。
これがないと、後になって「さらに追加で慰謝料を請求される」といった新たな争いが発生する可能性があるからです。
示談書は合意を最終的に確定させるための文書であり、両者が納得した時点でトラブルを終結させることに意義があります。
将来の不安を断ち切るためにも、この「清算条項」は必須であり、被害者・加害者双方にとって精神的安定をもたらします。
曖昧な記載は後の解釈違いを生むため、必ず明確に「これ以上請求しない」と示すことが重要です。
不倫の慰謝料請求で示談書を作成するメリット

不倫の慰謝料請求で示談書を作成するメリットは、主に以下の通りです。
- 法的な証拠として慰謝料の支払いを確実にできる
- トラブルや言った・言わないの争いを防げる
- 今後の請求を防ぎ、問題を終結させられる
- 公正証書にすれば強制執行も可能になる
詳しく解説します。
法的な証拠として慰謝料の支払いを確実にできる
示談書は、法的に有効な証拠として機能します。慰謝料請求を口頭で合意しただけでは、相手が支払いを怠った際に強制的に履行させることが困難です。
しかし、示談書に署名・押印があり、具体的な支払い条件が記載されていれば、裁判所でも証拠として認められやすく、支払いを確実に行わせる根拠となります。
特に金額や支払い期日が明確であれば、相手が不誠実な態度を取った場合でも迅速に法的措置を講じることが可能です。
被害者にとっては泣き寝入りを防ぐ強力な後ろ盾となり、安心して合意に基づく解決を図れる点が大きなメリットといえるでしょう。
トラブルや言った・言わないの争いを防げる
不倫問題では感情的な衝突が避けられず、口頭の約束やメールだけでは「そんなことは言っていない」といった主張が出やすくなります。
示談書を作成することで、合意内容が文書として残り、後から覆すことが難しくなります。
特に慰謝料の支払いに関しては「いくら支払うか」「どのような方法で支払うか」が明記されるため、相手の言い逃れを封じる効果があるのです。
また、接触禁止や再発防止の条項を加えることで、問題の蒸し返しを防ぎ、被害者側の精神的負担を軽減できます。
トラブルを繰り返さず、スムーズに終結させるために示談書は欠かせないのです。
今後の請求を防ぎ、問題を終結させられる
示談書には「清算条項」と呼ばれる文言を盛り込むことが一般的で、これによって「本件慰謝料をもって、今後一切の請求を行わない」と取り決められます。
これがあることで、不倫問題が延々と続くリスクを排除し、双方が生活を立て直すきっかけになります。
被害者にとっては追加の請求をする煩わしさから解放され、加害者にとっても新たな請求を受ける心配がなくなるため、問題を完全に終結させられます。
長期的に見て精神的安定を得るためにも、この条項は大きな意味を持っているでしょう。
公正証書にすれば強制執行も可能になる
示談書は当事者同士で作成するだけでも有効ですが、公証役場で「公正証書」として作成すれば、さらに強い効力を持たせられます。
特に「強制執行認諾文言」を付けることで、相手が支払いを怠った場合に裁判を経ずに財産を差し押さえることが可能です。
これは被害者にとって大きな安心材料となり、慰謝料の回収を実質的に保証する効果を持ちます。
費用は発生しますが、確実性を重視する場合には公正証書化を検討する価値は非常に高いといえるでしょう。
自分で作成した示談書は効力あるのか

示談書は必ずしも弁護士を通さなければならないわけではなく、自分で作成しても効力を持ちます。
しかし、その内容が不十分であったり、法的に曖昧な表現を用いてしまうと、裁判で十分な効力を発揮できない場合があるのです。
特に支払い金額や期日が具体的でない、署名押印が欠けている、といった不備があると証拠として弱くなる可能性があります。
そのため、自分で作成する際には、基本的な記載事項を必ず盛り込み、形式を整えることが重要です。
とはいえ、高額な慰謝料や複雑な条件が絡む場合には、専門家のチェックを受ける方が安全といえるでしょう。
慰謝料の金額や支払方法、支払期限などの条件を明確に定めることで、支払内容に関する紛争が再発しないように留意するのが適切です。また、支払が行われなかった場合にどんな手段を講じられるか、相手にどんなリスクが生じるか、という点もしっかり定めることが重要です。
弁護士に示談書作成を依頼すべきケース

弁護士に示談書作成を依頼すべきケースは、主に以下の通りです。
- 慰謝料の金額交渉が難航している
- 感情的な対立が激しい
- 法的効力を万全にしておきたい
詳しく解説します。
慰謝料の金額交渉が難航している
慰謝料の金額を巡る交渉がスムーズに進まない場合、弁護士を介入させることで解決が早まることがあります。
不倫慰謝料の相場は一律ではなく、婚姻期間や不倫の悪質性、離婚の有無などによって変動するため、当事者だけで適正額を判断するのは困難です。
弁護士に依頼すれば、過去の裁判例や法的根拠に基づいて妥当な金額を提示でき、公平な解決を導くことができます。
相手が不当に低い金額を提示している場合でも、専門的な知識で正当な額を請求できるため、納得感のある示談が成立しやすくなります。
感情的な対立が激しい
不倫問題は感情的な衝突を伴いやすく、冷静な話し合いが難航するケースが多々あります。
そのような場合、直接交渉を続けると精神的な負担が大きく、解決までに時間がかかる可能性があるのです。
弁護士に依頼すれば、代理人として相手方とやり取りしてくれるため、当事者が感情的にぶつかるリスクを避けられます。
第三者を介すことで交渉がスムーズに進み、心理的負担の軽減にもつながるのです。
法的効力を万全にしておきたい
慰謝料の支払いを確実にするためには、示談書の内容に法的な不備がないことが求められます。
特に高額な慰謝料や分割払いなど複雑な条件がある場合、自分で作成した書面では裁判で不十分とされる可能性があるのです。
弁護士に依頼すれば、法的に有効な文言を用い、漏れのない示談書を作成できるため、将来のリスクを大幅に減らせます。
さらに、公正証書の作成にも対応できるため、強制執行まで見据えた安心の契約が可能です。
まとめ|不倫慰謝料の示談書は冷静かつ慎重に作成を
不倫慰謝料の請求において示談書は、金銭の支払いを確実にするだけでなく、将来のトラブルを防ぎ、問題を終結させるために必要な文書です。
金額や支払い条件、再発防止や清算条項などを正しく盛り込むことで、双方が納得できる解決が可能です。
また、公正証書化すれば強制執行力も持たせられるため、さらに安心できます。
自分で作成することもできますが、不備があれば効力を失う恐れがあるため、状況によっては弁護士に依頼することを検討することが望ましいでしょう。
藤垣法律事務所では、離婚・男女問題に精通した弁護士が在籍しており、迅速対応により最適な解決方法をご提案いたします。下記からぜひご相談ください。